無念・・・仏教においては「悟りの境地に入り、何事も思わないこと」という意味だが、今の心境は「物事が思い通りにいかず悔しい」だ。今月は秋雨前線の停滞による長雨と大雨、新型コロナワクチンの副反応、そしてこの週末は倦怠感に腰痛。猛暑の疲れも出てきた。先週で「我慢の8月」を終えたかったが「無念の8月」で締めくくることになってしまった。
そもそも8月は、生息地が局所的なトンボ1種だけに目標を定めたのが、成果なしの原因である。生息地3カ所に遠征したが、一か所は、おそらく採集圧によって絶滅したと思われる。二カ所目は特別保護地域であり生息の確認はできたが、撮影には不向きな状況であり、撮れた写真は証拠にもならない1枚だけ。三カ所目は、訪れた時期が遅く、湿地は既にルリボシヤンマ天国と化していた。ネット上では、8月上旬に撮影記録があるため、同時期に二カ所目には行かずにそこに行っていれば撮れていたかも知れない。当時、どちらに行こうか迷ったことを後悔している。このトンボについては、場所を三カ所目に絞って、また来年に挑戦である。
毎年、年末にその年に撮影した写真の中から自然風景と昆虫に分けて、自己ベスト10を選んで振り返っているが、自然風景写真はそれなりに撮ってはいるものの、昆虫写真においては、今のところヒサマツミドリシジミとヒロオビミドリシジミの2種しか選ぶものがない。季節も進み、予定している計画も11月上旬までの間にごく僅かであるが、無念の季節で終わらせぬよう、自分がすべきことのロードマップを再構築し、運を意志の力で引き寄せようと思う。
以下には、過去撮影であるが個人的に「8月のチョウ」という印象が強く、思い出深い3種を掲載した。
- ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779)
環境省カテゴリにおいては絶滅危惧ⅠA類に選定され、2016年には「国内希少野生動植物種」に追加指定されたことで、国内のどの地域でも捕ることができない。ゴマシジミの翅の斑紋や色は、地理的並びに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。中でも青い鱗粉がのったタイプ(通称:青ゴマ)は美しいが、ゴマシジミはほとんど翅を開かない。その開翅を撮るために4年間で9回も生息地に通いようやく撮影が叶った。 - ヤマキチョウ Gonepteryx maxima Butler, 1885
分布は極めて狭く、青森県と岩手県、長野県と山梨県の一部地域にしか生息しておらず、環境省カテゴリで絶滅危惧IB類に選定されている。あちこち探索して、食樹であるクロツバラの群生地と草原をポイントにしてようやく見つけた場所で撮影することができた。 - キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)
シックな色合いから「高原の貴婦人」とも呼ばれている。ヨーロッパから中央アジア、シベリア、北アメリカ、メキシコまで、北半球の温帯~寒帯に広く分布しており、アメリカでは、Mourning Cloak(喪服のマント)と呼ばれ、イギリスでは、Camberwell Beauty(キャンバーウェルの美人)と呼ばれている。一時期、ある地域で姿が見られなくなったこともあるが、昨今ではシラカンバのある信州の高原を散策していると、一回は出会えるチョウである。
参照:ゴマシジミ(青ゴマ開翅)
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。
ゴマシジミ(青ゴマ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.8.11 9:32)
ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:山梨県 2013.8.27 10:33)
キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県 2012.8.25 11:40)
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