頭を柔らかくする(18) 芳林社MIT 連載
海保
会話ーーー人から知をもらう
ポイント**************
1)会話を情報収集、触発、知識の転移に使う
2)知的共感性、傾聴も大事
3)知的会話のできる人を数人用意する
********************
●会話には多彩な働きがある
人と話すのが好きな人も嫌いな人もいるが、会話なしでは社会生活はできない。
その会話にも、対人関係を円滑するための社交的な機能以外にも、さらに2つの機能がある。もっとも、日常の会話の中ではそれらは、混然一体となっていることのほうが多いのだが。
その一つは、癒しとしての会話である。
一人で抱え込んでいた悩みも、誰かに聞いてもらうとすっきりする(カタルシス効果)。
あるいは、気のおけない友人と話していると元気がでてくるなどなど。これを体系的にやるのが、カウンセリングである。
もう一つが、会話の知的機能である。
そして、これが今回取り上げたい機能である。
●会話の知的機能とは
会話そのものが、言葉という知的道具を使うのであるから、きわめて知的なのだが、さらに、会話の中身が、知的活動を支援したり、活発にさせたりする機能を果たしている。これが会話の知的機能である。
その一つが会話からの情報収集である。
形式的かつ体系的な情報は本や雑誌などから得られるが、「生きた情報」は、会話からしか得られない。ここで、「生きた情報」とは、信頼性は高くはないが、即時性(5W1H)があり、その人の評価があるような情報である。噂話がその典型である。
会話の知的機能の2つ目は、自分の考えを話したり、聞いてもらうことで、そのおもしろさや新規性をチェックしてもらったり、それによってさらに新しい着想を得る、いわば、知的触発機能である。
問題意識があれば、人からのほんの一言、あるいはうなずきでも知的に触発される。それを会話の中でやろうというわけである。
3つは、会話によって、知識を相手に移転する機能である。
知識を共有できる人が自分の回りにどれだけいるかは、自分の思考を高度化するためにも必須である。与えるものが大きければ、得られるものも大きい。
●会話の知的機能を活発にする
インタネットのチャットを編集して本にしてしまった人がいる。ここまでやれば、会話の知的機能きわまれリであるが、もっと日常的な場面では、どのようなことに留意すれば良いのであろうか。
会話は相手あってのものということで、まずは、相手の知的世界に思いをはせられる、知的共感性が大事になる。クイズであなたのそれをチェックしてみてほしい。
さらに、話すことよりも、相手の話に耳を傾けられる(傾聴する)くらいのほうが、会話がはずむし、知的にも触発されることが多い。
その上で、自分の考えやアイディアを気軽に聞いてくれる人を相手を数人用意しておく。いつも同じ人では会話もはずまない。あまり多すぎても深い会話にならない。
****本文60行
図解「会話の好きな人、嫌いな人」****
図は、科学技術政策研究所(当時)が大学進学志望者3879人に、
「人付き合いが好きか」
「文章の読み書きが好きか」の自己評価させた結果である。
図 別添
「解説」
「人付き合い」には会話は必須。理学志望、工学志望のいずれも、両方の項目に嫌いと答えている。いずれも好きと答えているのは、教育志望者であったのも、うなずける。
理系と文系(第14回参照)の違いの一端として、付き合い好き、すなわち会話好きかどうかが、このデータからもうかがえる。根底には、ファジーなものへの好みがあるようにも思える。つまり、会話や文章表現のような、どう展開するかわからないものが理系人間はあまり好きではないのかもしれない。
なお、女性の会話能力は男性のそれとくれべるとはるかに高い。
クイズ「会話には知的共感性が大事」***
次の項目について、自分に最もよく当てはまるとき「4」を、当てはまららないとき「1」の4段階のいずれかで答えてみてほしい。
( )他の人たちの立場に立って、物事を考えることができる
( )何かを決定するときには、自分と反対の意見をもつ人たちの立場に立って考えて みる
( )友達をよく理解するために、彼らの立場になって考えようとする
( )自分の判断が正しいと思うときでも、他の人たちの意見を聞く
( )どんな問題にも対立する二つの見方(意見)があると思うので、その両方を考慮 するように努める
( )ある人に気分を悪くされても、その人の立場になってみようとする
( )人を批判する前に、もし自分がその人であったならば、どう思うであろうかと考 えるようにしている
「解説」
桜井茂男氏が作成した、知的共感性を測る尺度である。大学生の平均は20点であるが、あなたの得点はどれくらいであろうか。知的共感性は会話を円滑にする基盤であるし、また、会話することによって養われる。
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海保
会話ーーー人から知をもらう
ポイント**************
1)会話を情報収集、触発、知識の転移に使う
2)知的共感性、傾聴も大事
3)知的会話のできる人を数人用意する
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●会話には多彩な働きがある
人と話すのが好きな人も嫌いな人もいるが、会話なしでは社会生活はできない。
その会話にも、対人関係を円滑するための社交的な機能以外にも、さらに2つの機能がある。もっとも、日常の会話の中ではそれらは、混然一体となっていることのほうが多いのだが。
その一つは、癒しとしての会話である。
一人で抱え込んでいた悩みも、誰かに聞いてもらうとすっきりする(カタルシス効果)。
あるいは、気のおけない友人と話していると元気がでてくるなどなど。これを体系的にやるのが、カウンセリングである。
もう一つが、会話の知的機能である。
そして、これが今回取り上げたい機能である。
●会話の知的機能とは
会話そのものが、言葉という知的道具を使うのであるから、きわめて知的なのだが、さらに、会話の中身が、知的活動を支援したり、活発にさせたりする機能を果たしている。これが会話の知的機能である。
その一つが会話からの情報収集である。
形式的かつ体系的な情報は本や雑誌などから得られるが、「生きた情報」は、会話からしか得られない。ここで、「生きた情報」とは、信頼性は高くはないが、即時性(5W1H)があり、その人の評価があるような情報である。噂話がその典型である。
会話の知的機能の2つ目は、自分の考えを話したり、聞いてもらうことで、そのおもしろさや新規性をチェックしてもらったり、それによってさらに新しい着想を得る、いわば、知的触発機能である。
問題意識があれば、人からのほんの一言、あるいはうなずきでも知的に触発される。それを会話の中でやろうというわけである。
3つは、会話によって、知識を相手に移転する機能である。
知識を共有できる人が自分の回りにどれだけいるかは、自分の思考を高度化するためにも必須である。与えるものが大きければ、得られるものも大きい。
●会話の知的機能を活発にする
インタネットのチャットを編集して本にしてしまった人がいる。ここまでやれば、会話の知的機能きわまれリであるが、もっと日常的な場面では、どのようなことに留意すれば良いのであろうか。
会話は相手あってのものということで、まずは、相手の知的世界に思いをはせられる、知的共感性が大事になる。クイズであなたのそれをチェックしてみてほしい。
さらに、話すことよりも、相手の話に耳を傾けられる(傾聴する)くらいのほうが、会話がはずむし、知的にも触発されることが多い。
その上で、自分の考えやアイディアを気軽に聞いてくれる人を相手を数人用意しておく。いつも同じ人では会話もはずまない。あまり多すぎても深い会話にならない。
****本文60行
図解「会話の好きな人、嫌いな人」****
図は、科学技術政策研究所(当時)が大学進学志望者3879人に、
「人付き合いが好きか」
「文章の読み書きが好きか」の自己評価させた結果である。
図 別添
「解説」
「人付き合い」には会話は必須。理学志望、工学志望のいずれも、両方の項目に嫌いと答えている。いずれも好きと答えているのは、教育志望者であったのも、うなずける。
理系と文系(第14回参照)の違いの一端として、付き合い好き、すなわち会話好きかどうかが、このデータからもうかがえる。根底には、ファジーなものへの好みがあるようにも思える。つまり、会話や文章表現のような、どう展開するかわからないものが理系人間はあまり好きではないのかもしれない。
なお、女性の会話能力は男性のそれとくれべるとはるかに高い。
クイズ「会話には知的共感性が大事」***
次の項目について、自分に最もよく当てはまるとき「4」を、当てはまららないとき「1」の4段階のいずれかで答えてみてほしい。
( )他の人たちの立場に立って、物事を考えることができる
( )何かを決定するときには、自分と反対の意見をもつ人たちの立場に立って考えて みる
( )友達をよく理解するために、彼らの立場になって考えようとする
( )自分の判断が正しいと思うときでも、他の人たちの意見を聞く
( )どんな問題にも対立する二つの見方(意見)があると思うので、その両方を考慮 するように努める
( )ある人に気分を悪くされても、その人の立場になってみようとする
( )人を批判する前に、もし自分がその人であったならば、どう思うであろうかと考 えるようにしている
「解説」
桜井茂男氏が作成した、知的共感性を測る尺度である。大学生の平均は20点であるが、あなたの得点はどれくらいであろうか。知的共感性は会話を円滑にする基盤であるし、また、会話することによって養われる。
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