秋谷の立石にて、富士と満月を撮ってきた。前回の群馬遠征から一か月以上空いての撮影である。
2024年2月24日は満月(実際は24日の21時半が満月)である。アメリカの農事暦で「スノームーン」と呼ばれ、今年地球から最も遠い小さく見える満月だが、日の出日の入り時刻と月の入り月の出時刻から、富士山頂に満月を重ねる「パール富士」が撮れるチャンスの日でもある。
パール富士は、ダイヤモンド富士と違って、そもそも撮影できる日は年に数回しかなく、昇るパール富士は、緻密な計算を行って撮影場所を決めても、昇ってくる月が富士山で見えないので、運の良さも必要だ。沈むパール富士においては、当然、山頂と重なる方角を計算して撮影場所を選定する必要はあるが、最後の瞬間は、沈む月の角度を見極めながらちょっと移動すれば富士山頂の好きな位置と重ねることができる。いずれも撮影できれば、貴重な一枚であることに違いはない。
「パール富士」は、過去にどちらも撮っている。昇るパール富士は、2021年の2月27日に撮影し「パール富士(スノームーン)」として掲載しており、沈むパール富士は、昨年の一月に撮影し「パール紅富士」として掲載している。勿論、どちらも満足できる結果ではなく、チャンスがあれば再び挑戦したいが、今回は、単に富士と満月を重ねた画角の狭い写真ではないものを残したいと思い、昨年の秋からイメージを膨らませていた。富士と満月という主役たちを引き立てる脇役が欲しい。そこで、今回撮影場所に選んだのが「秋谷の立石」である。
秋谷の立石は、神奈川県横須賀市の葉山町にあり、古くから景勝地として知られ、初代歌川広重が『相州三浦秋屋の里』を描いたのをはじめ、その後も多くの画家や写真家たちに愛されてきた。相模湾越しに富士山を眺めることができ、三浦半島屈指の絶景といわれ「関東ふれあいの道」や「かながわの景勝50選」、そして「横須賀風物百選」や「横須賀市指定市民文化資産」にも選ばれている。特に夕暮れが美しく、湘南で随一のスポットになっており、過去に一度だけ夕方に訪れ「秋谷の立石」として掲載している。
ここのポイントは海と富士山と松の木である。今回は、歌川広重が描いた絵に、満月を加えようと考えたのである。問題は、天気。ここ一週間近く天候が悪く、23日は自宅付近はみぞれ交じり。予報では24日の早朝は晴れマークであり大チャンス。
東京国立の自宅を23日17時半に出発し、東八道路、環八、第三京浜経由で横浜横須賀道路の衣笠ICで降り、立石公園の無料駐車場に20時に到着。4割ほど埋まっていたが、徐々に少なくなり、深夜は2割ほどの駐車率。写真撮影の車ではなさそうである。箱根に雪が積もり翌日が晴ならば、大観山に行ったカメラマンは多いだろう。千葉県の鋸南町辺りなら「パール富士」目当てのカメラマンが多いだろうが、立石公園に車中泊で来るカメラマンは、ほとんどいないようだ。
深夜は曇っていたが、4時頃には快晴となり、月も富士山も良く見える。4時半から準備を開始し撮影を始めた。葉山でも気温は4度。風が強く寒いが、前回の群馬遠征から比べれば優しいものである。レンズや撮影場所を変えながらシャッターを切った。満月はゆっくりと降りて行き、色彩も刻々と変化する。富士山と海と松の木、そして満月。将に日本らしい風景である。今回は、月の入りの1分後に日の出となることと、東方面の海上に雲が低くかかっていたことで、満月と紅富士を同時に収めることはできなかったが、ブルーモーメントの富士と満月が、私の「神奈川三浦秋谷の里」の一枚になった。
これまで休日と天候などの関係で、計画していても見送ったものが多いが、今年の8月末までは、1つ1つ計画をクリアしていきたい。とりあえず2月の計画は達成。3月は、新潟、群馬、静岡での天の川撮影、地元近くでのオツネントンボの産卵(未撮影)の観察と撮影を計画しており、月を追うごとに多忙を極める予定になっている。
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