ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

日本ホタルの会オンラインシンポジウムのお知らせ

2021-11-12 22:44:45 | ホタルに関する話題

日本ホタルの会オンラインシンポジウムのお知らせ

-ホタルを通じて身近な自然環境を考える-ヒメボタルの魅力と多様性

昨年同様、新型コロナウイルスの感染拡大のため、今年度も日本ホタルの会シンポジウムをオンラインにて開催します。
テーマは、ヒメボタルを取り上げ、その魅力と多様性に迫ります。
ヒメボタルは、ゲンジ、ヘイケに次いで知られていますが、生息場所や発光時刻の違いなど、謎も多いホタルです。
どなたでもご参加いただけますので、是非、ヒメボタルの世界へご一緒しましょう。

期日 2021年11月28日 14時から

https://us02web.zoom.us/j/85838215074?pwd=N0czRjkwSzh4RVVSWSthcWd0ajlUUT09
ミーティングID:858 3821 5074
パスコード:464907
※ミーティングは、Zoomで行います。Zoom アプリを用意してください。(アプリがあれば無料で参加できます。サインアップは必要ありません。)

プログラム

14:00 開 会 (ご挨拶とお願い)
14:05 趣旨説明 鈴木 浩文(日本ホタルの会 副会長)
14:10 講 演 鈴木 浩文(日本ホタルの会 副会長)「ヒメボタルの分類 について 」
14:35 講 演 古河 義仁(日本ホタルの会 理事)「ヒメボタル生息地の環境特性と発光・飛翔等の特性、形態について-生息地域による比較-」
15:05 講 演 斎藤 昌幸(山形大学農学部 准教授)「ヒメボタルの生息環境を評価する:山形県庄内地方の高館山周辺における事例」
15:35 休 憩
15;45 総合討論
※総合討論では、司会者の進行に沿って、ご意見・ご質問をお願いしま す。ご質問は、チャットでもお受けします。休憩時間中にチャットに記載してください。
16:20 閉会

リモートシンポジウムご参加の皆様へのお願い

① 講演中は、ご自身のマイク、ビデオは切っておいてください。ただし、総合討論の際は、マイク、ビデオは、使用可能となります。
② 著作権、肖像権等に関わりますので、シンポジウムの録音・録画はご遠慮ください。

シンポジウム後の懇親会について

シンポジウム終了後にオンラインによる懇親会を開催します。
シンポジウムの講演、総合討論で聞けなかったことやその他のホタルの話、みなさまの地域の話題など、お聞かせいただければと思います。 シンポジウム終了後、15分ほどの休憩を取った後に1時間程度を考えております。お好みのアルコールなどもご用意いただき、お気軽にご参加いただければと思います。


色彩の饗宴

2021-11-09 21:37:20 | 風景写真/紅葉

 色彩の饗宴と題して、四万温泉近辺で撮った写真を掲載したいと思う。

 11月5日金曜日は、午後から病院に行かねばならず、そのために年次有給休暇を頂いた。午前中はフリーであり、天気も良い。そして平日。木曜日の19時に都内の勤務先から、そのまま四万温泉に向かった。
 現地のトイレのある無料駐車場に21時半に到着。誰もいない。そして真っ暗。空を見上げると満天の星。プレアデス星団(すばる)の輝く星の集まりは5個までは肉眼ではっきりと確認できる。群馬もここまで奥に来ると星空が美しい。ただし今回は広角レンズを持ってこなかったので、そのまま車中泊。翌日は、朝6時から行動開始。まずは、前記事のトップに掲載した「桃太郎の滝」を撮り、以後は奥四万湖を天候に合わせてゆっくりと2周。タイムリミットである午前9時まで、様々な光景を切り取ってみた。

 自分は、一体何を美しいと感じているのか?何を表現したいのか?光景を見つめながら自問自答し、ファインダーを覗く。主役や脇役はいない。そこには、ありとあらゆる色彩があるだけである。
 その色彩は、朝日によって輝き、あるいは曇天で柔らかく馴染む。個々の木々が競い合いながらも見事なハーモニーを奏でる。東山魁夷が御射鹿池をモデルにした名画「緑響く」は、モーツァルトの「ピアノ協奏曲23番K.488 第2楽章」から触発を得て誕生したと言われ、「白い馬はピアノの旋律で、木々の繁る背景はオーケストラです。」と魁夷は記してるが、奥四万の紅葉は、まるでリヒャルトシュトラウスの「ドン・ファン」であったり、ヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」のようである。時としてラヴェルのオーケストレーションの如く様々な色彩が怒涛のように迫ってくる。不協和音を排除することなく、そのハーモニーをバランス良くとまとめ、テンポをとる事が私の仕事なのだと感じた。そのために、どうタクトを振れば良いのか・・・
 また、撮りたい紅葉写真は、日本の伝統文化を感じる1枚のお盆に盛り付けた五色の和食のようでもありたい。そのために、どう料理すれば良いのか・・・そんなことをあれこれ考えながら、木々と向き合いシャッターを切った。

 今回の紅葉撮影は、「自然とどこまで対峙できるか、そして感じたものを自分なりに写実として表現できるか」ということを課題にした。前記事の写真は、撮影する場所を予め決めており「こんな絵にしたい」というイメージトレーニングも行った上で現地に赴き、じっくりと観察して撮影した。オーケストラの指揮者も、本番の指揮台でタクトを振る前に、作曲者からのメッセージを読み、どう表現するか考え、大人数の楽団員にも理解させ、演奏をまとめなければならない。
 その意味では、奥四万湖の周遊道路から見下ろして撮った「四万ブルーと紅葉」はイメージ通りの写真になったが、この記事の写真は「流し」ながらの撮影。結局は色彩の饗宴に圧倒され、単にカメラを向けて撮っただけのものばかり。ご覧頂いた方の心には、何も響かないだろう。現場では指揮者になれず、最高の食材が揃っていながら料理を仕上げられない料理人でもあった。すべては、自身の未熟さ、心の醜さを反映した結果であるように思う。

 自然をこよなく愛し「光と色彩の魔術師」と謳われたオーギュスト・ルノワールは、「もはやどのように絵具を塗るべきか線を引くべきか、まったく分からない」と若い頃に悩んでいる。また、帝王カラヤンは「自分の目標を全て達成してしまった人は、恐らくその目標の設定を低くしすぎたのだろう。」と言っている。
 私は、画家でも音楽家でもプロの写真家でもないが、自然芸術に接しそれを写そうとするならば、自然に敬意を表し、準備を怠らず、こだわりを持って臨み、それなりの領域には達したい。そこはどこまでも際限なく遠くに存在するが、今後も、色々と悩みながら自然芸術に目を向け、少しでも高みに昇って行けるよう、感性を磨いていきたい。駄作ばかりではあるが、今回、最期の瞬間まで美しい姿を見せてくれた木々たちには感謝したい。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/80秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:03)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F8.0 1/10秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:04)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F14 13秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 6:33)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/30秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 7:57)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F8.0 1/4秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:42)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F11 0.6秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:57)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F11 1/4秒 ISO 100 -1EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 9:00)

奥四万の紅葉の写真

奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/25秒 ISO 100 -1EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 7:24)

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四万ブルーと紅葉

2021-11-06 16:23:26 | 風景写真/紅葉

 四万ブルーと紅葉の組合せを撮りたくて、群馬県中之条町にある四万温泉周辺に行ってきた。

 昨年は、紅葉の時期にサツマシジミ撮影のため2週連続で和歌山と三重に遠征したため、新潟で「晩秋の美人林」を撮っただけで、色彩の美しい紅葉の写真は1枚も撮っていなかった。今年は、前記事のように長年の目標であったサツマシジミの開翅を撮ることが出来たので、是非、色彩豊かな紅葉を撮りたいと思い、まだ一度も訪れたことがない信州戸隠の「鏡池」を計画していた。しかしながら、前日に確認すると紅葉は見ごろを過ぎて色あせ始め、天気は朝は曇りで風速1~2m。これでは「美しいものを 一番美しい時に 美しく撮る」ことができない。そこで、紅葉がちょうど見頃で、移動距離も半分で済む四万温泉に行って見ることにした。四万温泉とその先にある奥四万湖は、新緑の時期に3回ほど訪れており、四万ブルーと浮島(奥四万湖/浮島)を撮影しているが、紅葉の季節は今回が初めてである。
 四万温泉は、スタジオジブリのアニメ映画「千と千尋の神隠し」のモデルになり、群馬県重要文化財にも指定されている老舗旅館「積善館」が有名で、地元の観光協会では四万ブルーと紅葉の饗宴として、盛んに観光客誘致を行っているが、インターネット上で画像検索した当地における紅葉の写真を見ると、「是非、行って見たい!」と思わせるものがない。新緑が美しい場所は紅葉も美しいに決まっているにも関わらず、そのような写真が無いと言うことは、魅力度が他に比べて劣っているのかも知れないが、こちらとしてはオンリーワンのオリジナルな写真を撮るチャンスでもある。また、自然とどこまで対峙できるのか自分の感性を磨くチャンスでもある。

 今回の四万温泉では、撮影した枚数が多いため、まずは観光案内的に2つの滝「桃太郎の滝」と「シャクナゲの滝」、そして奥四万湖でしか撮ることが出来ない四万ブルーと紅葉を組み合わせた写真を掲載した。
 この日は、予報では前日から晴れマーク1つであったが、新潟県は雨が降っており、谷川岳、苗場山を越えて時折雨雲が流れ込んできた。20分おきに曇天・雨天・晴天が繰り返される。それならばと、天候状況によってこちらも忙しく場所を変え、桃太郎の滝は曇、シャクナゲの滝は雨、そして奥四万湖は晴れの時に、それぞれ最良と思われる「光」で撮ってみた。
 滝そのものは小規模で見応えはないが、様々な色彩を引き立てる名わき役になった。一つ残念だったのが、奥四万湖にほとんど水がなく、肝心の四万ブルーの水は、ほんの一部だけであった。また、新緑の時期に撮影した「浮島」の木々は、ほとんどが枯れており、あの美しい光景は、二度と見られないだろう。
 次の記事では「色彩の饗宴」と題して、他の紅葉写真を掲載したいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

桃太郎の滝の写真
桃太郎の滝
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F14 15秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 6:23)
桃太郎の滝の写真
桃太郎の滝
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F14 20秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 6:29)
シャクナゲの滝の写真
シャクナゲの滝
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F14 3.2秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 7:19)
奥四万湖の紅葉の写真
奥四万湖の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F8.0 1/6秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:27)
奥四万湖の紅葉の写真
奥四万湖の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:29)

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サツマシジミの開翅

2021-11-03 15:05:56 | チョウ/シジミチョウ科

 サツマシジミの開翅を7年目にしてようやく撮影することができた。

 サツマシジミ Udara albocaerulea albocaerulea (Moore, 1879) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/タッパンルリシジミ属(Genus Udara)のチョウ。南方系で、薩摩の国(現在の鹿児島県)で最初に見つかったので、サツマという和名が付いているが、実際は本州(三重、和歌山、広島、山口の沿岸部)、四国と九州の沿岸部等に分布している。近年では、温暖化の影響により、大阪府や愛知県、静岡県の一部にも分布を広げ、海岸付近の樹林帯、山間の渓谷地帯・人家付近の草地等で見られる。
 サツマシジミの成虫は、3月中旬から11月頃まで年4~6回ほど発生し蛹で越冬する。幼虫は、サンゴジュ、クロキ、ハクサンボク、ガマズミ、イヌツゲ、バクチノキ等の花や蕾を食べるが、食樹の開花期に合わせて生息地が移動すると言われ、生息地であっても季節によっては全く目撃すらできないことも少なくない。東京から通った、これまでの遠征記録をまとめてみると以下のようになる。

  • 2015年5月02日  和歌山県 1頭も見ず
  • 2015年5月17日  三重県 大型の春型多し 撮影は翅裏のみ(サツマシジミ
  • 2016年11月04日 和歌山県 1頭も見ず
  • 2017年10月15日 高知県 1頭も見ず
  • 2018年10月20日 三重県 1頭も見ず
  • 2019年 日程が合わず断念
  • 2020年5月24日  高知県 偶然の目撃 撮影は翅裏のみ(サツマシジミの吸水
  • 2020年10月24日 和歌山県 1頭だけ 撮影は翅表を少しだけ(サツマシジミ
  • 2020年10月31日 三重県 1頭も見ず

 以上のように、昨年に翅表が少しだけ見られる程度の写真を撮影できたが、何としてでも、今年は開翅写真を撮りたいと思い、和歌山県まで遠征した。
 今回は、過去の撮影地とは違う場所にポイントを絞り、早朝から日当たりの良い石垣に群生するヒメツルソバや渓流の河原で待機した。しかし、飛んでくるのは、ヤマトシジミとウラナミシジミばかり。半ば諦めていると、地元の方が声を掛けてくれた。昨年は、とても少なく、今年は1頭も飛んでこないと言う。生態系がおかしくなっているんじゃないかと仰っていた。それならばと急いでいつもの撮影場所に車を走らせた。
 そこは、小さな草地。日の当たる場所では、多くの小さなシジミチョウが舞っている。ヤマトシジミにヤクシマルリシジミ・・・1頭1頭逆向で翅を透かして見てみると、前翅の中央の白斑が透けて見え、翅裏の弦月状斑もない。サツマシジミである。しかも数がかなり多い。ただし、小さい個体が多く、ヤクシマルリシジミと同じ大きさである。おそらく低温期型で今年最後の発生なのだろう。春型の個体は大きく見応えがあるが、この時期の個体は大きさにばらつきがあるようである。
 日の当たっている草地では、翅裏の白さが際立っている大きめのメスがイヌタデやミゾソバで吸密していた。朝の気温は14℃であったが、日当たりの良い場所は22℃。この個体は盛んに花から花へ移動しており、一向に翅を開かない。しばらくすると、森の林冠へ飛び去ってしまった。
 まだ日の当たっていない草地では19℃。あちこちで咲いているセンダングサの花で吸蜜している個体も多いが、葉上に止まっている個体も数頭いる。この気温ならば翅を開いてくれるに違いないと思い、その中からターゲットを絞って1頭の個体にカメラを向ける。20分ほどすると翅をすりすりし始め、開いてくれた。全開翅ではないが、十分に翅表の色彩を確認できる。「美しいものを 一番美しい時に 美しく撮る」という理念のもと、ようやく、念願が叶った瞬間であった。また、翅が少し痛んで擦れていたがメスの半開翅も撮影することもできた。尚、掲載写真は同所に多くいたヤクシマルリシジミも掲載した。

 サツマシジミの開翅を撮るまでに7年を費やし、今年撮影したヒロオビミドリシジミヒサマツミドリシジミのオスの開翅も同じく7年かかっている。撮影には、チョウの生態や習性を学ぶことがまず重要だが、いずれも遠い生息地。運の良さに感謝したい。
 しかしながら、これまでの経緯と結果で生態や習性に関する知見が深まっても、写真は単なる記録であり、どれだけ苦労して撮っても自己満足の範疇である。保全に対しては何ら役立つこともない。こうしたインターネットでの公開が、生息地や発生時期等の情報を広めてしまうこともある。
 サツマシジミは、環境省の絶滅危惧種のカテゴリーにはなく、自治体のRDBにも記載はない普通種の扱いであるが、この日、撮影者私一人に対して、網を持った採集者が4人。大阪ナンバーの方は、私の傍らで網を振り回し飛んでいる個体を片っ端から採集していた。趣味の標本コレクションであろうと研究という名目であろうと、一人が1頭しか採らなくても100人が採れば100頭いなくなる。採集は駆除に等しい。
 過去にギフチョウとルーミスシジミの記事において「採集だけで絶滅するほど生物は弱くない」だとか、「生息環境が山深い原生林であることから、大量に採集できるような条件の良いときであっても、全体の発生数からすれば微々たるもの。」等という安易な想像だけでコメントを下さった方もいたが、採集するならば、その地域全体の正確な生息分布と生息数の調査を行い、個体群動態解析及び存続可能性分析を行った上で、採集者全員でその年の採集できる総数を決めて採るべきである。それら調査と分析を行わず戯言を述べながらの採集は許しがたい。
 無責任な行為は、採集だけでなく撮影でも同じである。撮るためなら何をしても良い訳ではない。ホタルの撮影に関し「マナーを他人に押し付けるな」と私に言い放ったプロのカメラマンもいたが、サステナブルな社会の実現が叫ばれる昨今、私自身を含め、各々が自分の行為行動を見つめ直す必要があろう。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

サツマシジミの写真
サツマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(撮影地:和歌山県 2021.10.29 10:35)
サツマシジミの写真
サツマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1600 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 9:49)
サツマシジミの写真
サツマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1600 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 9:55)
サツマシジミの写真
サツマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1250 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 9:55)
サツマシジミの写真
サツマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 9:55)
サツマシジミの写真
サツマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000 +1 1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 10:14)
ヤクシマルリシジミの写真
ヤクシマルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:和歌山県 2021.10.29 10:15)
ヤクシマルリシジミの写真
ヤクシマルリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 160 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 8:34)
ヤクシマルリシジミの写真
ヤクシマルリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 +1/3EV(撮影地:和歌山県 2021.10.29 8:36)

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シーボルトミミズ

2021-11-01 14:56:19 | 動物

 シーボルトミミズ Pheretima sieboldi (Horst) は、フトミミズ科 Megascolecidae フトミミズ属 Pheretimaで、体長は40cmにも達する日本最大のミミズの一つと言われる。長崎出島のオランダ商館つきの医師として滞在したシーボルト(Philipp Franz von Siebold)がオランダに持ち帰った標本で新種記載されたもので、日本固有のミミズで初めて学名をつけられたものである。
 シーボルトミミズは、中部地方以西の太平洋側に分布し、紀伊半島、四国、九州南部では比較的普通に見られ、四国でカンタロウ、紀伊半島でカンタロウ、カブラタ、カブラッチョ、九州ではヤマミミズ等と呼ばれている。山林に生息し、季節によって大きく移動することも知られている。秋には斜面から谷底に向けて移動が行われる。また、寿命は2年で、2年ごとに全個体が一斉に卵から孵化し、一斉に死亡するという全く世代の重ならない生活を送っているという。体色は濃紺色だが、表皮には虹色の構造色があることが知られており、光線の角度に応じて緑や青、オレンジ色に輝く不思議なミミズである。

 今回、和歌山県古座川町小川地区にある林道を歩いていると、山側から谷に向かって這っている体長40cmほどのシーボルトミミズに出くわした。本種を見るのは初めてで、太陽光線で鮮やかな青緑色に輝く姿に驚き、記録として何枚か撮影した。

参考文献

  1. 宮本潔, 小作明則:ミミズ、ゴカイ(環形動物)を彩る表皮繊維構造, 形の科学会誌, 20,(2005), pp.167-168.
  2. 小作明則 , 宮本潔:環形動物表皮に観察される構造色 , 形の科学会誌 , 17, (2002), pp.121-122.

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

シーボルトミミズの写真

シーボルトミミズ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 200(撮影地:和歌山県 2021.10.29 8:10)

シーボルトミミズの写真

シーボルトミミズ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 500(撮影地:和歌山県 2021.10.29 8:10)

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