その140「香港警察東京分室」はこちら。
それはシリーズ最凶最悪の殺人者――。
冷酷な〝敵〟認定で次々に出される殺人指令を受け、戦慄の手段で殺人を続ける〝黒石〟。どこまでも不気味な謎の相手に、新宿署・鮫島刑事が必死の捜査で挑む!(Amazon)
……もう三十年も続いている新宿鮫。累計800万部のベストセラー。光文社にとっても大沢にとってもお宝のシリーズだ。
さてこの第12作は、新宿鮫第Ⅱ期の最終作という位置づけだろうか。
第Ⅰ期は、警察内部の秘密を託されたためにキャリアでありながら新宿署から異動もできず、警部のまま出世もできない鮫島が、孤高のなかで正義を貫いていく展開。しかし鮫島を認めている桃井という上司と、ロックシンガーの恋人(じゃまでしたけど)が彼を支えてもいた。第Ⅰ期は恋人と別れ、桃井が殉職するという形で幕を閉じる。
第Ⅱ期は、中国残留孤児三世たちが組織する「金石(ジンシ)」と呼ばれる犯罪ネットワークとの攻防。その緩やかな組織内に潜む暗殺者が黒石。花崗岩を含む凶器によって脳天を叩き潰すという残虐さ。はたしてどんな武器なのか。
残留孤児が日本でどのように遇されたか、その悲しみが背景にあるので、単なる勧善懲悪ものにはなっていない。シリーズ最高作だと思っている「毒猿」への言及もちゃんとあります。
前作「暗約領域」でもそうだったが、女性上司とのやりとりなど、鮫島の態度はとてもオトナだ。おそらく大沢在昌は、警察官とは、あるいは公務員とはこうあるべきではないかという理想を鮫島に仮託しているのだと思う。新作、お待ちしております。
その142「臨場 劇場版」につづく。
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