ルリボシヤンマの青色型オス(写真1及び2)完全ではないが長野県において撮影したので掲載したい。
ルリボシヤンマ Aeshna juncea juncea (Linnaeus, 1758)は、ヤンマ科(Family Aeshnidae)ルリボシヤンマ属(Genus Aeshna)で、氷河期に繁栄し、その遺存種的に生息していると言われており、日本では寒冷な気候である北海道の他、本州、四国に分布する。主として高層湿原や林に囲まれた抽水植物が繁茂する泥炭質の小さな池沼などに多く生息する。丘陵地から低山帯の池沼など温暖な平地にも生息するが、数は少なくなる。
環境省カテゴリにはないが、開発などによる生息地の破壊や消滅のほか、生息している湿地の陸地化などにより、高知県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類に、大阪府、奈良県、和歌山県では絶滅危惧Ⅱ類、東京都、埼玉県、茨城県、その他中国地方の多くの県において準絶滅危惧種に選定している。
ルリボシヤンマのオスは、成熟すると複眼は青色に、胸部の模様と腹部斑紋は黄色に変化し、腹部の1節後半と2節前半及び6(または7)~8節の斑紋が青色になる。(写真:3~6)メスは、複眼が緑色で胸部模様と腹部斑紋は黄色または淡緑色である。(写真:7)ただし、斑紋の色彩には地理的変異があり、寒冷地では斑紋の大半が青色や緑色になる個体も現れると言われており、北海道においては青色型のオスとメスが存在する。本州においては、極稀ではあるが中部山岳地帯で確認されると言う。
今回、長野県小谷村の標高1,900mにある湿原において観察と撮影を行ったところ、2タイプのオスの存在を確認した。その1つが「胸部の翅の付け根が青色で胸部の模様の一部が淡緑色、腹部斑紋が青緑色と青色」というタイプの個体である。ルリボシヤンマの斑紋は小さいにも関わらず、この個体は、飛翔中を肉眼で見ても、オオルリボシヤンマのオスのように体全体が青く見えるほどであった。(写真:1及び2)
もう1タイプは、ノーマルタイプではあるものの複眼が青色ではなく緑褐色が多くを占めている個体であった。(写真:4と5)また同地区のメスは、2頭しか確認できなかったが、いずれも青色型ではなかった。ただし複眼は緑色ではなく、緑褐色の個体であった。(写真:8)
訪れた時期が発生の最盛期を過ぎており、個体数がかなり少なかったことから、青色型がこの地区において遺伝的に固定されたものか、あるいは単なる個体変異なのかは判断できない。また、青色型メスが生息する可能性もあるので、来年の課題としたい。(また、別の場所ではあるが、青色型メスが多く見られる場所を突き止めたので、来年は訪問し撮影したい。)
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