ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

無念の8月

2021-08-29 09:53:10 | チョウ

 無念・・・仏教においては「悟りの境地に入り、何事も思わないこと」という意味だが、今の心境は「物事が思い通りにいかず悔しい」だ。今月は秋雨前線の停滞による長雨と大雨、新型コロナワクチンの副反応、そしてこの週末は倦怠感に腰痛。猛暑の疲れも出てきた。先週で「我慢の8月」を終えたかったが「無念の8月」で締めくくることになってしまった。
 そもそも8月は、生息地が局所的なトンボ1種だけに目標を定めたのが、成果なしの原因である。生息地3カ所に遠征したが、一か所は、おそらく採集圧によって絶滅したと思われる。二カ所目は特別保護地域であり生息の確認はできたが、撮影には不向きな状況であり、撮れた写真は証拠にもならない1枚だけ。三カ所目は、訪れた時期が遅く、湿地は既にルリボシヤンマ天国と化していた。ネット上では、8月上旬に撮影記録があるため、同時期に二カ所目には行かずにそこに行っていれば撮れていたかも知れない。当時、どちらに行こうか迷ったことを後悔している。このトンボについては、場所を三カ所目に絞って、また来年に挑戦である。

 毎年、年末にその年に撮影した写真の中から自然風景と昆虫に分けて、自己ベスト10を選んで振り返っているが、自然風景写真はそれなりに撮ってはいるものの、昆虫写真においては、今のところヒサマツミドリシジミとヒロオビミドリシジミの2種しか選ぶものがない。季節も進み、予定している計画も11月上旬までの間にごく僅かであるが、無念の季節で終わらせぬよう、自分がすべきことのロードマップを再構築し、運を意志の力で引き寄せようと思う。
 以下には、過去撮影であるが個人的に「8月のチョウ」という印象が強く、思い出深い3種を掲載した。

  • ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779)
    環境省カテゴリにおいては絶滅危惧ⅠA類に選定され、2016年には「国内希少野生動植物種」に追加指定されたことで、国内のどの地域でも捕ることができない。ゴマシジミの翅の斑紋や色は、地理的並びに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。中でも青い鱗粉がのったタイプ(通称:青ゴマ)は美しいが、ゴマシジミはほとんど翅を開かない。その開翅を撮るために4年間で9回も生息地に通いようやく撮影が叶った。
  • ヤマキチョウ Gonepteryx maxima Butler, 1885
    分布は極めて狭く、青森県と岩手県、長野県と山梨県の一部地域にしか生息しておらず、環境省カテゴリで絶滅危惧IB類に選定されている。あちこち探索して、食樹であるクロツバラの群生地と草原をポイントにしてようやく見つけた場所で撮影することができた。
  • キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)
    シックな色合いから「高原の貴婦人」とも呼ばれている。ヨーロッパから中央アジア、シベリア、北アメリカ、メキシコまで、北半球の温帯~寒帯に広く分布しており、アメリカでは、Mourning Cloak(喪服のマント)と呼ばれ、イギリスでは、Camberwell Beauty(キャンバーウェルの美人)と呼ばれている。一時期、ある地域で姿が見られなくなったこともあるが、昨今ではシラカンバのある信州の高原を散策していると、一回は出会えるチョウである。

参照:ゴマシジミ(青ゴマ開翅)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ゴマシジミ(青ゴマ)の写真

ゴマシジミ(青ゴマ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.8.11 9:32)

ヤマキチョウの写真

ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:山梨県 2013.8.27 10:33)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県 2012.8.25 11:40)

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我慢の8月

2021-08-22 13:52:12 | その他昆虫と話題

 今年の8月は上高地に行っただけで、しかも目標がまったく達成できていない。8日には台風10号と9号が相次いで日本列島に接近、その後は秋雨前線が停滞し、九州地方から東日本にかけての広い範囲に長期間の記録的な大雨を降らし、8月として過去およそ130年の間でみても、異例の大雨になった。今週末の関東は曇りだが、他地域では気圧の谷の影響で雨が降っている。悪天候では遠征はできない。
 またこの週末は、新型コロナワクチン接種の副反応で足止めになった。職域接種(モデルナ社ワクチン)で7月5日に一回目を接種し、そして8月20日に二回目を接種した。一回目の後は特に副反応はなかったが、二回目を打った翌日、21日の土曜日は、38℃近くの発熱と倦怠感、腕の痛みでベッドから起き上がれなかった。これらの症状は1日で収まり日曜日は回復したが、結局のところ、天候も不安定で遠征は見送った。
 新型コロナウイルスの感染に関しては、昨日全国で発表された新たな感染者は2万5460人で、3日連続で2万5000人を超えている。東京都は、5074人で4日連続で5000人を超えた。都によると、会食以外の目的で複数の友人で会った後に全員が感染するケースが増えているという。ちなみに、これまでの累計では、東京都99,208人、全国では1,252,295人が感染している。(データ出典元: CDC,WHO,ECDC)
 私が勤める会社でもビルの1階で15人が感染するクラスターが発生している。今回、2回のワクチン接種を終えたが、ワクチンを接種しても新型コロナウイルスには感染する。重症化はしないようだが、感染すれば他人には移してしまう可能性が極めて高い。今後も、これまでのように感染対策を万全にして、絶対に感染しないように努めながら、「我慢の8月」に今日で終止符を打ちたい。

新型コロナワクチン接種の写真

 今月は、上高地でしか写真を撮っていないので、この記事では過去撮影で当ブログ未掲載の写真を掲載した。ベニボタルは、ベニボタル科(Family Lycidae)でホタル科と近縁ではあっても、発光は一生を通じて全くしない。日本にはおよそ90種ほど生息しいる。

参考文献
松 田 潔:日本産ベニボタルの同定マニュアル , II さやばね No.5 Mar.2012 日本甲虫学会
松 田 潔:日本産ベニボタルの同定マニュアル , III さやばね No.6 June.2012 日本甲虫学会

以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。

クロバヒシベニボタルの写真

クロバヒシベニボタル Dictyoptera elegans Nakane et J. Winkler, 1952
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/100秒 ISO 800(撮影地:長野県下高井郡山ノ内町 2010.07.31)

ミスジヒシベニボタルの写真

ミスジヒシベニボタル Benibotarus spinicoxis (Kiesenwetter, 1874)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/125秒 ISO 1600 -1/3EV(高知県産 2020.06.19)

ミスジヒシベニボタルの写真

ミスジヒシベニボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F4.5 1/160秒 ISO 1250 -1/3EV(高知県産 2020.06.19)

マユタテアカネの羽化後の写真

マユタテアカネの羽化後
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/100秒 ISO 2500 -1 2/3EV(撮影地:東京都 2020.07.24)

オオアオイトトンボの羽化後の写真

オオアオイトトンボの羽化後
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F5.6 1/20秒 ISO 125(撮影地:東京都 2019.08.04)

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運と偶然

2021-08-14 16:50:48 | その他昆虫と話題

 まだ8月半ばだというのに、秋雨前線が停滞して北海道を除いて全国的に雨の週末。線状降水帯も発生し西日本を中心に大雨が降り続き、各地で「大雨特別警報」が発令されており、50年に一度という極めてまれな雨量で命を守るための最善の行動を取ることが求められている。まずは、浸水したり、土砂崩れが起こるなどの大きな被害に遭われた方々にお悔やみを申し上げるともに、被災された全ての方々及び関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げたい。
 東京も断続的に降り続いている。当然、予定していた遠征は中止にし自宅に籠らざるを得ない。また、1日の新型コロナウイルスの新規感染者が5,000人を超える東京。改めて自粛も迫られる昨今、この雨の週末は「運と偶然」どちらなのだろうか。

 今年は、何年も追いかけてきた未撮影である希少種昆虫の貴重な姿を収めることに時間を費やしている。予めその種の生態を調べ生息環境や行動について学ぶ。広く知られた保護地域に赴いたり、生息地を一から探して遠征し、まずは図鑑的写真を撮る。これは、その種の特徴が良く分かり、更にその種の一番美しい姿・色彩を一番美しい時期に美しい写真にすることである。そして、最終的に羽化や産卵等の生態のステージを収めることが目標である。
 しかしながら、撮影するためにはその種を前にしないことには先に進めない。予め生態を細かく学んでいても、生息地でその種に出会うのは、最後は「運」という時もある。本年6月に撮影したヒロオビミドリシジミやヒサマツミドリシジミは、将に運の良さが味方したと言える。
 7月からは、ほとんど目標が達成できていない。信州の白馬、乗鞍、上高地へ通うこと4回。いずれもチョウとトンボの特定の種を撮影するためであったが、すべて惨敗。出会えれば何とか撮影はできるし、生息の確認ができれば、戦力を考えて再訪すれば良いが、出会いさえ叶わなかった。今年は、計画そのものを断念した種もある。例えば高山蝶。未見・未撮影で5年前から生息地に通っている。北アルプスの数か所では出会えず、今年は中央アルプスに行こうと計画したが、コロナの影響で登山に時間がかかることと、最盛期にあたる頃に天候が悪いことから断念せざるを得なかった。
 昆虫に限らず自然相手に写真を撮っていると、偶然とまぐれもある。前記事の上高地の大正池の光景は、将に偶然の出会いであった。トンボを田代湿原で探索することが目的で、そのために降りたバス停が大正池。天気と時間も大正池に朝霧がかかる条件と合致していた。ただし、この偶然の出会いに十分と対応できる撮影機材を持っていなかったことが悔やまれる。
 昆虫の写真では「まぐれ」が多い。「まぐれ」 の由来を辞書で調べてみると、動詞の「紛れる(まぎれる)」から転じた名詞「紛れ(まぎれ)」がなまって「まぐれ」となったようだ。つまり、多くの中に良い結果が紛れているということ。空中で静止しない飛んでいるチョウを撮る場合は、ハイスピードで連写して「まぐれ当たり」を期待するが、コツをつかむと確率が上がる。まぐれは、偶然とは違って技術向上で何とかなるものである。

 連敗続きの上に、行動できない雨の週末。恨めしくも思うが、ここは様々なことを見直し考え直すきっかけにしたい。
 運と偶然は異質なものだ。宝くじに当選するのは「運」ではなく「偶然」であり、意志の力ではどうにもならない。一方、運は意志の力で引き寄せることが出来る。昔から「運も実力のうち」とよく言う。運の無さや悪さは結果論であり、失敗には何らかの理由がある。学ぶべきことは学び、事前の準備を怠らず、努力と継続が必要である。結果が残せないという不平不満は負のオーラを生み出してしまう。諦めない限りは失敗ではないのだ。
 まだまだ、昆虫の季節は続く。未撮影のトンボは探索を継続し、秋には、今年もサツマシジミ狙いで和歌山遠征を予定している。計画は多くないが、努力と継続で運を掴んでいきたいと思う。
 ちなみに、雨と週末が重なったのは偶然だが、前線の停滞と大雨は、ある意味必然であろう。平成24年九州北部豪雨については「海洋の温暖化」との関係が検証されている。今回の豪雨の原因も地球温暖化が関係している可能性は高い。シチリアでは、最高気温が48℃、カナダでは49.6度を記録する熱波に襲われている。これらは地球温暖化の急なペースだとする研究結果が発表されている。地球規模で起こっている異常気象の元凶は我々人類である。努力と継続で温暖化を止めなければ、運の尽きである。

 以下には、運と偶然、そしてまぐれにまつわる昆虫写真を掲載した。
 今年撮った駄作の中から4枚。偶然に3種類のチョウが集まっていたが、まぐれ当たりが失敗し、全開翅の瞬間が撮れなかったコムラサキ。別のトンボ探索中に、偶然目の前の草に止まっていた羽化して間もないルリボシヤンマ。次に、過去撮影から2枚。まぐれ当たりで撮れたモンキチョウ。普通種でも、こんな写真を連発できたら嬉しいものである。次に偶然とまぐれが重なって撮れたエゾイトトンボ。これは、二度と同じシーンは撮れない奇跡の一枚である。そして最後は、先月遭遇したツキノワグマである。ツキノワグマは、トンボを探索中に前方30mほどの場所に偶然出現した。運よく襲われることはなかった。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

コムラサキの写真

コムラサキとヤマキマダラヒカゲとキバネセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(撮影地:長野県 2021.7.24 8:05)

コムラサキの写真

コムラサキ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 125(撮影地:長野県 2021.7.24 8:19)

ルリボシヤンマの写真

羽化して間もないルリボシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影地:長野県 2021.8.08 8:05)

ルリボシヤンマの写真

羽化して間もないルリボシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影地:長野県 2021.8.08 8:05)

モンキチョウの写真

モンキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(撮影地:岩手県 2010.7.17 14:39)

エゾイトトンボの写真

エゾイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2018.6.30 12:27)

ツキノワグマの写真

ツキノワグマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2021.7.24 9:51)

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上高地

2021-08-09 15:01:00 | 風景写真/湖沼

 上高地へトンボを探しに・・・

 8月はオリンピック開催の関連で「山の日」の祭日が、11日から8日に変更になり三連休。初日は、実家の両親、そしてコロナで今は日本にいるカリフォルニア州公認の会計士である妹二人と共にご先祖様の墓参り。
 翌日8日の日曜日は、台風9号と10号の“ダブル台風 ”が西日本と東日本それぞれに近づく予報で警戒が必要だったが、長野県上高地は天気予報に晴れマークが出ていた。今月一番の目標は、本州では生息地が極めて局所的であるトンボの生息地探索と撮影であり、天気が良ければチャンスを無駄にしたくない。東京都内では新型コロナの新規感染者が5日連続で4,000人を超える緊急事態ではあるが、いつものように感染対策を万全にして単独で上高地へと向かった。2016年7月にオオイチモンジを撮影して以来5年ぶりである。
 8日午前2時過ぎに自宅を出発。中央道は土砂降り。八王子の料金所を過ぎて約2km進むと、追い越し車線を猛スピードで走ってくる車のライトがバックミラーに見えた。まもなく、走行車線を走っている私の車の前すれすれに割り込んできたと思ったら、そのまま左の壁に激突。火花をあげながら派手にスピンしてクラッシュ。50km規制の土砂降りなのに130kmは出していただろう。自業自得の無謀なスバルの白い乗用車に危うく巻き込まれるところであった。将に危機一髪。自動ブレーキの助けもあり難を逃れた。
  諏訪ICからは雨は止んでおり、松本ICで降りると星が見えていた。無事に沢渡バスターミナルの駐車場に5時半到着。準備を済ませ6時発の上高地行きシャトルバスに乗り込んだ。乗車人数は15人であった。ちなみに料金は片道1,300円。タクシーに乗ると片道3,900円も掛かる。

 大正池でバスを降り、池畔へ。朝霧漂う幻想的な大正池。この光景は2016年にも見ているが、当時はタクシーに乗っており、運転手さんが「写真を撮るために停めましょうか?」と気を遣ってくれたにも関わらず、オオイチモンジ狙いで先を急いでいたので、大正池は素通りしていた。今回、偶然にも同じような光景に出会うことができ、5年前の後悔の念を払拭することができた。ただし、残念なことにトンボが主目的であったため、カメラはAPS-Cサイズの昆虫用として使っているカメラに、標準レンズの代わりに付けている魚眼レンズでの撮影。薄っぺらいデジタル的な写真になってしまったが仕方ない。
 次に向かったのは田代池。2013年1月5日にマイナス23℃の中、徒歩で上高地入りして「霧氷の田代池」を撮影して以来である。そして本命の田代湿原。7時半から10時過ぎまでの間で、それらしいトンボが1頭飛んできたが、トンボまでの距離30m以上。近くに来ることなくホバリングもなし。用意してきた300mmレンズで撮ってはみたが、同定できるほど鮮明な写真は撮影できなかった。代わりに羽化して間もないルリボシヤンマを撮影して終了。
  河童橋近くのバスターミナルから11時初のシャトルバスで沢渡の駐車場へ戻り、午後からは天候が崩れる予報であったため、そのまま自宅へ直行。15時に帰宅した。

 上高地は、30年前に白馬村とともに新婚旅行で訪れた思い出の地でもある。その後は、チョウや風景の撮影で何度も訪れ、特に真冬の上高地は、まさに「神降地」であった。
  今回は、台風の影響もあり観光客は少ないだろうと思っていたが、田代湿原ですら時間の経過とともに大勢がひっきりなしにやってきた。夏休みに3連休。コロナ過でも人の流れは増加する。私自身もその中の一人であるが、人が多い時期の上高地では、自然と静かに対峙するのも難しい。朝、中央道で「運」を使い果たしてしまったのか、それとも行いが悪いのか、神は微笑みさえ掛けてくれなかった今回の遠征。また、場所を変えて、難易度の高いトンボを探索してきたいと思う。

参照:オオイチモンジ冬の上高地を撮る

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

大正池の写真
大正池(上高地)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:27)
大正池の写真
大正池(上高地)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:31)
大正池の写真
大正池(上高地)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:37)
焼岳と大正池の写真
焼岳と大正池
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:28)
焼岳と大正池の写真
焼岳と大正池
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:32)
焼岳と大正池の写真
焼岳と大正池
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/50秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 6:32)
河童橋から穂高連峰の写真
河童橋から穂高連峰
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F10 1/20秒 ISO 400(撮影地:長野県 2016.7.10 5:17)
田代池の写真
田代池(上高地)
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/30秒 ISO 100(撮影地:長野県 2021.8.08 7:03)

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三つ峠より富士と星空

2021-08-01 15:32:09 | 風景写真/星

 三つ峠より富士と流星群を捉えることができた。

 三ツ峠は、山梨県都留市、西桂町、富士河口湖町の境界にある標高1785mの山。名前に「峠」とついているが実際には峠ではなく、開運山(1785m)、御巣鷹山(1775m)、木無山(1732m)の3つの頂きの総称といわれており、開運山を指すこともある。頂上から眺める富士山の絶景はもちろん、高山植物や山野草が豊富で、日本の新・花の百名山のひとつにも選ばれている。また、絶滅危惧種のチョウも生息している。
 三ツ峠には、過去に5回登っている。最初は2012年12月31日。夜中からアイゼンを付けて登り朝焼けの富士(三ツ峠より富士)を撮影した。2、3回目は2014年7月にチョウを撮影。その後家族で登山し、最後は2019年5月に会社の仲間と夜に登った。この時は、富士山・雲海・天の川をセットで撮りたかったのだが、山頂はすっと雲の中でカメラをカバンから出すことなく下山した。
 そして6回目になる今回の目的は「ある昆虫の生息確認と撮影」である。生息していると言う知識はあるが、実際に見たことはなく、発生時期や発生数、生息場所などに関しての情報はほとんどない。無駄足を覚悟での登山であった。

 7月31日。天気予報では15時頃に夕立があるが、その後は晴れ。雷の心配もなさそうなので、自宅を13時に出発した。途中、中央道の談合坂SAで昼食。スタミナをつけようと「すた丼」と「エナジードリンク」を腹に入れ、登山口駐車場に15時に到着。
 今回も最短距離で登れる裏登山口からの90分コースである。この日、東京の気温は34℃であったが、ここの麓は21℃。早速、気合を入れて歩き始めたが、すぐに息切れ。汗が噴き出る。運動不足の体で、重いカメラと三脚を背負っての登山は、かなりキツイ。途中で一回休憩を入れて、山頂に16時45分到着。何と、何も見えない。2019年と同じ自らが雲の中である。
 しばらくすると体が冷えてきた。寒い!気温は15℃。登山者は私一人。時折、上空に青空が見える。ここで引き返したら、元も子もない。我慢!!
 待機すること2時間半。ようやく雲が晴れてきた。富士山と星も見えてきた。しかし、肝心の被写体は現れない。気温が低いためか、時期が遅かったのかも分からない。仕方なく富士山と星空を撮影し、真っ暗な登山道を懐中電灯を照らしながら下山した。一人きりはやはり怖い。恐怖と戦いながら、上りの半分の時間で無事駐車場にたどり着いた。主目的は達成できず、更に何の情報も得ることができなかったが、2019年に空振りで終わった「富士山・雲海・天の川」の光景は残すことができた。(一枚目の富士山の右側に写っているオレンジ色の部分は、雷雲である)
 帰宅後にRAW現像してみると、一枚に流星が1つ写っていた。1日前の7月30日にピークを迎えた「みずがめ座δ南流星群」と「やぎ座α流星群」かどうかは分からないが、三つ峠(開運山)で少しだけ運が開けたのかも知れない。欲を言うなら金運アップを願いたい・・・

 6月と7月は、ホタルを中心に多くの成果を挙げることができたが、私が住む東京都は31日、都内で新型コロナウイルスの感染者が過去最多となる4058人確認されている。自宅で療養する人も1万人を超えるなど、感染拡大のスピードがさらに上がっている。私は8月20日に2回目のワクチン接種を行うが、状況を鑑みて、8月の予定は当初の計画より大幅に変更・縮小しようと思う。アイノミドリシジミやキリシマミドリシジミ・・・撮りたい被写体や行きたい所は多いのだが、過去と同じような写真になりそうなものはすべて取り止め、今年最良の条件で見られそうな「ペルセウス座流星群」とここ数年間目標にしてきた未撮影のトンボは、セットにし1日で撮り終えたいと思う。また同じく未撮影の高山蝶については、昨年に続き新型コロナウイルスの影響で、生息場所への行き帰りに長時間を要すると言う情報から、今年も見送ることにした。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

三つ峠より富士と星空
三つ峠より富士と星空
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / マニュアル F2.8 10秒 ISO 1600(撮影地:山梨県 2021.7.31 20:05)
三つ峠より富士と星空
三つ峠より富士と星空
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル F2.8 13秒 ISO 1600(撮影地:山梨県 2021.7.31 20:10)

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