発想王(15)
予測 現在を越えて考える
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ポイント 1)今現在には過去も未来もあることを知る。
2)今現在の仕事を過去と未来から眺める
3)予測のギャップの中に創発の芽を見つけ る ******************************
●時間と空間を超える 我々は豊かな文明と豊潤な思惟世界のおかげで、「今この場」からの制約を逃れて、時間と空間を自在に「動き回る」ことができるようになった。五年先、10年先の自分を考えられるし、アフリカの奥地にも宇宙にも行った気になれる。 これを支えるのが、予測という知的活動である。
●過去、現在、未来から予測する さて、その予測には大きく3タイプがある。 最もよく行なわれる予測の仕方は、過去を外挿することである。過去ベースの予測である。失敗することは少ないが、前例主義に陥ってしまい、新しい状況の変化に対応できないことがある。 もう一つは、現在の中に将来を見つけるタイプの予測がある。現在ベースの予測である。商品開発やイベント企画などでは必須とされる予測である。もっぱら個人の感性に依存するので、失敗のリスクが高いが、当たると大きい。 さらに、未来ベースの予測もある。サイエンス・フィクションのような世界を究極の目標において、それに到達するまでの未来を予測するものである。大きな目標があるだけに、予測に系統性を持たせることができるが、画餅に帰すことが多い。
●青年の時間展望の特徴に学ぶ 一つの仕事をするときに、この3つのベースに基づいた予測の一貫性の有無を問うてみると仕事の質があがる。 やや唐突な話になるが、人の青年期には、これら3つの予測の間に激しいギャップが生ずる。不可能な未来を思い描き、それを実現する力量のなさを嘆き、そんな自分を育てた親へ反抗する。これを時間展望の混乱と言う。 多くの青年はその予測ギャップを克服して、安定した成人期へと移行していくが、そのギャップを克服できないまま心を病んでしまう人も多い。
●予測を仕事に活かす この青年期のメンタリティ(心性)と振舞いには、仕事の上での予測の活かし方のヒントがある。 一つは、現在の中には、過去も未来もあることを認識することである。青年はそのことに気がついたからそこ悩む。その悩みが飛躍へのばねになっている。 2つは、過去と現在と未来の一貫性をとることである。 青年はギャップのあまりの大きさに気づき呆然自失してしまい、そのつらさゆえに、刹那的になって身を滅ぼしてしまうこともある。 仕事でも、過去から未来への時間の流れの中で位置づけることができれば、自分も周囲も納得させる大義名分もみつかり、創発の芽をみつけることもできる。
****本文60行 ********************** 絵 ****** 図解「現在には過去も未来もある」 図 別添 「解説」 現在を、未来を展望しながら点検し行動するなら、革新的な生き方になる。過去に思いをはせ、その延長として現在をみるなら、保守的な生き方になる。いずれかに固着した予測しかできないと、生き方としては危ない。
***************************** 図解「青年期は過去と未来がどっと押し寄せくる」 図 別添 「解説」 この図は、エリクソンが描いた、人の心の一生(ライフサイクル)である。青年期には、自分は一体何者(自我同一性)かを確認しようとして、過去を振り返り、さらに、未来を展望する。その苦しい確認作業の中から成人への道を切り開いていく。
************ クイズ「あなたの時間的展望の混乱を測る」 次の項目に「はい」「どちらでもない」「いいえ」のいずれかで答えてください。 1)その日のうちにすべきことを翌日まで延 ばすことがある 2)なんでも物事をはじめるのがおっくう 3)ひとかどの人間になろうとする希望を失 いそうになる 4)待たされるといらいらする 「解説」 これは砂田良一氏が作成した自我同一性混乱尺度の一部を借用したものである。「はい」の答えの多いほど、過去、現在、未来の時間の流れがスムーズに認識されていないことになる。青年期はこの得点が高くなる。