ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

四季の自然風景

2018-11-23 15:19:45 | 風景写真

 四季の自然風景と題して、2010年から2017年の間に撮影した自然風景の中から16点を選んでみた。ここで今一度初心に戻って、私自身のために、自然風景写真に対する考えを整理しておきたいと思う。

 1975年、OLYMPUS OM-2 というフィルムカメラで写真を撮り始めた。現在でも、写真撮影は単なる趣味である。写真学校にも通っていないし、誰にも師事していない。撮影機材は最高級ではないし、撮影できる日は週末だけ。それでも、アマチュアだからという妥協はしたくない。そんな気持ちで撮り続けて43年。フィルム時代の被写体は主に昆虫で、ホタル、特にゲンジボタルの生態写真は、ポジフィルムで1,500カットを越える。2010年にデジタルカメラを購入してからは、自然風景写真も積極的に撮り始めた。
 昆虫写真は、目の前の被写体に対して、その種類や形態の特徴が分かる図鑑写真を撮る、あるいは生活史の一部瞬間という生態写真を撮るという目的を持って、その美しい姿を美しく写したい。勿論、被写体がいなければ撮ることができず、また産卵や羽化などのシーンに出会うのも苦労する。運の良さと生態の知識、そして撮影技術が必要だ。被写体とそのシーンに出会えれば結果は残せるし、場合によっては学術的に貴重な記録にもなるだろう。では、自然風景写真はどうだろうか。

 自然風景写真は、自然の「美」を表したものに他ならない。まずは「美しい風景」に出会うことが必要だ。では「美しい風景」とは、どのような風景だろうか。そもそも「美」とは、広辞苑によれば「知覚・感覚・情感を刺激して内的快感をひきおこすもの」、ブリタニカ百科事典では「美には直接の感覚による美があるが、他方、直接感覚に依存せず精神的に感じられる美もある」としている。つまり「美しい風景」とは、人の心を激しく揺さぶるような、見る人に強烈な印象を残し、見る人の記憶に深く刻み付けられる「情景」なのであろう。
 「情景」は、いつも、どこにでも存在するのだろうか。見る人の感じ方によって様々であろう。日本には有名な景勝地が多くあり、絶景と言われる風景もあるが、その風景を単に写しても眺めた結果でしかない。おそらく、造形という固定的なものに色彩や光などと言った変動的な要素が加わり、そこに何か心から感じるものがばければならないだろう。
 心から感動する情景に出会ったら、自分は一体、何を美しいと感じ、何に感動しているのかを明確に認識すること。そしてそれをどう表現すればよいのかを考えた上で、構図、露出を決定して、シャッター・チャンスを狙って撮る。それが、自然風景写真なのだと思う。
 撮影した自然風景は、一枚の印画紙、或いはjpeg画像をWebで公開することで結果(作品)となる。フィルムでは、印画紙への印刷時やデジタルスキャニングで多少の調整ができるものの、撮影時で結果の90%以上が決まると言っても過言でないだろう。一方、デジタルカメラでの撮影は、RAWで撮影すれば、現像ソフトでかなりの調整ができる。ポジフィルムほどの情報量はないが、細かな露出の調整ができるため、フィルムでは不可能であった領域も表現できる。当然、過度の修正を加えれば現実とは違う風景になり、情景とはほど遠いものになってしまうから慎むが、撮影後にもう一度見つめ直すことができる点では、作品作りに有利であるかもしれない。

 これまでに関東甲信越を中心に「桜」「新緑」「紅葉」「霧氷」等をテーマにして自然風景写真を撮ってきた。ここに2010年から2017年の間に撮影した自然風景の中から勝手ながら自己満足の高い写真を16点選んで掲載してみたが、並べてみれば有名な景勝地の定番という風景が多い。中には、現地に何度も通ったり、マイナス23℃という極寒の中を徒歩で何キロも歩いて撮影した写真もあるし、勿論、自分なりに感動した情景なのだが、「目の前の自然と対峙して得た結果か」と問われれば自信がない。
 今年も年末に、この一年で撮影した自然風景(昆虫の写真も)の中から、自己満足の範疇でベスト10を決めて掲載しようと思う。今回掲載した16点と比べて進歩のない写真ばかりかもしれないが、多くの反省を踏まえつつ、今後も撮り続けようと思う。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

上高地/田代池の霧氷の写真

上高地/田代池の霧氷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F18 1/6秒 ISO 50 +1EV(撮影地:長野県松本市/上高地 2013.01.05)

ダイヤモンドダストとサンピラーの写真

ダイヤモンドダストとサンピラー
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市/霧ヶ峰高原 2013.01.27)

カラマツ霧氷の写真

カラマツ霧氷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F16 5秒 ISO 400 +1EV(撮影地:長野県諏訪市/霧ヶ峰高原 2013.01.27)

美ヶ原高原の霧氷の写真

美ヶ原高原の霧氷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 0.8秒 ISO 100 +1/3EV (撮影地:長野県松本市/美ヶ原 2017.11.19)

蒲生の棚田の写真

蒲生の棚田
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F10 1/100秒 ISO 100 +1EV(撮影地:新潟県十日町市 2015.4.25 5:46)

今井の桜の写真

今井の桜
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:千葉県白井市 2016.4.9 6:13)

駒つなぎの桜の写真

駒つなぎの桜
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 1/1600秒 ISO 100 -1EV(撮影地:長野県下伊那郡阿智村 2014.4.19)

山桜の写真

山桜
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/30秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:東京都奥多摩町 2014.4.19 6:50)

中綱湖/オオヤマザクラの写真

中綱湖/オオヤマザクラ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 0.5秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県大町市 2017.5.04)

大山千枚田の写真

大山千枚田
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F16 1/30秒 ISO 100(撮影地:千葉県鴨川市 2012.4.7)

奥四万湖/浮島の写真

奥四万湖/浮島
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 0.5秒 ISO 100(撮影地:群馬県吾妻郡中之条町 2016.5.15)

ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 3秒×69カット多重 ISO 1600(撮影日:2012.06.08)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 30分相当多重 ISO 400(撮影日:2017.6.09)

美人林の写真

美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F8.0 1/4秒 ISO 100 -1EV(撮影地:新潟県十日町市 2017.10.08)

まいめの池/紅葉の写真

まいめの池/紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/4秒 ISO 100(撮影地:長野県松本市・乗鞍高原 2015.10.18)

九十九谷の写真

九十九谷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 1/100秒 ISO 100(撮影地:千葉県君津市 2016.2.21)

雲見千貫門の写真

雲見千貫門
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F22 1.3秒 ISO 100(撮影地:静岡県賀茂郡松崎町 2012.1.2)

富士山と霧氷の写真

富士と霧氷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 0.5秒 ISO 100 +1EV(撮影地:長野県塩尻市・高ボッチ高原 2012.12.02)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


シルビアシジミ

2018-11-19 18:13:13 | チョウ/シジミチョウ科

 シルビアシジミ Zizina emelina emelina (de l'Orza, 1869) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ族(Tribe Polyommatini)シルビアシジミ属(Genus Zizina)に分類される体長10mmほどのシジミチョウで、昆虫学者でもあった中川和郎氏(国立がんセンターの初代所長)の娘の名前にちなむ。年に4回程発生し、幼虫で越冬。成虫は4月下旬から11月頃までほぼ連続して見られる。羽化する時期によって低温期型と高温期型があり、低温期に羽化する個体は青い鱗粉が濃く(メスにも前翅表基部に弱い青藍色斑が現れ)また、高温期型に比べてとても小さい等の形態的特徴がある。

 シルビアシジミは、1877年(明治10年)に発見された栃木県さくら市を東北限とした本州、四国、九州に分布し、河川敷やシバ状の草地など草丈の低い開放的な草原環境に生息し、マメ科のミヤコグサ(Lotus japonicus)などを食草としている。もともと里地里山や平野部などの人間生活に近い場所に生息していたため、土地開発によって大きな影響を受け、1980年以降、全国的に著しく減少している。本種は、発生時期において各個体が羽化するタイミングの同調性が低く、成虫の寿命が短いこと、また昆虫類特有の感染症の影響、更に本種は、移動性が低いために地域ごとに異なる遺伝子のタイプをもっていることから近交弱勢が進み、各個体群ごとの遺伝的多様性が低下し、個体数が著しく減少している。
 環境省RDBカテゴリでは、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定され、東京都、埼玉県、愛知県、岐阜県、滋賀県、和歌山県、高知県、愛媛県では絶滅、その他分布域のほとんどの府県で絶滅危惧Ⅰ類に選定している。栃木県さくら市では、市の天然記念物に指定しており、採集を禁止している。関東周辺においては、栃木県では鬼怒川水系と渡良瀬川水系のみ、山梨県では、富士川の河川敷等に生息、千葉県では、銚子や白浜にミヤコグサの群生地があるが、銚子では絶滅し白浜でも見られない。同県では房総の一部の農地に点在しているのみで、絶滅危惧Ⅰ類および重要保護生物に指定されている。

 シルビアシジミは、2013年から千葉県某所に通って観察と撮影を続けてきた。発生時期にはヤマトシジミ Zizeeria maha argia (Menetries, 1857) も出現し、飛んでいる様子を見ただけでは区別がつきにくいが、葉上に止まった時に翅裏の斑紋パターンを見れば、後翅裏面第6室基部の黒斑が第7室の黒斑の直下に位置することで容易に判別できる。
 昨今、比較的近縁なヤマトシジミとの交雑種(ハイブリッド)が出現しているという情報がある。両種の特徴がそれぞれ翅裏の斑紋や翅表の色彩等に現れていると言う。研究では、南西諸島に生息する近縁種のヒメシルビアシジミ Zizina otis riukuensis (Matsumura, 1929) との交尾が確認されており、ヤマトシジミにおいては、交尾は確認されてはいないものの両種間で強い関心を示すことが明らかになっており、交雑種が出現する可能性も示唆されているが、筆者は、確認していない。
 千葉県の生息地では、食草のミヤコグサも自生しているが、草地にわずかばかりであり、本種は「食草転換」をしシロツメクサを主食としている。背丈が低い草地や草がまばらに自生し地面が露出している農道を好み、地面スレスレにすばやく飛翔する様子が見られる。産卵も植生のまばらな裸地的な場所にあるシロツメクサに行われている。こうした事は他の地域でも見られる。大阪(伊丹)空港の滑走路脇の草地などでシロツメクサを主食として大繁殖している。航空機の誘導灯が草に覆われないよう頻繁に草が刈られていることで生態系が保たれ、また食草転換することで生き延びて繁殖を続けていると言われている。千葉県の房総地域では、地主の高齢化により草刈りが行われなくなり、背丈の高い草に一面埋もれてしまうなどで消滅してしまう生息地も見受けられるが、撮影地である生息地は、春季の刈り払いによる畦畔と毎月行われる刈り払いの畦畔が共存し、この環境が本種の生息につながっていると考えられるが、個体数の少なさを観察に訪れる度に感じる。
 地味なチョウではあるが、生息地ごとに遺伝子タイプが異なっていることから斑紋にも地域変異があり、標本マニアによる採集・乱獲も頻繁に行われている。幸い撮影地である生息地では、網を持った採集者はこれまで見たことがなく、地元の方にも本種の生息は知られていないので、里山管理が継続して行われることを期待し本種の存続を祈りたい。また、当地における気温と羽化時期の関係も不明であり、これまで羽化直後の翅が擦れていない個体の開翅写真も撮影できていないので、今後も観察と撮影を継続していきたい。

参考文献
坂本佳子 (2015). 絶滅危惧種シルビアシジミにおける遺伝子構成とボルバキア感染. 昆虫DNA研究会ニュースレター, 23, 11-18.
坂本佳子 (2015). シルビアシジミの生息域外保全に向けた保全単位の決定. 昆虫と自然, 50(2), 12-16.

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

シルビアシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 250 +1/3EV(撮影地:千葉県 2014.9.27)

シルビアシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2013.10.13)

シルビアシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 320(撮影地:千葉県 2014.9.27)

シルビアシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2014.4.26)

シルビアシジミ(オス開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2014.4.26)

シルビアシジミ(オス開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2014.4.26)

シルビアシジミ(メス開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:千葉県 2014.10.11)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


天使のはしご

2018-11-15 19:47:40 | 風景写真

 天使のはしごとは、雲間から光が漏れて、太陽光線の柱が地上へ降り注いで見える自然現象のことである。「天使のはしご」という呼び名は、ヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たという旧約聖書創世記28章12節に由来しているらしい。気象用語では「薄明光線」や「光芒」と呼ばれている。少し前のブログ記事(秋は「夕暮れ」)の2枚目の写真「日本海に沈む夕日」が、典型的な「天使のはしご」と言えよう。
 本記事では、里山に降り立つ「天使のはしご」を集めてみた。天から降り立つ神々しさよりも、地上に降り注いだ自然現象的な印象が強い写真ばかりではあるが、これらは、限られた条件のもとに見られる光景であり、光の魅力と魔力を感じた一時であり、私的には「生命のはしご」と呼びたい。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

棚田と光芒の写真

棚田と光芒
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1/50秒 ISO 100(撮影地:新潟県十日町市/星峠 2013.5.18 5:05)

棚田と光芒の写真

棚田と光芒
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1/15秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:新潟県十日町市/星峠 2013.5.18 4:57)

棚田と光芒の写真

棚田と光芒
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1/40秒 ISO 100(撮影地:新潟県十日町市/星峠 2013.5.18)

棚田と光芒の写真

棚田と光芒
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1/80秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:新潟県十日町市/星峠 2013.5.18)

棚田と光芒の写真

棚田と光芒
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/125秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市/大山千枚田 2018.3.25)

湖と光芒の写真

湖と光芒
Canon EOS 7D / SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG / 絞り優先AE F11 1/400秒 ISO 200 +1EV(撮影地:千葉県君津市/亀山湖 2015.11.29)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


テングチョウ

2018-11-13 19:46:31 | チョウ/タテハチョウ科

 テングチョウ Libythea celtis Moore, [1858]  は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)テングチョウ属(Genus Libythea)で、国内には本種1種のみが生息している。ただし、日本本土亜種 Libythea celtis celtoides と琉球亜種 Libythea celtis amamiana に分けられ、北海道亜種 Libythea celtis matsumurae は絶滅している。頭部の触角の内側に前方に伸びる突起(下唇髭)があり、これが天狗の鼻のように見えることが和名の由来である。下唇髭は他のチョウにもあるが、本種は複眼径の3倍以上も伸びているのが特徴になっている。
 平地から山地を生息域とし、幼虫の食樹であるエノキが生える雑木林や、森林の河川や渓谷など幅広い場所でよく見られる。成虫は年1回(稀に年2回発生)6月頃に発生し、盛夏には休眠する。秋に再び活動してそのまま成虫で越冬し、春先から再び活動して5月頃に産卵する。
 青森県のRDBでは準絶滅危惧種として記載しているが、他の地域では普通種であり、昨今、広島、兵庫、和歌山など西日本各地や山梨など東日本でもテングチョウも大量発生が話題となっている。 猛暑や少雨、天敵との関係などが推察されているが、詳しい原因は分かっていない。

 テングチョウは、東京都内の多摩西部では普通に見られるチョウで、時折、撮影もしていたが、単独の記事としてまとめたことはなかった。過去に撮影した写真を整理すると、雌雄の違いが分かる写真と、小集団ではあるが、20頭ほどが集団吸水していた写真を撮っていたので掲載することにした。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

テングチョウの写真

テングチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:埼玉県 2018.05.26)

テングチョウの写真

テングチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:東京都 2012.06.17)

テングチョウ集団吸水の写真

テングチョウ(集団吸水)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:東京都 2016.06.12)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


チョウの北上

2018-11-08 16:39:29 | チョウ

 日本ではここ100年の間に年平均気温が約1℃上昇し、昨今では豪雨による自然災害も頻発するなど気象の大きな変化が目立っているが、この変化は生物の世界にも変化を及ぼし、桜の開花が年々早まる現象が起きている。影響は植物のみならず昆虫にも変化が見られる。例えば、南方系(暖地系)のチョウが日本列島を北上し、これまで記録の無かった地域で繁殖しているのである。40年以上前に千葉県の松戸市でモンキアゲハが飛んでいたのを見た時は、「何で南のチョウが・・・」と驚き、そして興奮したものだが、今ではすっかり定着し普通種になっている。現在、東京都内においては、以下の7種が見られ2種を除いて定着しているので、写真とともに挙げてみた。

  • モンキアゲハ Papilio helenus nicconicolens Butler, 1881 越冬態:蛹
  • ナガサキアゲハ Papilio memnon thunbergii von Siebold, 1824 越冬態:蛹
  • ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius hyperbius (Linnaeus, 1763) 越冬態:幼虫または蛹
  • クロコノマチョウ Melanitis phedima oitensis Matsumura, 1919 越冬態:成虫
  • ムラサキツバメ Arhopala bazalus turbata (Butler, [1882]) 越冬態:成虫
  • ウラナミシジミ Lampides boeticus (Linnaeus, 1767) 越冬態:卵,幼虫,蛹,成虫だが、東京では越冬できない
  • クロマダラソテツシジミ Chilades pandava (Horsfield, [1829]) 越冬態:卵,幼虫,蛹,成虫だが、東京では越冬できない

 チョウは、自らが耐寒性を増大させたり、休眠期間を長くさせるなどの適応能力を持つが、これらチョウの北上は、気温の上昇(温暖化)と極めて密接な関係があることが分かっている。例えば、ナガサキアゲハは各都市の年平均気温が約15℃を超えると侵入し生息するようになると言う。ただし、越冬態によっては冬の寒さが生存個体数に影響し、発生数や分布域の拡大を左右しており、ウラナミシジミにおいては、発生を繰り返しながら北上してきても、最終的には越冬できずに死んでしまう。
 北上後の繁殖においては、食草も関係しており、食草が限定的な地域にしかなければ、チョウの繁殖域も限定的になるが、園芸種のパンジー等も食べるツマグロヒョウモンでは、公園や庭先も繁殖域であり、北上後に爆発的に繁殖しているようである。
 チョウの北上は、日本に限ったことではない。カナダ・モントリオールで、これまで同国で生息が確認されていなかった中南米産のアゲハチョウの一種 クレスフォンテスタスキアゲハ Papilio cresphontes Cramer, [1777] の幼虫が発見された。他のチョウ類の生息域は10年に平均16kmのペースで北上しているのに対し、クレスフォンテスタスキアゲハはその15倍もの速度で生息域を北上・拡大していると言う。これまで生育可能な個体数を維持するのが困難であった地域にも進出し、現在までに400kmにもわたって生息域を広げており、寒冷な国で進む温暖化の影響だとしている。

 チョウの北上は、種によっては生態系に影響を及ぼす場合もある。クロマダラソテツシジミはソテツが食樹で、メスは300個ほどの卵をソテツの未展開葉や展開後間もない柔らかい葉に産む。孵化した幼虫は柔らかな葉を食害し、未展開の新芽を食べつくすこともあるのである。クロマダラソテツシジミは、産卵から羽化までが25~32℃条件で平均18.5日、30℃定温では12日で羽化する個体もいると言われているが、11月中旬以降はソテツの新葉の展開はなく、耐寒性の弱い蛹は羽化できずに死亡、羽化しても正常に羽が伸ばせずに成虫で死亡するので、世代交代はしていないようである。
 クロマダラソテツシジミは、チョウ自身の北上の他、ホソオチョウやアカボシゴマダラのように愛好家による「放チョウ」の噂が絶えない。本種の成虫は美しい色彩をもち、季節によって斑紋に変異を生じることから愛好家による人気が高く、飼育も容易であることが要因として挙げられる。

 北上はチョウに限ったことではなくトンボ等にも見られるが、昆虫が自ら生息分布を広げ北上するのは本能であり罪はない。しかし反面、寒さを好む北方系の昆虫の生息分布が狭くなっている現実もある。これら現象は、人為的な「温暖化」が一番の原因であることを知っておくべきだろう。ただ、温暖化は地球規模で起きているため、我々一人一人が危機感を持って何かを始めても食い止めることは難しいかもしれない。

参考文献
北原正彦, 入來正躬, 清水剛(2001) 日本におけるナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)の分布の拡大と気候温暖化の関係. 蝶と蛾(日本鱗翅学会誌)52(4):253-264.
北原正彦(2006)チョウの分布域北上現象と温暖化の関係地球環境研究センターニュースVol.17 No.9
河名利幸、安田清作、鎌田由美子 ほか、千葉県におけるクロマダラソテツシジミの初発生確認後の分布拡大と越冬の可能性 関東東山病害虫研究会報 Vol.2010

モンキアゲハの写真 モンキアゲハの写真

モンキアゲハ

ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真

ナガサキアゲハ(左:オス 右:メス)

ツマグロヒョウモンの写真 ツマグロヒョウモンの写真

ツマグロヒョウモン(左:オス 右:メス)

クロコノマチョウの写真 クロコノマチョウの写真

クロコノマチョウ(左:夏型 右:秋型)

ムラサキツバメの写真 ムラサキツバメの写真

ムラサキツバメ(左:オス 右:メス)

ウラナミシジミの写真 ウラナミシジミの写真

ウラナミシジミ(左:オス 右:メス)

クロマダラソテツシジミの写真

クロマダラソテツシジミ

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


秋は「夕暮れ」

2018-11-03 20:58:32 | 風景写真/秋

 今年もあと二ヶ月。12月は癌の手術で入院するため、ほとんど遠征ができないので、今月が事実上の締め。昆虫撮影は天候と気分次第で「サツマシジミ」を予定。自然風景写真は、奥日光の小田代ヶ原の霧氷、美ヶ原の霧氷、新潟の星峠及び蒲生の棚田を予定しているが、すべて体調と天候次第。目指す光景が撮れない時は、過去に撮影した数千カットを見直して再現像し、未掲載の写真を中心に紹介していきたいと思っている。

 平安時代中期の女流作家・歌人である清少納言は、随筆「枕草子」で春と冬は「朝」、夏は「夜」、秋は「夕暮れ」が良いと詠っている。「枕草子」は 人生や自然、外界の事物の断面を鋭敏な感覚で描いたものだが、自身の素朴な体験と印象をただ羅列するのでなく、不遇の中でめめしい情緒に流されまいとする心のたたかいのもとに詠っているという。
 私自身の自然風景写真を「枕草子」と並べるのはおこがましいが、清少納言が美しいと思う四季をもとに整理すると、私の自然風景写真は、春と冬の朝が50%、夏の夜が30%、秋の夕暮れがは20%の割合であった。夏は当然のことながら「ほたる」であり、冬は霧氷が多いが、秋の夕暮れ、しかも夕日も写した写真はたった数枚しかなかった。
  「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、からすの寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。 日入りはてて、風の音、虫のねなど、はたいふべきにあらず。 」
 そのような風情は全く感じられない「秋の夕暮れ」写真だが、以下に、ブログでは未掲載の3枚を並べた。霧ヶ峰の夕暮れ写真は、「ススキのある風景」にも追加掲載しているのでご覧いただきたい。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

秋の夕日の写真

秋の夕日/霧ヶ峰高原
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/4秒 ISO 100(撮影地:長野県松本市・霧ヶ峰高原 2012.10.20 16:55)

日本海に沈む夕日の写真

日本海に沈む夕日
Canon EOS 7D / EF28-80mm f/3.5-5.6 USM / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 -1/3EV(撮影地:新潟県糸魚川市能生 2018.9.22 17:05)

日本海に沈む夕日の写真

日本海に沈む夕日
Canon EOS 7D / EF28-80mm f/3.5-5.6 USM / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:新潟県糸魚川市能生 2018.9.22 17:33)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.