このたび、人文学部を人文学部と応用心理学部とに分離し新たな大学の新たな発展を期するのは、一つには、心理学の応用範囲の拡大が、「人文」という名称の枠内におさまらなくなったことがある。現在の日本社会において、心理学が生活、産業、教育、医療・福祉などの分野にその応用範囲を拡大している様子は、マスコミなどを通してうかがい知ることができる。
2つには、心理学の科学化である。心理学が科学として認知されて1世紀余が経過しているが、日本における大学制度の中では、長らく文系としての位置づけがなされ、文学部や人文学部などの1学科と設置されてきた。しかし、心理学の研究の科学化への志向は今後、強まりこそすれ弱まることはない。かくして、人文系、文系の枠内におかれることは、カリキュラム構成や研究活動の点で、他の人文、文学系学科との整合性がとりにくなってきている。
さらに、こうした事情を踏まえて、ここ5年くらいの間に、日本の大学数校において、心理学部の設置がすでになされており、それらとの整合性をとることによって、対外的に、本学の存在を積極的にアピールする必要性がある。
人文学部から分離して応用心理学部を設置することで、それぞれが独自の発展の方向を考えることができる利点もある。
まず、設置を予定している応用心理学部は、当面は、臨床心理学科と福祉心理学科との2学科からなるが、2つの学科が一つの学部内にまとまることの利点がある。一つは、現在でも、副専攻という形で部分的にはおこなわれているが、学科間の相互乗り入れによる教育効果である。異なった応用範囲で通用する心理学の基礎知識や技能を身に付けさせることが期待できる。
2つは、将来計画として、さまざまな方向性が考えることができる利点もある。現行スタッフだけに限定しても、どの応用分野にも通用する基礎心理学コースの充実や、スポーツ・健康やビジネスなどのさらなる実践分野の拡大、まだ検討段階ではあるが心理関係の国家資格への対応などが、考えられる。