ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヤマトシジミ(チョウ)

2024-03-28 15:54:47 | チョウ/シジミチョウ科

 ヤマトシジミ Pseudozizeeria maha argia (Menetries, 1857)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ亜科(Subfamily Polyommatinae)ヤマトシジミ属(Genus Pseudozizeeria)のチョウで、国外では中国、韓国、台湾をはじめ、南アジアから東南アジア、東アジア一帯に広く分布し、日本国内では本州以南に分布している。
 関東では年5~6回、4月上旬頃から11月下旬頃まで発生し、幼虫の食草であるカタバミがある平地であれば、都市部の公園や住宅地においても普通に見られるチョウである。カタバミさえあれば、どこでも繁殖できるという特徴から日本で一番生息数が多いチョウではないだろうか。あまりにも普通種であるため、本種を単独で取り上げたことがなかったことから、本記事にてまとめてみた。

 ヤマトシジミは、雌雄ともに発生時期によって翅の色模様が連続的な変化を示す季節変異(季節型)を有し、春と秋の低温期型、夏の高温期型に分けられる。地味な翅裏には変化は見られないが、翅表には以下のような違いが見られる。

  • 低温期型オス/光沢のある空色の部分が広く、縁の黒い部分は細い
  • 高温期型オス/光沢のある青色で、縁の黒い部分は広い
  • 低温期型メス/全体的に黒褐色だが、前翅後翅ともに青い鱗粉が広がる
  • 高温期型メス/全体的に黒褐色で青い鱗粉は少ない

 季節型は、アゲハチョウやキタテハなど、ほかのチョウでも存在するが、それがどのような生態的意義を持っているのかは分かっていない。しかしながら、季節型を決定する要因については研究がされており、主に4~5齢幼虫時の日長時間が大きく関わっているという。キタテハでは、日長時間が13時間以下であれば低温期型(秋型)、13時間以上では高温期型(夏型)となる傾向があるという。また、気温も決定要因となることが確かめられている。
 ヤマトシジミは、孵化した1齢幼虫から終齢幼虫まで一か月で成長し、その間の日長時間や気温が季節型を決定している訳だが、連続的なものなので、年5~6回の発生のうちには、その中間型も出現する。(掲載写真を参照)

 ヤマトシジミは、あまりにも身近で、そしてとても小さなチョウであるため、気にも留めない方々が多いと思う。私もカメラを向けることは少ないが、良く見れば可憐で美しいチョウである。日中は盛んに飛び回って、なかなか止まって翅を開くことは少ないが、気温の低い朝は、葉の上で翅を広げて朝陽を浴びながら体を温めていることが多い。1~2週間ほどで翅が擦れて色あせてしまうが、美しい個体にも出会えるだろう。時には立ち止まってこのチョウの美しさを眺めてみるのも良いと思う。

参考文献:遠藤 克彦 チョウの季節型と休眠の光周内分泌調整

関連ブログ記事:チョウの季節型

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(オス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/400秒 ISO 200(撮影地:千葉県鴨川市 2011.8.20)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(メス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 320 -1/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2014.4.26)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(低温期型オス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200 -1/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2014.4.26)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(高温期型オス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 250 (撮影地:東京都八王子市 2010.9.20)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(中間期型オス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:千葉県鴨川市 2018.4.29)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(低温期型メス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 250 -1/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2014.4.26)
ヤマトシジミの写真
ヤマトシジミ(高温期型メス)
Canon 7D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/800秒 ISO 200(撮影地:千葉県鴨川市 2014.5.17)
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カラマツの丘と天の川

2024-03-15 18:03:07 | 風景写真/星

 カラマツの丘と天の川を撮影してきた。

 カラマツの丘は、群馬県嬬恋村にある。キャベツ畑が見渡すかぎり続き、その丘の上にポツンとカラマツ林が佇むロケーションで、まるで北海道の美瑛のような場所であり、今年の1月14日に訪れ「嬬恋の丘 (カラマツの丘)」として掲載している。その時は、凍てつく冬の朝のマジックアワー(魔法の時間)の美しさを体感することはできたものの、東の星空は寂しく、畑を覆う雪も奇麗ではなかった。「まるで北海道の美瑛のような・・・」美瑛に行かぬとも似た光景を見られるのは嬉しいが、美瑛と比較することなく、嬬恋村のカラマツの丘らしいオリジナルの美しさを感じて残したい。そこで、夏の天の川とともに撮ろうと計画を立てていた。
 夏の天の川は、3月上旬になると深夜2時過ぎから東の地平線から昇ってくる。日の出前までが撮影時間になるが、その時間帯に月明かりがないことが条件の1つになる。月が出ていない日は、ひと月に10日ほど。ただし、雲があれば邪魔になる。湿度が高く靄が出れば霞んでしまう。乾燥した快晴の空が2つ目の条件である。10日の間に快晴になった夜に行けば撮影はできるが、今回は更に条件を加えた。それは、キャベツ畑が真っ白な雪で覆われることである。
 毎日、気象庁とウェザーニューズの天気予報、そして気象予測モデルをスーパーコンピュータで計算しているGPV気象予報をチェックしながら、最良の日を待った。そして、そのチャンスの日が訪れた。

 自宅を16時に出発し、圏央道の青梅ICから乗り、関越道から上信越道へ。横川SAで夕食。横川と言えば、昔から釜めしが有名だが、到着した18時半では終了しており、代わりに上州ファーム食堂で下仁田ネギ味噌カツ丼に舌鼓を打った。
 軽井沢ICで降り、1月14日の時と同じコースで現地に20時過ぎに到着。道路は除雪されているが、畑は真っ白で、見上げれば快晴の好条件。時間があるので「愛妻の丘」でも行って見ようとしたが、下調べ不足で、4月上旬頃までは、つまごいパノラマラインが冬季閉鎖で通行できないため「愛妻の丘」には行けなかった。仕方なくカラマツの丘に戻り、広くなっている場所に車を止めて、時間まで待機である。
 ちなみに「愛妻の丘」は、世界でも珍しい「叫ぶ」観光スポットだという。雄大な浅間山に向かって、日頃、妻には言えない「愛してる」を叫ぶとまさに誰もが新婚時代にタイムスリップする奇跡の瞬間が訪れるらしい。誰もいない丘で、一人で小声で言おうと向かったが、幸か不幸か遠くにて心の中で思うだけで終わった。
 さて、カラマツの丘では、午前2時半から準備を開始。到着した時には誰もいなかったが、車は5台に増え、カメラマンは私を含めて6人。やはり集まるものである。撮影場所は限定されている。カラマツの丘を西側の農道から撮るしかない。雪が積もった畑に入ってカラマツに近づけば、構図的に良くなるが、そんなマナーのない行為は当然許されない。この日も、皆、農道からの撮影であった。
 気温はマイナス5℃。久しぶりの寒さに指の感覚がなくなり、なかなかカメラのセットができない。携帯カイロで温めながら細かな設定を行い、3時より撮影を開始した。

 天の川は各地で撮影してきたが、嬬恋村の夜空の明るさはどうだろうか。夜空の明るさが客観的に評価できる数値「等級(mag/□"):(マグニチュードパー平方秒角)」で表すと、私が星空をよく撮影する開田高原(木曽馬の里)では21.11mag/□"、乗鞍高原が21.86mag/□" 、霧ヶ峰高原車山肩は21.28mag/□" で、値が大きいほど夜空が暗く星が見えやすいことを示しており、19~20で天の川がぼんやり見え、21を超えると天の川の複雑な構造が確認できる。嬬恋村での調査結果はないが、近郊の吾妻郡高山村では、20.93mag/□"となっており、実際に訪れてみると、やはり天の川がぼんやりと見えるといった暗さである。
 それでも快晴の夜空ならば、何とか私のカメラでも撮影できそうである。ただし、上空は暗くても東方向には前橋や高崎の街明かりがあるので、天の川自体は、かなり昇らないと街明かりに消されてしまう。しかし、その街明かりはカラマツをシルエットにしてくれるので効果的でもある。
 天の川は、ポータブル赤道儀を使って追尾しながら低感度で長時間露光した方が、とても美しい写真が撮れるが、それは見た目から大きくかけ離れた写真であり、個人的に好きではない。(掲載した写真も、見た目とは違っている)或いは、もっとF値の明るい単焦点の広角レンズならばと思うが、購入する余裕はない。今回も決して満足のいく結果ではないが、今ある機材で、前回撮影したものよりはカラマツの丘らしい表現はできたように思う。

 当日は、午前4時過ぎまで撮影して撤収。湯の丸の地蔵峠経由で小諸ICから上信越道で帰路に就き、7時過ぎに帰宅した。
 今月は、新潟県の風景を撮る計画もあったが、天の川と一緒に収められる期間中には、天候条件が合致しそうにないので諦めるしかないだろう。残る半月は、あるトンボの未撮影のシーン(産卵)を自宅近郊で予定している。

参考:環境省/令和4年度夏の星空観察 デジタルカメラによる夜空の明るさ調査 結果一覧

p>以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

カラマツの丘と天の川と流星の写真
カラマツの丘と天の川と流星(トリミング)
Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒 ISO 3200(撮影地:群馬県嬬恋村 2024.3.14 3:30)
カラマツの丘と天の川の写真
カラマツの丘と天の川
Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒 ISO 3200(撮影地:群馬県嬬恋村 2024.3.14 4:01)
カラマツの丘と天の川の写真
カラマツの丘と天の川
Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒 ISO 3200(撮影地:群馬県嬬恋村 2024.3.14 4:06)
カラマツの丘 天の川タイムラプス(再生ボタンを押した後、設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
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スギタニルリシジミ

2024-03-13 11:46:49 | チョウ/シジミチョウ科

 スギタニルリシジミ Celastrina sugitanii Matsumura, 1919 は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ヒメシジミ亜科(Subfamily polyommatinae)ルリシジミ属(Genus Celastrina)に属するチョウで、中国の南西部・南部、朝鮮半島、台湾、日本では北海道・本州・四国・九州に分布し、日本では以下の3亜種がある。本種は、本ブログ(PartⅡ)において単独で取り上げたことがなかったので、過去に東京都の檜原村で撮影した 本州・四国亜種を掲載し紹介しておきたい。

  • 北海道亜種 Celastrina sugitanii ainonica Murayama, 1952
  • 本州・四国亜種 Celastrina sugitanii sugitanii (Matsumura, 1919)
  • 九州亜種 Celastrina sugitanii kyushuensis Shirozu, 1943

 スギタニルリシジミは、年に1度羽化し、4月中旬から5月上旬の一時期にのみ出現するスプリング・エフェメラルである。和名は、大正7年4月21日に京都の貴船で本種を発見したチョウの研究家で旧三高の数学教授、杉谷岩彦氏に因んで命名されている。
 幼虫の食樹は、以前はトチノキが一般的に知られ、その花や蕾、幼果が主食であったが、昨今の研究でミズキやヤマフジ、ハリエンジュ、キハダも食樹としていることが判明し、九州ではキハダが一般的な食樹である。東京都内では、かつては奥多摩の一部でしか確認されていなかったが、現在では、高尾などでも普通に見られる。また、トチノキがない相模原市の山間部や丹沢、箱根等にも急速に分布が拡大しているが、どの地域も低山地から山地の渓谷沿いの林道で見られ、湿った地面で吸水することが多く、時には集団吸水の様子も見られる。
 スギタニルリシジミは、環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、山口県で絶滅危惧Ⅱ類に、鳥取県、島根県で準絶滅危惧種として記載している。

 以下に掲載したスギタニルリシジミの写真は、2014年と2017年に東京都の檜原村の多産地で撮影したものである。風のない暖かい春の日に、渓谷沿いの林道を歩きはじめると、すぐにチラチラと飛んでいる本種を発見。歩くにつれて、その数は多くなった。杉林の中から林道に降りてくる。日当たりが良く、崖から浸み出た湧水が溜まってぬかるんだ所では、30頭を越えるスギタニルリシジミが吸水に訪れており、あちこちで小集団を作っていた。吸水中は一切、翅を開かない。吸水場所から離れた日だまりへ移動し、飛んでいるスギタニルリシジミの後を追う。すると、地面に止まって翅を開いた。どの個体も止まると開翅。深い青紫色の翅表を撮影することができた。
 それ以来、檜原村の多産地には行っていないが、あと一か月もすれば、また出会えるだろう。6月にはメスアカミドリシジミも多く見られる。チャンスがあれば再び訪れてみたい。

参考文献:岩野 秀俊(2006)関東南部産スギタニルリシジミの食餌植物と寄主転換. 蝶と蛾 57巻4号 p.327-334

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スギタニルリシジミの写真
スギタニルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都檜原村 2014.4.12 10:04)
スギタニルリシジミ(集団吸水)の写真
スギタニルリシジミ(集団吸水)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都檜原村 2014.4.12 10:37)
スギタニルリシジミ(集団吸水)の写真
スギタニルリシジミ(集団吸水)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200 +1EV(撮影地:東京都檜原村 2014.4.13 9:38)
スギタニルリシジミ(交尾)の写真
スギタニルリシジミ(交尾)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F6.3 1/40秒 ISO 200 +1EV(撮影地:東京都檜原村 2017.4.15 11:04)
スギタニルリシジミ(半開翅)の写真
スギタニルリシジミ(半開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200(撮影地:東京都檜原村 2014.4.12 11:06)
スギタニルリシジミ(開翅)の写真
スギタニルリシジミ(開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/1254秒 ISO 250(撮影地:東京都檜原村 2014.4.13 10:30)
スギタニルリシジミ(開翅)の写真
スギタニルリシジミ(開翅)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200 +1EV(撮影地:東京都檜原村 2014.4.13 10:24)
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私にとって写真とは

2024-03-03 18:56:10 | 風景写真

 私にとって写真とは何なのか?

 中学生の時から撮り始めて46年。大部分は、ホタルをはじめとする昆虫写真で、その他は自然風景の写真であるが、私はプロの写真家ではない。芸術家でもない。写真は「趣味」である。撮って楽しければ良い。しかしながら、写した結果には最低でも自己満足したいし、できれば自然の美しさ、素晴らしさ、大切さを伝え共有できる作品でもありたい。
 「写真」は写実であり「絵」とは違う。人間が意識的(意図的)にデザインや彩色をして描いたものが「絵」だが、「写真」は、真を写すと書く。客観的な「真実」を記録したものだ。撮影テクニックは別の話として、昆虫写真の場合は、その種の特徴が分かる図鑑的なもの、あるいは生態の瞬間の正確な記録であると言える。自然風景写真はどうだろう。撮影者の意識や個人的感情とは関係なくただ映される「画」を超えて、目の前にある風景から感じる抽象的で漠然とした感覚を「写真」というものに具体化したものでありたい。
 そんな偉そうなことを考えながらも、昨今は、撮影を楽しむことも自然と対峙する素直な心も忘れ、打算的でさえある。趣味であるから、何も撮れなければ時間もお金(高速代やガソリン代など)が無駄になる。以前は、そんなことも考えずに遠征そのものを楽しんでいたことを、以下に掲載した6年前に撮影した写真を現像しながら思い出した。
 ちなみに掲載写真の一枚目は、長野県辰野町にある「小野のシダレグリ自生地」で撮影したシダレグリである。魔力さえ感じる奇怪な樹形。国の天然記念物に指定されており、天然のシダレグリの木が3.4haの純林を形成している。二枚目は霧ケ峰高原の霧氷を写したものだが、霧氷の丘にかかる霧と背後の雲は、将に一期一会の光景であった。

 今年は、お陰様でしばらくの間、時間だけはできた。8月末までにあれこれと計画しており、自家用車での移動は山形から兵庫まで、6月末には3年連続の沖縄遠征。昆虫では未撮影および撮り直しの種が40種、自然風景では、ホタルを含めて35カ所で撮影する予定である。勿論、金銭的制約はあるが、自由な時間の多さがカバーしてくれるだろう。
 私にとって写真とは趣味であるが、「自然界から使者」として紹介されたこともあるので、自然と会話し、対峙し、心で感じ受け止める感性を養っていきたい。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

シダレグリの写真
シダレグリ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F11 1/200秒 ISO 100(撮影地:長野県辰野町/小野のシダレグリ自生地 2018.2.10 13:39)
霧氷の丘の写真
霧氷の丘
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/4秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:長野県諏訪市/霧ケ峰高原 2018.2.11 7:02)
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