ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヒメボタル(長野2021)

2021-07-25 19:38:43 | ヒメボタル

 長野県のヒメボタル生息地を初めて訪れた。長野県におけるヒメボタル生息地は何カ所かあるが、今回はそのうちの一つ、標高1,450m付近に生えるカラマツとブナ、ミズナラの混合林を観察と撮影の場所に選んだ。ヒメボタルの生息地の標高としては知る限り2番目に高い。もっとも高標高の生息地は山梨県で約1,700m、3番目は岐阜県の約1,370mである。ちなみに前回の静岡県の生息地は約1,200mである。

 7月24日(土)この日は前日夜から車中泊で乗鞍高原入りしており、午前11時までゼフィルスとトンボ探索を行った。「まいめの池」付近ではツキノワグマと遭遇するなどし(後日掲載)結局、目的の昆虫撮影は達成できず、午後からヒメボタル生息地へ移動。現地には16時に到着し、早速、生息環境を視察。ただし、肝心のヒメボタルの発生数、発生時期、飛翔場所等の情報はインターネットの不確実な情報だけで、今、発生しているのかも分からない状況である。
 いったん、駐車場に止めた車に戻り日暮れを待った。まだ他には誰もいなかったが、18時を過ぎると車が2台到着。しばらくすると、大きな三脚を担いて森の方へと向かって行った。どうやら発生はしているようである。18時半、こちらも準備を整え森へと向かうことにした。
 もう一度、環境を見まわし、ある場所にカメラを据えることにした。これまで日本各地で観察してきたヒメボタルの生息環境とヒメボタルの飛翔行動の知見から「ここなら、こんな風に発光飛翔するだろう」と予測できる場所であった。しかし、実際に飛んでくれるかは夜にならないと分からない。初めての場所なので、数頭が飛んでくれれば良いという思いで日没を待った。
 気温20℃で曇り。満月という悪条件の日ではあったが、月の出時刻は19時半。運よく東方向には2,000m級の山々があるので、月明りの害はない。待つこと1時間。西の空が暗くなった19時33分。一番暗い場所で1頭が発光を始めた。まずは発生していたことに安堵する。その後、少しずつ発光する数が増え、予測通りのコースを飛翔するようになった。見渡す範囲では、思っていたより多く20頭ほどのヒメボタルが発光し飛び交っていた。暗い森のあちこちで点滅するヒメボタルは、やはり幻想的である。不思議なことに、黄金色のフラッシュ光の個体は少なく、黄色の光をゆっくり発したり、かなり明るい光を発する個体もいた。また、飛翔スピードもゆっくりであった。
 20時半で観察と撮影を切り上げた。駐車場に戻るまでの区間では、ヒメボタルは、まとまった数ではないが、かなり広範囲を飛翔していた。駐車場に戻ると、車は10台ほどに増えており、懐中電灯を付けて観賞に向かう親子連れとすれ違った。新型コロナウイルスの影響がなければ、大勢のカメラマンや観賞者が訪れるだろう。当生息地は、長野県が管轄する八ヶ岳中信高原国定公園内の原生林であり、ヒメボタルにとっては手つかずの自然でなければならない。観光客誘致の資源として利用しているようだが、来訪者への指導ができないならば、観光協会等がインターネットで情報発信することは避けるべきだろう。

 長野県のヒメボタルとして、今回も二枚の写真を掲載した。どちらも時間連続性がないため写真芸術の観点からは外れるが、ホタルの生態学的観点からは、1枚目の3分相当の比較明合成は、ヒメボタルの発光飛翔ルートが分かるものとなっている。また、光の点と点の間隔が狭いので、飛翔スピードがゆっくりであることも分かる。2枚目の14分に相当する比較明合成は、単に「見栄え」を重視した創作ではあるが、範囲個体数がそれなりに多い生息地であるということは分かる。
 今季、ヒメボタルの生息地は5カ所、ゲンジボタルは4カ所、ヘイケボタルは1カ所において、観察と撮影を行い、すべての場所でホタルの生態と生息環境等の新たな知見を得ることができた。今年は既に時期的なこともあり今後の観察と撮影の予定は未定だが、緊急事態宣言の解除後は東北方面においてヒメボタルの保全指導を行うため、全力で最善を尽くして参りたい。

追記:当地でも同標高の乗鞍園地でも同日にクロマドボタルのオス成虫を多数見かけた。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ヒメボタルの森
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル F1.4 ISO 1600 3分相当の比較明合成(撮影地:長野県 2021.7.24 20:00)

ヒメボタルの森
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル F1.4 ISO 1600 14分相当の比較明合成(撮影地:長野県 2021.7.24 20:30)

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ヒメボタル(静岡2021)

2021-07-23 18:00:36 | ヒメボタル

 ヒメボタルの生息地がある静岡県を今年も訪ねた。標高1,200m付近に広がるブナやカエデなどの巨木がたたずむ原生林である。海から吹き上げる風によって霧が発生しやすく、樹木や林床の放置木は苔むしている。ここのヒメボタルは深夜型で22時を過ぎると光りながら飛翔し始め、 23時を過ぎる頃から真っ暗な原生林が光の明滅で埋め尽くされる。全体では、数千頭規模の生息数だと思われる。
 このヒメボタル生息地を始めて訪れたのは、2010年の7月。当時は、撮影者は勿論、観察者も誰一人といなかった。初訪の時は、時間が早かったのか1頭も光っておらず、恐怖感から待機もできず退散。2回目は、濃霧でまったく何も見えず退散。1年待った2011年、誰もいない漆黒の闇に乱舞するヒメボタルを親友と2人で観察し、写真に収めた。その後、この生息地はインターネットで情報が広がり始め、2015年頃からは大勢のカメラマンや観賞者が来るようになってしまった。今回で8回目の訪問、写真撮影では6回目になる。

 7月21日。仕事は午前中だけ。昼に退社しゆっくりと向かったが、現地には16時到着。深夜型のヒメボタルを撮るため6時間以上も前に生息地に来るものはいない。毎回の事だが、早速、環境調査を行う。気温24℃。時折、霧で覆われたが後に晴れた。
 撮影のためにカメラもセットする。今回は、フルサイズのCanon EOS 5D Mark Ⅱ は映像撮影のみとして使い、写真はCanon EOS 7D に広角レンズを付け、フルサイズで35mm相当の画角で、これまで撮影していない方向を撮ることにした。4連休前の平日ということもあって、やってくる車の数は少ない。結果10台で12人(カメラマンは11人)。この日、心配なのは人の数よりも「月」である。月齢11.4の大きな月が輝いている。月が無ければ真っ暗な森の中だが、今回は月明りがブナの森の林床に木漏れ日のように射している。22時半を過ぎた頃、少しずつヒメボタルが光り始めた。ただし、あまり飛ばない。月がかなり傾いた午前0時から、ようやく発光飛翔数が増え、今年も多くの数が発生していることを確認できた。
 他のヒメボタル生息地では見たことがないが、当地では5mほどの梢から舞い降りてくる個体がいる。多くは、林床や下草で暗くなるまで休んでいるが、活動時間が終了する午前1時を過ぎると梢に上がっていく個体が見られる。何故かは分からないが、きっと理由があるに違いない。

 この日は、観賞者はなく良識的なカメラマンばかりで安心したが、単にヒメボタルの写真を撮りに来たのだという印象を受けた。私は観察も目的であるから、発光飛翔が始まれば、ずっとカメラの脇で最後までホタルを見ているが、「写真」が目的ならば、撮影はカメラに任せて自分は森から出て車の近くで会話を楽しんでれば良い。ヒメボタルの写真は、自宅に帰ってからパソコンで現像しソフトで比較明合成する作業で作り上げるものと化しているのである。

 私は2時間半の間、ヒメボタルとの会話を楽しみ、今回も彼らから多くの大切な事を学ばせてもらった。感謝したいと思う。
 以下には、同じカットの写真3枚を掲載した。まずは生息環境を写したもの、そして2分と10分相当の比較明合成した飛翔風景写真である。どちらが良いかは、ご覧頂く方々の判断にお任せしたい。また、映像については、今回撮影したものに昨年同生息地で撮ったもの、そして2018年に岩手県のヒメボタル生息地で撮ったものを加えて編集した。ヒメボタルは、杉林や竹林、畑上を乱舞する生息地もあるが、今回の映像は、いずれも「ブナの原生林」に舞うヒメボタルで「Firefly Forest in Japan」と題した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒメボタルの森の写真

ヒメボタルの森
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F14 8秒 ISO 100 (画角35mm)(撮影地:静岡県 2021.7.21 17:04)

ヒメボタルの森の写真

ヒメボタルの森
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 ISO 1600 120秒相当の比較明合成 (画角35mm)(撮影地:静岡県 2021.7.22 0:51)

ヒメボタルの森の写真

ヒメボタルの森
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 ISO 1600 10分相当の比較明合成 (画角35mm)(撮影地:静岡県 2021.7.22 0:08)

Firefly Forest in Japan

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富士山と夏の天の川

2021-07-22 09:21:55 | 風景写真/星

 17日は前記事のようにヒメボタルの観察と撮影を行い、終了後に上を眺めると雲一つない満天の星。迷わず富士山と夏の天の川撮影のために移動。向かった先は、北富士演習場である。
 北富士演習場は、富士山北麓の山梨県富士吉田市、山中湖村にまたがる陸上自衛隊の演習場だが、日曜や祝日に立入日があり一般の人でも演習場に入ることができる。面積は4,597haもある広大な草原であり、絶滅が危惧されるチョウ類も多く生息している。光害はなく星空撮影にも向いており、時期的に富士山の真上に天の川が伸びる光景が撮れるタイミングであり、その地を選んだ。
 ポイントに22時から待機。空にはまだ半月が輝いていたが、23時過ぎに沈んでから撮影を開始した。新型コロナウイルスの影響で昨年は富士の山開きはしていなかったが、今年は登山道に点々と明かりが見えていた。

過去の関連ブログ記事

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富士山と夏の天の川の写真
富士山と夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:山梨県 2021.7.18 0:08)

Mt.Fuji and the Milky Way in summer

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ヒメボタル(山梨2021)

2021-07-18 19:28:53 | ヒメボタル

 ヒメボタルの観察と撮影、先週末は、東京都内における大変貴重な記録を残すことが出来たが、この週末は2008年から通っている山梨県内のヒメボタル生息地へと足を運んだ。今回が11回目の訪問になる。過去の記録を見ると一番早い訪問日は7月16日で一番遅い日は7月24日であった。訪問時の飛翔数は、2008年から2011年までは多かったが、その後は次第に減少傾向にあった。少ない年では、まだ梅雨が明けておらず気温が低かったり、雨が降っていたり、風が強い日であったことから、単に発生ピーク時、或いは活動条件と合致していなかったことが理由であろう。
 さて、今年のヒメボタル発生はどうであろうか。7月16日に気象庁は「関東甲信・東北南部・東北北部が梅雨明けしたとみられる」と発表。平年より早く、翌17日は朝から夏空が広がり、東京では最高気温が33℃ほどまで上昇した。予報では夕立もない。ただし、半月が上空に昇っているのがマイナス要因である。
 自宅を15時に出発し、現地到着は17時。車を止めて軽登山である。ポイントでは、過去10回で一度も撮っていない北斜面のブナ林に林道から向けて写真撮影用として1台セットし、もう1台は、やはり林道から目前が飛翔ルートになっている場所に映像記録用としてセットした。気温は22℃で無風。
 19時22分。ブナ林にて1頭が発光を始め、次第に発光飛翔する数が増えた。半月の明かりが木々の間から部分的に林床を照らすが、それでも20時頃には将に「乱舞」という光景が広がった。このヒメボタル生息地は、カメラマンも観賞者も来ない。森の中で私一人がヒメボタルに取り囲まれる状況。この場では2011年以来であった。
 21時には発光飛翔する数が減ってきたため、こちらも撤収することにした。

 以下に、今回撮影した写真と映像を掲載した。写真でヒメボタルの光が丸い点ではなく伸びているのは、飛翔場所がかなりの急斜面でヒメボタルの飛翔スピードが速いためである。また映像は、急斜面を行き来するヒメボタルを至近距離で捉えている。最適な視聴のために、暗くした部屋で、サウンドをオンにして全画面表示にしてご覧頂きたいと思う。
 今週は4連休が控えている。満月と言う悪条件ではあるが、ヒメボタルの観察と撮影を2カ所で行う予定である。

追記

 ヒメボタルの観察中、他とは違う様子の1頭がめに入った。ゆっくりと飛翔しながら、明滅せずにずっと発光している。クロマドボタルのオス成虫である。以前にも、この場所でクロマドボタルのオス成虫が発光しているのを目撃している。

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ヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM 35mm換算50mm / マニュアル撮影 F2.8 ISO 1600 約10分相当の比較明合成(撮影地:山梨県 2021.7.17 20:00)

ヒメボタル(山梨2021)

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ヒメボタル(東京都)

2021-07-11 17:08:11 | ヒメボタル

これは、東京都内に生息するヒメボタルの貴重な記録写真である

 ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 は、ホタル科(Family Lampyridae)ホタル属(Genus Luciola)でゲンジボタルやヘイケボタルと同じ仲間になるが、幼虫は水中ではなく陸地で生活する陸生ホタルである。その生態はまだまだ謎が多く、生息環境も多岐にわたっている。青森県から鹿児島県まで分布し、標高数メートルの海岸や標高およそ1,700mの山頂、照葉樹林、ブナ林、竹林、河川敷、お堀などに生息している。
 ヒメボタルは、東京都内にも生息している。都内におけるヒメボタルは、秩父多摩甲斐国立公園内の標高およそ700m~1,200mの山地に広く分布しているが、生息場所はかなり局所的である。2004年から観察と撮影を行っている場所は、昨年のブログ記事「ヒメボタル(東京2020)」で紹介しているが、今回は知人T氏に案内いただき、別のヒメボタル生息地を訪れた。
 当地は、標高1,000mを越えるブナとミズナラ、シラカンバの原生林と杉林である。ヒメボタルは両方の林を行き来するが、範囲は50m四方ほどである。ヒメボタルの発光活動時間には二通りあり、ゲンジボタルと同じ19時半頃から21時頃までの薄暮型と23時頃から翌2時頃までの深夜型に分けられ、東京都内に生息するヒメボタルは、知る限りでは薄暮型である。成虫の発生時期はほとんど同じであり、その年の気候によって1週間ほどのズレはあるものの、おおむね7月10日前後から発生し、10日から2週間程度である。

 ヒメボタルの当地における発生は、今年は7月5日頃から始まったようであるが、1日に数頭が見られる程度であり、7月8日に前調査で訪問した時は、発光する個体はゼロであった。ちょうど梅雨の末期で、東京は連日の雨。8日も午後から本降りで、夕方から時折止む時間もあったが、飛翔時間になってから霧が立ち込めてきたため発光しなかった。ヒメボタルは、土砂降りの雨の中でも発光飛翔するが、霧が出るとまったく光らない。また、月が明るいと発光飛翔する個体も減る。
 次に訪問した10日は、朝から青空が広がり、日中の気温も上昇。都心では33℃まで上がった。当地へ到着した17時の気温は24℃。その後も気温は下がらず、無風。一斉に羽化し、相当数の発光飛翔が期待できる天候であった。
 飛翔コースで待機していると、19時24分から発光が始まった。45分頃になると、20~30頭ほどのヒメボタルが静寂に包まれた森の中を黄金のフラッシュ光を放ちながら飛んでいたが、これから飛翔数が多くなる20時になって雷雨となり、残念ながら引き上げることになった。
 当地を含め東京都内のヒメボタル生息地は、いずれも国立公園内にあり、優れた自然の風景地を保護するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的として定められた自然公園法によって開発は規制されているので、森林伐採等の心配は少ないが、観賞者やカメラマンによって荒らされないよう、場所についてはマスコミは勿論のこと研究者に対しても一切口外しないこととする。
 以下に、東京都内におけるヒメボタル生息地の貴重な記録を、昨年に続き掲載したいと思う。当地の最盛期は、まだ数日先のように思うが、また来年の今頃に観察を実施しようと思う。その時は、映像も残したいと思う。

 ヒメボタルは、発光の特徴から写真では丸い光の点に写る。飛翔しながら規則的に発光しているから、その点々を辿れば、写真上で飛翔ルートが分かるわけだが、デジタルカメラで撮影した光跡のカットを何百枚も比較明合成すれば、森の中が光で埋め尽くされる写真になる。創作写真には偽りの合成もあり生態学的価値はないが、幻想的ではあるため、昨今ではヒメボタルの写真を撮ろうと単なるカメラマンが群がる現象が起きている。
 写真を撮る事も創作写真を作ることも否定はしない。ただし、ヒメボタルの基本的な生態を学んでから生息地に行ってもらいたい。インスタグラムでは、相も変わらずヒメボタルが舞う場所に人物を立たせて撮った写真が投稿されている。他にも、農道に深夜の時間帯に路上駐車の列ができたり、カメラマン同士のトラブルもある。是非、被写体は貴重な生き物であることを念頭に、自然環境や周囲への配慮を忘れずに撮影していただきたい。

 今の会社に入社して25年。今回、初めて夏休み(9連休)を頂いたが、あっという間に終了。長野へは、心折れる遠征であったが、最後に東京都内に生息するヒメボタルの貴重な記録を残すことができた。All's well that ends wel ! 今月は、まだ週末3回に4連休もある。緊急事態宣言中になるが、いつものように感染対策を徹底して行いながら長野、山梨、静岡へ、ヒメボタル、ゼフィルス、トンボ・・・貴重な記録を残していきたいと思う。
 最後になったが、案内して下さったT氏に、心より御礼申し上げたい。

関連記事

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ヒメボタルの写真

東京都内におけるヒメボタル生息地
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 3分相当の比較明合成 ISO 1600(撮影地:東京都 2021.7.10 20:00)

ヒメボタルの写真

東京都内におけるヒメボタル生息地
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 13分相当の比較明合成 ISO 1600(撮影地:東京都 2021.7.10 7:09)

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長野へチョウ探索その2

2021-07-09 19:05:34 | チョウ/ゼフィルス

 7月3日から7月11日までの9日間にちょっと早めの夏休みを頂いたことは、前々回の投稿でお知らせしているが、連休中には様々な計画を立てており、新型コロナウイルスのワクチンを会社の職域接種(モデルナ社製)で打つこともその1つであり、7月5日の月曜日に第一回目を接種してきた。接種後に倦怠感や発熱などの副反応は全くなく、注射をした部分が三日ほど触ると少し痛みを感じる程度であった。二回目のワクチン接種は8月20日に予約をしている。
 ワクチン接種をしたからと言って安心ではない。ワクチンは免疫により感染しても重症化を防ぐという効果があるが、新型コロナウイルスに感染もするし、感染すれば他の人へも移してしまう。大切な人を守るためには、ワクチンを接種しても感染防止対策を徹底して行わなければならないのである。
 私の住む東京は、7月12日から8月22日まで、4回目の緊急事態宣言が発令されることが決まったが、先日、朝方に仕事でNHKの近くのパブを通った時、マスクもしないで大声で騒いている20代の若者10人ほどがいた。朝まで飲んで大騒ぎ!これが現実である。今回の緊急事態宣言も飲食店がターゲットにされ、特に酒類を提供されている方々とその関係者のご苦労ご心痛は計り知れないものがあるが、毎晩ワイン一本空ける酒好きな者から言えば、酒(飲み食い)そのものと感染は関係ない。数人での会食が原因だと思っている。居酒屋でも、黙って一人で沢山飲んで食べれば良いと思う。後手後手の政府の方針や対策に文句を言うのも良いが、宣言が解除されれば、感染が再拡大する元凶は我々個々人にあることを肝に銘じるべきだろう。今後も、ワクチン接種の有無に関わらず、とにかく一人一人が自覚し行動することがすべてだと思う。
 私は、この一年以上、通常の生活をし、ホタルや昆虫の観察、風景写真の撮影で日本各地へ遠征してきても一切感染してこなかったのは、単に運が良かったわけではない思う。また緊急事態宣言が発令されるが、今後も感染対策を万全に行った上で予定通りに遠征したいと思う。

 さて、前置きが長くなったが、夏休み初日は長野県に前日入りしてチョウの探索を行ったが、夏休み5日目の7月8日も再びチョウ探索で長野県の同じ場所に向かった。目標は、ウラジロミドリシジミのオスの全開翅写真の撮影である。本種は2015年と2016年に撮っているが半開翅であった。同地区にはメスの全開翅写真を撮った2018年以来3年ぶりで、通算10回目、今週だけで2回目の訪問である。
 7月3日の時点では、ハヤシミドリシジミは見たもののウラジロミドリシジミは未発生であった。5日経過した7月8日では、ハヤシミドリシジミのオス1頭、メス5頭を確認。そしてウラジロミドリシジミはオス2頭を確認することができた。当地には久しぶりの訪問であったが、今も無事に生息していたことが嬉しい。
 朝5時の気温は20℃で曇り。カシワの木を叩いてみると、どの個体も全く降りてこない。ウラジロミドリシジミ2頭は、カシワの樹冠に上がってしまいお手上げ。ようやく下草に降りてきたのは、ハヤシミドリシジミの雌雄1頭ずつのみであった。ウラジロミドリシジミは諦め、ハヤシミドリシジミのオスの開翅を撮ろうとカメラをセットするがなかなか翅を開かない。1時間経過すると雨が降ってきて、傘を差しながら更に1時間ほどずっと見守ったが、結局、翅を開くことなくカシワの木へ飛んで行ってしまった。
 ウラジロミドリシジミは発生初期で、まだ撮影のチャンスはあると思うが、翅が擦れていない新鮮な個体を撮りたい。今年は、生息していたことに感謝するに留め、来年、再訪問しようと思う。
 以下には、今回下草に降りてきたものの翅を開かなかったハヤシミドリシジミの写真と映像、過去に東京都内の生息地で撮影した同種オスの開翅写真、そして今回は全く撮ることができなかったウラジロミドリシジミについては、過去に同地区と違う地区で撮影した半開翅写真を掲載したいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200(撮影地:長野県 2021.7.08 5:32)

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 3200(撮影地:長野県 2021.7.08 6:54)

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200(撮影地:長野県 2021.7.08 7:13)

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.7.08 7:24)

ハヤシミドリシジミの写真

ハヤシミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:東京都 2018.6.24 7:09)

ウラジロミドリシジミの写真

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:長野県 2015.7.5 5:20)

ウラジロミドリシジミの写真

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:長野県 2015.7.5 7:12)

ウラジロミドリシジミの写真

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18 6:47)

ウラジロミドリシジミの写真

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18 6:47)

ハヤシミドリシジミ Favonius ultramarinus

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ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い

2021-07-06 19:43:31 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違いを映像で分かりやすくしたものを作成してみた。

 撮影した千葉県の谷戸では、同じ水田で5月末にゲンジボタルが発生し、6月末になるとヘイケボタルが発生する。ゲンジボタルは、幼虫が水田脇を流れる小さな流れに生息しており、成虫もその小川上を飛翔する。林が隣接しており、時には梢高くまで飛ぶ様子が見受けられる。一方、ヘイケボタルは小川とは反対側の畔付近のみで飛び回る。あまり高くは飛ばない。
 発光の様子も、ヘイケボタルはゲンジボタルのような集団同期明滅はなく、それぞれがタイミングを合わせることなくバラバラに発光している様子が分かる。
 両種が生息する場所は日本各地にあるが、その多くは発生時期がずれている。しかしながら、両種が同時に発生し同じ場所で乱舞する生息地もある。映像では、後半にゲンジボタルとヘイケボタルが乱舞する様子も収めている。

参考:ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い

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長野へチョウ探索

2021-07-04 16:57:02 | チョウ

 梅雨末期で連日の降雨、そして昨今よく聞く線状降水帯。2日から東日本の太平洋側、特に東海関東の南側にできた線状降水帯によって、3日に数か所で土砂災害が発生し、静岡県熱海市では土石流で少なくともおよそ130棟の建物が流されると言う被害が出た。まずは、被災した方々に心よりお見舞い申し上げたいと思う。

 さて、今の会社に入社して25年。今回、初めて夏休み(9連休)を頂いた。初日の3日(土)は、長野県へ。狙いはサファイア・ブルーのチョウである。このチョウは、何度も撮影しオスも撮ってはいるが、朝陽が当たって翅色がブルーではなかったり、奇麗な色でも半開翅であったりと不満が残る結果であるため、撮り直しである。
 奇麗な翅色を捉えるには、曇空でなければならない。そして気温が20℃以下と低いこと。高いと下草に降りてこないのである。生息地において天候条件を満たすのが、予報では3日の朝であり、会社を19時に退社し、そのまま向かった。中央道は、かなりの土砂降り。諏訪SAで食事を済ませ、霧雨の現地には23時過ぎに到着した。ここへの遠征時では定番となっている場所で車中泊である。その日は4時半に家を出て会社に向かい、通常業務を終えてからの遠征。すぐに寝てしまった。
 翌朝4時半に目が覚めると、何とアルプスのモルゲンロートが目に入った。オレンジに染まる山々は美しいが、青空が広がっている。朝日が出る前に急いでポイントに向かい探索を開始した。ハヤシミドリシジミが1頭下草から梢へと飛び立ったが、目的のチョウはいなかった。
 周辺の草地では、アサマシジミのメスが1頭だけ翅を開いて止まっていた。ここは、アサマシジミの生息地でもある。アサマシジミは、生息地がたいへん局所的である上に、開発による生息地の破壊、そして生息地によって異なる班紋から採集者による乱獲が絶えず、各地で絶滅に瀕している。環境省RDBでは絶滅危惧種に選定されており、長野県においては、希少動植物保護条例(2016.4.25)によって採集を禁止している。
 当地には、中部低地帯亜種 Plebejus subsolanus yaginus (Strand, 1922)が生息しており、青い鱗粉が広がったオスが多く見られる。今回は、メスの半開翅ではあるが、前翅にも赤斑が広がる個体であり、貴重な1枚となった。参考までに2017年に撮影したオスの写真も掲載した。

 8時に現地を引き上げたが、あまりに天気が良いので、予定にはなかった乗鞍高原へ行ってみた。ただし、標高1,600mでは流石にゼフィルスは未発生で、トンボ類はヨツボシトンボのみがいるだけであった。
 この一か月間、ずっと連戦連勝できたが、ここで玉砕。連休中にもう一度行きたいと思う。この休み中には色々と計画があるが、天気と相談しながら1つ1つ達成したい。ちなみに、本日4日は選挙もあり休養。5日は、新型コロナウイルスのワクチンを職域接種で打つ予約をしている。その後は、東京都内のゲンジボタルとヒメボタルの観察と撮影を行う予定である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

アサマシジミの写真

アサマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/320秒 ISO 160 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 7:01)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.6.24 6:09)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 -2/3EV(撮影地:長野県 2017.6.24 7:09)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/200秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:56)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/200秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:58)

キョウカノコの写真

キョウカノコ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/400秒 ISO 100 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:53)

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