●心理学の始まり
心理学とは、生物体(人間や動物)の心や行動を研究する学問です。心理学が哲学の領域から独立し、1つの研究分野として成立したのが19 世紀後半ですから、その歴史はそれほど長くありません。
簡単に心理学の歴史を見てみましょう。20 世紀前半の心理学を支配した考え方は“行動主義”と呼ばれるもので、提唱したのはジョン・ワトソンというアメリカの心理学者です。「行動は目に見える、観察することができる、そして測ることもできる。心理学を科学にしたいなら、目に見えない心よりも、外に現れる行動をこそ研究すべきである」とワトソンは主張しました。心理学を自然科学と同じようなサイエンスにしようとしたのです。これが行動主義の狙いでした。
●認知主義から現代の心理学へ
ところが、1950 年頃を境に、行動主義に対して「やはり、心や意識を研究するのが心理学なのではないか」という考え方が出てきました。この背景には、コンピューターの出現があります。コンピューターは人工知能を実現できる機械です。人間の知能を持つ機械をつくろうと、コンピューターの設計や人工知能の研究が始まりました。
この考え方が心理学にも取り入れられ、コンピューターの仕組みから人間の心を考えていこうという研究が行われました。こうした考え方を“認知主義”といいます。認知とは知覚・記憶・推論・問題解決等の知的活動のことで、コンピューターをモデルに人間の頭の働きを考えようとしたのです。行動主義では行動しか扱わなかったものが、コンピューターをモデルにすると目に見えない心についてもわかることがたくさんあります。「心を知ろう」とするわけですから、ようやく心理学の原点に戻ってきたと言えるでしょう。
●心も行動も
時代は進み、現代の心理学は「行動も心も研究しましょう」というスタンスです。良い意味で“何でもあり”で、タブーがなくなり、心と行動が包括的に研究されるようになりました。果たして、こうした心理学の流れに対しても、「○○主義」の名前が付くのでしょうか。