●人はなぜ連想するのか?
まずは「なぜ連想するのか?」について考えてみます。この箇所は、長くてやや理屈っぽい解説になります。心理学に興味のない人は、ざっと読み流して次ページに進んでください。
あなたの頭の中には膨大な知識が貯蔵されています。連想が発生するのは、図1のように、これらの膨大な知識が複雑で多彩なネットワークを形成しているからです。
ある知識に注意が向けられていても、それとリンクする別の知識が自然に活性化して、そちらに注意を向けさせてしまうのです。
例えば、「不況」について考えたとします。すると、それと意味的に近い「失業」も活性化します。リンクの強度はやや弱いものの「モノ作り」も活性化します。それらにつられて「家族」も活性化します。
ありとあらゆる語彙(「知識要素」と言います)が、個々人が持っている知識の量に応じてどんどん活性化し、そちらに注意を向けさせようとします。これが連想となって頭の中をかけ巡ることになるのです。
通常は、こうして連想された知識要素を素材にして、統制のされた論理に従った思考をすることになります。
統制された論理的思考 は、「注意量の制約」と「自己コントロール」のもとでなされます。
ここで「注意量の制約」という表現には、解説が必要ですね。注意は頭の働きをコントロールしています。注意をたくさん注げば、頭の働きは活発になります。注意と頭の働きとの間には、ガソリンと自動車のような関係があるのです。
その注意量には限界があり、その範囲内で注意は配分されます。いくらたくさんの知識が活性化しても、そのすべてに注意を払うわけにはいきません。一度に注意を払おうとしても、活性度の高いほうから順にせいぜい数個程度(図の黄色部分) しか注意を及ぼすことしかできません。これが、思考の範囲を限定することになります。
さらに通常は、思考をする際に「自己コントロール」が働きます。何に注意の焦点を当てるかを自分で決めることができるため、とりあえず必要な知識だけに注意を払い、それらの要素だけ活性度を高めることも可能です。
そして、それらの知識要素を論理でつないでいきます。 こうして、連想された知識要素を素材に統制のとれた思考を展開させている のです。
このように考えると、連想なし、あるいは貧困な連想は、貧困な思考しか生み出さないことがわかりますね。