PART12はこちら。
菅井は佐藤をこう評する。
「こいつには極道の仁義も忠義心も尊敬もなんもありゃせんが」
佐藤の要求が、原版と引き換えにハワイの利権だという設定はハリウッド的。やくざたちと刑事ふたりのドンパチ開始。優作が内田裕也たちに指示する内容がいかにも映画的でいい。
「声を出しながら奴に近づけ!」
「行くぞぉ!」
舌なめずりする裕也。工場には日本語の業務連絡(「大川さん、大川さん」)が流れ、「エイリアン」におけるノストロモ号の自爆予告と同様の効果をあげている。
結局は佐藤の逮捕に失敗し、松本は謹慎をくらい、ニックはアメリカにチャーリーの棺とともに送り返されることになる。ここからはさすがハリウッド風ご都合主義がのぞく。ニックはノースウエスト機のキッチンから外に飛び出し、あろうことか松本の家までたどりつくのだ。日本の空港はそんなにゆるくないし、なんで松本の住所知ってんだ(笑)。
松本の家では、味もそっけもない青年が出迎える。松本の息子という設定なんだけど、どうしてこの役に日本の有望な俳優を起用しなかったのだろう。マイケル・ダグラス、松田優作と共演し、しかも高倉健の息子というおいしい役なのに。エージェントがらみかな。この息子も警察官という設定なので、松本家が根っからの警察一家で、息子が今回の処遇に失望していることは伝わるのだが。
松本は語る。
「わたしは君みたいにはなれない……なりたいとは思ったが」
もちろん、ラストではニックのように松本はとんでもないことをしでかすのだが。以下次号。