モノサシトンボ科は、日本国内に以下の3属6種1亜種が分布しており、本記事では、南西諸島に分布するルリモントンボ属(未撮影)を除いたモノサシトンボ属とグンバイトンボ属のトンボを紹介したい。
モノサシトンボ科(Family Platyenemididae)
- モノサシトンボ属(Genus Copera)
- モノサシトンボ Copera annulata (Selys, 1863)
- オオモノサシトンボ Copera tokyoensis Asahina, 1948
- グンバイトンボ属(Genus Platycnemis)
- グンバイトンボ Platycnemis foliacea sasakii Asahina, 1949
- アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana Asahina, 1955
- ルリモントンボ属(Genus Coeliccia)
- タイワンルリモントンボ Coeliccia flavicauda Ris, 1912
- リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis Asahina, 1951
- リュウキュウルリモントンボ(奄美亜種) Coeliccia ryukyuensis amamii Asahina, 1962
モノサシトンボ Copera annulata (Selys, 1863)
モノサシトンボは、北海道から九州まで分布し、平地から丘陵地の木陰の多い池沼や流れの緩やかな河川において、5~8月頃に見られる。体長は45ミリ内外とやや大型で、雌雄ともに腹部にモノサシの目盛のような環状白斑があり、これが和名の由来となっている。成熟個体の環状白斑は、オスは水色で、メスではやや黄褐色であるが、稀に黒化型のオス(写真3~4)やオス型のメスも出現する。
新潟県では、オオモノサシトンボとの種間雑種も確認されている。最新の研究では、モノサシトンボとオオモノサシトンボのDNAに差がないことが分かっており、オオモノサシトンボは、
モノサシトンボの特異個体群ではないかという意見もある。
羽化したばかりの未成熟個体は発生地周辺の林縁で過ごし、成熟すると池沼等に戻って、オスは水辺の草に止まり縄張りを作る。産卵は連結静止型で、主に連結態で水面付近の植物組織内に行う。その際、オスはメスの前胸を尾部付属器でつかんだまま肢を縮めて直立した姿勢をとる。
普通種であり環境省RDBに記載はないが、個体が減少している地域もあり、千葉県のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類に、神奈川県と高知県のRDBでは準絶滅危惧種に選定されている。
オオモノサシトンボ Copera tokyoensis Asahina, 1948
オオモノサシトンボは、昭和11年に東京都葛飾区水元で新種として発見された学名にトウキョウの名がつくトンボである。モノサシトンボによく似ているが体がやや大きく、雄の腹部第9節背面が黒いこと、雌の腹部第10節背面に黒い部分があることで区別される。6月頃から9月頃にかけて見られ、
関東では8月頃に多い。日光の良く当たるヨシやマコモ・ガマなどが繁茂した泥深い腐植栄養型の池沼に生息するが、生息地は限られている。
当初、学名の通り東京を中心とした関東地方の利根川水系と新潟県の信濃川水系の下流に広がるデルタ地帯だけに生息地が発見されていたが、その後、神奈川県多摩川下流域や宮城県でも分布が確認され、東京都の他、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、宮城県、新潟県で生息が確認されていた。しかしながら、すでに既知生息地の79%は失われており、かつて126ヶ所の生息地が知られていた関東地方でも、現存するのは24ヶ所のみであると言われている。環境省RDBで絶滅危惧ⅠB類に選定され、神奈川県RDBでは絶滅、東京都、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、新潟県、宮城県のRDBで絶滅危惧Ⅰ類に選定されている。
グンバイトンボ Platycnemis foliacea sasakii Asahina, 1949
グンバイトンボは、体長約30mmでモノサシトンボよりも小型である。オスの中・後脚の頸節が白色で軍配状に広がる特異な形をしていることが、和名の由来になっている。主に丘陵地から低山地の湧水が流れ込む沈水植物や挺水植物が繁茂するゆるやかな清流域に生息しており、幼虫は、水草の茎や根際につかまって生活している。
日本特産亜種で宮城県以南の本州、四国、九州に分布しているが、生息場所は局所的である。東京都武蔵野市にある井の頭池で採集された標本が基で新種となったように、かつては、東京都の井の頭公園や石神井公園にも生息していたが、環境の悪化とともに姿を消し、東京都では絶滅してしまっている。西日本では数多く見られる地域もあるが、全国的には減少傾向にあり、環境省RDBで準絶滅危惧種、東京都RDBでは絶滅、その他23の府県で絶滅危惧Ⅰ類や絶滅危惧Ⅱ類、準絶滅危惧種に選定している。
アマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana Asahina, 1955
アマゴイルリトンボは、新潟県の朱門岳にある雨生ヶ池(まごいがいけ/別名:雨乞ヶ池)で発見されたことから和名が付いており、学名にも「エチゴニア」と付いている。5月下旬から出現して9月中旬頃まで見られ、成熟したオスは深い瑠璃色を呈し、コバルトブルーの複眼が何より印象的で美しい。
山中の樹林に囲まれた挺水植物(ヒツジグサ、ジュンサイ、ヒルムシロなど)の茂っている水のきれいな池沼に多く、また開けた湿地の脇を流れる小川や人工の池等に生息している地域もあるが、アマゴイルリトンボは、青森県、福島県、山形県、新潟県、長野県の5県のみに分布し、生息地も極めて局所的で、環境省RDBに記載はないが、長野県では絶滅危惧Ⅱ類に、
山形県、新潟県では準絶滅危惧種に選定している。
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モノサシトンボ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500 -1 1/3EV(2010.9.5)
モノサシトンボ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(2011.8.27)
モノサシトンボ / 連結態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/80160秒 ISO 800(2011.8.27)
モノサシトンボ / 連結態(黒化型オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F7.1 1/125秒 ISO 640(2013.6.16 新潟県)
モノサシトンボ / 産卵(黒化型オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F13 1/400秒 ISO 3200V(2016.6.16 新潟県)
オオモノサシトンボ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/640秒 ISO 3200(2011.6.12)
オオモノサシトンボ / メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 250(2011.6.12)
グンバイトンボ / オス
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.30 1/80秒 ISO 320(2012.6.23)
グンバイトンボ / メス
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/840秒 ISO 250(2012.6.23)
アマゴイルリトンボ / オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/800秒 ISO 200 +2/3EV(2014.7.6)
アマゴイルリトンボ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200 +1EV(2014.7.6)
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