事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「捜索者」 The Searchers (1956 WB)

2011-05-30 | 港座

Searchersimg01 南軍の敗北に終わった南北戦争終結から数年。テキサスの荒野を、騎乗した大男が進む。戦後に行方しれずだった彼は、兄の家族のもとへ帰るのである。しかしどことなくもの憂げに見えるし、迎えた兄夫婦も(こどもたちほどには)歓待するふうでもない。

「どうして、ウチを出て行ったんだ」

兄は本気でわからないようだが、家族を見つめる牧師(警備隊の隊長でもある)の目は、なにやら察しているようだ。

観客も、大男イーサンと兄嫁のあいだに何かあったのだろうと感づくことになる。あのジョン・ウェインを使って、こんな小津安二郎みたいなドラマを構築するとは。

イーサンはインディアンの事情に明るく、同時に激しく憎んでいる。牛泥棒があらわれたと聞くや「コマンチに違いない」と志願して追跡するが、それはコマンチの罠で、逆に兄の家族は(娘たちをのぞいて)皆殺しにされてしまう。もちろん、兄嫁も。

「駅馬車」「荒野の決闘」のように、底にどこか楽天性があった名作と違い、この映画には、なんというか屈託みたいなものがぎっしりつまっている。

明確には描かれないけれど、イーサンはインディアンの死体の両目を撃ち抜くし、兄夫婦の家に残されていたのは、頭の皮をはがれた(と同時にレイプもされていたかもしれない)遺骸だ。

イーサンとともに、“拉致された”末娘をさがすのはインディアンとの混血の青年であり、見つけたその娘はほとんどコマンチに同化しているという……なんというかどこかで聞いたことのあるようなお話。

刹那の物語であることが多い西部劇なのに、捜索者たちの旅は数年に及び、積雪をかきわけて進む馬、雪解け水あふれる河をわたる警備隊……およそ西部劇のイメージとはかけはなれたシーンも数多い。いったいなんだろうこの作品は。

確かにみごとな映画だし、傑作であることを認めよう。でも、どこかに薄ら寒くなるような部分が見え隠れするのはなぜだ……。ヴェラ・マイルズは美しいしナタリー・ウッドは可憐だ。でも、でもとにかく、この映画ってどっか変だよ!

コメント (4)
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