かつてニッポン放送では午前0時から「あおい君と佐藤クン」という番組がオンエアされていた。パーソナリティはあおい輝彦と佐藤公彦(ケメです。うわあ、もう亡くなっていたのか)。ちょうどあおい輝彦がこの「陰獣」に出演したころのこと。作品を観たケメが
「なんか、香山美子さんがすごいことになってて」
「そうだねえ。胸のところに、なんかふたつあったねえ」
あの香山美子がフルヌードになったというのか!
それだけのために、名画座で見たような記憶があります。
時代的に言って、東宝が(というより、角川春樹が)横溝正史の「犬神家の一族」を映画化して大ヒット。松竹も指をくわえてみているわけにはいかない。こちらは江戸川乱歩でいきましょうと「陰獣」で対抗。
佐清(すけきよ)役のあおい輝彦を主役にもってきて、「悪魔の手毬唄」の磯川警部役の若山富三郎もキャスティングしているのだから、二匹目のどじょうをねらったと思われても仕方がない。向こうが市川崑なら、こちらはローアングルの撮影で有名な加藤泰をもってきて豪華なことだ。
そして、香山美子。
この人がヌードになったことがあると知っている人がどれだけいるだろう。当時はそれほどの衝撃。なにしろ銭形平次の奥さんのお静を長くやった人だし、リカちゃん人形のリカちゃんが香山という名字なのも彼女からいただいているらしい。それほど、清純で貞淑な役が似合う人だったの。
でも、女優として期するところもあったのだろう。ヌードのシーンをスタンドインを使ってすでに撮影済みであることを知った彼女は、「だったら脱ぎます」と惜しげもなく裸体をさらしてくれている。でまたこれが綺麗な身体なんですよ。
そんなこともあって、興行自体はふるわなかったけれども、香山の熱演と、ミステリとして上等でもあったこともあり、カルト映画としてこの作品は歴史に残っているのです。ああありがたいありがたい。
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