ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

野川のホタル

2023-05-29 20:38:19 | ゲンジボタル

 野川のホタルを初めて観察し、撮影してきた。

 野川は、東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川である。国分寺市東部の日立製作所中央研究所敷地内を水源とし、世田谷区南部の二子玉川で多摩川と合流する。全長は20.5km。野川の北側は、武蔵野段丘面を多摩川が削りこんで作った国分寺崖線で「ハケ」と呼ばれる崖の斜面からは多くの清水が湧き、都内でも珍しい自然が残っている。
 野川は、途中に調布市と小金井市、三鷹市にまたがる都立野川公園内を流れるが、小金井市側には自然観察園がある。自然観察園では、昭和60年から園内のホタルの里で育成に努力し続けてきたが、令和元年から野川本流でゲンジホタルが自然発生し始めたのである。台風による影響で、自然観察園のホタルが野川に流出したとみられるが、けして清流とは言えない野川に、ゲンジボタルが定着することが素晴らしい。生息環境が整っていれば、ゲンジボタルは自らの力で生息地範囲を広げ生き抜くことができるという証である。

 野川公園は、自宅から車で20分もかからない。子供が小さい頃は、よく遊びに訪れ、広い芝生の上でお弁当を食べたものだ。公園を突き抜けるように走る東八道路は、毎日車通勤で通ってはいるが、公園は20年以上訪れていなかった。園内の自然観察園内でホタルの保全活動を行っていることも以前から知ってはいたが、それも未訪問。実は、野川において6月3日に「日本ホタルの会」の観察会が行われることになっており、今回、その下見も兼ねて野川の本流で飛び始めた様子を、見ておきたいと思い訪問してみた。
 自宅を17時に出発。日曜の夕方であるから公園駐車場は出口に車が並んでいる。こんな時間に入庫するのは、いないようだ。入庫は20時までだが、出庫は24時間であるから心配はない。とにかく広い公園で、一番南側にある駐車場から北側の野川まで10分ほど歩く。
 まずは、土手沿いを歩きロケハン。ホタルの発生状況やどの辺りで飛ぶかは、事前に地図上で知っていたが、写真に撮るなら構図的に良い場所を探すことが大切である。飛ぶホタルの数よりも、土手を歩く人やライトを付けた自転車が入らない所で、川の流れも分かる場所を選んだ。日中は風が強かったが、これまでの経験通りに日没にはピタッと止んだ。気温は25℃で曇。まさにホタル日和である。

 待つこと1時間40分。19時10分に目の前の木陰で1頭が発光。5分後にまた発光。19時半になると、あちこちで発光飛翔が始まった。晴れていれば、上弦の月が真上にこうこうと輝くが、この日は曇りで月は見えない。ところが、空一面を覆う雲が都会の明かりを反射して真っ白。ボルトルダークスカイスケール(class7)である。ちなみにあきる野市のゲンジボタル生息地では(class5)で、比べものにならない程、明るいのである。すぐ隣には東八道路があり、車の往来が激しいが、音はうるさく聞こえても、土手の上の桜並木によって車のライトはもちろん、街灯の明かりも遮断されているのは良いが、明るい曇り空は予想できなかった。
 ホタルは、それでも多くが飛翔してくれたが、写真撮影が難しい。ISO感度を200にしても3秒以上露光すれば昼間のように写ってしまう。コマ切れで生態写真とは程遠い結果になってしまったが、野川のホタルの記録は残せたと思う。映像の方も、いつものように撮影し残すことができた。流域全体では、200~300個体はいるだろう。メスも多く発生しているようで、全体的に発生ピークであるように思う。

 日曜の夜ではあったが、鑑賞者もそれなりに訪れていた。お子さんやお年寄りまで家族ずれが多く、カメラマンも数人があちこちで撮影していた。この明るさだからであろう、懐中電灯を照らす方は誰もいなかった。というより、ほとんどの方は、持参すらしていなかった。ご家族連れには、安心して自然発生のホタルを観賞できる素晴らしい場所と言えるだろう。本年最初のホタル観察と撮影でもあったが、マナーの良さにとても気持ちの良いスタートとなった。
 本ブログ記事では、ホタルをはじめ昆虫類の撮影場所は、原則として知らせておらず、問い合わせにもお答えしないが、今回の野川のホタルは、都立野川公園自然観察園のホームページでも公表しており、環境保全の取り組みや大切さを広く知っていただくために撮影場所を公表した。

関連ブログ記事:野川に生きるホタル(2024年6月1日投稿)

参考:Light pollution map
ボルトルダークスカイスケールとは、夜空の光害の量を説明するために、「50年近くの観測経験に基づいて」ジョンボルトルによって開発されたもの。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

野川の写真
野川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 4秒 -1EV ISO 100(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28 18:41)
野川のホタルの写真
野川のホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 ISO 200 2分相当の多重(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28)
野川のホタルの写真
野川のホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 ISO 200 7分相当の多重(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
東八道路の写真
東八道路
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 20秒 -1/3EV ISO 100(撮影地:東京都調布市 2023.5.28 20:23)
野川のホタル(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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ウラゴマダラシジミ

2023-05-26 15:12:53 | チョウ/ゼフィルス

 ウラゴマダラシジミ Artopoetes pryeri (Murray, 1873)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae) ミドリシジミ亜科(Subfamily Theclinae)  ミドリシジミ族(Tribe Theclini) ウラゴマダラシジミ属(Genus Artopoetes)で、ゼフィルスの一種である。
 北海道・本州・四国・九州に分布し、平地や丘陵地では谷戸や湿地周辺に、低山地や山地では河川や渓谷沿いの広葉樹林に生息している。翅表は濃い青または青紫色で、外縁付近は黒帯で縁取られる。翅裏は灰白色の地色に外中央部から亜外縁にかけて2列の黒点列がある。他のゼフィルスのように尾状突起がなく(チョウセンアカシジミもない)、ルリシジミ類に類似していることから、古くはルリシジミに近縁と考えられていた時期もあるが、本種は、ミドリシジミの仲間である。色彩や斑紋は雌雄でほぼ同じだが、メスは翅形が幅広く、翅表の青色部の白斑がやや大きいこと、オスは青色部の色彩がメスに比べて紫色を帯びることで区別される。
 成虫は年1回、5~6月に出現し、主に午後に活動し、15時ごろに最も活発になる。ミドリシジミ族としては訪花性が強く、幼虫の食樹であるモクセイ科のイボタノキや、その他クリなどで吸蜜する。午後に活動する本種は、午前中は翅を閉じて葉上で静止しているが、活動開始前には開翅することが多い。
 ウラゴマダラシジミは、他のゼフィルス類にはない地理的変異が知られている。北海道は小型で陸中地方と中部地方の山地帯に生息するものは翅表が黒化し、青色部が減退する。四国は黒化が顕著で、後翅表は一様に黒色となる。これらの黒化型は、静岡県や愛知県、神奈川県、山梨県の一部でも見られる。
 本種は、生息場所となるクヌギやコナラ林の二次林の減少に伴い、各地で少なくなってきている。環境省版レッドリストには記載されていないが、都道府県版レッドリストでは、14の都県で記載しており、秋田県と宮崎県では絶滅危惧Ⅰ類に、埼玉県・千葉県・奈良県・愛媛県・熊本県では絶滅危惧Ⅱ類としている。

 ウラゴマダラシジミは、東京では、ゼフィルスの中で一番早く5月下旬に出現する。次いでミズイロオナガシジミ、栗の花が咲く頃になるとアカシジミ、ウラナミアカシジミが発生し、中旬になるとミドリシジミが羽化する。その後、山地においてオオミドリシジミやメスアカミドリシジミなどが発生し、すべてを観察するには週末だけでは時間が足りないほどである。
 以下に掲載したウラゴマダラシジミは、2012年に東京都と山梨県で撮影したものだが、本ブログ(PartⅡ)で単独で取り上げたことがなかった。また、今年のゼフィルスの順調な発生を願う意味もあり再現像して掲載した。
 今年は、ゼフィルスの中では、撮影はしつつも、美しい全開翅の満足できる完璧な写真が撮れていないウラジロミドリシジミヒサマツミドリシジミキリシマミドリシジミに目標を絞っている。当然、遠征であるから天候や発生のタイミングとの兼ね合いもあるが、「一番美しい時期に、一番美しい瞬間を、美しい写真に残す」ことをしたい。目標は高く掲げ、前向きで情熱的に積極的に臨みたいと思う。

参考文献 / 伊藤 正宏・ 脇 一郎(1984)神奈川県内のウラゴマダラシジミの分布とその歴史的背景.神奈川自然誌資料 5:1~10

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 800(撮影地:東京都 2012.6.10 12:28)
ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000(撮影地:東京都 2012.6.10 12:28)
ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1000(撮影地:東京都 2012.6.10 12:30)
ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:東京都 2012.6.10 12:24)
ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640(撮影地:山梨県 2012.6.23 12:28)
ウラゴマダラシジミの写真
ウラゴマダラシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県 2012.6.23 12:49)
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春、そして初夏・ホタルが舞う季節へ

2023-05-22 21:43:07 | 風景写真/春

 今年は季節が駆け足で進んでいく。歳のせいか、その進みはより一層速く感じるが、桜の開花や昆虫たちの活動状況をみると、やはり異常なまでの速さである。知人のいる高知県では ヒメボタルが各地で乱舞し、今日届いた知らせでは、来月3日に予定している「日本ホタルの会の観察会」の東京都内における場所で、既にゲンジボタルの飛翔が始まったという。例年よりも10ほど早いようである。 私も、すべての予定を繰り上げるよう、計画を練り直さなければならないだろう。
 以下には、「春、そして初夏・ホタルが舞う季節へ」の写真として、未掲載のものを含めて掲載したが、昨今、作ってみたいと思っていたスライドショー動画も載せた。今回は「我が心の風景 御射鹿池」である。最近、 スライドショー動画では、富士山と桜を載せているが、今後「我が心の風景」は、素晴らしいBGMとともにシリーズとして作っていきたいと思っている。

 春、そして初夏・ホタルが舞う季節へ。来週末から、いよいよホタルの観察と撮影が多くなる。講演会等も含めて一年で一番忙しい時期ではあるが、前半は月が邪魔をして写真は良いものが撮れないので、写真掲載は6月中旬以降になると思う。
 今年は、これまで観察はしていても写真や映像で残せていなかったホタルの生態を中心に、東京都内を始め、千葉県や富山、岐阜などに遠征したいと思っている。天候により変更はあり得るが、以下に7月末までのホタルを中心としたチョウやトンボなどの観察と撮影の計画を大まかではあるが記しておきたいと思う。
 今年は、昨年に引きつづき沖縄に遠征する。ホタルの季節は過ぎてしまっているが、昨年撮れなかったチョウとトンボを収めたいと思っている。

  • 5月末 東京都内のゲンジボタルの観察
  • 6月3日 日本ホタルの会 ホタル観察会
  • 6月4日 ホタルの講演会(東京都三鷹市)
  • 6月中旬 ヒサマツミドリシジミの撮影、ヒメボタルの観察、西日本型ゲンジボタルの集団産卵の観察
  • 6月下旬 東京都内におけるゲンジボタルの産卵行動の観察
  • 7月上旬 アイノミドリシジミの観察
  • 7月5日から8 日 沖縄遠征(トビイロヤンマ、カラスヤンマ、フタオチョウ、コノハチョウ等)
  • 7月9日~ 東京都内のヒメボタル観察
  • 7月16日 ウラジロミドリシジミの観察、長野県内のヒメボタル観察
  • 7月23日 キリシマミドリシジミの観察、ヒメボタル観察
  • 7月30日 ホソミモリトンボ探索

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新緑の写真
星峠
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/640秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.4.24)
新緑と方等の滝の写真
新緑と方等の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F18 1秒 ISO 100 -1EV(撮影地:栃木県日光市 2012.5.19 6:19)
新緑の写真
新緑
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F18 1.3秒 ISO 100 -1EV(撮影地:栃木県日光市 2012.5.19 6:25)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional
我が心の風景「御射鹿池」/Japanese landscape in my heart/Mishaka Pond, Nagano Prefecture(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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星峠の棚田

2023-05-15 20:34:15 | 風景写真

 星峠の棚田は、「にほんの里100選」に選ばれた新潟県十日町市松之山・松代地域の松代地域にあり、大小様々な田んぼ約200枚がまるで魚の鱗のように斜面に広がっている。田んぼに水が入って、青空や周囲の風景を映す「水鏡」の美しさは格別で、平成20年のNHK大河ドラマ「天地人」のオープニングにも登場している。四季折々・朝昼晩と様々な光景を見せてくれ、特に朝の雲海と夜の星空は星峠の棚田ならではの魅力がある。

 星峠の棚田は、前回の投稿記事で「天の川」を掲載したばかりであるが、2013年から通うこと12回。この11年間で、春夏秋冬、主に早朝と夜間に訪れ写真を撮ってきた。その都度、ブログには記事掲載してきたが、ここで1つの区切りとして、季節ごとにまとめてフォトギャラリーにしてみた。
 休日に東京から遠征しなければならない私にとっては、なかなかシャッターチャンスに恵まれないのは仕方ないが、今後も、日本の原風景の1シーンを残すために通いたいと思う。

サムネイルを含む以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

星峠の写真
星峠
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F18 3.2秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:新潟県十日町市 2013.05.18 4:21)

春の星峠の棚田

天の川アーチの写真 星峠の棚田(光芒)の写真 星峠の棚田(光芒)の写真

初夏の星峠の棚田

天の川の写真 天の川の写真 星峠の雲海の写真

秋の星峠の棚田

星峠の棚田の写真 星峠の星空の写真 星峠の棚田の写真 柿の木の霧氷の写真

冬の星峠の棚田

星峠の棚田の写真 星峠の棚田の写真 星峠の星空の写真 星峠の棚田の写真
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星峠から天の川を撮る

2023-05-12 16:02:08 | 風景写真/星

 星峠から天の川を撮るのは、今回で3回目。なぜ、また同じような写真を撮るのかと言えば、1回目は、天の川と水田に映る星々は撮れたものの、水田は1枚だけで棚田風景にはなっていなかった。2回目は、天の川も撮れ、また棚田らしい構図にはなったが、まだ雪がかなり残っており水田に映る星々が僅かであった。そこで今回は、棚田の水田に映る星々と共に夏の天の川を撮り、タイムラプスも作ることを目的に遠征を行った。

 新潟は、この冬の積雪量が多かったにも関わらず雪解けが早く、4月下旬にはすっかりなくなっていたが、天の川と星々を撮るためには、月と雲がないことが最大の条件である。そして、水田に星を映すために無風であることも必須条件である。残念ながら、4月中は雨だったり雲がかかったりと全くチャンスがなかった。ゴールデンウイーク中は、満月に近い明るい月があり見送らざるを得なかった。
 この5月は、13日14日、20日21日がチャンスで、遠征の計画を立てていたところ、天気予報では、何と13日から雨マーク。しかし、運よく12日(金)が年次有給休暇であり、新潟の11日深夜は晴れの予報。GPV気象予報を見ても、快晴で雲は一切ない絶好の星景写真の撮影日和である。午前1時に月が昇ってくるので、それまでの時間に撮ることとして遠征実行である。
 11日の就業後、自宅には帰らず都内の会社を19時に出発。首都高と外環自動車道は渋滞がなく、関越道もスムーズに進む。途中、赤城高原SAでプー次郎味噌ラーメンを食べ、六日町ICで降りて星峠には22時半頃に到着した。現地の駐車場には先客が2台で2名。ただし、写真は撮っておらず車内で待機中であった。こちらは、すぐに準備に取り掛かり、一段下がった農道にカメラをセットして撮影を始めた。ちょうど天の川が昇り始めた時であった。気温は5℃。快晴で無風。完璧な天候条件である。その後、車は2台増えた。平日の深夜だが、やはり人気スポットである。ちなみにゴールデンウイーク中の朝は、車も人もすごい数だったらしい。
 星峠の撮影場所は、標高がおよそ410mで見晴らしがよいため、南東方向の彼方の街明かり(おそらく前橋方面?)が気になるが、何とか170枚ほど撮影し、過去のものと比べて「星峠らしい」光景になったのではないかと思う。月が出てくるまで、まだ時間的余裕はあったが、天の川の方がだいぶ昇ってきたため、午前0時で星峠を引き上げ帰路に就くことにした。帰りも赤城高原SAに立ち寄り、2時間ほど仮眠して、午前7時に帰宅した。
 写真現像は、これまで Dxo PureRAW にてRAWデータの適正化を行った後に Lightroom classic で現像を行っていたが、今回は、 Lightroom の新機能である「AIノイズ除去」を使っている。この機能は、とても素晴らしく、昨年5月に撮った「乗鞍高原まいめの池より天の川」の写真を再現像したところ、 Dxo PureRAW よりも良い結果となった。

 尚、動画はたいへん短いが、当地では初めてのタイムラプスだったので編集して掲載した。

参照:星峠より天の川星峠より夏の天の川

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

星峠から見た天の川の写真
星峠から見た天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 2500(撮影地:新潟県十日町市 2023.5.11 23:54)
星峠より天の川(タイムラプス)(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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ギフチョウ(イエローバンド)

2023-05-05 17:13:53 | チョウ/アゲハチョウ科

 ギフチョウのイエローバンドは、過去に何度か撮影して投稿記事「ギフチョウのイエローバンド」等に掲載しているが、今年も撮影に臨んできた。

 ギフチョウ Luehdorfia japonica Leech, 1889 は、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)ウスバアゲハ亜科(Subfamily Parnassiinae)ギフチョウ属(Genus Luehdorfia)に分類されるチョウで、日本の固有種である。本州のみに分布し、秋田県南部の鳥海山北麓から山口県中部にいたる24の府県で見られる。本種は、明治16年(1883年)に初代名和昆虫研究所所長の名和靖氏が学会に紹介し、岐阜県の下呂市金山町祖師野で初めて採集されため、ギフチョウと名付けられた。昔は「ダンダラチョウ」とも呼ばれていた。
 ギフチョウは、春には林床に光が射し、幼虫の食草類や成虫の吸蜜植物であるカタクリやスミレが咲く明るい雑木林に生息し、成虫は年に1度だけ、春に発生するスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)で「春の妖精」とも呼ばれる。幼虫の食草は、ウマノスズクサ科カンアオイ属のミヤコアオイやヒメカンアオイや、フタバアオイ属、サイシン属であるが、各地域によって選択性に違いがみられる。幼虫は夏には成熟して地表に降り、落ち葉の裏で蛹となる。蛹の期間が約10ヶ月と非常に長いのが特徴である。
 カンアオイ類は里山に生育し、生育速度も遅く、近年の里山の開発や放置により激減しつつある。そのためギフチョウの絶滅も懸念され環境省版レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類にランクされており、都道府県版レッドリストでは、現在生息している24の府県で絶滅危惧Ⅰ類から準絶滅危惧種となっている。(尚、東京都と和歌山県は絶滅)そのため、地方自治体によっては、「希少野生動植物保護条例」の「指定希少野生動植物種」に指定し、捕獲,採取,殺傷または損傷および譲渡などの各行為を禁止しており、違法行為が行われた場合には、罰則が科せられる。

 さて、ギフチョウは、強い飛翔力がなく他の生息地との行き来がないため、小さな地域個体群ごとに翅形や翅のサイズ、前後翅の黄色条または黒色条の幅、後翅肛角部の赤斑、斑紋の細部形状などに違いがある地理的変異が知られているが、同一地域個体群の中でも常染色体劣性遺伝により引き継がれている形質もある。その1つがイエローバンドである。(「イエローリング」などの呼称・記述もある。)
 イエローバンドは、前翅と後翅の外縁部及び尾状突起部が全て黄色の毛で縁取られるのが特徴で、通常型の黄色と黒色で交互に縁取られるものと比較すると、美しさが際立っている。この変異は、長野県のごく一部で見ることができ、2014年から生息地に通い続け、2018年にようやく撮ることが叶った。その後も毎年訪れたが、1頭ずつ証拠程度の写真しか撮れていなかった。
 本年の目標は、交尾や産卵などの生態写真は運に任せ、まずは図鑑写真をもう数枚追加すること。私にとって図鑑的写真とは、その種の特徴が良く分かること。そしてその種の一番美しい姿・色彩を一番美しい時期に美しく残すことである。

 今年は、桜の開花もそうだが、昆虫の発生も例年と比べて極めて早い。ギフチョウも早いに違いない。そこで5月3日を遠征日に決めていた。
 今年のゴールデンウイークは、人によっては9連休だが、私は、仕事の関係で3日から久しぶりの3連休。運よく天候は晴れで気温も高い。きっと発生しているに違いない。2日の仕事は18時半に終了。一旦帰宅し、22時に自宅を出発。中央道は小仏トンネルを先頭に8kmの渋滞。その先の渋滞はなかったが、車両が多い。大型トラックは少なく、乗用車ばかりである。このGWも休日割引の適用がないため、深夜割引を利用するためなのだろう。
 現地には3日午前2時過ぎに到着。気温は2℃である。月が沈む3時過ぎから夏の天の川を撮るつもりではいたが、薄雲がかかっていたので仕方なく車内で仮眠。6時に目が覚め、7時過ぎから活動開始である。
 昨年の経験から、待ち伏せよりもある程度の範囲を歩き回った方が出会いの確率が高いと思われたが、今回も、待ち伏せすることにした。ただし、前回とは違う蝶道のヒルトップである。朝の気温は0℃であったが、風がなく太陽が昇るにつれて気温は上昇。8時半に1頭のギフチョウが飛んできた。少し飛んでは下草に止まる。慎重に近づいて撮ってみるとイエローバンドであった。
 その後も、何頭もの個体が飛んできた。そして私が着ている青いシャツにまとわりつく。ギフチョウの習性を学んだことと、天候の良さも相まって、3時間でのべ10頭ほどが飛んできて、6頭を写真に撮ることができた。そのうちイエローバンドは4頭であり、ノーマルタイプも含めて、すべてオスの個体であった。オスは、体背面に長毛が密生している。メスは毛生が少なく、前胸背に赤褐色毛を生じるので、雌雄の区別は容易である。
 以下の写真には、イエローバンドとノーマルタイプの比較写真と2018年に撮影したメスのイエローバンドの写真も掲載したので、参考にして頂きたい。
 雲が広がり始めて陽が陰ってきた11時半に撤収。中央道上りは、ほとんど渋滞がなく、16時に帰宅した。

関連記事(生態写真)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:長野県 2023.5.03 8:40)
ギフチョウ(イエローバンドとノーマルタイプ)の写真
ギフチョウ(左:イエローバンド 右:ノーマルタイプ)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(撮影地:長野県 2023.5.03 9:49)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 10:02)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 10:06)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 10:11)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
スミレで吸蜜するギフチョウ(イエローバンド)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 11:13)
ギフチョウ(イエローバンド)の写真
ギフチョウ(イエローバンド)のメス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2018.5.5 11:04)
ギフチョウの写真
ギフチョウ(ノーマルタイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 10:46)
ギフチョウの写真
ギフチョウ(ノーマルタイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:長野県 2023.5.03 10:46)
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春の息吹

2023-05-04 16:43:07 | 風景写真/新緑

 今年のゴールデンウイークは、人によっては9連休だが、私は、仕事の関係で3日から久しぶりの3連休。運よく天候は晴れで気温も高い。2日の夜から信州に出掛けてきた。遠征は 3月19日の「冬から春にかけての星空」を信州・霧ヶ峰で撮って以来である。目的は、ギフチョウのイエローバンドという地理的変異を撮ることである。その投稿記事は、次回にしようと思うが、まずは何気なく撮ったスナップ写真を掲載したい。
 今年は、全国的に桜の開花が早かったが、冬はマイナス15℃にもなる信州の山奥は、さすがに春が遅い。桜や花桃が満開であった。時間の余裕と気持ち的に、それらを撮ることができなかった。早朝に訪れた峠では、まだ雪の残る山が谷の向こうに鎮座している。かつての災害が嘘のような雄大な風景を前に、清々しさとともに複雑な心境になったが、振り返れば、林に朝陽がさして生命が芽生える輝きに満ちていた。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

春の息吹の写真
春の息吹
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F6.3 1/25秒 +2/3EV ISO 100(撮影地:長野県 2023.5.03 6:18)
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