第23回「雪の舞うころ」はこちら。
紫式部をめぐる三人の男PART2。
東京都知事選は前代未聞の大騒ぎになっているようだけれど、立候補表明を先にやったほうがいいのか後出しジャンケンが有利なのかという話はちょっと面白い。
三人の男たちがどの順番でまひろ(吉高由里子)を口説くか、ではなくて大石静さんが男たちにどんな順番をつけるかが妙味。彼女はどうしたか。
いきなり宣孝(佐々木蔵之介)に
「ありのままのおまえを丸ごと引き受ける」
「あの宋人と海を渡ってみたとて、忘れえぬ人からは逃げられまい」
以降の周明(松下洸平)と道長(柄本佑)との関係をまず一蹴してみせる。やっぱり佐々木蔵之介はうまいし、配列として彼を最初にもってきた大石脚本もみごとだ。
で、毎週大河を観ているものだから、いろんな形で紫式部をめぐる話が目についてくる。
橋本治の追悼本に、中央公論社の社長だった嶋中行雄さんが寄稿していて、橋本治が「窯変 源氏物語」を執筆するために、中公は軽井沢にある執筆寮を提供したのだという。さすが老舗出版社は寮まで用意しているのかと驚いたが、そこで橋本治と村上春樹はよくいっしょになって、
「橋本さんは天才だなあ!」
と意気投合していたとか。まあ、軽井沢で橋本は散歩し、村上春樹は走りまくっていたというのはさもありなん。
そしてその寮の名物管理人に橋本は質問したそうだ。
「仕事部屋の窓から見える樹は、なんという名前ですか」
「あら先生、ご冗談ですか。あれは『紫式部』ですよ」
次回は映画「追憶」がらみを。