記憶情報の関係づけをする
ひとたび頭の中に取り込まれた記憶情報は、すでに頭の中にある知識の網に取り込まれます。知識の網にひっかからない情報は左の耳から入って右の耳から出ていくようなものです。
既有知識の網に引っかけるのが、関係づけの一つのタイプです。これは、暗記術のところで述べた意味づけに他なりません。
****イラスト案
・網の結び目には、「記憶」「検索」「符号」「編集」「暗記」の単語が書かれている
・外から魚が数匹、背中に「山田」「潜在記憶」「目撃」「表象」「スキーマ」と書かれている
・1匹は網の中「イメージ」
・1匹は網の目から抜け出ようとしている、背に「集中」と書かれている
・網の後ろには、網にかからなかった魚が3匹、背に「ポリマー」
「遺伝」「カーネマン」
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もう一つの関係づけは、すでにある知識どうしの関係づけです。これは、いわば網そのものの制作になります。制作のポイントは、次の3つです。
1)網の大きさを決める
これは、知識の世界で言うなら、どれほど幅の広い知識か、ということになります。いろいろの勉強をすれば、どんどん幅は拡がっています。
2)網の目の細かさを決める
これは、知識の世界で言うなら、知識の精緻さに相当します。その道のプロ(熟達者)の知識がこれです。
3)網の強度を決める
これは、知識の世界で言うなら、知識の安定度になります。更新されない知識、いつまでも頭の中にそのままに形で存在し続ける知識です。暗記術に使われる知識が、この典型です。
関係づけを意識的におこなう
記憶情報の歪曲は、ごく自然に無意識的に起こりますが、知識間の関係づけは、かなり意識的におこなわれます。というより、記憶力の向上のためには、関係づけをみずから意識的におこなう必要があります。
たとえば、関係づけとは、勉強するときのこんな心構えです。
「1183年に源頼朝が鎌倉幕府を開いた」という一節をテキストで読んだとします。
これを、「いいやみに、ばくふをひらいたよりともよ」と語呂合わせして覚えるは暗記。これも関係づけですが、いわば、一番簡単でレべルの低い関係づけ(意味づけ)です。
この1節を読んだことをきっかけに、次のようなことに思いをはせると、かなりレベルの高い関係づけになります。
・鎌倉幕府の前後は何といったか?
・腹違いの弟・源義経と頼朝の関係はどうだったか?
・日本の歴史上での鎌倉幕府の位置づけは?
豊かな知識があればあるほど、関係づけも多彩で精緻なものになります。これが、知識の高度化です。
「覚えては関係づけで、さらに覚えては関係づける」の絶え間ない繰り返しによって、貯蔵された知識を高度化していくことになります。
ここには、残念ながら、あなたの期待したような記憶力向上のための具体的な方策はほとんどありません。毎日の地道な勉強の中で、今、目の前にある情報にだけとらわれないで、あれこれと関係することに思いをはせ、さらに、自分なりに気になることを調べたりする習慣をつけることしかありません。