「であのぉ、いかほど支払えば」
「えーとですね、浩さんの方は『同居老親』の控除がなくなったということで、あ、源泉徴収票はお持ちですね?んー46,400円になりますね。お父さんの方は…………79,600円ですか。」合計126,000円。
「はあ。」まあ、そんなものか。
「それでですね、申し訳ないんですけれど、今回のケースは確定申告が期限内に行われなかった、ということになるんです。その場合、『加算税』が15%かかるんですよ。」
「は、はあ。」
「それから、A夫さんの方は期限から納付までの間の利息も支払っていただきます。」
「は?わたしの方はいいわけですか?」
「ええ。浩さんの方は額が少ないんで。」税務レディは電卓のキーを親の仇のように叩いて答える。よくわからん。
「一括でお支払いになります?」最後に、彼女が艶っぽく微笑んで交渉は終了。
「あのぉ、これは世間話でききたいんですけど、葬式の費用とかそういうのってなんかの控除になるんですか?」
「なりますよ。相続税の控除の対象です」
「へー」
「でもですね、相続税って基礎控除が5,000万円で、相続者一人あたり1,000万円加算されるんです。ということはですよ、お母さんの場合は少なくとも7,000万円以上の財産を相続するんじゃなければ……」
「意味がないと。」
「めったにいらっしゃいませんねぇその控除を使う人は。」
そうだったのか。ベンツに乗ってる親戚のアドバイスを真にうけたのが間違いだったー!
さて、そこまでばらすかと追徴の過程をお送りしてきたが、そのあと、誰の金で納付したかまではさすがに説明できないのであった。家族とはもっと穏やかな関係を築いておくべきだったと知る四十代の晩夏(T_T)。ちゅーかさ、あふれる退職者たちって個人年金とかを受け取ってるはずだけれど、あんたたちちゃんと確定申告してるんだろうな!ってお話でした。
【追徴・おしまい】
画像は「トニー滝谷」(’04 ウィルコ)
村上春樹の原作を市川準が監督。イッセー尾形と宮沢りえ(二役)が主演し、「アンフェア」でクールなところを見せた西島秀俊がナレーション。そして音楽は坂本龍一。豪華な75分。もっとも、画面は前衛劇のようにおそろしく簡素なのだが。
自分の欠落を埋めるために洋服を買い続けなければならない女と、その女とまったく同じサイズであるだけで代役を務めることになる女。絶世の美女でなければ演じられないファンタジー。こりゃ、宮沢りえでなければスクリーンがもたないわけだ。傑作。☆☆☆☆