法医昆虫学捜査官シリーズ、「よろずのことに気をつけよ」の川瀬七緒が、「よろず~」につづいて民俗学をテーマにしている。それに加えて、介護問題もからむ。主役は民俗学を研究する女子大生。彼女は認知症グループホームでリサーチを始めるが、ある老女がつぶやいた「おろんくち」という言葉にひっかかる……
川瀬作品のヒロインは、みんな空気が読めずに暴走しがち。この女子大生もそうだ。ただし、介護現場にふれることで、人間的に成長していくあたりは新味。
法医昆虫学捜査官シリーズ、「よろずのことに気をつけよ」の川瀬七緒が、「よろず~」につづいて民俗学をテーマにしている。それに加えて、介護問題もからむ。主役は民俗学を研究する女子大生。彼女は認知症グループホームでリサーチを始めるが、ある老女がつぶやいた「おろんくち」という言葉にひっかかる……
川瀬作品のヒロインは、みんな空気が読めずに暴走しがち。この女子大生もそうだ。ただし、介護現場にふれることで、人間的に成長していくあたりは新味。
2024年9月号PART2「資格情報」はこちら。
みなさんの協力のおかげで、先日の監査は無事のりきることができました。ありがとうございます。わたしはほんとに監査運がいい。
本校の事務職員は、日ごろ徹底的にさぼっているものだから、監査が該当するとめちゃめちゃに忙しくなり、必然的にテンパってしまうのでさぞやご迷惑をかけたことと思います。
さてその監査ですが、中心となる書類はやはり出勤簿。その職員の勤務形態を(すべてではないにしろ)把握するのにあれほど好都合なものはないからです。しかし4年ぶりの今回の監査では、職員の前歴を確認するために履歴書まで提出させられました。
で、その監査委員から
「あなたの履歴書がないんですけど」
「は?いやそんなはずないですけど……ほら」
「あ、ありましたね(笑)」
穏やかに終了。もちろんその日“監査が終わった日の行政職員が行うこと”(飲みに行く)を例によって徹底的にやりきったのでした。
画像は「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」Joker: Folie à Deux(2024 WB)
気の弱い方、暗い話が苦手な人、ミュージカルが肌に合わない人にはおすすめできません。おそらくは史上もっとも陰惨なミュージカル。まあ、あの「ジョーカー」の続篇で、恋人(ということはつまりハーレイ・クイン)をレディー・ガガが演じるとなれば、見ないという選択肢はないか。サブタイトルは「二人狂い」という意味の心理用語。
第39回「とだえぬ絆」はこちら。
毎回毎回、胃が痛くなるような……これは大河ではなくて日本プロ野球のクライマックスシリーズのこと。ここまで打てないか巨人。そしてまもなく最終戦が始まる。あ、始まった。大河のほうを急いでアップしなければ。
昨日のオンエアもBSで。総合の真裏では試合が終盤だろうしなあ……正解。8時45分にはもう終わってました。しかしCSでこうなんだよ。来週はこれに開票速報と日本シリーズがからんでくるのだ。忙しいことです。放送時間の変更には気をつけないと。
さて大河。イケメンである一条天皇が崩御。占いでそれを予測していた藤原道長は、要所要所に自分の子を配置して体制を盤石のものにしようと……主人公がダークサイドに落ちていくのは近年の大河のルーティンになっている。
北条義時、徳川家康、そして藤原道長。いずれも、だからこそ魅力的だ。
道長を演じている柄本佑の主演映画を観ました。「火口のふたり」。ヒロインはこの大河で道長の二番目の妻(だっけか)の明子役の瀧内公美。このふたりが何かに追いまくられるようにセックスばかりしている作品なのだけど、これがすばらしかった。もちろん成人映画で、瀧内公美のヘアも出しまくり。しかし濃厚なセックスシーンのあとの、ことが終わった微妙な雰囲気とかがとても普通なの。
これは、脚本家である荒井晴彦の演出の丁寧さもあるだろうが、主役のふたりの圧倒的な演技力がそうさせているんだと思う。
にしても荒井が「仁義なき戦い」などの脚本家、笠原和夫にインタビューした「昭和の劇」において、「Wの悲劇」における薬師丸ひろ子の処女喪失の場面で、澤井信一郎監督に異議申し立てをかましたくだり(「そんなとき、がに股で歩く女なんていませんよ」)には笑ったなあ。今回は自分の思うとおりの描写ができたんだろうな。監督業に進出して正解かも。
第41回「揺らぎ」につづく。
「絶対に、起きてはならない事件だった。
おそらく日本の近代史において、国の内外にこれほどの政治的な偉業を成し遂げ、国民に愛され、世界に信頼された首相は他にいなかっただろう」
この序文をストレートにとるか皮肉だととるか、読者を選ぶ小説だと思う。いわゆるモデル小説で、安倍晋三狙撃事件の背後に、あの勢力とあの宗教団体の存在があったのではないかという、陰謀論に近いテーマを扱っている。
銃器に対する詳細な言及のおかげでリアルに感じはするけれども、なにしろあの安倍晋三のことなので、彼のおかげで日本が衰退してしまった事実もどうしても浮上してくる。どうも、すっきりしない作品なのでした。
前作「記憶にございません!」を特集したときに、三谷幸喜作品を
まあまあ……「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」「みんなのいえ」
なかったことにしたい……「ギャラクシー街道」
とカテゴライズした。で、今回はネット上で「ギャラクシー街道」なみの出来、と酷評されているのだ。
で、同僚が先に見てきて
「製作費かかってないなーってまるわかり。セットがほとんどひとつしかないんだもん」
そうなんだろうか。検証してみましょう。
まず、同僚の意見は三谷自身によって否定されている。演劇的に撮ることを意識していたらしいのだ。それが、効果的だったかどうかは別にして。
ストーリーはかなりひねくれている。詩人(相田みつをあたりがモデルだろうか)のくせに大富豪(「鎌倉殿の13人」で宮沢りえに翻弄されていた坂東彌十郎)の邸宅から姿を消した妻のスオミ(長澤まさみ)。誘拐のおそれがあるとやってきたのが刑事にしてスオミの前夫(西島秀俊)、以降も遠藤憲一、小林隆、松坂桃李などが登場して、スオミは都合5回結婚していることが判明。そして彼女の印象は夫たちすべてに違っていた……
どうも前半が調子悪い。テンポがよくないというか。まあ、警察が持ってきた逆探知の器械がもんのすごくアナログで、みんなが「今でもそんなの使ってるの!」と驚くあたりは笑えましたが。
しかし後半は持ち直す。それは長澤まさみの魅力が全開だからだ。常に相手にとって都合のいい相手を演じてしまう彼女の五変化はおみごと。それからね、よけいなことだけどこの人ってどれだけ足が長いんですか。結論それですか。
2024年9月号PART8 山藤章二篇はこちら。
この人を知らない日本人はいない。彼を嫌いな人をわたしは知らない。あの愛敬は無類だし、その好感度を利用して壮絶な悪役までやってしまう振れ幅はおみごとだった。
ミスター大河ドラマとは彼と緒形拳だし、実際に「おんな太閤記」で彼を語る人も多いだろう。橋田壽賀子嫌いのわたしは見ていないのでなんとも言えませんが。わたしにとって大河の西田敏行とは「翔ぶが如く」の西郷隆盛役だった。
大物となってからの彼は、常にキャストロールからいえばトメの、つまりは最後に出てくる存在になっていた。それ以上の存在って、わたしは北大路欣也しか思い浮かばない。
さて、それでは彼の代表作とはいったい何だったのだろう。
あふれるほどのニュースで「もしもピアノが弾けたなら」が流れているので「池中玄大80キロ」をあげる人も多いと思う。杉田かおるとのからみは確かにいい感じだった。しかしこのドラマは(松木ひろし脚本の常とはいえ)わたしにはちょっと濃すぎた。主人公が善人すぎたというか。
「釣りバカ日誌」があるだろうという向きも多いと思う。
ハマちゃん役はわたしが理解できないぐらい(なぜ三國連太郎が出演を受諾したのかもふくめて)ヒットした。西田の明るさはあの能天気なサラリーマン役に確かにふさわしかったのだろう。でも実はわたしは釣りバカ日誌を1本も観ていません。いつも焼きそば屋でビッグコミックオリジナルを読んでいるのに。あの頃、松竹の必死さがちょっとしんどかったんだよね。
では、わたしにとっての西田敏行の代表作はこの3作です。
「港町純情シネマ」
「淋しいのはお前だけじゃない」
「タイガー&ドラゴン」
いずれもTBSのドラマ。市川森一さんと宮藤官九郎脚本。西田敏行とは、このようにちょっと乾いたアメリカの俳優っぽいところがなかったですか?ああ哀しい。
PART2白井佳夫篇につづく。
もうしわけないけど、完全ネタバレでいきます。
先に見てきた息子が
「なんだか、暗い話なんだよなあ」
「レディー・ガガはどうだった?」
「ガガはすごくよかった」
うーん、わたしもこの映画は見るつもりだったので(というかあの「ジョーカー」の続篇を見逃すはずがない)、休日に映画館へ。
まさしく、息子が言う通りの作品でした。ビョークが主演した「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と双璧をなすような、史上もっとも陰鬱なミュージカル。
オープニングからして暗い。刑務所に収監されたジョーカーを演ずるホアキン・フェニックスの身体は、前作にもまして細くなっている。彼は精神科で音楽セラピーに参加していたリー(レディー・ガガ)と恋に落ちるが……
悲惨な現実と、夢想するミュージカルシーンの落差を強調したかったのはわかる。トッド・フィリップスの演出はていねいだし、使用曲も
(They Long To Be) Close To You
That’s Entertainment
Bewitched
That’s Life
これにビリー・ジョエルの「マイ・ライフ」まで挿入されるのだ。ぜいたくなこと。
しかし、マーゴット・ロビーのイメージが強いハーレイ・クインにレディー・ガガを起用し、バットマンの世界(ハービー・デント検事もちゃんと出てくる)を描くという期待はみごとに裏切られる。前作のラストの高揚をわざわざ否定するためにつくられたとしか。
あの階段もちゃんと描かれるが、それがどんな時かというと……あ、これはさすがに言えない。
フォリ・ア・ドゥとは心理用語で「ふたり狂い」だとか。お互いが影響し合うことで狂気が進行する。それをタバコの煙で象徴するあたり、うまいんだけどなあ。
第38回「まぶしき闇」はこちら。
長いことこの大河を観てきて、今回が一番泣けたかもしれない。
それは、紫式部の弟、藤原惟規(高杉真宙)の死が描かれたからだ。考えてみてほしい。このドラマでは登場人物の多くが腹に一物かかえていて、特に今は皇統がどうなるかで大騒ぎだ。
でも惟規は違う。自分の立身出世に「そんなに働いたおぼえはないんだけどなー」と照れ(あるいは姉と藤原道長の関係のおかげなのかとニヒっている)、同時に姉の気持ちを理解もしている。乳母であるいと(信川清順……この人はいいですよね)からは若様と呼ばれ、一家の人気者だ。しかし、父為時(岸谷五朗)が越後に赴任するのに同行し、途上で亡くなってしまう。
思えば、このドラマで最も愛すべき人物だったのだ。一種の評論家としてこのドラマを上空から俯瞰してもいた。残念。
才のない人物が、才がないことを意識することは苦痛であるはずなのに、この弟はそれを微塵も感じさせなかった(和歌の才はめちゃめちゃあったらしいけれども)。姉が優秀な人物であることに、ただただ誇りをもっていて、彼女の苦境に見て見ぬふりをする気づかいもあった。
大石静さんとしても物語をつむぐ上で、とても貴重な人物だったはず。だからナレ死ではなく、あれほどの尺を使ったのだろう。いやー泣いちゃいました。
「この人、もうすぐ死んじゃうらしいんだよね」
いっしょに見ていた妻にいうと
「そうなの……でも今日じゃないわよね?」
いきなりでした。で、来週は誰が死ぬんですか?わたしは「鎌倉殿の13人」を経過しているので、たいがいのことでは驚きませんよ。
「名探偵のはらわた」「名探偵のいけにえ」などでわかっていたつもりだったけれど、今回はグロさがパワーアップしています。人間が簡単に爆発し、内臓が飛び出てくる。しかもラストでは……
「ねえ、どうしてこの本を買ったの?」と司書に。
そうです。うちの中学の図書室にあったんです。
「いやーなんか面白そうなんで(笑)」
「うん、まあこういうのが好きな中学生もいるかもね」
まあ少ないとは思いますが。
量子力学をからめて、展開はまことに複雑。でも伊坂幸太郎が推薦するように、きちんとしたミステリになっている(んでしょう。途中で検証は放棄しました)。それにしてもめんどくさいことを考える人もいたものだ。