事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides

2011-05-21 | 洋画

Piratesofcaribbeanonstrangertides_2 法事に出る父親を送って余目へ。迎えに行くまでの時間で観ることができる映画は……あ、鶴岡まちなかキネマの「クレアモントホテル」がぴったりだ。祝・開館一周年!おー、駐車場がほぼ満杯ではないか。

「『クレアモントホテル』をお願いします」

「12時20分の回ですね?」

「え。」


しもーたー。今日から時間が変わっているんだった。

「す、すいません。今からでも『パイレーツ・オブ・カリビアン』入れます?」

ということで大ヒットシリーズ最新作を期せずして見ることになりました。

スペインのカディスがオープニング。3Dならではのショッキングシーンで観客に「お久しぶり」とごあいさつ。舞台をロンドンに移して、今度は英国王とジャック・スパロウの奇妙な会談で笑わせ(やけにふたりともスイーツにこだわるのがおかしい)、怒濤の脱出劇。

イギリスとくればあの人でしょ、という特別出演に苦笑。今度のエージェントに、Mはずいぶんと優しいぞ。おまけにパブではまたしても親父役でキース・リチャーズが。おいおいセリフが長い。字幕版だったらハラハラしたかも。ジョニー・デップがこれまでより小ぎれいになっているのも笑わせてくれます。

そして、スペイン・イギリス・海賊が三つどもえで『生命の泉』へのレース開始。三者の目的がそれぞれ違っているのが渋い。ストーリーはこれまでよりずっとシンプル。お宝(聖杯、人魚の涙、お約束の地図)の争奪戦。

ディズニーランドのアトラクションのように、闘いは常に不安定な足場で行われ、ハンス・ジマーのテーマソング(大好き)とあいまってゾクゾクさせてくれる。特に人魚の襲来は屈指の名シーン。

“このシリーズが常に大ヒットするのは、面白すぎないから”→ドラマなど二の次で見せ場の連続でしのぐ……という法則は今回破られたので、興行成績はどうなるものだか。もっとも、峰不二子的役柄のペネロペ・クルスはデップに「これが最後だなんて思わないでよ!」って言ってますけど。

元同僚が娘さんと次の回を観るためにロビーで待っていた。

「どうだった?」

「これまででいちばんだったよ」

元同僚以上に、娘さんが期待に目を輝かせていた。いいことしたな。一周年記念のスイーツもいただいたので、まちキネの宣伝にわたくしも貢献させていただきました。

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「冷たい熱帯魚」(2010 日活) 監督:園子温

2011-05-20 | 邦画

Coldfishimg01 「おら、そっち持て。頭はこっちな。」

でんでんが演じる熱帯魚商の指示は適確。いかにも手慣れている。しかしその慣れた作業とは、死体の運搬と解体なのだ。

妻を亡くした社本(吹越満……しゃもと、という名字をでんでんが呼ぶと迫力があります)は若い後妻(神楽坂恵)を迎えて静かに暮らしている。

しかし娘は継母と折り合いが悪く、家族みんながフラストレーションをかかえている。後妻がつくる食事は冷凍食品をレンジで解凍するだけ(神楽坂がスーパーで買い物カゴに商品をはたき落とすオープニングは最高)、娘は万引きに走る。この事態に、社本は夫として、父として対峙することを避けていて、そのことで自分を責めてもいる。

そんな生活にスルリと入りこんできたのがでんでん。押しの強い、しかし親切な人間に見えていたが、一転して……

いやもう殺して殺して殺しまくり。そして死体の処理は、映画的技巧など無視してグロい状況をそのまま描写。

「こいつ、子どもの頃にダッチョだって言ってたけど、傷は残ってるもんだなあ」

「ついでに包茎も切ってやっか」

はたしてどこまでが脚本でどこからがアドリブなんだか。

ストーリーは、精神的・宗教的意味合いにおける父親殺し。でも、そんなテーマよりも、殺人を「こんなものは慣れだ」と言い切るでんでんの魅力と怖さが中心。語り口のたどたどしさがむしろ怖い。

「お笑いスター誕生!!」で、微妙な間(ま)で笑いをとっていたあのオッサンが、こんなにすばらしい役者になっていたなんて。社本の妻に関係を迫るあたりのかけひきなど、やるなあ。

あの、埼玉愛犬家連続殺人事件がモデル。あれだけの事件なのにどうして細かいこと忘れてたかなあ……と思ったら直後に阪神大震災があったのでした(ウィキペディアより)。

あ、それからでんでんの奥さんを演じて狂気を見せた黒沢あすかって、気合いの入った女優だ。人生は確かに痛いんだけど、その痛みをいちばん表現していたのは彼女だったかも。

もちろん成人指定。この映画を観た直後に、ユッケやレバ刺しを食べられるとすればたいしたものだ。

Coldfishimg02

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明細書を見ろ!2011年5月号~昇給のルール

2011-05-19 | 明細書を見ろ!(事務だより)

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YouTube: 鈴木祥子(Shoko Suzuki) - Swallow

2011年4月号「出勤簿のルール」はこちら

もうお忘れかもしれませんが、平成17年度まで、昇給は4月、7月、10月、1月のいずれか、それぞれ一日付(わたくしどもの業界では“いっぴづけ”と読みます)で昇給していました。

どうして人によって昇給月が違うのか、という話はめんどくさいので省略するとして、それを一気に1月1日に統一したのは、勤務成績などによって昇給幅を変更する建前だからでしょう。でもそれって不公平じゃないか!と怒る人もいるはず。前年度まで1月1日に昇給していた人と、4月1日に昇給していた人が同じ1月1日昇給?と。

このあたりは役人はよく考えています。どんな技を使ったかと言うと、まずそれぞれの号給を4分割しました。今までの1号が4号に細分化されたのです。

さて、以降は毎年基本的に4号ずつ昇給するはずでしたが、そうは問屋が卸しませんでした。当時の県知事が昇給を抑制しろ、と強硬に主張したからです。おかげで4年間、わたしたちの昇給は毎年1号抑制されてきました……。

めでたくそのしばりも解けて、この1月から4号昇給する基本形にもどったのですが、まだ不公平さは残っています。なぜなら、ほぼ43才以上の人には『現給保障』という形の恩恵があったのに、若手にはほとんどいいことがなかったからです。

その意味で今回の措置は「かわいそうな若手に愛の手を」ということなので、ベテラン勢はくれぐれも怒らないように。

※本日の一曲は、退校の音楽にぴったり「Swallow」鈴木祥子。名曲。ウチの学校は十年一日のごとく「イエスタデイ・ワンスモア」(カーペンターズ)なので飽きちゃいました。

2011年6月号~チャリ通のルールにつづく

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追悼児玉清

2011-05-17 | 芸能ネタ

Kodamakiyoshiimg01 「この人はね、確か娘さんが亡くなってるのよ」

妻が「龍馬伝」を見ているときにポツリと。

「花は花よめ」(日テレ)の、一種の無色な存在が彼の持ち味。細川ちか子という圧倒的な存在を前に、気弱な花屋を演じてましたっけ。

余談だけど、料理の経験がない芸者である主人公(吉永小百合)が夕食の支度に失敗し、海苔と味噌汁だけを供して

「旅館の朝食だな」

と、苦笑いされてたのって「花は花よめ」じゃなかったでしたっけ。違ったかな。

児玉は、次第に読書家としての渋みも加えて、都会人とは彼のような人のことだとつくづく。

一転して、あの龍馬伝第7話「遙かなるヌーヨーカ」での、鼻水を流しての熱演。年齢の離れた子に向けた激情が、彼の私生活にだぶったのはわたしだけではないと思う。ご冥福をお祈りします。「アタック25」のルールがいまだによくわからないわたしが言うのもなんだけれども。

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「造花の蜜」 連城三紀彦著 角川春樹事務所

2011-05-16 | ミステリ

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造花の蜜〈上〉 (ハルキ文庫)
価格:¥ 680(税込)
発売日:2010-11
世に「幻の~」と形容されるものは多いけれど「幻の雑誌」とくればその名も「幻影城」が有名。70年代後期に発行されたミステリマニア向けマガジン。どうして有名かというと、とにかくこの雑誌出身の作家が数多く、しかも“いかにも”な作家揃いだったから。

学生だったわたしは、三軒茶屋の古書店などでせっせとバックナンバーを集めたものだった。どこいっちゃったかなあ。

特に衝撃的だったのが泡坂妻夫。名探偵の紳士録をつくるとき、必ず最初に掲載されるようにとネーミングされた亜愛一郎(あ・あいいちろう)シリーズはすばらしかった。

「飛行機が写っている写真を見ると、みんなが『あ、飛行機の写真ですね』という。実は雲の写真かもしれないのに」
(「DL2号機事件」~角川文庫の「亜愛一郎の狼狽」に入っています)

……意表をつく、という意味で彼以上の作家はもう現れないかもしれない。

連城三紀彦は、そんな泡坂スタイルのトリッキーさと、のちに恋愛小説で名をなしたように叙情ゆたかな文体が特徴。「幻影城」に載ったデビュー作「変調二人羽織」はゾクゾクするミステリだった。「恋文」で直木賞をとったのに、マニア受けはしてもいまいちメジャーにならないなあと思っていたら、得度してお坊さんになった上に、お母さんの介護のために休業していたようだ。

再起第一作がこの「造花の蜜」。誘拐をめぐるミステリなんだけど謎のつるべ打ち。

・犯人が身代金の受け渡し場所に渋谷のスクランブル交差点を選んだのはなぜか

・身代金を当日になって減額要求(!)してきた理由は

・「人質の解放」と「身代金奪取」の順序が逆になっているのはなぜか

……など、よくもまあこれだけ仕込んだものだ。しかも、解放された人質から驚愕の事実が明かされ、誰が誘拐犯で誰が……あわわわ、ネタバレになってしまう。

二転三転する展開は、幻影城のころとちっとも変わっていない。「造花の蜜」というタイトルすら、読者をひっかけています。だまされない読者はひとりもいないはず。お坊さんがいつもこんなひっかけを考えているかと思うとうれしいかぎり。ぜひ。

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「ブラック・スワン」 Black Swan (2010 FOXサーチライト)

2011-05-15 | 洋画

Blackswanmovieposter1 およそクラシックバレエほど縁遠い世界もない。あのチュチュがまずわからないし、つま先立ちであれだけくるくる回れるってことは、トウシューズにはなにか秘密があるに違いない、くらいの認識。だから頭の中では少女マンガにおける

・プリマをめぐる女同士の陰湿な争い

・美貌のダンサー(きっとゲイ)の壮絶な取り合い

的な世界なんだろうと偏見ありあり。「ブラック・スワン」は、確かにそんな展開なんだけど、トウシューズのなかに画鋲を入れる程度の少女マンガ的悪意を鼻で笑うような狂気が支配する。

ストーリーは徹底して「白鳥の湖」をトレース。白鳥に姿を変えられた姫が、同じ姿をした黒鳥に王子の愛をうばわれ、その解決策として……そんなお話だってことも知らなかったですけれど。

ナタリー・ポートマンが演じるニナは、技術において完璧を求めるあまり、奔放さに欠けると監督(ヴァンサン・カッセル)に喝破される。他のバレリーナは陰で「不感症の小娘」と呼んでいるぐらい。彼女を産むためにキャリアを捨てた母親(なんとバーバラ・ハーシー)に私生活をコントロールされていて、ニナは不満をつのらせる。

バレエ団には「完璧」なプリマがいたが、「白鳥の湖」公演を前に引退を強いられる。「死にゆく白鳥」である彼女を演じたのはウィノナ・ライダー。新しいプリマにポートマンが選ばれるが、彼女は王子を誘惑するブラック・スワンを演じる自信がない……

ここからサイコスリラーとして突っ走るんだけど、ある事情があってナタリー・ポートマンは出ずっぱり。気弱なホワイト・スワンが瞬時に邪悪なブラック・スワンに変貌するあたり、みごとに演じています。

っていうか、乳首を出さないだけで、他のありとあらゆる濡れ場を用意してあるのでR-15は当然かな。観客をひっかける罠はたくさん用意してあるんだけど、ニナの歯車がどの時点で狂い始めるかは、母親が描いた絵をよーく見ているとわかりますよ。

バレエを接写するものだから、チュチュの衣擦れの音、舞い飛ぶ羽毛があいまって息苦しいほど。つくづく思います。娘にバレエを習わせなくてよかったー。

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「よってたかって古今亭志ん朝」 志ん朝一門 文春文庫

2011-05-14 | 芸能ネタ

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よってたかって古今亭志ん朝 (文春文庫)
価格:¥ 570(税込)
発売日:2008-06-10
あまりにもうますぎて志ん朝の落語を敬遠していたわたしが馬鹿でした。「明烏」や「品川心中」の絶妙の語り口に嘆息。弟子たちの回顧録で、不断の努力があったことがわかる(まあ、それ以前にまちがいなく天才なのだが)。志ん生の息子ということで、逆にプレッシャーを感じていたらしい。

「うーん……ねえ?

こんな独特の志ん朝口調を、残された音源で楽しむことにしよう。弟子たちが談志のことをクソミソにけなしているのは、なんかわかりますね。小さんの孫まで批判するのはやり過ぎだろうけれども。師匠譲りの、まじめな一門だなあ。

「強次っ(志ん朝)、強次っ、真っ直ぐ父ちゃん(志ん生)と母ちゃんのところへ行くんだよっ」

臨終の際に、お姉さんが志ん朝にかけたことばが哀しく、おかしい。あの世では、志ん生、馬生、志ん朝の噺をライブで聴けるわけだ。まっつぐ、行くことにしましょう。

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庄内桜巡り

2011-05-13 | まち歩き

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YouTube: 庄内桜巡りの旅

うちの若いもんが(どこの若いもんだよ)バイクで庄内の桜を撮影。

で、おなじみYouTubeにアップしておりますので紹介します。特別出演は玉こんにゃく。

遊佐、松山、若竹町……まるでオレの職歴をたどっているようだ

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「ザ・万遊記」 万城目学著 集英社

2011-05-12 | 本と雑誌

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ザ・万遊記
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2010-04-23
自分も身体が弱っているとき(インフルエンザでした)に読んだので、万城目のアキレス腱断裂からの復活過程はわがことのようにうれしかった。

でもこの温泉+スポーツ観戦企画において、結局は

モンテディオレッドウィングス+天童温泉

ってのが実現しなかった(断裂はその直前)のは惜しい。天童は親切な温泉場ですよ。

万城目のサッカーフリークぶりと、「プリンセス・トヨトミ」のために国会議事堂を見学するくだりは爆笑。

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「ウルトラミラクルラブストーリー」 (2009 リトルモア)

2011-05-11 | 邦画

Ultramiraclelovestoryimg02 陽人(ようじん)という名の気のいい青年(松山ケンイチ)の目覚めから映画はスタート。彼はひたすら自分の予定をホワイトボードに書きこんでいる。目覚ましは亡き祖父のじゃがいもの育て方のテープ。ほう、農業青年か。

「あ。カゴわすっだじゃ」

もんのすごいディープな津軽弁。そう、この映画は全編を通じて徹底して青森ネイティブなつくりになっている。

にしてもこの陽人、ちょっと落ち着きがなさ過ぎないだろうか。

「オレの頭は織田信長といっしょなんだって」

あ、そうか。徹底して細部にこだわるあたり、アスペルガー症候群らしいことがうかがわれる。彼の生活は祖母(渡辺美佐子)とともに有機野菜を売ることで成り立っているが、ある日小学生に農薬をあびせられたことでストーリーはとんでもない方向に転がっていく。

まさかこんなタイプの映画だとは思いもしなかったのでたいそう驚いた。都会からやってきた保母さん(麻生久美子)と、田舎の好青年の小さな恋の物語(死語)だと想像していたの。まさか松山ケンイチが○○○になって……とは。

全国の事務職員と交流するようになって、しかしどうしても津軽弁と鹿児島弁だけは聞き取れない。カラオケにいっしょに行ったとき、“解説してもらっても”新沼謙治の「津軽恋女」ネイティブ津軽弁バージョンは理解できなかったのを思い出す。

そんな不可解な言語を、さすがむつ市出身の松山は軽く使いこなしているが(その分彼の標準語はかなりあやしい)、名優の渡辺美佐子や占い師役の藤田弓子は少なからず苦しい。意外に原田芳雄はうまいけどね。

身体のすみずみまで陽人が入り込んだかのような松山ケンイチがなによりすばらしい。死んだ恋人の首と、陽人の脳をだぶらせる脚本も小憎らしいので油断しないように。

それにしても驚嘆したのは保育園児たちの自然さ。「よーじん!よーじん!」とまつわりつくガキンチョたちをどう演出したのだろう。「冬の小鳥」でも思ったんだけど、近ごろ画期的な幼児演技指導メソッドでも確立したんすか。

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