ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ゲンジボタル(東日本型)

2021-05-29 20:17:03 | ゲンジボタル

 ゲンジボタル(東日本型)の観察と撮影を行ってきた。場所は、毎年訪れている千葉県内の生息地で、自然発生地では関東で一番発生が早い地域である。
 ゲンジボタルは承知のように遺伝子型の違いによって西日本型と東日本型に分けられる。遺伝子型の相違だけではなく、生息環境、発光時間の長さや集団同期明滅の間隔、オスの発光飛翔のスピードも異なっているが、昨今、幼虫の人為的放流などによって、西日本型のゲンジボタルが関東でも広く定着している状況にある。幸い、千葉県内の生息地の幾つかは東日本型のみであり、長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶ独特な特徴がはっきりと分かる貴重な生息地となっている。今年も、28日(金)に訪れてきたので、記録として記しておきたい。

 28日(金)は、会社を昼で退社できる日であったため、13時に港区の会社を出発。国道357号線(湾岸道路)と京葉道路という一般道で千葉の市原まで走り、そこから館山自動車道に乗る。遅い昼食と休憩を市原SAでとろうと予め予定していた。
 何を食べるかも計画済み。かつては、ラーメンとDHA海鮮丼ぶりも頂いており、今回は「豚屋」のトンカツ定食1,250円にプラス100円でご飯大盛りを注文。ブザーが鳴って取りに行くと、ご飯が丼にてんこ盛り・・・美味しく頂いたが、一日経っても食べすぎで腹の調子がおかしい・・・。
 休憩後に移動して、現地は17時半より待機。昨年撮影をした同じ場所にカメラをセットした。天候曇り。気温21℃。時折強い風が吹く。19時15分。1頭が発光を始めた。しかしながら、後が続かない。19時半を過ぎても、5頭が発光しただけで、昨年のような飛翔は見られなかった。
 地元の方の話によれば、谷戸の最奥は一昨日から乱舞しているが、谷戸の入り口付近は、まったく飛んでいないと言う。2014年から観察を行っているが、一昨年までは、谷戸の入り口付近及びその下流部でも多くが飛翔していたが、昨年は、それら区域でも見られなかった。2015年頃までは、下流域から発生が始まり、800mほどある谷戸の奥まで徐々に発生する傾向であったが、段々と時期が一緒になり、一昨年では同時期発生であった。地元の方も見ていないとのことから、本年は谷戸の入り口付近及びその下流部、更には谷戸中部でも発生していないと言える。年々、生息場所が谷戸の深部へと狭まっているのである。(図1)周囲の環境は変化しておらず、光害もほとんどない。水田への農薬や除草剤の 散布等が影響しているのか、或いは、聞いたところでは残土問題が持ち上がってもいるとの事であるから、それも影響しているのかも知れないが、今のところ、原因は不明である。(後の6月25日に再訪し、農家の方から伺ったところ、農薬を空中散布したとのこと。おそらく、これが原因であろう。)
 ここ数年、谷戸の深部では乱舞が見られている。本年も同様な状況であったが、今年は、これまでそれほど飛翔していなかった場所でも乱舞が見られた。林縁と林道である。(写真1)林道を挟んで湿地があるが、草が生い茂り陸地化が進んでいる。小川や水路はない。メスのゲンジボタルもまったくいない場所で、オスばかりが、まるで「森のホタル」と化し、乱舞していた。林道に立っているだけで、ホタルに取り囲まれる状況であった。
 これは、今年だけの光景かも知れないが、来年も谷戸の入り口付近等で発生がなければ、この生息地全体が危機的状況にあると言える。来年も、継続して観察を行いたい。

 ゲンジボタル(東日本型)の発光飛翔写真は、西日本型のそれに比べて「絵」にならない。長い発光時間やふわふわとゆっくり飛ぶからであり、西日本型との違いは、写真からでも明確に区別ができる。写真芸術的には絵にならなくても、生態学的には重要な1枚である。今回撮影した写真は、ホタルのデジタル写真における撮影と現像方法の主流である多重合成ではなく、フィルム写真同様の一発露光で撮影したが、東日本型ゲンジボタルの特徴表現が不十分であったため、2010年6月5日に千葉県内で撮影した写真も掲載した。
 ただし映像においては、東日本型ゲンジボタルの特徴がよく分かるので、5分半と少し長めであるが、是非、ご覧頂きたいと思う。

 2021年のホタル観察と撮影は、4月17日の「ゲンジボタルの幼虫上陸(山梨)」からスタートし、成虫はこれからが本番である。今年は、ゲンジボタルでは新潟県、ヒメボタルでは東京都内および山梨県で観察と撮影を予定している。いずれも初めて訪れる場所である。その他にも、経年通っている生息地も予定しているので、順次、掲載していきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル生息地の図

図1:千葉県の東日本型ゲンジボタル生息地における異変

ゲンジボタルの写真

写真1:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 52秒 ISO 200(撮影地:千葉県 2021.5.28 20:08)

ゲンジボタルの写真

写真2:ゲンジボタル(東日本型)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F2.8 180秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2010.06.05 20:14)

ゲンジボタル(東日本型)/ Genji firefly that lives in eastern Japan.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ムカシヤンマ

2021-05-23 20:33:13 | トンボ/ムカシヤンマ科

 ムカシヤンマ Tanypteryx pryeri (Selys, 1889)は、ヤンマと名がついているが、ヤンマ科ではなくムカシヤンマ科(Family Petaluridae)ムカシヤンマ属(Genus Tanypteryx)に分類される体形のがっしりした大型のトンボである。複眼が黒褐色で、独特の雰囲気をもつ。複眼が接することなく離れているのでヤンマ科の各種とは区別でき、メスは産卵管を持っているのでサナエトンボ科とは区別できる。この種は遺存的な一群で、世界に10種だけ知られるが、日本にはムカシヤンマ1種だけが生息する日本固有種。ムカシトンボと同じく、形態に原始的な特性を持つ種である。
 ムカシヤンマは、丘陵地から山地の周囲に樹林のある湿地や、水が浸み出す斜面などで見られるが、幼虫(ヤゴ)は他のトンボ類と違い、水がしたたり落ちるゼニゴケなどが一面に茂っているような斜面湿地に穴を掘って棲んでいる。幼虫は水に入ることはほとんどなく、成虫になるのに約3年かかると言われている。穴から顔を出す幼虫は、2017年5月3日に撮影しブログ記事「ムカシヤンマのヤゴと羽化」に掲載している。
 ムカシヤンマは、東北以南の本州と九州に分布しているが、局所的である。また、林道沿いの水がしみ出す崖など不安定な場所で発生している産地は、生息環境が失われる危険が高く、各地で減少傾向にある。環境省カテゴリにはないが、都道府県のRDBでは、東京都、群馬県、長崎県で絶滅危惧Ⅰ類に、埼玉県、神奈川県、山梨県、三重県、兵庫県で絶滅危惧Ⅱ類として記載している。その他13の府県で準絶滅危惧種としている。

 5月23日。関東は、久しぶりの青空と太陽である。このチャンスを逃すわけにはいかず、今季3回目の昆虫観察と撮影のために遠征することを決めた。
 ちょうど発生している信州のクモマツマキチョウが頭を過ったが、今回は、未撮影である「ムカシヤンマの産卵」シーンを撮る事を目的にした。ムカシヤンマは、東京都内にも生息地があり何度も撮影しているが、幼虫の生息場所が分からず、従って産卵も撮影できない。そこで、2017年に幼虫と羽化を撮影した茨城県の生息地へ行くことにした。勿論、車での移動で、現地は当然ながら行き帰りも誰とも接触しない単独行動である。
 自宅を午前5時に出発し、現地には8時に到着。早速、探索である。

 気温17℃。曇り。8時半から幼虫の生息する崖で待機。崖の茂みには羽化殻が2つあり、羽化していることを確認。後は飛んでくるのをひたすら待つだけである。
 10時30分。ようやく晴れ間が広がり直射日光が差す。と同時にメスのムカシヤンマが1頭飛来。するとすぐさまオスが現れメスと連結し崖上へ連れ去ってしまった。その後、オスが4頭が飛来し、産卵場所近くの梢や草、地面などに止まってメスを待っている。着地は下手である。バサッと落ちるように止まる。すべて、産卵場所である崖の方を向いて止まる。近づいても動かない。手で掴むこともできるくらい鈍感であるが、違うオスが来れば追いかけまわすバトルが繰り広げられる。
 この日は、12時半まで4頭のムカシヤンマのオスと共にメスの飛来を待ったが、とうとうメスは産卵に現れなかった。

 今回、目的の産卵シーンを撮ることは出来なかったが、オスの静止写真と共に動画を撮影したので、以下に掲載した。次の週末は、いよいよ「ホタル」の観察と撮影である。今までに撮っていなかった 「ゲンジボタルのメスが産卵のために飛び回る」光景を残すことを主目的にしたい。天候次第であるが、ホタル観察の前に、今回撮れなかった「ムカシヤンマの産卵」をリベンジしようと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1600 +1EV(撮影地:茨城県 2021.5.23 10:39)

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320 +1EV(撮影地:茨城県 2021.5.23 10:51)

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:茨城県 2021.5.23 11:35)

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800 +1EV(撮影地:茨城県 2021.5.23 11:36)

ムカシヤンマ(メス)の写真

ムカシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 14:16)

ムカシヤンマ

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


フジキオビ

2021-05-22 11:32:06 | その他昆虫と話題

 フジキオビ Schistomitra funeralis Butler, 1881 は、アゲハモドキガ科(Family Epicopeiidae)フジキオビ属(Genus Schistomitra)の蛾である。この属は、長い間1種のみであったが、2019年に2番目の種が中国で発見され Schistomitra joelmineti Huang & Wang, 2019 として記載されている。
 フジキオビは、日本固有種で栃木県北部山地を北限として関東平野の周辺山地に分布し、特に赤城山周辺、秩父山地から奥多摩地方及び大菩薩山塊に多産する。一方、本州西部では中国山脈に沿って多くの産地があるが本州中部には空白地帯があり、本州以外では四国の面河渓が唯一の産地で、九州からは発見されていない。分布は局地的。個体数は少ない。
 環境省カテゴリにはないが、都道府県のRDBでは、群馬県(絶滅危惧Ⅰ類)、三重県・兵庫県(絶滅危惧Ⅱ類)、埼玉県・愛知県・鳥取県・高知県・宮崎県(準絶滅危惧種)として記載している。

 フジキオビは、丘陵帯上部から山地帯下部付近のミズナラなどの落葉広葉樹林生息。成虫は5~6月頃に出現する。昼間活動し花で吸蜜する。オスは、湿った地面で吸水もする。幼虫の食草はナツツバキ(別名:サラソウジュ/沙羅双樹)である。
 ウスバアゲハのようにヒラヒラと飛び、一見、チョウのようにも見えるが、蛾である。山梨県甲州市の沢沿いの林道を4km程歩いたところで2頭撮影。蛾は基本的に好きではないのだが、珍しい種であるので掲載した。(撮影は2012年であり、ブログ PartⅠでは紹介済みであるが、今回、未掲載分を含め、再現像して掲載した。)

参考文献/杉 繁郎:フジキオビの分布,食樹,幼生期の知見 蝶と蛾 23(1), 4-8, 1972 日本鱗翅学会

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

フジキオビの写真

フジキオビ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2012.5.27 10:22)

フジキオビの写真

フジキオビ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2012.5.27 10:22)

フジキオビの写真

フジキオビ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:山梨県 2012.5.27 11:01)

フジキオビの写真

フジキオビ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250 +1/3EV(撮影地:山梨県 2012.5.27 11:01)

フジキオビ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320 +1/3EV(撮影地:山梨県 2012.5.27 11:02)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


滝の水のごとく

2021-05-16 16:20:16 | 風景写真/滝

 東京や大阪など4都府県に出されている新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく緊急事態宣言の期限が、5月11日から5月末まで延長された。東京都では、引き続き時短・休業要請、不要不急の外出と都外の移動自粛が求められている。GW期間中は、前記事のように1日だけ遠征したが、それ以来、平日の仕事以外はほとんど外出していない。風薫る5月に、二年連続で撮りたての写真を掲載できないのは悲しい。
 昨年5月の緊急事態宣言中には、本ブログにて「心如水」(心は水のごとく)という記事を書き、自粛に関する人の心の複雑さについて考えたが、今年は「水の流れ」にまつわる話を記して、自身のストレスを軽減させたい。

 水の流れと言えば川が思い浮かぶ。日本には川が多く水と親しんできた。古来より「水」に対して象徴的な意味を与え、日本ならではの「水の文化」が発展し、人々の精神や考え方にも大きな影響を与えてきた。
「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
という鴨長明『方丈記』の冒頭は、日本人の水に対する考え方を象徴している。これは流れていった水はもう戻ってこない、世界はいつも変わっているという無常観を表現したものである。
 流れの途中にある滝に対しても、日本人は独特な感覚を覚える。滝に神を見てきたとも言われ、信仰の対象とする所もある。川の流れよりも、魅力的で神秘さを感じるのは私だけではないだろう。滝壺に入り滝に打たれながら経を唱え続ける精神修行方法である水行・滝行も行われてきた。邪念を振り払い、自らを浄化することが目的だが、滝行を行わなくとも、その場に行くだけで様々な精神的効果がある。
 滝は、大自然の中にあるパワースポットとして注目されてもおり、滝マニアや滝ガールといった存在もいる。滝の周辺には、水が落下して飛び散る飛沫によるマイナスイオン(負の大気イオン)の効果でストレスが軽減し、エネルギーをチャージすることができると言われている。
 ストレスは「三つのR」で対処すると良いと言われている。①Rest(レスト=休養)、②Relaxation(リラクゼーション=くつろぎ)、③Recreation(リクリエーション=活性化)である。ストレスの語源は「歪む」とある。心も体も歪んでしまった状態は、休養してリラックスすればそれ以上悪化はしないが、元には戻らない。ストレスのない状態に自分を活性化する必要がある。
 マイナスイオンの効果は、科学的に証明されてはおらず、論文によれば、マイナスイオンは、自覚症状や一般生化学検査や血圧・脈拍数などに有意性は認められていないが、ストレス対策の効果はあるように思う。見に行かなくとも、こんな効果もあるようだ。風水では「滝」の写真や絵を飾ると金運がアップするという。上から下にまっすぐに向かって流れる「滝」の写真か絵を飾ることで、富が家の中に降り注ぐようになるという。右や左に「滝」が曲がっている写真や絵では、飾る場所によっては金運が外に流れて出しまうので注意との事である。外出自粛のコロナ過においては、せめて金運だけでもアップさせたいものである。

滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半

 客観写生を体現した句として名高い作品で、一瞬の「静」の世界と無限の「動」の世界を表している。水は、滝の上で見えた後は、勢いよく滝つぼへと流れ落ちていく。時の流れに身を任せるだけの昨今、見えない滝つぼに流れ落ちる前に、しっかりと立ち止まって物事を見て考えなければならないと思う。そして、水に流してきたことを反省し、流れに逆らうことなく生きることが大切だ。

 掲載写真は、称名滝と浄蓮の滝である。称名滝(しょうみょうだき)は、富山県立山町にある立山連峰を源流とし、弥陀ヶ原台地をV字状にえぐる落差350mの日本一の大瀑布である。 日本の滝百選に選定されている。雪解け水が多く流れ込む春などには、称名滝の右側に幻の滝「ハンノキ滝」が現れて、2つの滝が流れ落ちる。また、特に流量が増した場合には、ハンノキ滝の右側にソーメン滝も現れて、3つの滝が並んだ光景を見ることができる。ハンノキ滝の落差は497m(一般には500mとされる)で、350mの称名滝よりも大きいものの、いつも存在している滝ではないとして、日本一の落差の滝として認められないことも多い。
(国土地理院によれば、「滝とは流水が急激に落下する場所をいい、基本は高さが5メートル以上で、いつも水が流れている所」としている。)
 浄蓮の滝(じょうれんのたき)は、静岡県伊豆市湯ヶ島にある滝で、こちらも日本の滝百選の一つ。落差25m、幅7mの直瀑である。

参考文献/渡部一郎:負イオンの生理効果 エアロゾル研究, 18(1), 27-32 (2003)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

称名滝の写真

称名滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F25 1/160秒 ISO 500(撮影地:富山県立山町 2013.6.01 8:12)

称名滝の写真

称名滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F25 1/125秒 ISO 640(撮影地:富山県立山町 2013.6.01 8:19)

浄蓮の滝の写真

浄蓮の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 0.5秒 ISO 100 -1EV(撮影地:静岡県伊豆市 2012.1.02 10:07)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


開田高原の天の川

2021-05-05 20:50:57 | 風景写真/星

 開田高原の天の川を撮ってきた。

 開田高原の天の川は、2019年5月5日に天の川、2021年3月20日には天の川アーチを撮影し、本ブログ記事「開田高原の星空(天と地の融合)」に掲載しているが、今回、再度撮影をしてきた。
 東京都は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、不要不急の外出自粛と都外への移動を控えるよう要請されており、この遠征日以外の休祭日は、当然のことながら自宅から出ることはなかったが、この時期だけに発生する昆虫の「発生のメカニズム」を調べることを主目的にし、天の川撮影は空き時間のついでである。昆虫の「発生のメカニズム」は、ライフワークの「ホタルの研究」に関連し、データを得るために発生状況を実際に見る必要があった。
 緊急事態は医療の現場であり、感染予防は医療を守るための社会的責任であり、個人の行動は今や自己責任では済まないが、感染の最大要因は「3密」と「複数人での会食とその場所」であると言われているから、感染していない者が、車で移動し、感染の有無が分からない他人との接触を避ければ、自身が感染することもなく、感染を拡大させることはないと思う。エビデンスのない自身の都合と勝手な判断によるもので、言い訳がましいと思われるだろう。また「私は夜の撮影すら我慢している」と自粛警察から更に厳しいコメントを頂くかもしれないが、身内や知り合いからの助言や意見はともかく、SNSで匿名の他人からとやかく言われる筋合いはない。この遠征が感染の危険性があるという科学的根拠もないので、心に手かせ足かせを付けたまま実行した。
 昆虫の発生メカニズムに関しては貴重な観察とデータが得られた。本記事では、開田高原の天の川について、嘘偽りなく記したい。

 開田高原は、長野県木曽町にある標高が1,100~1,300mの高原で、光害が少なく星の観測や撮影に適した場所である。開田高原はどのくらい暗いのであろうか。
 インターネットの光害マップで見ることもできるが、美しい星空を撮影する場合は環境省が2020年の夏に実施したデジタルカメラによる夜空の明るさ調査の結果を参考にすると良い。全国各地の調査参加者により撮影された天頂付近の星空の画像データを環境省が画像解析によって分析し、その結果を夜空の明るさが客観的に評価できる数値「等級(mag/□"):(マグニチュードパー平方秒角)」で公表している。評価にあたっては、国際ダークスカイ協会による金銀銅の分類における星空の見やすさに関する客観的な評価部分が参考にされている。
 「等級(mag/□"):(マグニチュードパー平方秒角)」は、天頂付近の天空の写真上で 星が存在しない背景の明るさ(等級、mag)を単位平方秒角あたり( ”)で示したもの である。言い換えれば、縦横が角度 1 秒の範囲の空からやってくる光の量が何等級の星の輝きに相当するか、という値になる。したがって、値が大きいほど夜空が暗く星が見えやすいことを示している。都市部では17~18程度で天の川は全く見えない。19~20でぼんやり見えるくらいであり、21を超えると天の川の複雑な構造が確認でき、星団などの観測も容易になる。
 では、調査結果から開田高原の数値を見てみると、今回撮影した木曽馬の里は、21.78mag/□"、星景撮影の実績から星が良く見えると思っていた乗鞍高原は、21.79mag/□" であった。ちなみに日本全国で一番数値が高いのは、与論島の21.98mag/□" である。調査にはなかったが、宮古島も私の経験から数値が高いと思う。乗鞍高原では8月に星空を撮っているが、横たわる夏の天の川は未撮影なので、天候条件が合えば撮りたいと思う。

 5月3日の16時に自宅を出発し、最寄りの中央道・国立府中ICから乗り、甲府昭和ICで降りて、あとは国道20号線を走り諏訪の手前から152号線で高遠まで、そして361号線で木曽の開田高原を目指した。このGW期間中は、高速道路のETC休日割引が適用されないため、高速道路料金を少しでも節約するための選択である。途中、コンビニエンスストアに寄り、その日の夕食と翌日の朝食を購入。この店員2名が、本遠征における唯一の見知らぬ他人との接触である。
 現地には、22時到着。車内で待機しながら遅い夕食(おにぎり3つ)を済ませ、窓から空を見上げると全体に雲がかかって星が見えない状態。GPV気象予報では、23時以降は雲が流れて快晴になっていたので、そのまま待機していると、予報通りに雲が流れて行った。
 23時に車の脇にカメラをセットし撮影を開始。今回は、今までとは違う設定で撮影した。露出はマニュアルにし、絞りはF2.8の開放。シャッタースピードは25秒。ISO感度は2000に設定した。露出不足にならず、ノイズもある程度抑えられ、尚且つ広角17mmレンズで星を点に写す限界の値である。星の色を出すためにソフトフィルターを付けて、レリーズのシャッターボタンをロック。カメラは連写モードになっているので、レリーズのシャッターボタンを解除するまでタイムラプス動画用に何百枚も撮ることが出来る。撮影中は、再び車内で待機である。
 翌4日は、午前1時半頃に月齢21.6の月が昇ってくるので、それまでの撮影である。条件さえ良ければ、ゴールデンウィークにピークを迎える流星群「みずがめ座η流星群」も楽しめるが、放射点が地平線上に昇ってくるのが午前1時過ぎで月と一緒。地平線の上下数度では、流星はまったく見えないので仕方ない。8月の「ペルセウス座流星群」は条件が良いので期待したい。
 午前0時半を回ったのでカメラの様子を見てみると、何とソフトフィルターが曇っている。気温は1℃。湿度が高いこともあり、曇ってしまったのである。連写はそこまでにし、一旦フィルターを外して曇りを拭き、あとは時間まで場所を変えながら数枚撮影して終了した。撮影後は車中泊し、帰りは中央道伊那ICから乗って帰路に就いたが、小仏トンネル手前10kmの渋滞。夕方には25kmに伸びていたようだ。私も要因の一員だが、車での外出組が多いことに複雑な気持である。

 以下の写真は、今回撮影したソフトフィルターを付けていないものと付けた画像を掲載した。1枚目には流星が写っているが、撮影時間からみずがめ座η流星群ではない。ソフトフィルターを付けた画像では、天の川に大きなS字型で横たる特徴的な形をしている「さそり座」やデネブ・アルタイル・ベガの3つの星を結んで描かれる大きな三角形をした夏の大三角も捉えることができた。ちなみに、さそり座のα星は赤い色をしたアンタレスと呼ばれており、夏の大三角を構成するベガとアルタイルは、七夕の伝説における「おりひめ(織姫)」と「ひこぼし(彦星)」である。
 タイムラプス動画は、3月20日に同じ場所で撮っていたものと併せて編集したものを掲載した。

参考

  1. 環境省「令和2年度 夏の星空観察 デジタルカメラによる夜空の明るさ調査の結果について」
  2. Sky Brightness Nomogram", http://www.darkskiesawareness.org/nomogram.php,

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

開田高原の天の川の写真

開田高原の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町/開田高原 2021.5.04 0:51)

開田高原の天の川の写真

開田高原の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町/開田高原 2021.5.04 0:56)

開田高原の天の川(タイムラプス動画)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


風薫る5月

2021-05-01 18:54:44 | 風景写真/春

 風薫る5月。今では決り文句になっているが、もとは花の香りを運んでくる春の風を指し、後に青葉若葉を吹きわたる風の意味へ変化したと言われている。新緑の中を歩けば気分も良い。実は科学的に見ると、この風には癒し効果がある。「フィトンチッド」が含まれているからである。
 フィトンチッドは、ロシア語でフィトン=「植物」チッド=「他の生物を殺す能力を有する」と訳せるが、主に樹木が害虫を寄せ付けないように、また傷ついた時でも病原菌に感染しないように傷口を殺菌するために発散する揮発性物質のことである。この植物が自らの身を守るために発する「森林の香り」は、人間に対して癒しや安らぎを与える効果もある。更には、これまでの科学的研究によって病原菌やウイルスに対しての強い抗菌、除菌力を持つことも明らかになっている。今回の新型コロナウィルスと同種と思われるMERS(マーズ)ウィルスやインフルエンザの活動を抑制する効果も証明されている。
 では、なぜ「風香る」ではないのだろうか。文化庁 文化審議会国語分科会が平成26年2月21日に発表した『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』によれば「梅の香り」「文化の薫り」というように、香りとは鼻で嗅がれる「におい」を意味していて、薫りとは「物が醸し出す雰囲気」などを意味する「比喩的・抽象的なにおい」を意味しているという。「薫り」という言葉は、物や場所、状況などが持っている趣き深い抒情的な雰囲気を表現する精神的なものと言える。
 5月の風の薫りは、人によって様々であろう。本来はプラスのイメージで捉えたいが、精神的に一番バランスを崩しやすい「木の芽時」、COVID-19の影響で休業や時短を迫られたり、新しい環境での変化についていけない焦りやストレスによって精神的・身体的に苦しむ方々には、マイナスのイメージとして記憶に残ったり、「薫り」さえ感じる余裕もないかもしれない。何とか、少しでも癒される風が吹くことを心より祈りたいと思う。

 風薫る5月。私はテレワークができない業種の為、カレンダー通りの出勤で本日から5連休の始まりである。東京では、今年も新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言の発令に伴う不要不急の移動と外出自粛が要請されており、感染者ではない自分にとっては、心の手かせ足かせになっている。色々と計画もあったが、この期間中の予定は一か所の遠征だけに絞り、他は取り止めた。新潟県十日町市にある「美人林」もその1つである。
 美人林は、十日町市松之山の丘陵に約3万平方メートルにわたって樹齢90年ほどのブナの木が生い茂る林である。昭和初期、木炭にするため、この辺りのブナはすべて伐採され原野となったが、その後、全てのブナがまっすぐ均一に成長し、幹の太さや高さが整って、すらりとした立ち姿が美しい林になったと言われる。
 美人林には、これまでに真冬を除いて5回訪れており、様々な美しい表情を見てきたが、「残雪と新緑の美人林」は、一年の中でも一番美しい。雪解けとともにブナの根の周りから徐々に地面が顔を出す根開け、または根開きが見られ、ブナは上の方から芽吹きが始まる。白と緑の対比の美しさ、降雨時は靄がかかり幻想的に、晴れた朝ならば、朝陽で残雪がオレンジに染まる。ただし、降雪量が少ない年は新緑の前に雪が解けてしまうため、毎年チャンスがあるとも限らない。今年は、条件が重なったので撮り直しを予定していたが、緊急事態宣言が出たため断念せざるを得ない。そこで、2013年と2015年に撮影したRAWデータを見直し、本記事では未掲載の写真を中心に現像し掲載した。
 この写真から「風薫る5月」を感じて頂くこともできなければ、疲れた心を癒すこともできないが、厳しい冬が過ぎれば雪が解けて必ず芽吹く、そして雨が上がり朝が来れば太陽が差すという光景に、少しでも希望を感じて頂ければ幸いである。

参考文献

  1. 趙 希鵬、他:各種細菌に対するフィトンチッドの殺菌・制菌効果に関する研究、北海道工業大学研究紀要 (35), 371-375, 2007-03
  2. 谷田貝光克:森林が放出する揮発性物質とその効用、J. Odor Research and Eng.,21(4), 249-257, 1990
  3. 阿部 智、野村正人:フィトンチッドの化学成分とその抗酸化作用、Aroma Research、7(1)、56-61、2006

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で投稿しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

残雪と新緑の美人林の写真

残雪と新緑の美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 13秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:新潟県十日町市 2013.5.03 4:55)

残雪と新緑の美人林の写真

残雪と新緑の美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F18 15秒 ISO 100 +1 2/3EV(撮影地:新潟県十日町市 2013.5.03 5:36)

残雪と新緑の美人林の写真

残雪と新緑の美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F18 6秒 ISO 100 +1EV(撮影地:新潟県十日町市 2013.5.03 5:37)

残雪と新緑の美人林の写真

残雪と新緑の美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F10 1/5秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:新潟県十日町市 2015.4.25 6:36)

残雪と新緑の美人林の写真

残雪と新緑の美人林
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F10 1/5秒 ISO 100 +1 1/3EV(撮影地:新潟県十日町市 2015.4.25 6:43)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.