事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

原発PART4~順序

2011-05-10 | ニュース

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YouTube: Bruce Springsteen - The River

PART3はこちら

石油資源のない日本が、二酸化炭素削減もあって(どう考えても後付けの理屈)原子力に頼ろうとした気持ちはわからないではない。でも、わたしが子どものころからあふれるほどの宣伝費をかけて(学校にどれだけ原発推進パンフレットが配られたことか)原子力礼賛を“しなければならない”ほど、実は理屈のたたない話でもあった。

まず、事実上唯一、原爆を投下された国に原発を根づかせようとしたあたりが無理筋。だから地元の自治体や国民に徹底的に原発安全神話をたたきこむ必要があったし、なにより大きな不幸は、電力会社自身もその神話を信じこんでしまったことだ。

そして、わたしがこだわるのは“順序”。

消費税が導入されたとき、そりゃあ卑怯だろうと思った理屈がある。消費税によってこれだけの税収があります、反対派の方々はどうやってこの税収を確保するつもりなんですか?と(旧)大蔵省の職員が「朝まで生テレビ」で主張していた。

わたしは消費税増税は仕方ないと考える人間だけれど、この主張はやっぱり順序が違う。消費税導入を見越して他の税を軽減したのに、それをどう補償するのか、は理屈としておかしい。同じことが原発がらみにも言えて、太陽光などの自然エネルギーはまだまだ不安定で、電力を下支えする能力はないとしても、自然エネルギーの開発に向かうべき予算を食いつぶして原発を推進してきたくせに、原発がなければ日本が立ちゆかないとの主張は順序が違うだろう。

原発をすぐに全部廃炉にしろと言うつもりはない。それだと、利権集団だけでなく地元民にも影響は大きいだろうし。しかし少なくとも自然エネルギーによる発電比率の数値目標をかかげ(もうやってたっけ)、商売として成り立つ方策をすすめるべきだし、その方が日本の経営者たちの大好きな「将来性」ってやつに富んでいるではないか。

最後にマスコミにひとこと。電力会社の広告費は確かに圧倒的。でも、めげずに冷静な報道をつづけてほしい。正力松太郎によって原発が日本に根づいたのだから(佐野眞一「巨怪伝」参照)、読売が及び腰なのはしかたない。でも朝日は?うーん、あそこもむかし、社説で原発を容認してたしなあ……

このシリーズ最後の一曲はブルース・スプリングスティーン「The River」若かった妻の、濡れた身体の想い出が男を苦しめる……こんな歌が爆発的に売れた80年代。

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日本の警察~その40「若様組まいる」 畠中恵著 講談社

2011-05-09 | 日本の警察

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若様組まいる (100周年書き下ろし)
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-11-05
その39「函館水上警察」はこちら

明治二十三年、ミナこと皆川真次郎は西洋菓子屋を開いた。店には、旧幕臣の「若様組」の面々や、女学校に通うお嬢様・沙羅が甘い菓子と安らぎを求めてやってきた。

その少し前―。徳川の世であれば、「若殿様」と呼ばれていたはずの旧幕臣の子息・長瀬達は、暮らしのために巡査になることを決意。今は芝愛宕の巡査教習所で訓練を受けていた。

ピストル強盗の噂が絶えない物騒な昨今、教習所でも銃に絡む事件が起きた。若様組の他、薩摩出身者、直参で徳川について静岡に行った士族達、商家の子息達、さまざまな生徒に、何やら胡散臭い所長や教員を巻き込んで、犯人捜しが始まる。

「アイスクリン強し」の前日譚。明治の世も二十年。江戸から東京へと移り変わった空気が定着。西南の役も過去になり、日清日露の戦いにはまだ時間がある……しかしそんな時代においても、幕臣だった家の跡取り息子たちは、家人の生活をかかえ、官吏としての出世も望めず、大学で教育をうけるには金が足りず、と負け組の苦労が絶えない。

解決策が巡査になること、はちょっと無理ある展開。日本の警察はその出自から薩長の、特に(川路利良が警察をつくったんだから)薩摩閥が圧倒的に強い上に、なにしろ給金が安い。若様たちが巡査を志向するのはしんどいというもの。

でもそこさえ納得してしまえば、警察学校の歴史をお勉強するにぴったりのミステリ。維新前の与力や岡っ引きとの業務内容の違い、捕縛や治罪法などの学習内容も興味深い。

「アイスクリン~」が、西洋菓子を前面に出して、文字通りシュガーコーティングされたライトミステリだったのにくらべ、こちらは若様たちの苦行がメインなので少しハード。維新後、すぐに薩長に下った人間と、財産を捨てて駿河に転居した意地っ張りたちの反目など、お勉強になります。

警察学校の校長というのが警察のなかで微妙な立場にいるあたり、最初からそうだったのかとも(笑)

犯人の動機にしても、朝敵の名をいまだに押しつけられる士族の悲哀。なるほど。

捕縛する方法が江戸時代ゆずりのものだったりする工夫と、卒業の朝のツンとくる甘酸っぱさがなかなかなのでお勧めの一品。ドラマ化するなら美少年たちをおおぜい集めなければ。中年にはちょっと甘いので読み終えたらちゃんと歯をみがいてよ。

その41「そして、警官は奔る」につづく

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原発PART3~反対派

2011-05-08 | ニュース

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YouTube: Jackson Browne - The Load Out / Stay - Live 1978

PART2はこちら

つづいて朝日新聞掲載の反対派の意見。発するは河野太郎。河野一郎の孫で河野洋平の息子で、えーと他にも政治家の親戚ありまくり。父親に肝臓(だっけ)を提供した親孝行な人でもある。しかしジュニアらしい危うさも……

「安全神話」もとから「おとぎ話」

核廃棄物 捨て場所ない

―自民党で数少ない「脱原発」論者です。

「最大の疑問点は使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物、いわゆる『核のゴミ』を捨てる場所が日本にはないのに、原発を増やそうとしたことだ」

―3・11で原発の安全神話が崩れました。

「もともと、おとぎ話の世界だ。土木学会原子力土木委員会津波評価部会のメンバーの多くは、電力会社で占められていた。お手盛りで津波対策をつくりながら、今さら『想定外でした』というのは通らない」

―「神話」はどう作られたのでしょうか。

「中心は自民党と経済産業省、電力会社だ。自民党は電力会社から金をもらい、立地自治体に補助金を出しやすい制度を整えてきた。経産省は電力会社に出させて公益法人を作り天下っている。東芝や日立などメーカーに加え、建設業界など産業界も原発建設を後押しした。電力会社は大学に研究費を出し、都合の良いことしかいわない御用学者を作り出す。多額の広告代をもらうマスコミは批判が緩み、巨悪と添い寝してきた。政・官・産・学・メディアの五角形が『安全神話』をつくった」

利権で行政をゆがめた

―自民党内で東電と原発を守る動きがあります。

「甘利明氏の会議がそうだ。推進派がズラリと並び、引退した加納時男氏まで座る。次の選挙でそういう議員を落とすしかない。国民の目が必要だ。3月11日で隠してきたうみが全部出た。自民党がやるべきことは謝罪だ。利権で原子力行政をゆがめたのだから。政府には原子力政策を促進した中曽根康弘元首相に近い与謝野馨氏がいる。与謝野氏の発言は、明らかに東電を守ろうとしている」

―世論調査では半数が「原発現状維持」です。

「正しい情報が伝わっていないからだ。時間をかけて原子力を止めていけば国民の暮らしへの影響は少ない。原子力は環境にやさしくない。海外では再生可能エネルギーが伸びているが、日本では加納氏らが『原子力の邪魔』とつぶしてきた。経産省が出そうとしない情報をきちっと出せば、世論は変わる」

―東電の賠償問題をどう考えますか。

「賠償金はいずれ電力料金に上乗せされる。国民が負担するのなら東電の存続を前提にしてはダメだ。逆立ちしても鼻血が出ないぐらいまで賠償金を払わせるべきだ」

……現実を知らないロマンチストが反原発を訴えている、としてきたこれまでの推進派の主張こそおとぎ話だ、というコメントは鋭い。再生可能エネルギーについて、原発推進派が邪魔してきたじゃないかという意見が自民党のなかから出てきた意味は大きい。

しかしあまりに純粋すぎて、自民党のなかで賛同を得られるのか、はなはだ心許ない。オヤジに選挙区まで提供してもらったくせによ、と他の議員たちはうらやみ、同時に彼のことを軽んじてもいるだろうし。お坊ちゃんがよく言うよ、と。それに河野の主張こそ、党内の派閥抗争の発露であり、コップのなかの嵐ではないかという印象もぬぐえない。しかし……以下次号

本日の一曲は、NO NUKESといえばこの人でしょ。ジャクソン・ブラウン「STAY」。化け物のスライドギターと「幻魔大戦」のお姉ちゃんのバックコーラスが泣かせますよぉ!

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原発PART2~推進派

2011-05-07 | ニュース

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YouTube: The Human League - Human

PART1はこちら

その5月5日の記事は、記者の聞き書きの形をとっている。原発推進派と反対派の双方の、口調まで容易に想像できるタッチ。有能な記者の筆によるものだろうが、ちょっとずるいという気も。あおられてネットでも大騒ぎになっている。

まずは推進派の意見。コメントは東電顧問にして元参院議員の加納時男氏。元東京電力副社長。98年の比例区で財界候補として当選。去年まで二期務めている。題して

「原子力の選択肢を放棄するな」

地元が要望、雇用に貢献

―福島の現状をどう感じていますか。

「東電出身、元国会議員として二重の責任を感じている。インターネット上で『お前は絞首刑だ』『A級戦犯だ』と書かれてつらいが、原子力を選択したことは間違っていなかった。地元の強い要望で原発ができ、地域の雇用や所得が上がったのも事実だ。」

―原発推進のため国会議員になったのですか。

「そうではない。当時財界と自民党との間に溝があり、経団連は財界の声を反映させたかった。特定の業界のために仕事をしてきたわけではない」

―電力会社役員から個人献金を受け、自民党が原子力政策に甘くなったことは。

「お金をもらったから規制を緩くしたとか、そんなことはない」

―河野太郎氏は「核燃料サイクル」政策は破たんしていると主張しています。

「反原発の集会に出ている人の意見だ。自民党の意見になったことはない。反原発の政党で活躍すればいい。社民党に推薦しますよ。福島瑞穂党首は私の大学の後輩だから」

―今後も原発を新設すべきでしょうか。

「太陽光や風力というお言葉はとってもロマンがある。しかし、新増設なしでエネルギーの安定的確保ができるのか。二酸化炭素排出抑制の対策ができるのか。天然ガスや石油を海外から購入する際も、原発があることで有利に交渉できる。原子力の選択肢を放棄すべきではない。福島第一原発第5,6号機も捨てずに生かす選択肢はある」

低線量放射線、身体にいい

―東電の責任をどう考えますか。

「東電をつぶせと言う意見があるが、株主の資産が減ってしまう。金融市場や株式市場に大混乱をもたらすような乱暴な議論があるのは残念だ。原子力損害賠償法には『損害が異常に巨大な天災地変によって生じたときはこの限りではない』という免責条項もある。今回の災害があたらないとすると、いったい何があたるのか。全部免責しろとは言わないが、具体的な負担を考えて欲しい」

「低線量の放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った。過剰反応になっているのではないか。むしろ低線量は体にいい、ということすら世の中では言えない。これだけでも申し上げたくて取材に応じた」

……本音、でしょうね。いくつか注釈を加えておくと、低線量が身体にいいとする理論は確かに存在するようだ。それが学術的に正しいかはともかく、政治家が(去年引退したとはいえ)放射線が身体にいいとこの時期に発言できる勇気はかなりのもの。まあ、勇気というかなんというか。「日教組の子供なんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い」と放言した中山元国土交通相以上かも。

加納氏がインタビューに応じたのは、自民党の原発推進派が「エネルギー政策合同会議」を発足させ、さっそく原発を守る動きを見せ始め、その会議の顧問に加納氏が参与として参加している背景がある。

ちなみに委員長はは元経済産業相の甘利明。委員長代理は旧通産省出身の細田博之元官房長官。わかりやすい構図。この会議の人選にかみついたのが、次号でお送りする河野太郎だ。

本日の一曲はブリティッシュ・インベイジョンといえばわたしにとってはこのグループ。ヒューマン・リーグの「ヒューマン」大好き。もうほんと好き。

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原発PART1

2011-05-06 | ニュース

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YouTube: I Want to know what love is - Foreigner

浜岡原発がらみもあって、ちょっと原発問題についてつとめて冷静に語ろうと思う。「わたし怒ってます」シリーズじゃないのでよろしく。

というのも、日本においてこの問題はきわめて政治的な課題になっており、保守派VS革新派の構図がほぼ原発推進VS原発廃絶にスライドする傾向があるから。もちろん、保守政党の中にも原発反対をとなえる人はいるし(あとで出てきます)、労働組合の方にも推進勢力どまんなかの人たちはいる。

おそらくは、原発反対の声がいわゆる市民運動の形であらわれるため、そのことへのアレルギーかシンパシーが顕在化している、とも言えそう。

原発のメリットとデメリットを考えてみよう(ウィキペディアなどより)。

○メリット

・地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量が少ない

・石油と違って、ウラン産出国の政情が安定している

・酸性雨、光化学スモッグの原因となる窒素酸化物、硫黄酸化物を排出しない

・発電量あたりの単価が安いため、経済性が高い

・原子力発電所ができると地元には一定の雇用が期待できるほか、電源立地地域対策交付金などの電源三法交付金、固定資産税、法人税などの税収も確保できる

・技術力があると海外にアピールできる

●デメリット

・放射線への対応が必要となる

・重大事故が発生すると周辺環境に多大な影響を与える

・毒性のある放射性廃棄物を発生する

・その高レベル放射性廃棄物を深層処理する土地が確保されていない

・原子炉を廃炉にする技術が確立されていない(廃炉にしてからもコストがかかる

・発電所、および廃棄物へのテロの脅威が潜在する

・周辺整備にコストがかかる

・軍事転用の危険性が内在する

・全電源喪失すると炉心溶融(メルトダウン)や水素爆発の危険性がある

……どちらも、もっともである。さて、この問題を考えるに最適のテキストが朝日新聞5月5日付朝刊に掲載されたので次号で紹介しよう

本日の一曲は産業ロックの本領発揮、フォリナーのI Wanna Know What Love Is。おれも知りてー。

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「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」Tropic Thunder (2008 パラマウント)

2011-05-05 | 洋画

Tropicthunderimg01 ベトナム戦争を描いた映画(どう見ても「地獄の黙示録」)の撮影隊が、ほんまもんの無法地帯に放り込まれる。しかし俳優たちはそれも撮影だと勘違いしていて……こんな仕掛けで主演がベン・スティラー。なんか、読めるよな。アメリカじゃ大ヒットするだろう、と思ったらどうも感じが違う。

メソッド(役柄のためならどんなことでもやる、と一般に誤解されている演技術。体重を増やしたり減らしたりするロバート・デ・ニーロが有名)俳優、とわざわざ紹介されるロバート・ダウニー・Jr.が、役柄のために黒人の皮膚を移植するというあぶない設定。しかもその黒人っぷりが例によってうまいんだ(笑)。

そんなダウニー・Jr.が、劇中劇「トロピック・サンダー」の前に出演しているのが(予告編がオープニングに挿入される!)「悪魔の小路」という中世もの。若き僧とゲイっぽいやり取りをするんだけど演ずるのがなんとトビー・マクガイア。アイアンマンスパイダーマンがそういうことしてちゃだめでしょ。

みずからの戦場体験を本にして、映画化作品にスーパーバイザーで参加している役でニック・ノルティ。ベトナム戦争と麻薬がらみとくれば彼の「ドッグ・ソルジャー」が思い出されます。

どうやったらアカデミー賞をとれるかのレクチャーもあぶない。

「いいか、知的障害者の役をやるのはいい。しかし完璧に演じてはダメだ。ダスティン・ホフマンは数学の天才だったし(レインマン)、トム・ハンクスの卓球(フォレスト・ガンプ)にはニクソンも驚いてたろ?でも「アイ・アム・サム」でショーン・ペンはオスカーをとれなかった」
いいのかこれ。

下ネタ芸人から脱却したいコメディアンにジャック・ブラック。麻薬組織につかまったベン・スティラーを救出するために彼が提案したのは「むかしエロ映画に出てたときにさ、こんな手を使ったんだ」とシリアスに。でもこれがマジで史上最低の作戦なのでみんなスルーするのがおかしい。普通、ここは採用するとこだ。

きわめつけはメソッド演技のやり過ぎで自分を見失ってしまったと告白するダウニー・Jr.に(ここ、見せ所なのに)「不安心理のレベルが低すぎる!」といきなり罵倒されちゃうところ。

つまりこの映画は、観客がこうなるであろうと予測した定石をつぎつぎにひっくり返すことのみに集中した作品なのだ。だからあの人の特別出演はその一環。面白かったー。

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「フィッシュストーリー」(2009 ショウゲート)

2011-05-04 | 邦画

Fishstoryimg01 【原作伊坂幸太郎】のなにがすばらしいかと言うと、この「フィッシュストーリー」のような映画は、これまで日本に存在しえなかったということなのだ。

1975年から2012年にいたるいくつかのエピソードの連関は、世界には正義が存在する、自分の信じることをやっていれば必ず報われるという、一種の壮大なほら話を成している。ほら話って、日本映画のいちばん苦手な部分。あ、ちなみにわたし、英文卒なのにfish storyがほら話を意味するって知りませんでした(T_T)。

2012 年、彗星の地球への衝突が5時間後に迫り世界が終わろうとする中、ターンテーブルから日本のパンクバンド“逆鱗”が1975年にセックス・ピストルズのデビューに先駆けて放った最後のレコード「FISH STORY」が流れる。1982年、その曲を聴いた気弱な大学生は、いつか世界を救うと予言され、2009年、正義の味方になりたかったコックと共にシージャックに巻き込まれた女子高生の未来は…。

……意味わかんないでしょ。でも、世界滅亡というでかい危機を、パンクバンドの音楽が結果的に救うというきわどい話(観客が応援してくれるかはリスキー)を成立させたのは、なにより伊坂幸太郎がベストセラー作家になっているという事実。そして映画は音楽そのものを描くことが出来るじゃないかという作り手の自信。斎藤和義プロデュースの「フィッシュストーリー」はほんとうにいい曲なのでうれしい。

もはや伊坂幸太郎原作+中村義洋監督のレギュラーとなった濱田岳が気弱な学生。

バンドのメンバーをちびノリダー伊藤淳史、高良健吾。

二代にわたってバンドにかかわる男に大森南朋

バンドにのめりこむホステスに江口のりこ

みんないいです。特に、ある重要な役割を演ずることになる女子高生を演じた多部未華子がキュート。デカワンコははやくDVDになんないっすか。

さあ今度は名探偵にして怪盗という、伊坂原作でいちばん好きな黒澤役を堺雅人がやってる「ラッシュライフ」を借りなくちゃ!

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「冬の小鳥」A BRAND NEW LIFE (2009 韓=仏)

2011-05-02 | 洋画

Abrandnewlifeimg01 鶴岡まちなかキネマが開館してまもなく一年。入会した5月31日から前後一ヶ月が会員更新期間なのでさっそく行ってまいりました。で、オレも大人だ。例によってプレミアム会費1万円也を支払いましてよ。

なにしろこれから「冷たい熱帯魚」「英国王のスピーチ」などの期待作続々なので投資の意味でも。

地震からこっち、一度も映画館に出かけていなかったので心機一転。最初の映画は「冬の小鳥」。う、女の子が孤児院に入る話か。二日酔いの中年男にはちょっとしんどいかも。

……観てよかった!あぶねーあぶねー見逃すとこだった。

1975年(という時代設定がなぜなのかは見終わって初めてわかる)、父親と楽しそうに食事する娘ジニ。9才の彼女の視点で描かれるため、父親の顔はスクリーンに映らない。布団のなかで眠ったふりをするジニは、父親がそばに来た途端、すがりつくようにして眠る。彼女は父親が大好きなのだ。しかし、父親の背中はなぜか哀しげで、母親の姿はない。

よそ行きのお洋服を買い、好きなケーキまで買ってもらった娘と父がバスで訪れたのはソウル近郊の孤児院。父親は彼女を捨てたのである。一瞬だけうつる父親はなんとあの人!びっくり。

いつか父親が迎えに来てくれると信じるジニは、孤児院になかなかなじめない。しかしけがをした小鳥(親に見捨てられた孤児たちの象徴)を介抱することで……

大ぶりのシャンプー容器、門扉のきしる音、番号をぶら下げて映る写真など、孤児院の描写がとにかく細かい。優しい、足の悪いイェシン姉さん(「グエムル」の彼女だ)の自殺未遂や、あくまで現実的であるがゆえに孤児たちを思いやる気持ちの強さがわかる寮母など、キャラも立ちまくりだ。

どれだけ取材した成果なのかと思ったら、監督のウニー・ルコントの実体験が元になっているのだった。だからこれは本当に1975年に起こった出来事に近い。

仲間が養子として孤児院を出て行くたびに歌われる「蛍の光」が、やけに元気がいいのがむしろ哀しい。ジニも養子としてパリのドゴール空港に降り立つ。その表情に、不安だけがあるのではないことが救い。傑作。主演のキム・セロンはまちがいなく天才

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「引かれ者でござい」 志水辰夫著 新潮社

2011-05-01 | 本と雑誌

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引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2010-08
通し飛脚の蓬莱屋シリーズ第二弾。今回も読ませます。っていうか、一編ずつが長くなっているので、おっとりとしたユーモアもあって前作「つばくろ越え」をしのぐ。

「引かれ者でござい」では、身代金を運んだ飛脚が、同時に人質を身代金に値するかを見定める役目を負っているあたりが渋い。人質の最後のセリフなど、きつい展開のあとだけに、声を出して笑ってしまいました。

「旅は道連れ」では、新潟と福島の県境におけるサバイバル。お互いが見知らぬ一行の腹の探り合い。これまたハードなストーリーなのに、最後にニヤリと笑えるオチを用意しています。手練れの作品。

「観音街道」は熱い抵抗の物語。かつていっしょに働いていた男の成長を喜ぶ飛脚の姿勢がすばらしい。健脚であることを武器にいっしょにたたかううちに……感動してしまいました。
このシリーズ、まじでおすすめですっ!ぜひ

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