覚えるときに、思い出すための手がかりも覚える
思い出すときに、覚えたときと同じ状況を設定するのは実際にはなかなか困難です。
試験勉強を試験のときと同じ状況で、というわけにはいきません。せいぜいが、
・試験時間と同じスケジュールで勉強してみる
・模擬試験を受験してみる
・試験のときに使う文房具を使ってみる
ことくらいしかできません。
そこで、せめて、覚える時に、思い出すことも想定して、いろいろの手がかりを結びつけておくことが考えられます。
前節でも述べましたが、たとえば、漢字を覚えるときに、
・覚える漢字をマークする(知覚的手がかり)
・読みながら書いてみる(音韻的手がかり)
・熟語や文の中で意味を考えながら(関係づけ)ながら覚える (意味的手がかり)
・形音義の似た他の漢字も思い出してみる(連想)
これらは、暗記するためにも有効な意味づけ方策ですが、実は、同時に、思い出すための手がかりにもなっています。
さらに、同じ字を何度も手を動かして書いてみる書き取り練習も、あまり好まれないようですが、漢字学習では、非常に有効です。これは、身体的手がかりになります。
この大切さを実感してもらうために、空書(それがき/くうしょ)という現象を体験してもらいます(佐々木正人氏らによる研究より)。
学習力トレーニング「自然に手が動く」*********
次の形を組み合わせてできる漢字は何ですか。ただし、紙に書いて考えることは、できません。*1
例 カタカナの「い」とカタカナの「に」で出来ている漢字は、 「仁」です。
1)カタカナの「い」とカタカナの「ろ」と漢数字の「10」で出来ている漢字は?
2)カタカナの「い」と、カタカナの「ろ」2つと、漢数字の「10」で出来ている漢字は?
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ここでチェックしてほしいのは、正解がわかったかどうかではなく、答えを考えているときに、無意識のうちに指が動いたかどうかです。形が複雑な漢字になるほど、指であれこれ書いて漢字を探しませんでしたか。漢字を覚えるときに、「手で」書いて覚えた情報を思い出すための手がかりにしようとしたからです。