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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「猫を棄てる」 村上春樹著 文藝春秋

2020-07-21 | 本と雑誌

父親と息子が猫を棄てに行く、そんなきわめて昭和な経験を村上春樹は思い出し(その猫は父子より先に自宅に帰りついていたというオチがついている)、そこから父親との関係を静かに語り始める。

二十年以上も没交渉だったり、村上が父親の期待を裏切り続けた不肖の息子であるとみずからを規定していたり、ああどこの父子もいっしょなんだとしみじみ。

ねじまき鳥クロニクル」などでうっすらと父親の戦争体験にふれていたけれど、このエッセイ集ではそのあたりをむき出しに描いている。一度は、そうしなければならないと作家としての本能が書かせた作品だろう。

読み終えて粛然とする。村上春樹ファンは必読です。

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「不良役者」 梅宮辰夫著 双葉社

2020-07-21 | 芸能ネタ

昨年末に亡くなった梅宮の、おそらくは聞き書き(週刊大衆連載)。わたしの世代にとっては夜の帝王のイメージが強く、中学時代は「ウメミヤ」と「ツガワ」はそっちの代名詞みたいなものでした。

意図的に映画スターであろうとした彼が、意外なほどプレイボーイの看板をあっさり下ろしたのは、クラウディアさんに一目ぼれしたことと、実は何度も病気をしていたからだったのは初めて知った。

羽賀研二の名前は一度も出てこないが、その怒りだけは強く伝わる。

松方弘樹の「無冠の男」では露骨に松方の高倉健嫌いが強調されていたけれど、この書では(当時の奥さんだった)江利チエミが東映本社に怒鳴りこんだエピソードが語られ、いやしかしこれってばらしてよかったのかと……ほんとに健さんのことを梅宮は尊敬してたのかなあ。

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明細書を見ろ!2020年7月号 島にて

2020-07-20 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2020年6月期末勤勉手当号 「もっけ玉」はこちら

館内(三川イオンシネマ)が明るくなり、監督の舞台挨拶が終わり、客が帰り始める。そこには、さっきまでスクリーンに映っていた人たちがいる。飛島中学校の(今のところ)最後の校長と教頭でした。三川で職員会議やってんのか。

特に教頭(うちの元職員です)は出ずっぱりに近かったので

「主役だったじゃーん」

と声をかける。

「いやあ(笑)」

映画のタイトルは「島にて」。酒田市飛島の一年間のお話。中学校の一学期始業式から始まり、卒業式(そしてそれは同時に休校も意味した)に終わる。ほんとの主役は、ただひとりの生徒でしたが。

うちの学校には2名の飛島勤務経験者がいますが、実はもうひとり関係者が存在します。事務職員です(笑)。

この男の履歴書は平成21年4月1日から異様に行数が多くなっています。

「山形県酒田市立××中学校事務主査を命ずる」だけならともかく

「兼ねて山形県酒田市立飛島小学校事務主査を命ずる ただし任用期限は……」

と続き、平成24年からは

「兼ねて山形県酒田市立飛島中学校事務主査を命ずる ただし……」

も加わったのです。つまり兼務発令。当時の学校事務職員の兼務は、週のうち1日~3日、事務職員が未配置の学校におもむいて事務を行うというものでしたが、飛島の場合はそうもいきません(船が欠航したら帰ってこれなくなるし)。だから電話、FAX、メールなどでコミュニケート。いま思えばリモート勤務。違うか。

しかし当時の校長(この人も元同僚)からは

「お前さあ、人として(飛島に)一回も来ないってことはないだろ」

ということで何度も飛島に渡ることになりました。定期船で島影をさがし、頭のなかでは

♪波のぉ谷間にぃ命の花ぁがー♪

と鳥羽一郎が鳴り響いていましたが、船にはやけに弱かったので波高50センチ以下のときだけ海の男と呼んでくれ状態。仕事的にはきつかったけれども、楽しい7年間だったなあ。

「島にて」は島民へのインタビュー集のような映画で(飛島の血が流れている前校長は、親戚がやけに出てくるので冷静に見ることができなかったそうだ)、監督が言うように実はなにも起こらない。

しかし、おじいちゃんおばあちゃんのディープな庄内弁(意図的に字幕を入れなかったとか)を聞いているうちに、彼らの来し方や現在の生活が静かに感じられ、実はボロ泣き。すばらしい映画です。イオンシネマではまだ上映しています。飛島に行った人も行ったことのない人も、ぜひぜひ。

あ、劇場に入る前にハイテクな体温計で検温されるので、体調の悪いときは遠慮してよ。

2020年8月号「人事院勧告2020」につづく

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「旅のつばくろ」 沢木耕太郎著 新潮社

2020-07-20 | 本と雑誌

わたしは遊佐町に計10年間勤務した。その最後の最後に遊佐町の図書館のカードをつくったの。それ以来幾星霜、二週間に一度、コンスタントに5冊づつ借りております(ごめんなさいよく返却が遅れます)。こんなメルマガやブログを続けていられるのは、遊佐の図書館のおかげ。

で、この沢木耕太郎の新作もさっそく。

「深夜特急」のイメージがいまだに強い彼の、これは初の国内旅行記なのだった。

そしてそして、そのオープニングがなんと遊佐だったんですよ!

なぜ彼が遊佐に来たかといえば、字面がよかったから(笑)。そして遊佐を絶賛してくれている。泊まったのはどう考えても西浜の遊楽里(ゆらり)。そう、わたしは遊楽里のある学区にも勤務したのでした。うれしかったなあ。

遊佐の図書館の綺麗な司書の人たちは、この書で遊佐のことが語られていることを知っているかなあ。いや別にお姉さんたちが綺麗だから遊佐の図書館に通ってるわけじゃないぞ。違うよ。違うってば。

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極私的大河ドラマ史PART49 風林火山

2020-07-19 | 大河ドラマ

PART48「功名が辻」はこちら

先週ふれたばかりの三浦春馬がとんでもないことに。うーん、何があったか知らないけれど……

さて、わたしが見逃した大河で、いちばん後悔しているのは2007年の「風林火山」。武田信玄の軍師、山本勘助の物語。あのテレビ版の傑作「クライマーズ・ハイ」「64」を書いた大森寿美男さんが脚本で原作が井上靖。この大河は井上靖生誕百年記念作品でもある。

わたしは原作も若いころに読んだけれども、ドラマティックな展開を冷静な筆致で語るという方式が、むしろ数多くの映像化につながったように思う。

なかでも69年の三船敏郎主演映画はとんでもない豪華キャストで、三船プロが総力をあげて製作。武田信玄が中村錦之助で上杉謙信が石原裕次郎、武田勝頼が中村勘九郎で武田信繁が田村正和。そしてヒロイン由布姫に佐久間良子である。

だからというわけでもないが、大河のほうはむしろ渋めの配役になっている。勘助が内野聖陽で武田信玄が市川亀治郎(子役時代はまたしても池松壮亮。そして勝頼役も演じる)、武田信虎が仲代達矢で板垣信方が千葉真一。そして加藤武佐々木蔵之介もからむ。ヒロインは新人の柴本幸(まさか渡米していたとは)。

かと思えば上杉謙信はGacktだし今川義元は谷原章介、北条氏康が早乙女太一という、なんというか美形なキャスティングも。

その実在さえ疑われていた山本勘助を主人公にもってきたのだから、ストーリーの自由度は高かったろうし、演じたのが実力派の内野聖陽だから、見ごたえがあったに違いないのだ。

三国志のなかでは諸葛孔明の人気が高い日本だから、軍師という存在は魅力的に思える。しかしこの大河は、その評価のわりには視聴率が伸びなかった。

戦国絵巻、というきらびやかな印象を打ち消していたことが原因だろうか。だとしたら確信犯だったわけだ。総集編だけでもDVDで見てみようかな。

PART50「篤姫」につづく

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2000年代外国映画ベストテンPART2

2020-07-18 | 洋画

その1はこちら

まず、わたしにとって大きかったのはインターネットと携帯電話。もちろん前世紀にも存在したけれども一般に浸透したのはやはり今世紀だろう。スマホの登場はそのとどめだ。とても便利な世の中になったものだとつくづく。毎日メルマガを発行したり、ブログを更新している人間だからなおさらだ。

ただし、世の中が“良くなったのか”と問われれば微妙なところ。なにしろ21世紀は、9.11でスタートしたと言い切ることができるくらいだし。

そんな時代の空気が映画に影響しないわけがない。

さてベストテンを見てみよう。

トップが「殺人の追憶」なのは文句なし。もちろん、監督のポン・ジュノがカンヌとアカデミー賞を「パラサイト」で席巻したことが影響したに違いないが、わたしはあの作品よりも「殺人の追憶」のほうがはるかにレベルの高い作品だと思う。一瞬だけ犯人が見えるあの瞬間の凄み。あれから十年以上たち、ついに真犯人が特定されたというニュースには驚いた。それにしても猟奇で残虐な連続殺人。

キネ旬は“クリント・イーストウッドが強い”雑誌だが、「グラン・トリノ」「ミリオンダラー・ベイビー」「ミスティック・リバー」の三本に文句のある人はいないだろう。彼はこれ以降も次々に傑作を撮っている。すごい。

わたしが大好きだった「シティ・オブ・ゴッド」「トラフィック」のランクインはうれしい。これぞ名作、という類いの映画ではないけれど、見ているあいだの多幸感は半端なかった。

そして、娯楽映画のテリトリーを一気に広げた「ダークナイト」も納得の位置だ。並みの映画の3本分以上のアイデアをぶちこみ、ある意味、観客の生理を無視したあの作品こそ、9.11の時代をもっとも象徴しているのではないか。そしてほぼ十年たって、ヒース・レジャーが演じたジョーカーを、今度はホアキン・フェニックスがまたしても狂気の熱演。これもまた、時代。

日本映画篇につづく

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2000年代外国映画ベストテン

2020-07-17 | 洋画

キネマ旬報2020年7月上旬号は、創刊100年特別企画「2000年代外国映画ベストテン」が特集されている。そうかあの10年ももう回顧企画にとり上げられるようになったのか。

まずは1位から10位までを紹介。

1位 「殺人の追憶」(2003年 韓国)ポン・ジュノ

2位 「花様年華」(2000年 香港)ウォン・カーウァイ

3位 「グラン・トリノ」(2008年 米)クリント・イーストウッド

3位 「ダークナイト」(2008 米)クリストファー・ノーラン

5位 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年 米)ポール・トーマス・アンダーソン

6位 「ミリオンダラー・ベイビー」(2004 米)クリント・イーストウッド

6位 「ヤンヤン 夏の想い出」(2000年 台湾=日本)エドワード・ヤン

6位 「インファナル・アフェア」(2002年 香港)アンドリュー・ラウ、アラン・マック

9位 「オアシス」(2002年 韓国)イ・チャンドン

9位 「ノーカントリー」(2007年 米)ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

9位 「鉄西区」(2003年 中国)ワン・ビン

9位 「マルホランド・ドライブ」(2001年 米=仏)ディヴィッド・リンチ

9位 「ミスティック・リバー」(2003年 米)クリント・イーストウッド

……票が割れすぎて同位の連発(笑)。こりゃ、最後まで行きましょう。

14位 「息もできない」(2008 韓国)ヤン・イクチュン

14位 「ブロークバック・マウンテン」(2005年 米)アン・リー

16位 「シティ・オブ・ゴッド」(2002 ブラジル)フェルナンド・メイレレス

16位 「トラフィック」(2000 米)スティーヴン・ソダーバーグ

……21世紀、とくれば1960年生まれのわたしとしては、未来都市でクロームに輝くエアカーがびゅんびゅん飛び、みんなピカピカのファッションで決めている、そんな時代だと想像していた。

全然違いましたね。わたしのまわりには相変わらず田んぼが広がり、鷺が稲から首を出している。そして農道をチャリで通勤するわたしはそれを見て喜んでいる。こんな時代だとは思わなかったなあ。

もちろん、前世紀とは生活の姿は変容している。以下次号

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島にて その3

2020-07-16 | 邦画

その2はこちら

この「島にて」は、あとで監督が言ったように「何事も起こらない」映画だ。一応、飛島中学校の一学期始業式から卒業式まで、という縁取りはあるものの、島民へのインタビュー集の趣き。

あ、先走りすぎたか。わたしにとってはあまりにも自明のことなので忘れてたけど、飛島って存在を多くの人は知らないですよね。かつて秋田県に所属したこともある(秋田との県境あたりがもっとも近いはず)飛島は、山形県でただひとつ、人の住む離島だ。

酒田との定期船でおよそ75分かかる。波の穏やかなときはいいけれども、波が高かったりするとこの75分が長いんだ(+_+)。分針が動かない動かない。

基本的に漁業と観光で成り立つ島。産業構造の変化によって人口は激減。だから、移住した渋谷家の三人の子どもたちがそれぞれ卒業したことで、学校はふたたび休校ということになった。いちばん下の新(あらた)の卒業は、その意味で重い。お父さんの祝辞が感極まるのも無理はない。

なんか、わたし個人のことだけ語ったようだけど、まさしく個的に徹した映画だった。島民たちの人生(もんのすごくディープな庄内弁!)、移住者たちの人生がクロスする場としての飛島。特にじいさんやばあさんの話を聞いていると、しみじみと泣けてくるのだった。

新庄出身の大宮浩一さんと、島民からすれば孫娘のような田中圭さんの共同監督。大宮さんは言う。

「わたしの同級生が飛島の学校に勤めてましてね、生徒が最後のひとりになったと」

あはは。あの人の同級生だったのか。パンフレットの販売も行われたんだけど、コロナのためにすでにサイン済みのを購入……おっとわたしの前で売り切れ……ということで普通のサイン会状態に。

「音が、すばらしかったですね」と田中監督へ。

「ああ、鳥ですね!?」喜んでくれた。

そう、バードウォッチャーにとって天国のような島なので、のべつまくなしに鳥が啼いていて、実にクリアに拾っていたのだ。ぜひ見て!ぜひ聴いて!鳥だけじゃくて人の声もすばらしいんだっ!

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島にて その2

2020-07-15 | 邦画

その1はこちら

わたしの履歴書は、途中からものすごく行数をくっている。

「兼ねて山形県酒田市立飛島小学校事務主査を命ずる ただし任用期限は~」

なる兼務発令が挿入されるから。おまけに

「兼ねて山形県酒田市立飛島中学校事務主査を命ずる ただし~」

も途中から加わることになった。三校兼務である(笑)。7年間、われながらよくがんばった。

もっとも、休校状態だった飛島小中学校がふたたび開校することになったのは、わたしが勤務していた小学校の保護者が、介護サービスを開業するために三人の子どもを連れて飛島に移住したため。これはもう運命だろうと。

兼務しているからといって、飛島に赴く必要はなかった。でも、曲がりなりにも自分が“勤務”している学校に全然行かないというのもどうだろう。当時の飛島の校長(元同僚)からは「人として、来ないってことはないだろう?」と突っこまれていたしね。

だから年に一回は訪問していた。教育事務所も教育委員会も

「行ってくれる?旅費は出すよ!」

と大喜びだったけれど、出張で行くのはどうも気が重かったので、労働組合の分会訪問に帯同するという名目で行ってました。出張じゃないから飛島の職員ともガンガンお酒も飲めてうれしかったなあ(ええ不良事務職員ですけどそれがなにか?)。

さて三川イオンシネマ。タッチパネルで「島にて」を選択して席を選ぶ。

「え」

ほとんどの席が埋まっているのだ。わたしたち夫婦が最後のチケット購入者でした。すごいな、たいして宣伝もしてないのに……実はその前日にフォーラム山形で舞台挨拶があり、だから日曜日の朝刊にその記事がでかでかとフューチャーされていたのも影響したのだろう。

それ以上に、飛島関係者が大挙して来館していたのでした。以下次号

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うまい店ピンポイント 映画館は久しぶりだっ!いち篇

2020-07-15 | 食・レシピ

花鳥風月冷やしエビワンタンメン篇はこちら

ということで三川イオンシネマで見てきました「島にて」泣いた。

その前に妻とすぐ近くの「いち」へ。辛みそラーメンがお目当て。しみじみとうまいっす。

さほど席を減らしてなさそうなのに(ひょっとしたらまったく減らしてないかもしれない)ほぼ満席。人気店になったのか。まあ、消毒とかは一生懸命やってるようなのでたいへんそう。

わたしの場合は見る映画とラーメンの味がシンクロすることが多いので、映画館(庄内で唯一の劇場になった)のすぐ近くにお気に入りのラーメン屋があることはありがたい限り。

これからも何度も来るからね、そういう生活が続くといいなあ

かわにし食堂篇につづく

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