2020年6月期末勤勉手当号 「もっけ玉」はこちら。
館内(三川イオンシネマ)が明るくなり、監督の舞台挨拶が終わり、客が帰り始める。そこには、さっきまでスクリーンに映っていた人たちがいる。飛島中学校の(今のところ)最後の校長と教頭でした。三川で職員会議やってんのか。
特に教頭(うちの元職員です)は出ずっぱりに近かったので
「主役だったじゃーん」
と声をかける。
「いやあ(笑)」
映画のタイトルは「島にて」。酒田市飛島の一年間のお話。中学校の一学期始業式から始まり、卒業式(そしてそれは同時に休校も意味した)に終わる。ほんとの主役は、ただひとりの生徒でしたが。
うちの学校には2名の飛島勤務経験者がいますが、実はもうひとり関係者が存在します。事務職員です(笑)。
この男の履歴書は平成21年4月1日から異様に行数が多くなっています。
「山形県酒田市立××中学校事務主査を命ずる」だけならともかく
「兼ねて山形県酒田市立飛島小学校事務主査を命ずる ただし任用期限は……」
と続き、平成24年からは
「兼ねて山形県酒田市立飛島中学校事務主査を命ずる ただし……」
も加わったのです。つまり兼務発令。当時の学校事務職員の兼務は、週のうち1日~3日、事務職員が未配置の学校におもむいて事務を行うというものでしたが、飛島の場合はそうもいきません(船が欠航したら帰ってこれなくなるし)。だから電話、FAX、メールなどでコミュニケート。いま思えばリモート勤務。違うか。
しかし当時の校長(この人も元同僚)からは
「お前さあ、人として(飛島に)一回も来ないってことはないだろ」
ということで何度も飛島に渡ることになりました。定期船で島影をさがし、頭のなかでは
♪波のぉ谷間にぃ命の花ぁがー♪
と鳥羽一郎が鳴り響いていましたが、船にはやけに弱かったので波高50センチ以下のときだけ海の男と呼んでくれ状態。仕事的にはきつかったけれども、楽しい7年間だったなあ。
「島にて」は島民へのインタビュー集のような映画で(飛島の血が流れている前校長は、親戚がやけに出てくるので冷静に見ることができなかったそうだ)、監督が言うように実はなにも起こらない。
しかし、おじいちゃんおばあちゃんのディープな庄内弁(意図的に字幕を入れなかったとか)を聞いているうちに、彼らの来し方や現在の生活が静かに感じられ、実はボロ泣き。すばらしい映画です。イオンシネマではまだ上映しています。飛島に行った人も行ったことのない人も、ぜひぜひ。
あ、劇場に入る前にハイテクな体温計で検温されるので、体調の悪いときは遠慮してよ。
2020年8月号「人事院勧告2020」につづく。