ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヤマキチョウ

2024-08-25 13:59:35 | チョウ/シロチョウ科

 ヤマキチョウ Gonopteryx rhamni maxima Butler, 1885 は、シロチョウ科(FamilyPieridae)モンキチョウ亜科(Subfamily Coliadinae)ヤマキチョウ属(Genus Gonepteryx)のチョウで、国外では北アフリカから中国、朝鮮半島にかけて分布し、岩手県、長野県、山梨県、岐阜県に分布するが、極めて局所的であり、アザミ類やマツムシソウが生育する乾燥した広く明るい標高1,000m以上の高草原地帯に生息している。
 幼虫の食草は、本州(中部以北)の山地や高原に生える落葉低木であるクロツバラのみで、成虫は8月上旬頃から出現し9月中旬頃まで見られる。年一化で、初夏から夏に羽化した成虫はそのまま越冬し、翌年の5月から7月頃にかけ産卵する。翅を開くと(開帳)60~75mmほどで、モンシロチョウがおよそ開帳50~60㎜であるから、一回り大きい。翅表はオスは黄色、メスでは淡い黄色で、前翅の先端は鈎状に突出している。前後翅とも中室端に橙黄色の小紋があり、前翅の前縁と外縁および後翅の後角や後縁に赤褐色の縁取りがある。同属のスジボソヤマキチョウ Gonepteryx aspasia niphonica Verity, 1909 は、前翅の前縁に赤褐色の縁取りがないので区別ができる。
 ヤマキチョウは、2007年の環境省版レッドリストでは絶滅危惧II類の位置づけであったが、2012年には絶滅危惧ⅠB類 (EN)として記載された。都道府県版レッドリストにおいては、12の都県で記載しており、青森県と埼玉県では絶滅、現在分布する岩手県と長野県では絶滅危惧Ⅰ類に、山梨県では準絶滅危惧としている。ちなみにスジボソヤマキチョウについては、環境省版レッドリストには記載がないものの、都道府県版レッドリストでは21の道府県で絶滅危惧Ⅰ類や絶滅危惧Ⅱ類としている。

 昨今は、毎日のように午後にはゲリラ雷雨があり、日によっては午前中から降ることもあるため、なかなか目的地に遠征することをためらっているが、先日、わずかなチャンスを狙って11年ぶりにヤマキチョウの生息地を訪れた。その生息地は、本種の分布域を10ヵ所以上も探索し、11年前に自力で見つけた場所である。
 過去の経験から、本種は天気の良い午前中の短い時間帯しか姿を現さないので、その時を狙って待機したが、残念ながら今回はまったくその姿を見ることができなかった。各地域においての本種の減少は、大規模な耕地、耕作放棄や植生遷移の進行などによる食草であるクロツバラの減少が大きな原因とされているが、当地は11年前と環境は変化しておらず良好な状態が保たれている。本種は、暑い日中は活動しない個体が多。また、今年の猛暑で涼しい場所に避難ししている可能性もあるが、採集も度外視できない。
 ヤマキチョウは、もともと分布域が狭く生息地も局所的であるため、採集者が殺到する。以前、他の生息地では大勢が網を振り、一人で二桁のヤマキチョウを採集していた所を目撃している。このような事を書くと、チョウの採集を行っている方々から批判のコメントを頂く。「標本は、そこに存在していた確かな証拠」とか「採集で絶滅することはない」などだ。どちらも議論するに値しない各人の言い訳にしか聞こえない。
 採集をするならば、その地区におけるヤマキチョウの個体群動態解析を行い、存続可能性の評価と絶滅確率、最小存続可能個体数について調べ、安定的な存続を可能にするための採集数を決めた上で、全国から押し寄せる採集者全員を管理し、その採集数を上回る採集をしないよう統制を図ってからにしてほしい。「私一人」や「我々グループだけ」は通用しない。「絶滅が心配される希少種だから採っておこう」は言語道断。これは、本種のみならず、ギフチョウやルーミスシジミをはじめ、多くのチョウやトンボでも同様である。

 以下には、2013年に撮影したヤマキチョウと、比較のためにスジボソヤマキチョウの写真も掲載した。両種ともに逆光で翅が透けるように見ると、レモン・イエローの美しさが際立つ。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ヤマキチョウの写真
ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影日:2013.8.27 10:33)
ヤマキチョウの写真
ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1EV(撮影日:2013.8.27 10:32)
ヤマキチョウの写真
ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640 +1EV(撮影日:2013.8.27 10:31)
ヤマキチョウの写真
ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 2/3EV(撮影日:2013.8.27 11:02)
スジボソヤマキチョウの写真
スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影日:2014.7.12 14:09)
スジボソヤマキチョウの写真
スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/640秒 ISO 200 +1EV(撮影日:2014.7.12 14:10)
スジボソヤマキチョウの写真
スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 400 1/3EV(撮影日:2015.9.11 10:53)
スジボソヤマキチョウの写真
スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 250 1/3EV(撮影日:2015.9.11 11:02)
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ツマキチョウ(2023)

2023-04-10 19:06:11 | チョウ/シロチョウ科

 ツマキチョウ Anthocharis scolymus ( Butler, 1866)は、シロチョウ科(Family Pieridae)ツマキチョウ属(Genus Anthocharis)で、学名の Anthocharis は、ギリシャ語の複合語(Antho+caris)「花を愛するもの」という意味である。日本全土に分布し、夏から冬の間を蛹で過ごし、翌春羽化する年1化、春だけに現れるスプリング・エフェメラルである。

 今日は、59歳の誕生日である。天気は快晴で日中の気温は21℃まで上昇。春本番の日和である。久しぶりに昆虫の写真を撮ろうと里山に出掛けた。写真撮影は先月の19日以来で、昆虫写真は昨年の9月25日新潟でトンボを撮って以来である。昆虫撮影なので、カメラは Canon EOS 7D でこちらも半年ぶりの使用である。
 午前8時半に自宅を出発し、下道で1時間半で到着。平日であるからだろう誰もいない。この場所を訪れるのも3年ぶりであり、少しだけ環境が変わっている。そのためか、探索を開始するが一番の目的の昆虫の姿がない。 小一時間ほど待ってみたが、一向に現れない。仕方なく帰ろうとすると、草原の上を白いチョウが何頭も舞っている。近づいてみると、ツマキチョウであった。このチョウを見るのも、ずいぶん久しぶりである。折角なので、 今回はツマキチョウで楽しませてもらうことにした。
 ツマキチョウは、かなりせわしなく飛ぶため、飛翔写真は難しい。ましてや持って行った300mmレンズでは無理である。しかし、ほとんど止まることもない。しばらく観察していると、近くを通った時に 必ず止まる花があった。それならばと、そこで待機して何枚か撮影。その場所では、これまた久しぶりのチョウも出現し、数枚を撮影。これは次の投稿で掲載したいと思う。
 半年ぶりの昆虫撮影で勘が鈍っており、ピントも構図も甘いが、春の陽のひと時を十分に楽しむことができた。ツマキチョウを撮らなければ、心折れながら、逆にストレスを抱えたまま帰宅したことだろう。(以下掲載の3枚目だけは、2012年の撮影)

 ツマキチョウを見ると、クモマツマキチョウにもまた会いたくなるが、今年は、とにかく季節の進み具合が早い。例年4月下旬に満開になる津南の「中子の桜」が もう満開。十日町の美人林にはほとんど雪が残っていない状態だという。今後の予定を組みなおす必要がありそうだ。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ツマキチョウの写真
ツマキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:神奈川県 2023.4.10 11:30)
ツマキチョウの写真
ツマキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:神奈川県 2023.4.10 11:03)
ツマキチョウの写真
ツマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/320秒 ISO 800(撮影地:神奈川県 2012.5.4 11:14)
ツマキチョウの写真
ツマキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:神奈川県 2023.4.10 10:44)
ツマキチョウの写真
ツマキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:神奈川県 2023.4.10 11:26)
山桜の写真
山桜
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:東京都 2023.4.3 11:45)
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キタキチョウとツマグロキチョウ

2022-09-19 13:22:42 | チョウ/シロチョウ科

 日本に分布しているキチョウ属(Genus Eurema)は、以下の4種が知られている。

  • タイワンキチョウ Eurema blanda arsakia (Fruhstorfer, 1910)
  • ツマグロキチョウ Eurema laeta betheseba (Janson, 1878)
  • キチョウ Eurema hecabe brevicostalis Butler, 1898
  • キタキチョウ Eurema mandarina mandarina (de l'Orza, 1869)

 上記の内、キチョウとキタキチョウは同一種とされていたが、DNA分析によって奄美諸島以南の南西諸島に分布しているものをキチョウ(ミナミキチョウ)として区別された。尚、タイワンキチョウは八重山諸島だけに分布するが、キタキチョウは、秋田・岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島に分布し、見た目だけでは同定が難しい。
 今回は、これまでに撮影したキタキチョウとツマグキチョウを比較する意味でまとめてみた。

 キタキチョウは、ネムノキ、ハギ類のマメ科の植物が食草で、平地~山地の樹林の周辺や草地や畑、市街地などでごく普通に見られるチョウである。
 5月下旬頃から発生し、以降連続的に(5~6回)発生して晩秋に至るが、幼虫期の日長と温度によって夏型と秋型の季節型が現れる。季節型には、形態的な差異があり、夏型は翅表外縁の黒帯の幅が広いが、秋型は黒色の縁が先端に少し残るか、もしくはない。初秋の頃は、夏型と秋型が混棲するために個体数が多く、晩秋になると秋型のみが現れ、そのまま成虫で越冬する。
 様々な花に止まって吸蜜するが、忙しなく移動する。夏には、湿った場所や河原などで吸水している姿も見ることができるが、翅を開くことはない。

 ツマグロキチョウは、本州(宮城県以南)、四国、九州に分布し、乾燥した河川敷や堤防の草地などに生息している。夏型と秋型の季節型があり、秋型では前翅の先端が直角に角ばり後翅の裏面に暗色の筋状紋が現れるため、キタキチョウとは比較的簡単に区別する事ができるが、夏型での区別は難しい。成虫は夏と秋に発生し成虫で越冬する。夏型は発生地付近にいるが、秋に発生する秋型は生息地を離れた場所にも拡散して見られる。
 キタキチョウがマメ科植物の多くを食べるのに対し、本種はマメ科のカワラケツメイのみを食草としている。カワラケツメイは主に河川の冠水地に生育する高さ30cm程度の一年草で、他の植物が生えにくいような乾燥した貧栄養の礫地に生育する。昨今では、河川改修や護岸工事、草刈りの放棄による植生遷移等でカワラケツメイが減少し、ツマグロキチョウも全国的に激減している。
 環境省版レッドリストでは絶滅危惧IB類にランクされており、都道府県版レッドリストでは、東京都、千葉県、神奈川県で絶滅、茨城県、埼玉県、山梨県、群馬県、長野県、滋賀県、大阪府、香川県で絶滅危惧I類、その他多くの自治体で絶滅危惧Ⅱ類および準絶滅危惧種に選定している。(尚、神奈川県では、相模原市の市街地に生息していることが、2011年4月11日の毎日新聞に掲載されている。)

以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

キタキチョウの写真
キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都 2016.10.2)
キタキチョウの写真
キタキチョウ / 夏型の交尾
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 1250(撮影地:東京都 2010.08.29)
キタキチョウの写真
キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 500 +1/3EV(撮影地:山梨県 2013.8.27)
キタキチョウの写真
キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 800(撮影地:東京県 2011.10.18)
キタキチョウの写真
キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1EV(撮影地:三重県 2020.10.31)
ツマグロキチョウの写真
ツマグロキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1000 +1EV(撮影地:栃木県 2021.9.12)
ツマグロキチョウの写真
ツマグロキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 320 +1EV(撮影地:栃木県 2013.09.28)
ツマグロキチョウの写真
ツマグロキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 400 +1EV(撮影地:栃木県 2013.09.28)

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クモマツマキチョウ

2019-05-28 22:06:35 | チョウ/シロチョウ科

 クモマツマキチョウ Anthocharis cardamines (Linnaeus, 1758) は、シロチョウ科(Family Pieridae)ツマキチョウ属(Genus Anthocharis)で、ユーラシア北部に広く分布するチョウ。ヨーロッパでは普通種であるが、日本では本州中部地方の特産種で、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳の高地帯の沢沿いにある草地に生息している。日本には、 次の2亜種が生息している。

  1. クモマツマキチョウ 北アルプス・戸隠亜種 Anthocharis cardamines isshikii Matsumura, 1925
  2. クモマツマキチョウ 南アルプス・八ヶ岳連峰亜種 Anthocharis cardamines hayashii Fujioka, 1970

 クモマツマキチョウは、高山蝶の一種で、大陸と陸続きになっていた氷河期に渡来してきたものが、温暖化により国内の高山に逃げ延びたものと言われているが、低標高地に産する場合もある。翅裏はツマキチョウと同じく草ずり模様になっているが、前翅先端は雄は鮮やかなオレンジ色、雌ではくすんだ灰色になる。 また前翅中央に黒点があり、これが北アルプス及び戸隠亜種は丸く、南アルプス・八ヶ岳連峰亜種は三日月形をしている。
 食草となるミヤマハタザオ、イワハタザオなどのハタザオ類は崖地などに生育するため、物理的環境の崩壊等で本種の絶滅も危惧されており、環境省カテゴリでは準絶滅危惧種として分類されている。長野県では「指定希少野生動植物」に、長野県及び富山県では天然記念物にも指定している。

 クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)は、2013年6月に富山県で撮影しているが、今回、未撮影のメスを求めて長野県の生息地へ向かった。
 25日の18時に自宅を出発し、現地には21時半に到着。25日は、前記事に掲載したウスバシロチョウの完全黒化型を撮影するため前日から福島県に行っており、福島から一時帰宅した後、すぐに長野へ向かうという強行軍。しかも二日連続の車中泊である。
 26日。6時から登山開始。当地は初めての訪問であり、ほとんど予備情報がない。過去の経験から生息環境と思われる場所を見つけながら、標高およそ1,500mのポイントで待機することにした。本種は、朝方に草地の地面近くを飛翔しながら吸蜜などをし、10時前後から渓流沿いなどを下方に下る習性があるが、この日はなかなか姿を確認できない。8時半頃、1頭のメスの飛翔を確認したが、止まること無く飛び去ってしまった。その後、オス1頭も確認したが、同じように飛び去ってしまった。この日は全国的に高温で、標高およそ1,500mの地点でもかなり暑いことが、行動パターンを変えているようである。
 2頭を目撃したことで、本種の飛翔コースが判明。その周辺の林道を行ったり来たりしていると、どこからともなく1頭のオスが現れ、私の周りを飛翔。どうやら、服の色が良かったようである。ただし、なかなか止まってくれない。しばらく追いかけると、やっと白い花に止まって吸蜜。ただし、ほんの十数秒。その後飛び立った後を追いかけたが、藪を超えて沢の下へと飛び去ってしまった。この日は、その後1頭も確認できず、結局オスの1カットのみの成果で終了。しかしながら、久しぶりに見るオレンジに少々興奮気味にカメラを向け、楽しい時間を過ごすことができた。いずれは、 南アルプス・八ヶ岳連峰亜種も撮影したいと思う。
 以下に掲載した写真は、1枚目が今回のもので、他は2013年に富山県において撮影した個体を比較として掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:長野県 2019.5.26 9:20)

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:富山県 2013.6.01 8:51)

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:富山県 2013.6.01 8:48)

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:50)

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:53)

クモマツマキチョウの写真

クモマツマキチョウ(北アルプス・戸隠亜種)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:富山県 2013.6.01 8:56)

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モンシロチョウ

2017-09-11 22:41:25 | チョウ/シロチョウ科

 モンシロチョウ Pieris rapae crucivora Boisduval, 1836 は、シロチョウ科(Family Pieridae)モンシロチョウ属(Genus Pieris)で、日本全土に生息し、畑などの身近な環境でよく見られるチョウである。

 モンシロチョウほど身近なチョウには、まずカメラを向けない。絶滅危惧種や美麗な種ばかり撮っていると、目の前を飛んでいても、まったく気にも留めない。かと言って、これまでモンシロチョウを素晴らしく美しく撮っているわけでもなく、生態記録写真もない。昆虫写真を撮る者としては、身近な種を「なおざり」にしてはいけない。
 信州遠征の際、時期的に他の昆虫たちが少なくなってきた中で、このモンシロチョウは健気に花々の中を飛び回っていた。そんな姿に感動を覚えシャッターを切った。逆光で白い翅が透けるようにした。

参照:ヤマトスジグロシロチョウ

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200 +1EV(2017.9.10)

モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/3200秒 ISO 200(2010.10.02)

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キタキチョウ

2016-10-04 22:37:49 | チョウ/シロチョウ科

 キタキチョウ Eurema mandarina mandarina (de l'Orza, 1869) シロチョウ科(Family Pieridae)キチョウ属(Genus Eurema)に分類されるチョウで、秋田・岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島に分布するが、以前、和名は「キチョウ」であった。しかしながら、近年のDNA分析によって、南西諸島に生息しているものの中に異なる種がいることが分かり、それをキチョウ(ミナミキチョウ) Eurema hecabe hecabe (Linnaeus, 1758) とし、本種は「キタキチョウ」となった。
 キタキチョウは、ネムノキ、ハギ類のマメ科の植物が食草で、平地~山地の樹林の周辺や草地や畑、市街地などでごく普通に見られるチョウである。5月下旬頃から発生し、以降連続的に(5~6回)発生して晩秋に至るが、幼虫期の日長と温度によって夏型と秋型の季節型が現れる。季節型には、形態的な差異があり、夏型は翅表外縁の黒帯の幅が広いが、秋型は黒色の縁が先端に少し残るか、もしくはない。初秋の頃は、夏型と秋型が混棲するために個体数が多く、晩秋になると秋型のみが現れ、そのまま成虫で越冬する。
 様々な花に止まって吸蜜するが、忙しなく移動する。夏には、湿った場所や河原などで吸水している姿も見ることができるが、翅を開くことはない。

 キタキチョウは、先日、訪れた植物公園のハギの周囲で乱舞していた。モンシロチョウよりも一回り小さく、また黄色が印象的だ。どこでも見ることができる普通種であるため、じっくりとカメラを向けることが少ない種であるが、不順な天候続きの昨今、9月10日の「マダラヤンマ」以来何も撮影できていない週末が続けば、普通種であっても貴重(キチョウ)な被写体である。止まると翅を開かないので、逆光で翅表外縁の黒帯がよく分かるように撮影した。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(2016.10.2)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(2016.10.2)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 1250 (2010.08.29)

キタキチョウ

キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 800(2011.10.18)

キタキチョウ

キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2016.5.5)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F13 1/40秒 ISO 250 -1 2/3EV(2016.6.11)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 500 +1/3EV(2013.8.27)

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スジボソヤマキチョウ

2016-09-13 20:12:05 | チョウ/シロチョウ科

 スジボソヤマキチョウ Gonepteryx aspasia niphonica Verity, 1909 は、シロチョウ科(Family Pieridae)/ヤマキチョウ族(Tribe Gonepterygini)/ヤマキチョウ属(Genus Gonepteryx) に属するチョウで、国内に生息している3種の内の1種である。 (タイワンヤマキチョウは、国内では八重山諸島に分布)
 ヤマキチョウに関しては、現段階ではリンク先の記事を参照頂き、今回は、本種について写真を追加してまとめたのでご一読頂きたい。

ヤマキチョウ属

  1. ヤマキチョウ Gonepteryx maxima maxima Butler, 1885
  2. スジボソヤマキチョウ Gonepteryx aspasia niphonica Verity, 1909
  3. タイワンヤマキチョウ Gonepteryx amintha formosana (Fruhstorfer, 1908)

 スジボソヤマキチョウは、近縁種のヤマキチョウとは、前翅先端の突起が強く、翅に赤系の縁取りがないことで形態的に区別できる。また、本種は、紀伊半島を除く本州と四国、九州にに分布し、生息範囲は、高原、疎林、渓流沿い、林縁から落葉広葉樹林の内部まで、地形も平坦地、緩斜面や急斜面など広範囲に及んでいる食樹は、クロツバラの他にクロウメモドキも食べる。
 大きさは55~62mmと日本産のシロチョウ科の仲間では大型である。オスの翅はあざやかな黄色で、各翅の中程に赤橙色の点が一つずつあり、メスの翅の色は、白色に近い色である。年一化で、7月頃に羽化し、しばらく活動後、夏眠する。そして9月頃になると再び現れ、ヤマキチョウ同様にそのまま成虫で越冬し、春に産卵し、5月頃まで生き続けるのである。冬は湿った場所で越冬すると言われ、越冬後は翅の綺麗な黄色が抜けて染みだらけになってしまう。
 スジボソヤマキチョウは、環境省RDBに記載もなく、長野県や栃木県等では比較的多くみられるが、香川県で絶滅、宮崎県、大分県、三重県、愛知県では絶滅危惧Ⅰ類に、鳥取県、大阪府では絶滅危惧Ⅱ類に、山口県、奈良県、京都府、滋賀県では準絶滅危惧種に選定しており、近年、減少傾向にあるチョウである。混交林の繁茂により食樹であるクロウメモドキの生育不全が原因と言われている。
 ちなみにヤマキチョウは、環境省RDBでは絶滅危惧IB類に選定され、分布は極めて狭く、青森県と岩手県、長野県と山梨県の一部地域にしか生息していない。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/640秒 ISO 200 +1EV(2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ / 雌雄の飛翔
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1000秒 ISO 200 +1EV(2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ / 雌雄の飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 250 +1/3EV(2015.9.11)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ / 越冬後
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 -1/3EV(2014.5.3)

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ミヤマモンキチョウ

2016-07-20 20:26:02 | チョウ/シロチョウ科

 ミヤマモンキチョウ Colias palaeno (Linnaeus, 1761) は、浅間山系及び飛騨山脈の森林限界(1,800m)以上の高山帯にのみ生息するシロチョウ科モンキチョウ属(Colias属)の高山蝶で、 Colias palaeno aias Fruhstorfer, 1903 (浅間連山亜種)と Colias palaeno sugitanii Esaki, 1929 (北アルプス亜種)に分類されている。普通種のモンキチョウよりもひと回り小さく、オスは、地色が黄色で翅表の外縁には黒い帯模様があり、翅縁・触角・脚がピンク色なのが特徴で、高山帯の岩礫地に生育するツツジ科スノキ属のクロマメノキを食草としている。尚、クロマメノキの選抜品種である浅間葡萄は、ブルーベリーに似た甘酸っぱい味で食用になっている。
 ミヤマモンキチョウは、マニアの採集とクロマメノキの盗掘による減少が著しく、2亜種とも環境省RDBでは準絶滅危惧(NT)として記載され、群馬県では絶滅危惧Ⅰ類、長野県では準絶滅危惧種、富山県・岐阜県では、絶滅危惧Ⅱ類に選定している。また、長野・群馬・富山では、県の天然記念物に指定しており、採集することはできない。

 ミヤマモンキチョウ(浅間連山亜種)は、2014年7月に撮影しているが、同一個体のオス2カットのみであったため、 2年ぶりに生息地を訪れての再挑戦である。
 現地のクロマメノキが群生する場所に到着すると、そこそこの数の黄色いチョウが飛んでいたが、モンキチョウ Colias erate poliographa Motschulsky, [1861] も生息しているため、より小さく、しかも翅表外縁の黒い帯模様のものを探すと、何頭も飛んでいる。ミヤマモンキチョウは、太陽が隠れると、まったく飛ばない。飛んでくれないと、見つからない。日が差すと飛ぶが、今度は良い位置に止まらない。木道からしか撮れないので苦労したが、何とかオスとメス、飛翔、産卵の場面を撮影することができた。本記事では、比較のために普通種である「モンキチョウ」の写真も併載した。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ミヤマモンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 250 +2/3EV (2014.7.12)

ミヤマモンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 400(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(2016.7.18)

モンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(2010.06.26)

モンキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1000秒 ISO 200(2010.06.26)

モンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(2010.07.17)

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ヤマトスジグロシロチョウ

2016-05-07 20:08:25 | チョウ/シロチョウ科

 日本国内におけるシロチョウ科(Pieridae)モンシロチョウ属(Pieris)は、下記の4種が生息している。

モンシロチョウ属

  1. モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora Boisduval,1836)
  2. スジグロシロチョウ(Pieris melete Menetries,1857)
  3. エゾスジグロシロチョウ(Pieris dulcinea tomariana Matsumura,1928)
  4. ヤマトスジグロシロチョウ(Pieris nesis Fruhstorfer,1909)
    • ヤマトスジグロシロチョウ 名義タイプ亜種, 本州北部・北海道亜種(Pieris nesis nesis Fruhstorfer,1909)
    • ヤマトスジグロシロチョウ 本州中・南部亜種(Pieris nesis japonica Shirozu,1952)

尚、上記リストは、本来、日本国内には生息していなかった「オオモンシロチョウ」および「タイワンモンシロチョウ」は省いている。

 モンシロチョウやスジグロシロチョウは、あまりにも普通種であるため、日頃から気に留めることもなくカメラを向けることもなかったが、いざ撮ってみるとヤマトスジグロシロチョウであったので紹介したいと思う。
 ヤマトスジグロシロチョウは、北海道西部から本州(紀伊半島は中部以北)、四国、九州中部以北まで分布し、主として山地の林周辺、露岩地、海岸の崖地等に生息。 幼虫は、アブラナ科のハタザオ類を食草としている。
 同属のスジグロシロチョウに近似しており、生息域も重なっている事が多く、飛んでいるところを見ただけでは区別は困難であるが、「後翅裏面基部にある肩脈」を確認することで 同定が可能である。後翅の付け根の黄色い部分にある肩脈がはっきり見えているのがスジグロシロチョウであり、はっきり見えていないのがヤマトスジグロシロチョウである。
 ヤマトスジグロシロチョウは初撮影のチョウで、鱗翅目133種目の掲載となる。写真には、比較のためスジグロシロチョウも掲載した。
(参照:撮影済み昆虫リストと撮影機材

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヤマトスジグロシロチョウ

ヤマトスジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:山梨県山中湖村 2016.5.1)

ヤマトスジグロシロチョウ

ヤマトスジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 +1EV(撮影地:山梨県山中湖村 2016.5.1)

ヤマトスジグロシロチョウ

ヤマトスジグロシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:山梨県北杜市 2012.6.23)

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(撮影地:埼玉県嵐山町 2016.5.5)

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:埼玉県嵐山町 2016.5.5)

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 2500(撮影地:埼玉県嵐山町 2016.5.5)

スジグロシロチョウ

スジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 2500(撮影地:埼玉県嵐山町 2016.5.5)

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ヒメシロチョウ

2016-05-01 21:40:06 | チョウ/シロチョウ科

 ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis vibilia Janson, 1878)は、シロチョウ科(Family Pieridae)コバネシロチョウ亜科(Subfamily Dismorphiinae)ヒメシロチョウ属(Genus Leptidea)に属する白色のチョウで、モンシロチョウよりひと周り小さい。白い色素はフラボン系で,モンシロチョウなどのプテリン系とは異なる。 主として河川堤防や火山灰土質の草原などに局地的に生息し、草原上を低く弱々しく飛び、いろいろな花で吸蜜する。地表で吸水することも多い。幼虫は、マメ科のツルフジバカマ、カラスノエンドウなどを食草としている。
 ヒメシロチョウは、年2~3化で、発生時期によって色彩や形状に変化が生じる「チョウの季節型」があり、4月~5月には春型、7月~9月には夏型が発生する。 春型は夏型より小型で灰白色で、前翅端の黒色部は薄く、後翅裏面に暗色部がある。
 北海道、本州、九州に分布しているが、近畿地方及び四国には見られず、九州では阿蘇・九重の火山性山地草原にのみ生息し、北海道の一部ではエゾヒメシロチョウと混生しているところもある。尚、中国地方では広島県の一部に生息していたが、1994年以降は確認記録がなく絶滅したと考えられる。
 多くの生息地において生息条件の悪化が著しく、個体数が危機的水準にまで減少しており、環境省RDBでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定されている。東京都、栃木県、広島県では絶滅、 その他の多くの自治体においても絶滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類、準絶滅危惧種に選定している。

 2016年のゴールデンウイーク。2日の休暇をとれば10連休になるが、私は暦通り。まずは前半の三日間。初日は自宅で仕事、2日目は小学校からの親友とあきる野の山間部へ散策。ムカシトンボを数頭見かけたが、1枚もシャッターを切ることなく、バーベキューに舌鼓を打ちながらのんびりと森林浴を楽しんだ。
 さて3日目の5月1日。計画通りにヒメシロチョウの春型を撮りに行った。夏型は、2013年8月に撮影済だが、春型は未撮影であったため、是が非でも収めなければならない。 午前6時に自宅を出発し、現地に7時半着。気温12℃。薄着で行ったため寒い。林道を歩き始めるが、お目当てのヒメシロチョウどころか、昆虫はまったくいない。20分くらい歩くと体も温まり、また太陽の光も心地よくなってきた。すると、1頭のヒメシロチョウが舞始め、次第に数も増えて10数頭があちこちでヒラヒラと舞うようになった。
 花言葉ならぬ蝶言葉があるならば、ヒメシロチョウは「か弱い、せわしない。」だろう。地上から30~40cmくらいの高さを弱々しくチラチラと飛び回り、一向に止まらない。止まったかと思うと、すぐに飛び立つので、写真に撮るのが大変で、ずっと付き添いながら止まるのを待って急いでシャッターを切った。以下に、今回撮影した春型のヒメシロチョウと過去に撮影した夏型を掲載する。季節型による色彩の変化が良く分かる。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメシロチョウ

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 250 +1EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500 +1 1/3EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(春型)

ヒメシロチョウ(春型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 200 +1EV(2016.05.1)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320(2013.08.11)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640(2013.08.11)

ヒメシロチョウ(夏型)

ヒメシロチョウ(夏型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F10 1/320秒 ISO 1600(2013.08.11)

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ツマキチョウ

2016-04-09 11:43:17 | チョウ/シロチョウ科

 ツマキチョウAnthocharis scolymus Butler, 1866)は、
シロチョウ科 (Pieridae)
ツマキチョウ族(Anthocharidini)
ツマキチョウ亜属(Subgenus Falcapica)
に分類され、学名の Anthocharis は、ギリシャ語の複合語(Antho+caris)「花を愛するもの」という意味である。食草はタネツケバナ、ハタザオ、ナズナなどの野生種や、ダイコン、カラシナなどの栽培種。日本全土に分布し、夏から冬の間を蛹で過ごし、翌春羽化する年1化、春だけに現れるスプリング・エフェメラルだ。ちなみに、エフェメラル(ephemeral)は、「儚い、1日限りの、短命な」という意味であるが、昆虫のカゲロウ目はギリシャ語で(Ephemeroptera)という。
 1年に一回だけの発生であるが、飼育下での観察ではかなりの頻度で翌春に羽化せず、さらにもう一年蛹のまま越夏~越冬し翌々年春に羽化することが報告されているようだ。また5~6頭の内1頭の割合で羽化までに3年~4年かかるとの報告もあるというから、生態はまだまだ分からないことが多い。
 ツマキチョウは、3~5月の間の2週間ほどしか姿を見せないうえ、 風の穏やかな晴天か明るい曇天の日にしか活動しないから、普通種ではあるが見る機会は割と少ないかも知れない。 小さな白い姿は、モンシロチョウやスジグロシロチョウと似てはいるが、オスは和名のように翅の先端部が黄橙色であるから飛んでいても区別は容易である。チラチラと飛ぶ姿は、まさに「春の妖精」。小学3年生の春休みに昆虫採集へ出掛けた時に始めて出会ったが、四十数年経った今でも、その時の感動は忘れていない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別にブログにて公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ツマキチョウ(オス)

ツマキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/320秒 ISO 800(撮影地:山梨県上野原市 2012.5.4)

ツマキチョウ(オス)

ツマキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/320秒 ISO 800(撮影地:山梨県上野原市 2012.5.4)

ツマキチョウ(メス)

ツマキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200(撮影地:岐阜県揖斐郡大野町 2012.4.28)

ツマキチョウ(メス)

ツマキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:岐阜県揖斐郡大野町 2012.4.28)

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ヤマキチョウ属2種

2015-10-16 22:42:15 | チョウ/シロチョウ科

 シロチョウ科のヤマキチョウとスジボソヤマキチョウ。レモン・イエローの美しい2種は、半逆光で撮影することで魅力を引き出せる。

シロチョウ科(Pieridae)

モンキチョウ亜科(Coliadinae)

ヤマキチョウ族(Gonepterygini)
ヤマキチョウ属(Gonepteryx)
ヤマキチョウ(Gonepteryx rhamni maxima)
スジボソヤマキチョウ(Gonepteryx aspasia)

ヤマキチョウ(Gonepteryx rhamni maxima)
 8月頃に羽化し、そのまま成虫で越冬して翌年5月頃まで見ることができるが、分布は極めて狭く、青森県と岩手県、 長野県と山梨県の一部地域にしか生息していない。これは、ヤマキチョウの生息環境が乾燥した明るい高草原地帯で、幼虫の食樹がクロツバラのみであることが所以であるが、 環境悪化や採集等により、生息地においても数は減少傾向にある。
 近縁種のスジボソヤマキチョウに似ているが、形態では、前翅先端の突起が弱く、翅に赤系の縁取りがあることで区別できる。
 環境省レッドリストでは絶滅危惧IB類に選定され、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種である。

ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:山梨県富士河口湖町 2013.08.27)

スジボソヤマキチョウ(Gonepteryx aspasia)
 紀伊半島を除く本州と四国に分布し、高原や林縁、渓流沿いなどに生息している。食樹は、クロツバラの他にクロウメモドキも食べる。 生態的にも相違点があり、スジボソヤマキチョウは、ヤマキチョウよりも早い7月に羽化し、しばらく活動後、夏眠する。9月頃になると再び現れ、 ヤマキチョウ同様にそのまま成虫で越冬し、春に産卵し、5月頃まで生き続ける。
 山梨県や長野県等では比較的出会うことが多い種である。

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

参照
ヤマキチョウ
スジボソヤマキチョウ
スジボソヤマキチョウ(夏眠前)
晩夏のお花畑にて

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