ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

アキアカネ

2016-10-30 15:48:28 | トンボ/アカネ属

 アキアカネ Sympetrum frequens (Selys, 1883) は、日本に生息する18種類のアカネ属に分類されるトンボの一種で、ロシア、中国、朝鮮半島、日本に分布する普通種である。平地または丘陵地、低山地の水田、池沼等で繁殖するが、6月頃に羽化した成虫は、しばらく周囲で過ごした後、日中の気温が20~25℃程度の標高の高い高原や山岳地帯へ移動して、7月~8月の盛夏を過ごす。アキアカネは、低温時における生理的な熱保持能力は高いが、高温時の排熱能力が低いため暑さに弱く、気温が30℃を超えると生存が難しくなることから、高地へ移動すると考えられている。(同属のナツアカネ Sympetrum darwinianum (Selys, 1883)は、夏でも低地から姿を消さないため、ナツアカネの和名が与えられている。)
 アキアカネは、高地において盛んに餌を食べ体重が2~3倍に増加し、十分成熟したオスは腹部が橙色から鮮やかな赤に変化する。そして、およそ秋雨前線の通過とともに山を降り、平地や丘陵地、低山地へと移動するのである。関東地方では大群で移動するのが観察されており、筆者も、空一面がアキアカネで覆われるほどの光景を何回か目撃している。
 平地では繁殖活動を行うわけだが、ある「特定の」水田等に集まる。産卵に選ぶ典型的な場所は、稲刈りの終わった水田に出現する水溜りのような場所で、雌雄が結合したまま水面をたたくように産卵する連結打水産卵、或いは泥の部分をたたくように産卵する連結打泥産卵を行う。そして卵で越冬し、翌春、代搔きが行われる頃に孵化し、6月頃に羽化する。アキアカネは、水田耕作の営みに見事に一致した生活史を送っているのである。

 「アキアカネ絶滅のピンチ」という記事が数年前の新聞に掲載された。普通に見られる「赤とんぼ」が絶滅に向かう恐れがあるというものだ。環境省RDBに記載はないものの、大阪、兵庫、三重、富山、長崎、鹿児島の6府県では絶滅が危惧される種として選定しており、鹿児島県ではほとんど見ることが出来ない種として、2014年から「絶滅危惧種」に位置づけ、三重県でも2015年の3月に、新たに「準絶滅危惧種」に加えている。
 水田を繁殖の場とするアキアカネは、水田の減少と殺虫剤が大きく影響する。石川県立大の上田哲行名誉教授によると、1990年代に認可されたイミダクロプリド、フィプロニルといった成分を使った新しいタイプの農薬の出荷量が増加した地域とアキアカネ減少の地域が一致し、それら地域では、2000年ごろから急激に減少が始まり、2009年時点では半数以上の府県で、1990年の1000分の1以下に減少しているという。一方、従来の農薬(パダン)を使った場合は、農薬を使用しなかった場合と同程度の羽化が見られることから、最近のアキアカネの急激な減少は、フィプロニルなど新農薬(殺虫剤)の増加によるものと考えられている。
 これらの新農薬は「浸透性殺虫剤」と呼ばれ、イネの育苗箱用殺虫剤として広く使われている。イネが地中から農薬を吸収し、イネの葉などを食べた害虫を殺すというものだ。田植え後の農薬散布の手間が省け、成分が環境中に撒かれないことから“エコ”な農薬ともいわれているが、ネオニコチノイド系殺虫剤よりもトンボ類に対して強い影響を示すことが判明している。農作物の栽培において殺虫剤は、害虫の発生をコントロールするために必要な資材であるが、生態系や生物多様性に対する影響に配慮しながら活用していくことが望まれる。

 アキアカネを撮影した場所は、ホタルをはじめ、イトアメンボ、コオイムシ、モートンイトトンボなどの貴重な昆虫が多く生息しているが、秋深くなりつつある10月末においても、アキアカネは盛んに飛び回り、繁殖行動を行っていた。

参考論文

  1. 上田哲行,神宮字寛 (2013) アキアカネに何が起こったのか:育苗箱施用浸透性殺虫剤のインパクト.TOMBO, Fukui, 55: 1–12.
  2. 平成26年度 農薬の環境影響調査業務 報告書 - 独立行政法人 国立環境研究所
  3. 実験水田を用いた農薬の生物多様性への影響評価~浸透移行性殺虫剤がもたらすトンボへの影響~ - 独立行政法人 国立環境研究所

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アキアカネ

アキアカネ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200 -1EV(2016.10.29)

アキアカネ Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200 -1EV(2016.10.29)

アキアカネ

アキアカネ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640(2016.10.29)

アキアカネ

アキアカネ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 600(2016.10.29)

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カワニナ

2016-10-25 20:30:37 | ホタルに関する話題

 カワニナ Semisulcospira libertina (Gould, 1859)は、カワニナ科(Family Pleuroceridae)カワニナ属(Genus Semisulcospira)に分類される巻貝である。ゲンジボタルの幼虫の餌となることで有名である。
 ゲンジボタルの幼虫は、自然界においては、これまでカワニナしか食べないということが定説であったが、富山県在住の中氏によって、自然界においてミミズを食べていることが観察され、その後、ミミズだけで人工飼育した結果、成虫にまでなっており、カワニナしか食べない、カワニナでしか成長しないということは間違いであったことが証明されている。経験からも、他にも様々なものを食べていると思われるが、それらは副食であり、やはりカワニナが多数生息する場所には、ゲンジボタルの発生数も多く、比例関係にあると言える。
 ゲンジボタルの復活を試みる地域は、全国的に多い。まず、生息条件となる物理的環境の整備が必要だが、要はカワニナの繁殖であろう。簡単な方法として、他地域から採取したカワニナを 大量に放流することが行われているが、カワニナは放流する場所と同じような環境で育ったものでなければ、なかなか定着はしない。半年間において親貝1個が生む平均稚貝産出数は一ヵ月あたりおよそ30個で、その稚貝は一年余りで第2世代の稚貝を産出するまでに成長するが、それまでに約90%は死んでしまう。
 「新日本製鐵株式会社 環境報告書 平成11年度」のP19によれば、大分製鉄所でスラグに含まれる酸化カルシウムとケイ酸がカワニナの生育に有効であることを利用して、カワニナの増殖に成功しており、それらの性質を利用してカワニナやそのエサのケイソウが増殖するコンクリート擁壁の特許も公開されている(特開平11-247207、特願平10-48001)が、カワニナ増殖のためには、餌や水質も大切な要素であるが、それ以上に生態系のバランスが重要だ。
 写真は、里山の水田脇を流れる小さな小川で繁殖しているカワニナである。カワニナは、底が礫の渓流にも生息しているが、里山では、こうした底質が泥の細流に生息し、条件が良ければ 大繁殖するのである。この場所はゲンジボタルの生息地でもあり、ゲンジボタルの生態系が整っているが、鑑賞者のマナーが悪く、光害のために発生数は少ない。

参照:カワニナの種類と生態について

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カワニナ

カワニナ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200(2016.10.22)

カワニナ

カワニナ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 1000(2016.10.22)

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カトリヤンマ(静止飛翔と産卵)

2016-10-24 21:12:34 | トンボ/ヤンマ科

 カトリヤンマ Gynacantha japonica Bartenef, 1909 のオスは、マダラヤンマやサラサヤンマ等と同様に静止飛翔(ホバリング)するヤンマである。秋の午後になると雑木林から近くの水田や湿地に飛来して、草地の中を丹念にメスを探して飛び回り、その後、あちこち移動しながら地上40~50cmほどの高さで静止飛翔する。長いと10秒以上も同じ場所で静止飛翔するので、その撮影は、日中、枝に止まっている姿を撮るのとは違った楽しさがあり、ここ数年、見かければ必ずカメラを向けて撮っている。
 広角レンズで近寄って絞り込んで撮るのも良いが、背景をなるべくぼかして被写体を浮き立たせたいので、300mmの単焦点レンズを使っている。古いレンズなので手ぶれ補正機能はなくAFも遅いので、三脚に固定して、カトリヤンマに合わせて移動しながらマニュアル・フォーカスですばやくピントを合わせてシャッターを切った。
 今回、過去に撮影した写真も選別して掲載した。(写真1~3)が2013年に撮影したもの、(写真4)以降が今年に撮影したものである。(写真2)のみストロボを補助光として使用しており、複眼がより輝きを増して美しく描写されるが、あくまでも補助光であるため、翅はぶれている。ただ個人的感想では、キッチリと止めるよりも動的な感じが出て良い気もする。(腹部先端までピントが合っていないのが難点である。)他の写真は、あえてストロボは使用せず、自然光のみで撮影した。秋の午後の柔らかい光ならではの自然な色合いが写せているように思う。

 カトリヤンマの産卵シーン撮影においては、毎年、生息地を訪れているが、いつも稲の中に潜ってしまい、なかなか撮影ができていない。今年は、例年よりも遅く訪れたが、天候不良が続いていたために稲の刈り取りが遅れており、産卵に来たメスは、案の定、水田の中央部へ潜り込んで産卵。まったく撮影することができない。一回、潜り込むと落ち着いて産卵するためになかなか出てこないが、ようやく周囲を飛び回って雑草の生えた湿地に降り立ってくれた。しかしながら草が邪魔をして、結局、証拠程度の写真しか撮影することができなかった。かなり暗い状況であったため、自然光のみの写真とストロボを使用した写真を撮影した。
 本年、まだチャンスがあればリベンジし、「カトリヤンマのまとめ」としたい。ダメならば、本記事で今年の「ヤンマ類」は撮り収めである。

 カトリヤンマの静止写真は、今年の8月に撮影しているのでご覧いただきたい。カトリヤンマ(静止)
 また、昨年撮影した静止飛翔は、こちらを参照いただきたい。カトリヤンマ

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カトリヤンマ

写真1.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 640(2013.10.14)

カトリヤンマ

写真2.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 250 ストロボ使用(2013.10.14)

カトリヤンマ

写真3.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 640(2013.10.14)

カトリヤンマ

写真4.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 640 +1EV(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真5.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1EV(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真6.カトリヤンマ(静止飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 320 +2/3EV(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真7.カトリヤンマ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 3200 +2/3EV(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真8.カトリヤンマ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 3200 +2/3EV(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真9.カトリヤンマ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400 +2/3EV ストロボ使用(2016.10.23)

カトリヤンマ

写真10.カトリヤンマ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400 +2/3EV ストロボ使用(2016.10.23)

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ウラナミシジミ

2016-10-19 20:06:55 | チョウ/シジミチョウ科

 ウラナミシジミ Lampides boeticus (Linnaeus, 1767) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ウラナミシジミ属(Genus Lampides)に分類され、河川敷の草地や樹林地、都市の公園などでも普通に見られるチョウで、翅の裏に薄い褐色と白のしま模様があり、和名の由来となっている。幼虫はエンドウ、アズキ、クズなど、野菜・山野草を問わずマメ科植物を幅広く食べ、エンドウ、サヤエンドウ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、タヌキマメ、ソラマメ等の害虫としても有名である。
 オスとメスの翅裏の模様に違いはないが、翅表は、オスは淡紫色で外縁のみ細い暗色、メスは広く暗褐色で翅の中央部が青紫色で、後翅外縁に沿って白く縁どられた黒点列が目立つ。
 ウラナミシジミは、秋になると東京や東北、稀に北海道でも見ることができるが、実際は九州南部、四国の南部、紀伊半島の南部、伊豆半島南部、そして房総半島の南部が分布域である。分布域では、4月から12月までに年6~7回発生をするが、羽化した個体の一部が、春から秋にかけて食草であるマメ科植物の成長に合わせて世代を繰り返しながら個体数を増やし北上することによって他の地域でも見ることができるのである。房総半島に発生した個体が北上し、東京に現れる成虫が三代目くらいと言われている。
 越冬態は、最近の研究では成虫、幼虫、卵といった様々な姿で越冬していることが分かっているが、本種が越冬できるのは上記分布域のみで、寒冷地では越冬できずに死滅してしまう。晩秋までどんどん北上して冬が来るとそこで死に絶えるが、翌年も北上を繰り返すのである。

 ウラナミシジミの北上は、アサギマダラが春に北へ向かい秋に南へ帰る「移動」とは違う。食草と生育に適した気温の土地へと、一部が北だけではなく四方八方へと、その強い飛翔力で拡大しているのである。
 温暖化の影響により、南方系のチョウが分布域を北方に広げていく現象が知られており、日本国内では、ナガサキアゲハ、ツマグロヒョウモン、クロコノマチョウ、ムラサキツバメなどが 代表的な例で、ナガサキアゲハにおいては、各都市の年平均気温が約15℃を超えると侵入し生息することが判明している。
 ウラナミシジミの北上と温暖化の関係は明らかではないが、将来的には、温暖化によって東京や東北の気候が生育に適するようになれば、越冬しその地域で繁殖する可能性はあるだろう。

参考文献
北原正彦, 入來正躬, 清水剛(2001) 日本におけるナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)の分布の拡大と気候温暖化の関係. 蝶と蛾(日本鱗翅学会誌)52(4):253-264.

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ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 250 +1EV(2010.10.10)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO 200(2016.10.02)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 320 +1EV(2010.10.10)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 320(2010.11.03)

ウラナミシジミ

ウラナミシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 200(2013.9.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 1000(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 500(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(2016.10.22)

ウラナミシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 320(2016.10.22)

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心が折れる2016年の秋

2016-10-16 21:58:58 | その他昆虫と話題

 2016年の秋の撮影目標は、ミルンヤンマの産卵とカトリヤンマの産卵である。どちらも「静止写真」においては満足できるものを撮影しているが、産卵シーンは証拠程度のものしか撮れていないため、何とか美しく撮りたい。
 ミルンヤンマの産卵シーンの撮影は、9月から合計6回にわたって生息地に通った。産卵しそうな朽木の近くで、ひたすらメスが飛来し産卵するのを待つのだが、毎回飛んではくるものの 落ち着いて産卵することなく、のべ25時間の待機時間にも関わらず、結局、未だに産卵シーンは撮影できていない。最後に訪れた生息地では、1頭も飛来しなかったことから、もうシーズンも終わりになってしまったようである。
 一方、カトリヤンマの産卵シーンの撮影は、天候不順の影響で稲刈りが遅く、したがってカトリヤンマのメスは刈られていない稲の中に潜っての産卵のため撮影不可能。それならばと、 300km遠征して2011年に見つけたカトリヤンマの多産地に行ってみた。当時、水の抜かれた池縁の土の斜面に何頭ものメスが産卵に来ていた(当時は撮影していなかった)のだが、5年経ってみると、環境は一変。アメリカザリガニが大量に繁殖し、池は藪と化していた。昼から夕方まで待機したが、オスのホバリングは勿論、メスも1頭も飛来することはなかった。

 長雨と記録的な日照不足である2016年の秋。心が折れる毎週末を経て10月半ばでようやく晴れの日が多くなってきたが、時すでに遅しの感がある。ヤンマの産卵に限らず、昆虫のシーズンも全体的に終盤だ。次の週末にミルンヤンマとカトリヤンマのリベンジを予定し、11月上旬にサツマシジミ、中旬にルーミスシジミとヒナカマキリ、 これを最後に、今年の昆虫撮影は終了予定である。その後は、カメラを持ち替えて自然風景撮影に尽力したいと思う。
 ブログ記事では、昨今の記事内容でお分かりのように、過去に撮影し個別に掲載していた昆虫の写真を種毎に選別し、1つの「まとめ」として紹介しているが、今後しばらくは、そのような記事も掲載し、私自身の課題抽出と次年度の目標設定の材料としたい。

 本記事に掲載の写真は、アカスジキンカメムシの幼虫である。ある沢にてミルンヤンマの産卵を狙って待機している時に足元にいたので、退屈しのぎに撮影したものである。カメムシでありながら、幼虫は甲虫の仲間に思える。アカスジキンカメムシ Poecilocoris lewisi (Distant, 1883)は、半翅目キンカメムシ科で本州・四国・九州に分布する普通種で、成虫は5月~8月頃に見られ、光沢のある金緑色で淡い紅色の帯紋がとても美しいカメムシである。掲載の写真は終齢幼虫で、このまま越冬する。アカスジキンカメムシの成虫は未見で、幼虫は今回が初見初撮影であり、来年は、成虫も是非撮影したいと思う。

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アカスジキンカメムシの幼虫

アカスジキンカメムシ / 幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 3200 +1EV(2016.10.16)

アカスジキンカメムシの幼虫

アカスジキンカメムシ / 幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 1250 +1EV(2016.10.16)

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オニヤンマ

2016-10-15 09:38:27 | トンボ/オニヤンマ科

 オニヤンマ Anotogaster sieboldii Selys, 1854 は、オニヤンマ科(Family Cordulegastridae)/オニヤンマ属(Genus Anotogaster)に分類される。鮮やかな翡翠色の複眼と、はっきりした黄色と黒色のしま模様が特徴で、オオスズメバチでさえ捕食する日本最大のトンボである。その飛行速度も、時速70kmと驚異的(ギンヤンマの最高時速は、100km)である。
 北海道から八重山諸島まで、日本列島に広く分布し(東北北部から北海道に生息する個体はやや小さい。)小川や林の中の穏やかな流水等に生息している。成虫になるまで5年ほどを要し、 成虫は6月~10月頃に見られる。羽化したばかりの未成熟期には丘陵地の林道などでよく目撃され、また、都市部では車道や歩道に沿って飛行する姿を見かけることもあり、東京渋谷のスクランブル交差点で飛翔を見た記憶がある。成熟すると流水域に移動して、オスは流れの一定の区域をメスを求めて往復飛翔する。ほぼ決まったコースを一定の速度でつねに巡回しており、多くは川や道に沿ってまっすぐ飛び、適当な所でUターンして戻ってくる。
 メスは適度な産卵場所を見つけると、体を立てて飛びながら、ストンと体を落下させるようにして水際ぎりぎりの浅い水底の柔らかい泥や砂の中に産卵弁を腹の先ごと何度も突き立てる動作を行う。
 オニヤンマは、環境省RDBに記載はないが、東京都においては準絶滅危惧種に選定している。

 オニヤンマは、今から42~43年ほど前に、東京の高尾山で渓流の上を飛んでいるのを見たのが最初。ギンヤンマなどに対する憧れ的なものは感じなかったが、その驚異的な大きさと緑の複眼の美しさが印象的で、1頭のオスが渓流の上を行ったり来たりしているのを、いつまでも見ていた記憶があるが、オニヤンマは、谷戸の小さな流れも生息環境であるため、東日本ではゲンジボタルの生息地と重なる場合が多い。時としてオニヤンマのヤゴが大量に発生し、ゲンジボタルの幼虫への悪影響が危惧され、現在の私にとっては、少々厄介な存在になっている。勿論、オニヤンマに罪はなく駆除するつもりはない。崩れた生態系のバランスを元に戻すことが大切だ。

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オニヤンマ

オニヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200(2010.10.10)

オニヤンマ

オニヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 200(2010.10.10)

オニヤンマ

オニヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.31/400秒 ISO 200(2010.9.26)

オニヤンマ

オニヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F10.0 1/250秒 ISO 1250(2010.10.10)

オニヤンマ

オニヤンマ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 3200(2012.8.25)

オニヤンマ

オニヤンマ / 産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400 ストロボ使用(2010.7.24)

オニヤンマ

オニヤンマ / 産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 250 -1EV(2010.9.26)

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ウラギンシジミ

2016-10-11 22:49:13 | チョウ/シジミチョウ科

 ウラギンシジミ Curetis acuta paracuta de Nicéville, 1902 は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ウラギンシジミ属(Genus Curetis)に分類されるチョウで、翅の裏が銀白色に輝くことが和名の由来である。シジミチョウの仲間では大型で3cmほどある。オスの翅の表は茶色地にオレンジ色を配した色であるが、メスではオレンジ部分が白色または淡い水色になる。またメスではこの斑紋の大きさに個体差があり、小さかったり消失するものもいる。葉樹林帯に生息するが、市街地でも見られ、東京の千代田区にある皇居や、渋谷区の代々木公園、明治神宮でも観察できる。年3~4回の発生を繰り返し、成虫で越冬する。6~8月にかけて羽化するものは夏型で、前翅の先端のとがりは鈍いが、9~10月に羽化する秋型では前翅の先端が鋭くとがり、夏型に比べて発生数が多い。
 花での吸蜜はせず、落ちた果物や、動物の排泄物によく集まる。また地面で吸水する様子もよく見られる。また、オスは、ゼフィルスのように日の当たる高い枝先でテリトリーを見張る行動をしており、他のオスが近づくと追い払う行動をする。
 ウラギンシジミの夏型は、止まっていてもほとんど翅を開くことがなく、開翅写真は秋型の個体に限られてしまう。掲載写真もすべて秋型のウラギンシジミである。

参照:皇居東御苑の昆虫

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ウラギンシジミ

ウラギンシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/1600秒 ISO 320 +1EV(2016.10.16)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 400(2010.10.23)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/160秒 ISO 640 +2/3EV(2010.11.19)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 1250(2017.8.19)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F10 1/160秒 ISO 1250(2013.10.14)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/125秒 ISO 1000 +2/3EV(2010.11.13)

ウラギンシジミ

ウラギンシジミ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 640 +1EV(2010.11.03)

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アオイトトンボ属

2016-10-10 21:06:07 | トンボ/アオイトトンボ科

 アオイトトンボ属は、国内に以下の4種が生息しているが、本記事では未撮影のエゾアオイトトンボを除いた3種を紹介したい。尚、DNA解析による分化系統では、アオイトトンボとエゾアオイトトンボ、オオアオイトトンボとコバネアオイトトンボの2つのグループに分けられる。

アオイトトンボ科(Family Lestidae

  1. アオイトトンボ属(Genus Lestes
    • アオイトトンボ Lestes sponsa (Hansemann, 1823)
    • エゾアオイトトンボ Lestes dryas Kirby, 1890
    • オオアオイトトンボ Lestes temporalis Selys, 1883
    • コバネアオイトトンボ Lestes japonicus Selys, 1883

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アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 320(2010.7.10)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/3200秒 ISO 1250(2010.10.03)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/640秒 ISO 200(2011.8.27)

 アオイトトンボとオオアオイトトンボは、北海道、本州、四国、九州に広く分布し、コバネアオイトトンボは、本州、四国、九州に分布。 いずれも低山地や丘陵地において、周囲に林があり水辺に水生植物が繁茂する池沼・湿地や沼沢池などの止水域に生息し、3種ともに 光沢のある青緑色の体色をしているが、アオイトトンボは、成熟するとオスの個体は胸部と腹部に白粉を帯びる。
 アオイトトンボは、環境省RDBに記載はないが、宮崎県、鹿児島県で絶滅危惧Ⅰ類に、東京都と千葉県では絶滅危惧Ⅱ類に、高知県、長崎県で準絶滅危惧種に選定、オオアオイトトンボも環境省RDBに記載はないが、北海道においては準絶滅危惧種に選定されており、コバネアオイトトンボに至っては、環境省RDBで絶滅危惧ⅠB類に、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、鳥取県、長崎県では絶滅、その他、分布域のほとんどの自治体で絶滅危惧Ⅰ類、もしくは絶滅危惧Ⅱ類に選定している。アオイトトンボやオオアオイトトンボよりはるかに劣勢で、池の乾燥や林野の開発など生息環境の劣化、アメリカザリガニの侵入やブラックバスの移入も悪影響を及ぼしている。

アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/250秒 ISO 200(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/160秒 ISO 200(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ / 産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 320(2016.10.09)
アオイトトンボ
アオイトトンボ / 産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 500(2016.10.09)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(2010.9.26)
オオアオイトトンボ
オオアオイトトンボ / 連結態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/200秒 ISO 1600 +2/3EV(2010.10.23)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 250(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/250秒 ISO 250(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320(2011.10.01)
コバネアオイトトンボ
コバネアオイトトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/2520秒 ISO 800(2011.10.01)

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トンボのハート型

2016-10-06 20:23:06 | トンボ

 トンボのハートは、オスがメスの前胸部(不均翅亜目は頭部、均翅亜目は前胸部)を腹端の付属器でつかみ、メスは腹部後端をオスの腹部の付け根近くに接合した様子、いわゆる交尾態である。他の昆虫の交尾は、雌雄それぞれの腹端にある生殖器を接して行われるが、トンボ類は特殊である。トンボも生殖器は雌雄ともに腹部後端にあるが、オスの腹部後端は、メスを確保するのに用いられ、交接時にはふさがっている。そのため、オスの腹部第2及び3節に副性器という貯精のうがあり、オスはあらかじめ自分の腹部後端をここに接して精子を蓄えている。オスによって前胸部を固定されたメスは、自分の腹部後端をオスの副性器に接合して精子を受け取るため、このようなハート型を形成するのである。イトトンボの仲間で腹部が細く長く、そして柔らかい種ほどハート型はきれいな形になる。
 トンボの愛の形は、まさにハート型なのであるが、メスが他のオスに奪われてしまうと、メスの生殖器に入っている精子が掻き出して自分の精子を渡すと言われている。それゆえ、オスとメスが連結したまま産卵する種が多く、または産卵するメスの周辺で警護している種も見られるが、オスが寝ている時間帯にメスが単独で産卵に訪れる種もある。きっと、ハート型もすこし歪(いびつ)に違いない・・・。

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ホソミオツネントンボ

ホソミオツネントンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200(2012.5.5)

アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 200(2010.8.14)

アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2010.8.21)

アジアイトトンボ

アジアイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(2010.8.21)

ホソミイトトンボ

ホソミイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 +1EV(2013.5.6)

アマゴイルリトンボ

アマゴイルリトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200 +1EV(2014.7.6)

ベニイトトンボ

ベニイトトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 320 +1EV(2011.10.1)

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ツマグロヒョウモン

2016-10-05 23:19:28 | チョウ/タテハチョウ科

 ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius hyperbius (Linnaeus, 1763) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)/ドクチョウ亜科(Subfamily Heliconiinae)/ツマグロヒョウモン属(Genus Argyreus)に分類されるチョウである。有毒のチョウであるカバマダラに擬態していることからドクチョウ亜科に分類されているが、オスは豹柄模様のみで、メスが前翅の先端部表面が黒(黒紫)色地で白い帯が横断している。通常のチョウの仲間では珍しくメスの方が美しい。
 南西諸島、九州、四国、本州南西部に分布し、本州では1980年代まで近畿地方以西でしか見られなかったが、徐々に生息域が北上し、2016年現在、関東地方北部でもほぼ定着し普通種になりつつある。通常ヒョウモンチョウの仲間は山地や北の涼しい場所を中心に分布しているが、熱帯を中心とするツマグロヒョウモンの分布はヒョウモンチョウの仲間では珍しいと言える。ツマグロヒョウモンの北上については、単純に「地球温暖化」の題材として取り上げられることが多いが、幼虫は各種スミレ類を食草とし、野生のスミレ類のみならず園芸種のパンジーやビオラなども食べることも北上と分布拡大の一因だと思われる。
 成虫は4月頃から11月頃まで見られ、その間に4~6回発生する。他のヒョウモンチョウ類がほとんど年1回しか発生しないのに対し、多化性という点でも例外的な種類である。

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ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 400(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 200(2016.10.2)

ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモン / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/2000秒 ISO 200(2016.10.2)

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キタキチョウ

2016-10-04 22:37:49 | チョウ/シロチョウ科

 キタキチョウ Eurema mandarina mandarina (de l'Orza, 1869) シロチョウ科(Family Pieridae)キチョウ属(Genus Eurema)に分類されるチョウで、秋田・岩手県以南の本州、四国、九州、南西諸島に分布するが、以前、和名は「キチョウ」であった。しかしながら、近年のDNA分析によって、南西諸島に生息しているものの中に異なる種がいることが分かり、それをキチョウ(ミナミキチョウ) Eurema hecabe hecabe (Linnaeus, 1758) とし、本種は「キタキチョウ」となった。
 キタキチョウは、ネムノキ、ハギ類のマメ科の植物が食草で、平地~山地の樹林の周辺や草地や畑、市街地などでごく普通に見られるチョウである。5月下旬頃から発生し、以降連続的に(5~6回)発生して晩秋に至るが、幼虫期の日長と温度によって夏型と秋型の季節型が現れる。季節型には、形態的な差異があり、夏型は翅表外縁の黒帯の幅が広いが、秋型は黒色の縁が先端に少し残るか、もしくはない。初秋の頃は、夏型と秋型が混棲するために個体数が多く、晩秋になると秋型のみが現れ、そのまま成虫で越冬する。
 様々な花に止まって吸蜜するが、忙しなく移動する。夏には、湿った場所や河原などで吸水している姿も見ることができるが、翅を開くことはない。

 キタキチョウは、先日、訪れた植物公園のハギの周囲で乱舞していた。モンシロチョウよりも一回り小さく、また黄色が印象的だ。どこでも見ることができる普通種であるため、じっくりとカメラを向けることが少ない種であるが、不順な天候続きの昨今、9月10日の「マダラヤンマ」以来何も撮影できていない週末が続けば、普通種であっても貴重(キチョウ)な被写体である。止まると翅を開かないので、逆光で翅表外縁の黒帯がよく分かるように撮影した。

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キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(2016.10.2)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(2016.10.2)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 1250 (2010.08.29)

キタキチョウ

キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 800(2011.10.18)

キタキチョウ

キタキチョウ / 秋型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(2016.5.5)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F13 1/40秒 ISO 250 -1 2/3EV(2016.6.11)

キタキチョウ

キタキチョウ / 夏型
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 500 +1/3EV(2013.8.27)

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トウキョウサンショウウオ

2016-10-02 22:27:57 | 動物

 トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis Tago, 1931.は、有尾目サンショウウオ科の有尾類で、1931年に東京都あきる野市で発見された。関東一都六県に分布し、ミトコンドリアDNAの分子系統解析から、北部個体群(茨城北部、福島南部)と南部個体群(神奈川、埼玉、千葉、東京、栃木)の2つのグループに大きく分かれる推定されている。
 トウキョウサンショウウオは、丘陵地の谷戸の小さな湧水とその周辺の雑木林を生息場所としており、一生を水中で生活するオオサンショウウオ等とは異なり、普段は水場近くの雑木林の林床で、落ち葉の下のミミズ等を食べて生きている。そして3~5月の繁殖期にだけ、湧水の溜まった池や小さな流れに入り、クロワッサン状の一対の卵嚢を枯れ枝等に産み付ける。孵化した幼生は、2~3ヵ月で親と同じ形になり、上陸して雑木林で生活し、20年近く生きる個体もいる。
 今回、里山の雑木林で偶然に成体を見つけた。落葉の溜まった湿った林床で朽木の下に隠れていたものである。

 トウキョウサンショウウオは、年々、生息数が激減している。1998年の市民ボランティアによる調査では、東京都内において200カ所の産卵場と約5,000の卵嚢が確認されているが、これは、1匹のメスが1対の卵嚢を産卵し、またオス:メスの性比が3:2であることから、東京都全体でおよそ6,000頭(成体)しか生息していないことを指している。生息場所が里山であるため、里山そのものの大規模開発による環境破壊、放棄放置による環境悪化、ゴミの不法投棄による有毒物質の流失等が減少の大きな原因であるが、昨今では、アメリカザリガニや人為的に離されたアライグマによる食害が報告されている。産卵のために水中に入った成体をアライグマが次々に食べてしまうのである。更には、販売のための乱獲も減少に拍車をかけている。繁殖個体群の動態シュミレーションでは、50年後にも95%の確立で存続するためには、最少存続可能個体数(MVP)はメス100頭であるという研究結果があるが、現在の状況では、絶滅する確立が非常に高い。
 生息場所が多く個体数も多い千葉県では、水田耕作に依存度が高い特徴があるため、水量不足、水田の埋め立てや放棄など環境変化によって規模の大きな産卵地は半数以下に減少している。

 トウキョウサンショウウオは、環境省RDBで絶滅危惧Ⅱ類に、東京都、千葉県、神奈川県では絶滅危惧Ⅰ類、埼玉県、茨城県、栃木県、福島県では絶滅危惧Ⅱ類に選定している。また、東京都日の出町では町の天然記念物に、宇都宮市では、市の天然記念物に指定している。

参考文献・図書
日本産有尾類 佐藤井岐雄 著 第一書房
房総半島におけるトウキョウサンショウウオの生息域と特徴(2008)両棲類誌18

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トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400(2016.10.2)

トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/60秒 ISO 400(2016.10.2)

トウキョウサンショウウオ

トウキョウサンショウウオ / 成体
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F9.0 1/160秒 ISO 3200 +1/3EV(2011.3.19)

トウキョウサンショウウオの卵嚢

トウキョウサンショウウオ / 卵嚢
Canon EOS 10D / SIGMA 28-80mm F3.5-5.6 ASPHERICAL MACRO
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 1600(2010.03.06)

トウキョウサンショウウオの卵嚢

トウキョウサンショウウオ / 卵嚢
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
絞り優先AE F20 1/25秒 ISO 320(2012.3.25)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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