Vol.30「ビデオテープの証言」はこちら。
今回は邦題が圧倒的にうまい。それはなぜかというと……
犯人は、催眠療法を使う精神科医。演ずるはジョージ・ハミルトン。彼の当たり役はふざけた吸血鬼ストーリー「ドラキュラ都へ行く」。原題はLove At First Bite。ひとめぼれ“Love at first sight”をひねってある。この映画でもそうだったけれど、とにかく女癖の悪そうな役ばっかりやっていたのである。
私生活でもみごとな女性遍歴を誇るプレイボーイっぽさがこの「5時30分の目撃者」でも炸裂しています。仕立てのいいタイトなスーツを着て患者を誘導する色悪ぶりは、コロンボと好対照。
その精神科医は、資産家の妻と不倫中。しかし彼女のビーチハウスでは夫が待ちかまえていて……妻の浮気を容認し、ギリギリのところにあらわれて浮気相手を罵倒する資産家。病んでるなあロサンゼルス。
精神科医は夫を殴殺してしまい、強盗が行った犯行に見せかける。商売柄、犯罪心理にくわしく、急ごしらえの話にしてはよくできている。
犯行時刻の5時30分ごろに精神科医はビーチハウスをあとにするが、そのときに通行人に出くわしてしまう。だが、盲人であることに気づいた精神科医はそのまま職場に帰る。ここがキーポイント。
以降、犯人のアリバイ工作や電話を使った遠隔殺人などありつつ、コロンボは執拗に犯人に迫る。捜査現場での会話が笑える。
コロンボ「タイヤの幅がせまい……ヨーロッパのクルマだな」
捜査員「へー」
コロンボ「このなかじゃ、外車はあたしのだけだ」
捜査員「え?外車なんですか?!」
コロンボ「フランスのクルマだよー」
まあ、事実です。
犯罪心理だけでなく、探偵の心理まで知悉している精神科医との丁々発止。だからこそ最後のひっかけは(およそ裁判で使える立証方法ではないが)おみごと。5時30分の目撃者とは、実は……
Vol.32「忘れられたスター」(傑作!)につづく。