「心臓はドラム、肺はベース」
タイトルは、工作員の格闘における心得。きちんと息を整えろと。そう、この映画はわたしの大好きなスパイものです。
007のスタッフが製作、というコピーがDVDのパッケージに。ほう、どういうことだろうと裏側をチェックすると、なるほど「製作:バーバラ・ブロッコリ」とある。前にもお伝えしたように、007シリーズはブロッコリ家の家業で、バーバラの父親のアルバートの時代から製作してきたのだから、このうたい文句は間違いじゃない。
では、007(「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は結局いつ公開されるんですか)で手一杯かと思われたバーバラが、なぜこの作品をつくったのか。ジェームズ・ボンドとは真逆の主人公をもってきたあたりにヒントはありそう。
殺人許可証を持ち、クールに悪役を倒しまくるボンドと違い、この作品の主人公は家族をテロで失ったことにいつまでもめそめそしているメンヘラなインテリ(オックスフォード出身)姉ちゃんなのである。なにしろめそめそし過ぎて娼婦に身を落とし、ドラッグもやりまくり。だいじょうぶかこんなんで。
だからバーバラがやりたかったのは、野卑であると同時に洗練された完成品のスパイではなく、弱っちいヒロインが工作員として成長していく過程を描くことだったはずだ。指南役はジュード・ロウ。優男だけにサディスティックな感じがいい。
ただし、いくらなんでもイージーに強くなりすぎ。真の悪に気づくあたりもひねりが足りないし、魅力的なタイトルもいかされていない。
ひょっとしたらブロッコリ家の副業としてシリーズ化をもくろんだのかもしれないけれど、残念ながらその願いははかなえられそうにない。主演はブレイク・ライブリー。ライアン・レイノルズの奥さんです。
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