金融業者コーエンの散らかった部屋で、作家ノーマンは途方に暮れていた。机には白髪の老人の生首。自分の鞄には男のものらしき手首。手には、この死体がコーエンのもので、自分がその殺害にかかわったことを示唆するマザーグースの歌詞……。何が起こったのか? スコットランドヤードの腕利きパンク探偵、キッド・ピストルズが風変わりな密室見立て殺人の真相に挑む! 傑作本格ミステリ中編を3本収録した、シリーズ待望の最新刊。
パンクス刑事たちが挑むオールド・ファッションドな本格推理。しかも必ずマザー・グースがからむという力業は山口センセイの意地の所産としか。もう6冊目という長いシリーズになったけれど、マザー・グースはまだまだいっぱいあるんだし、センセイもっとがんばって量産してくださいよ。オールド・ファッションドなファンは待ってます。
「このミステリーがすごい!2011年版」が出たので例によってランキングをチェックしてため息。読んでねー。去年よりもずっと読んでねー。かつて山口センセイが始めた(んですよ)ときはしゃれになっていたこのミスのマニアックぶりが、やはり現在はミステリの入口を狭めている事実は否定できないんじゃないかな。
今回のトップテンでわたしが読んでいるのは国内編で「マリアビートル」だけで、島田荘司の写楽モノはきつい筆致に負けてギブアップ。宮部みゆきの「小暮写真館」はお正月用(笑)。海外編ではディーヴァーの新作のみのていたらく。
わたしの言うオールド・ファッションドが草の根と蔑称されてもかまわないや。ベッドサイドで読み終えたときに、ちょっと幸せな気分になれるミステリはもう相手にされないのかな。今回のランキングで、絶対に読まなきゃと思わされたのは、卵をさがすヤツとウィンズロウの新作ぐらいってのは……