********海保著「くたばれ、マニュアル」
4章 操作の説明は難しい 8頁
----操作説明が問題--
4.1 操作説明は難しい
●相手がみえないときの説明は難しい
●操作を文書で説明するのは難しい
4.2 ビジュアルで表現する
●アナログにはアナログで
●ビジュアルで表現する利点
●操作をビジュアルで表現する
●ビジュアル表現も決定打にはならない
4、3 操作をわかりやすく説明する---操作支援
●操作を絵と言葉で
●操作の意味を示す----操作説明をわかりやすくする工夫その1
●意味とは
●メンタルモデルに配慮する---「意味」の認知心理学
●操作の目標を先に示す
●全体図を見せる
●操作の結果を示す---操作説明をわかりやすくする工夫その2
●操作のステップを適度に細かく--操作説明をわかりやすくする工夫その3
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4章 操作の説明は難しい 8頁
----操作説明の問題--
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マニュアルもマルチメディア化しているが、ここでは文字と絵を使った文書マニュアルを想定して、その表現上の問題を探ってみる。そこは、わかりにくい表現の巣窟のようなところであるが、それだけに、その改善を考えることは、マニュアルのわかりやすさの鍵となるノウハウの発掘につながる。
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4.1 操作説明は難しい
●相手が見えないときの説明は難しい
箸の使い方を外国人に教えることを考えてみる。
目の前にその人がいれば、実演による説明もできるし、手取り足取りのコーチングもできる。熟達するには時間はかかるが、基本的なことを教えるにはそれほどの困難はない。
多くの道具の使い方は、このようにして習得されてきた。ましてや、自動車の運転のような高度技術を組み込んだ機械の操作は、一定のカリキュラムに従った実技と座学の訓練コースでの学習が義務づけられているのが普通である。
問題は、教えたい相手が目の前にいないときである。
相手が見えないときの説明は、操作説明に限らず難しい。文字どおり「見えない」ときはもとより、その説明の受け手が「わからない」、あるいは、「絞り切れない」ときもあるから、なおやっかいである。
技術が民主化すれば、この状況はもっと悪くなる。
マニュアルなどの文書による説明は、それをしなけれならないのだから、困難さは押して知るべしである。
●操作を文書で説明するのは難しい
さらに、マニュアルによる操作説明をわかりにくくしている構造的な面がある。それは、操作というアナログ世界の出来事を、文書というデジタル世界に移すことの困難さである。
これを、アナログ・デジタル・ギャップと呼んでおく。
アナログの世界には基本的に自由度がある。
「右手に箸を持つ」と文章に書かれても、千差万別の持ち方があるから、決まりがつかない。
持ち方の自由度を制限するには、下手をすると百万言を要することになる。そんなことはできないから、せいぜい「右手の親指と人指し指と中指で箸を持つ」くらいの表現で妥協することになる。
かくして、わかっている人にはわかるが、わからない人にはわからないということになってしまう。こうした表現不全が随所で発生することになる。
それなら、アナログである絵を使ってみようとなる。それでも、連続的な動きのどの部分を切り出すかのところで、アナログ・デジタル・ギャップに直面することになる。
それでも、文章よりはまし、ということで、次に操作のビジュアル表現を考えてみる。