ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

源氏蛍(千葉県にて)

2020-05-31 20:31:15 | ゲンジボタル

 源氏蛍の様子を千葉県にて観察してきた。

 昨年、千葉市付近に上陸した台風15号と台風19号による被害が大きく、ホタルが生息する河川もダメージがあり、今年の発生の状況を心配していた。生息地はいくつもあるが、その内の1つである谷戸には、20014年から定期的に観察に訪れている。その生息地は、千葉県内でも発生時期が早く、5月の中旬頃から発生が始まり、下旬にはピークを迎える。昨年の様子は「ホタルの乱舞~里山で舞う東日本型ゲンジボタル~」として、今年の4月は幼虫の上陸の様子を「ゲンジボタルの幼虫上陸」として本ブログに掲載している。幼虫の上陸観察では、時期が遅かったこともあり数が少なく、やはり成虫の発生数がどうなるのか危惧していたところ、親友から今年も多くのゲンジボタルが出ているとの連絡を受け、早速、30日(土)行ってきた。

 午前中は、東京都内の湿地にてサラサヤンマの産卵を撮影し、午後から千葉県へ向かった。現地には17時に到着し、谷戸の最奥から環境を細かく調べ、昨年とは違った場所がベストポイントであると推察し、カメラを据えた。
 19時半になると、茂みの中でゲンジボタルが発光を始め、徐々に発光数が増えて行った。水田と雑木林の間に幅60cm程の細い流れがあり、幼虫はそこを住処にしている。場所によっては細流を木々が覆いつくしており、それが暗い空間を提供しており、その空間では、まさにクリスマスイルミネーションのごとく、たいへん多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 ここに生息するゲンジボタルは、東日本型の遺伝子であるため、先週に見てきた高知県の西日本型ゲンジボタルとは全く違う谷戸という生息環境。そして発光間隔も西の2秒に対して、こちらは4秒である。また、飛び方もたいへんゆっくりで優雅である。
 気温は20℃で無風。カメラを向けた方向でも多くが飛び始めたが、この日は月齢7.4で半月。地面に自分の影が映るほそ明るい。案の定、ゲンジボタルたちも雑木林脇の細流上を飛び回ることが多く、隣接する明るい水田まではほとんど飛んでは行かなかった。これで、車のライトや観賞者の懐中電灯が当たれば大きな打撃だが、この生息は車が通ることもなく、観賞者は地元の方々がほんの数名。人為的光害からは守られているのは安心である。

 20時半を過ぎると飛翔数が減り、雑木林の木々の葉や下草に止まって光るようになった。今回は飛翔風景だけではなく、成虫が発光している様子をマクロレンズで動画撮影することも目標であった。丁度、下草で発光しているオスがいたので、ファインダーを覗きながら発光する発光器にマニュアルでピントを合わせて写真と動画映像を撮影し、下記に掲載した。(成虫のマクロ写真は、月明りだけで撮影。飛翔風景は、生息環境をご覧頂くために明るめにRAW現像している。)
 6月には1~2カ所、出来ればこれまでに行ったことはないゲンジボタル生息地で観察と撮影をしたいと思っており、7月にはヒメボタルを2~3カ所において観察と撮影を計画している。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、 HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 2500 -1/3EV(撮影地:千葉県 2020.5.30 18:52)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:42)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / バルブ撮影 F2.8 6秒 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30 20:50)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 9秒 ISO 200 12分相当の多重(撮影地:千葉県 2020.5.30 19:31~20:22)

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / F1.4 ISO 6400(撮影地:千葉県 2020.5.30)

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イシガケチョウ

2020-05-30 23:07:37 | チョウ/タテハチョウ科

 イシガケチョウ Cyrestis thyodamas mabella Fruhstorfer, 1898 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)イシガケチョウ族(Tribe Cyrestidini)イシガケチョウ属 (Genus Cyrestis)のチョウ。南方系の種で、本州の三重県あたりが分布の北限となっているが、温暖化により北上しているチョウであり、国内では年々分布域を広げている。国外ではインドから中国南部まで広く分布している。
 翅は、和名通りの石崖・石垣模様を持ち、メスはやや大型で、地色が白色と黄色の2型があるが、オスは白い地色のみである。食樹はクワ科のイヌビワ・イチジク・オオイタビなどで、渓谷沿いの照葉樹林や疎林に多く生息し、ひらひらと紙切れが舞うように飛ぶ。秋までに年3~5回発生し、成虫で越冬する。

 今回の高知遠征は、ゲンジボタルがメインであるが、トンボの観察と撮影も計画に入れていた。前記事のコフキヒメイトトンボの他、四国にしか生息していないシコクトゲオトンボ、そしてミナミヤンマも目的で、その生息地を訪れたが、羽化まで1週間ほど早かったようで出会うことは出来なかった。
 その代わりに、イシガケチョウの集団吸水に出会ったのである。渓流沿いの砂地のごく狭い範囲に6頭ほどが集まっての吸水。本種は、東京では八王子市の多摩動物公園内のチョウの温室では見たことがあるが、自然の中で生きているのは初見であり大変嬉しい出会いであった。

 イシガケチョウは、初見初撮影の種で、PartⅠを含めたブログに掲載した鱗翅目では、140種目となる。参照「昆虫リストと撮影機材

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イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 250(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:31)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:34)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:34)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:39)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:39)

イシガケチョウの写真

イシガケチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F7.1 1/250秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:高知県日高村 2020.5.24 9:38)

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コフキヒメイトトンボ(未熟~交尾態)

2020-05-29 21:17:26 | トンボ/イトトンボ科

 コフキヒメイトトンボ Agriocnemis femina oryzae Lieftinck, 1962は、イトトンボ科(Family Coenagrionidae)ヒメイトトンボ属(Genus Agriocnemis)のトンボで、四国南部、九州、南西諸島に分布している。体長が20~25mmで、同属のヒメイトトンボとともに国内最小クラスで、主に低湿地の背丈の低い草におおわれた滞水や池沼、水田、ほとんど流れを感じないような溝川などに生息している。
 本種は、雌雄ともに成熟段階において体色変化が見られる。未熟オスは地色が黄緑で胸に黒条が入り、腹部先端がオレンジ色であるが、成熟すると胸部は白粉で覆われ、尾部のオレンジは消えて黒に変わる。一方のメスは、未熟時は全身が鮮やかな赤であるが、成熟するとくすんだ緑色になり、老熟すると胸部にオスのような白粉をまとう個体も見られる。
 本種は、2017年10月に高知県四万十市の四万十市トンボ自然公園で撮影し「コフキヒメイトトンボ」として本ブログに掲載しているが、すべて成熟した個体ばかりであった。今回、再び四万十市トンボ自然公園を訪れたところ、雌雄ともに未熟個体と成熟個体、そして交尾態の写真を撮ることができたので紹介したい。

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コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(成熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:20)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(未熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 400(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:25)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(未熟オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 320 +1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 11:38)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(成熟メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:28)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(未熟メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:22)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(未熟と成熟メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:23)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(成熟オスと未熟メスの交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F9.0 1/125秒 ISO 250(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 11:50)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(成熟オスと未熟メスの交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F9.0 1/125秒 ISO 400 +2/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 11:51)

コフキヒメイトトンボの写真

コフキヒメイトトンボ(成熟オスと未熟メスの交尾態)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F9.0 1/125秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 11:53)

コフキヒメイトトンボの写真

モノサシトンボの連結態とコフキヒメイトトンボの成熟オス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F9.0 1/160秒 ISO 800 +1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 11:46)

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宿毛のゲンジボタル

2020-05-27 15:48:20 | ゲンジボタル

 宿毛のゲンジボタルは高知県内でも有数な名所である。

 四万十川の沈下橋とホタルを観察した翌日は、宿毛市にある「蛍の郷」へ。この場所は、40年以上にわたってカワニナの餌を団子状にしてパチンコで川へと飛ばしたり、 大雨で土砂が流入した際は、幼虫を陸に上げないように丁寧に作業したりする等、堀内慶治氏一個人によって保護されている「蛍の郷」である。川に設けられた幾つかの堰周辺でゲンジボタルが多く飛ぶが、中でも「蛍の郷」の400mにわたる岸辺は、無数のゲンジボタルが乱舞し、光が水面にも映り込む幻想的な光景が見られる。堀内慶治氏によれば、川岸が光のウエーブのようになり、両岸が光の輪に包まれる日が年に1~2度あると言う素晴らしい場所である。
 23日(土)は、まず四万十市トンボ自然公園で昼近くまでトンボを観察。その後、高知県ホタルネットワークの石川憲一氏と合流して昼食を済ませ、石川氏の案内で、アマチュアながら自費でホタルの写真集を出版している地元の会社員 田村昌之氏と会った。その後宿毛に移動し「蛍の郷」へ15時に到着。周辺を探索しロケハンを済ませると、ホタルの写真集も出されているプロの動物写真家「小原玲」氏が来られた。石川氏と田村氏の手引きでの初対面。川のほとりにて2時間余りホタル談義に花が咲いた。

 18時半頃からポイントで待機。ここでも一番ボタルの発光は19時半で、カメラを向けていない右側の岸辺であった。気温20℃で無風。20時を過ぎると無数のゲンジボタルが飛び交い、将に大乱舞という状況になった。オスの同期明滅は、西日本型特有の2秒間隔。ここでの飛翔スピードは、沈下橋に比べると穏やかで、多くのゲンジボタルは岸辺の草むら上を飛んでいた。カメラを向けた方向は堰と堰の間で、無風という条件も相まって、岸辺を乱舞するゲンジボタルの光が水面に反射する光景も素晴らしく美しく、この場所においても、大変多くことを学んだ。
 以下に掲載した写真は、いずれもデジタル一眼レフカメラによって撮影したものであるが、写真2~4はフィルムと同じ一発露光(30秒の長時間露光)である。フィルムの適正露出を得るための長時間露光と違って、デジタルでの多重合成・多重露光は、単に見栄えを良くするものである。写真5~6は30秒露光の写真をパソコンにて数カット多重合成した結果である。実際のゲンジボタルの様子は、最後に掲載した映像をご覧頂きたいが、多くのカットを重ねたホタル写真は「こんなに飛んでいるの!?」と見た方に誤解を与えかねない。写真家の小原玲氏は、昨今の素人が作るホタル写真は重ね過ぎだと嘆いていており、私も同感だが、悲しいことに写真を見た方々の評価は、本ブログ掲載写真2~4よりも、写真5~6なのである。
 映像は、ほぼ見た目に近いが、写真は長時間の露光になれば実写でありながら創作でもある。更にタイムラグがあるカットを重ねることは時間の連続性という写真芸術の観点や、ホタルの飛翔という生態学的観点から外れることにはなるが、1つの創作写真としてご覧頂きたい。掲載写真は、ゲンジボタルがどうような環境で飛翔発光するのかが分かるように、背景を明るめに処理している。

 宿毛市にある「蛍の郷」は大変すばらしい自然環境であり、高知県ならではのゲンジボタルの生息環境や生態的特性も学ぶことができ、目的達成、大満足の遠征であったが、残念だったのは、川のすぐ横が観賞者用の駐車場であること。ゲンジボタルが光り始めてから来る車のライトが、ゲンジボタルが乱舞する場所を容赦なく照らしてしまう。そのたびに発光をやめ、雌雄のコミュニケーションは阻害されていた。ここでも、悲しいことに光害という人的汚染にホタルたちは嘆いていた。
 ホタル観賞をする方々の中には、ホタルが発光する理由をご存じない方が多い。知っていれば、暗くなってホタルが乱舞している所へ車のヘッドライトを向けるはずがない。車で来なければならないのならば、明るい時間帯に来るしかない。私もその場所に駐車したが、前述のように15時には到着し、ヘッドライトが川とは反対側になるように止めていた。そして、ホタルの発光飛翔が終了した21時過ぎに引き上げた。車はハイブリッドで電気モーターだけで走行するようにした。今後も、この環境を維持するには、時間を決めて車の侵入を禁止するなどの対策が必要であろう。

 日本各地の有名なホタルの生息地は、どうしても観賞者やカメラマンが大勢訪れる。見るのも自由、撮るのも自由である。しかしながら、ホタルの生息地は、観賞者優先でもカメラマン優先でもない。ホタルが最優先である。ホタルは発光によって雌雄がコミュニケーションを図っていて、暗闇でしかお互いの光を確認できない。従って、ホタルが十分に繁殖を行えるように人工的な灯りは一切照らしてはならないのである。これはマナーではない。自然保全の鉄則である。「観賞者とカメラマン、お互いが気持ち良く・・・」そうではなく、ホタルが光によって会話できるように、そして配偶行動ができるようにそっと見守ることが、訪れた者の責務であると思う。そうしなければ、この光景は、直ぐにでも失われてしまうだろう。

 こう書くと「一日数回、懐中電灯の灯りや車のヘッドライトが当たっただけで、ホタルは全滅しないだろう」と言う方がいる。「それは、お前のエゴだ。極論だ!」と反発する方もいる。「そう言うお前はどうなんだ!」と問題をすり替え逆切れする方もいる。
 では、ゲンジボタルの生態を考えてみたい。この場所の発生期間を仮に3週間とする。メスは10日ほど遅れて羽化してくるから、雌雄が出会える日数はおよそ11日である。変温動物であるから、夜の気温が15℃を下回れば活動は鈍くなる。月明りがあれば、飛び回るオスの数は減少する。雨は問題ないが風が強ければ、やはり飛び回るオスは少ない。これら悪条件を除くと、雌雄が出会える日数は更に減って5日くらいになるかもしれない。そして、一日の内で雌雄が出会える時間は、1時間半ほどしかない。そのわずかな時間の中で、オスは下草で発光するメスを見つけ、メスは寄ってきたオスの中から、発光が一番強いオスを選んで交尾するのである。人為的な灯りは、この少ない貴重なチャンスを更に少なくしてしまうのである。
   光害の影響は、科学的にも昆虫学的にも証明されている。反論があれば、無記名で誹謗中傷するくだらないコメントを安易に書き込むのではなく、科学的根拠を示しながら、自然保全や精神論についても論じて頂きたい。
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されても3密を防ぐために、今年は日本各地で「ホタル祭り」等のイベント中止が決まっている。個人的には嬉しい思いが強い。私を含め人々が 来なければ、人為的光害はなくなり、ホタルは幸せだろう。今後も、ホタルの自然発生地においては、私を含めた観賞者もカメラマンも人間様様の態度や考え方を改め、自然に接しなければならない。

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蛍の郷の写真

蛍の郷の環境
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F9.0 1/60秒 ISO 100(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 15:15)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:53)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:54)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 23秒 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23 19:58)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 11分相当の多重露光 ISO 1000(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 6分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

宿毛のゲンジボタル(映像)設定をHDにしてフルスクリーンでご覧ください。
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE (撮影地:高知県宿毛市 2020.5.23)

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沈下橋とホタル

2020-05-25 18:39:05 | ゲンジボタル

 沈下橋とホタルは、高知県が誇る日本の原風景である。

 高知県には、2017年10月にホタル講演会の講師として香南市を訪れたが、是非一度、ホタルが舞う季節に行って見たいと思っていた。
 四国のゲンジボタルは西日本の遺伝子を持ったグループである。現在、東京都内においても移植によって定着した西日本型のゲンジボタルを見ることができるが、西日本型本来の生息環境や発光、飛翔の様子などは、本場でなければ確認できない。そこで、発生時期と新月が重なる日を選定し、5月22日~24日の二泊三日で遠征する計画を本年頭に立てていた。
 しかしながら、大きな問題が発生。新型コロナウイルスの感染拡大である。高知遠征は県をまたがる移動ではあるが、ホタルの研究はライフワークであり不要不急ではない。これだけは、何としても実行したい。私は、4月7日以降は自粛を守り、不要不急の外出は一切せず、風景や昆虫の写真撮影は自宅の庭だけに留めた。そして多くの方々の我慢によってウイルス拡大は収束に近づき、4月7日に発令された緊急事態宣言は、5月14日に39県が解除され、21日には関西3府県の解除が決まった。そして本日、首都圏の1都3県と北海道でも解除となったが、危惧されたことは航空機の減便であった。実際の所1日6往復あった便は1日1往復に減便。予約した便は欠航となってしまったが、振替によって搭乗することが可能になり、計画通りに遠征できることとなった。

 5月22日の羽田空港第一ターミナル。出発ロビーに人影はほとんどない。搭乗手続きを済ませ 14:15発 JAL495便 に搭乗。通常はボーイング737だが、今回は95人乗りのエンブラエル190。機内を見れば、全部で30人ほどしか乗っていない。ソーシャルディスタンスは十分。私は、クラスJの席04A、一列シートでゆったりである。ちなみに帰路は24日 16:20発 JAL496便 クラスJの席02Aに搭乗であった。
 高知空港からは、レンタカーで移動。カローラを予約していたが、まだ16,000kmしか走っていないプリウスが用意されていた。全行程約300km走行したが、燃費は26km/lで、返却時の燃料満タンでは11リットルの給油で済んだ。
高知遠征の計画時に、二晩の内一晩はヒメボタルとも考えたが、森中の乱舞では関東での状況と何ら違いがないことから、二晩ともゲンジボタルを観察することに決めていた。次の記事で紹介する「宿毛のゲンジボタル」をメインとして、初日は高知ならではの光景として「沈下橋とホタル」を選んだ。

 高知県では、1993年に四万十川流域の沈下橋を生活文化遺産ととらえ保存し後世に残すという方針を決定しており、2009年には、沈下橋を含む四万十川流域の流通・往来を通じて生じた景観が国の重要文化的景観として選定されている。その景観に、更にゲンジボタルが舞うのである。
 空港から走ること2時間半。訪れたのは、四万十市にある勝間沈下橋。橋の長さはおよそ150m。四万十川は、川岸も含めると川幅が約300m、流れの幅だけでも約120mもある。こんな大きな川で、果たしてゲンジボタルが飛ぶのであろうか?
 日の入りは19時過ぎ。川辺で待機していると19時半に対岸の川岸でゲンジボタルが発光を始めた。驚くことに、向こうからこちらへ幅100m以上もある川の上をかなり早いスピードで飛んでくるオスがいるのである。全体的には対岸の茂みがある川岸近くを多く飛翔しているが、数頭は沈下橋の真ん中あたりで橋の上下を飛んでいた。関東では有り得ない光景である。四国最長の流れを誇る雄大な清流にゲンジボタルが飛び交う様子は圧巻で、これほどのスケールは全国的にもあまり例がないだろう。ちなみに、ホタルを鑑賞する風情あるホタル船は、コロナの影響で休業であった。
 一週間ほど気温の低い日が続いたことにより、まだ発生初期の段階で大乱舞ではなかったが、たいへん貴重な光景を観察し撮影することができた。

 次の記事では「宿毛のゲンジボタル」を記載するが、今回の遠征では四万十のトンボ公園にも立ち寄っており、そこで出会ったトンボとチョウも後日掲載したいと思う。また、本記事では、トンボ公園にて撮影したホタル科ミナミボタル属のカタモンミナミボタル Drilaster axillaris Kiesenwetter, 1879 とホタル科オバボタル属のオバボタル Lucidina accensa Gorham, 1883 も掲載しておきたい。目的に中にはマドボタル属のオオマドボタルPyrocoelia discicollis (Kiesenwetter, 1874)もあったが、まだ発生時期には早かったようで、残念ながら出会うことができなかった。

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勝間沈下橋の写真

勝間沈下橋
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F5.0 1/5秒 ISO 800 -1 1/3EV(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22 19:24)

沈下橋とホタルの写真

沈下橋とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / バルブ撮影 F2.8 20分相当の多重露光 ISO 640(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

四万十川とホタルの写真

四万十川とホタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 7分相当の多重露光 ISO 800(撮影地:高知県四万十市 2020.5.22)

カタモンミナミボタルの写真

カタモンミナミボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 1000(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:33)

オバボタルの写真

オバボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200(撮影地:高知県四万十市 2020.5.23 7:36)

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東京で舞う西日本型ゲンジボタル

2020-05-17 21:40:40 | ゲンジボタル

 今年もホタルが舞う季節がやってきた。すでに九州や四国ではゲンジボタルやヒメボタルが飛び始めており、関東でも神奈川県の一部で発生しているが、関東での最盛期を前に本記事を掲載しておきたい。

 ゲンジボタル Luciola cruciata Motschulsky, 1854 は、遺伝子の違いから6つのグループに分けられるが、フォッサマグナを境に西と東に分布する本種には、オスの集団同期明滅時の発光間隔に大きな相違が認められる。それは気温でも変化するが、おおむね20℃では西日本が2秒、東日本が4秒と言われている。また飛翔にも大きな違いがあり、東日本のゲンジボタルは、かなりゆったりと飛ぶという特徴がある。また、長崎大学の研究により五島列島のゲンジボタルは、発光間隔が「1秒に1回」で、全国で最も速く点滅することが最近明らかにされている。これらの相違は遺伝子型の相違による。
 東京の多摩地域では、公園ではない自然の河川や里山でゲンジボタルを見ることができるが、実は、その多くが西日本型の遺伝子を持つゲンジボタルである。それは、ゲンジボタルを増やそうと人為的に 持ち込まれたことによる。ただし、ゲンジボタルの遺伝子型の相違が明らかになったのは20年ほど前のことである。それ以前に、見た目にはまったく同じゲンジボタルに遺伝子型に違いがあり、発光にも違いがあることなど分かるはずもなく、人為的放流は無理もない。
 本来、分布域には生物地理学上生じた「地域固有性」がある。もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われたりする「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 ホタルの遺伝学的汚染や遺伝子攪乱は、東京都内だけでなく既に全国的に広がっている。他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響がない場合もあるが、元来、ゲンジボタルの生息北限は青森県だが、現在ではブラキストン線(本州と北海道の間に引かれた生物分布境界線)を越えて北海道にも人為的に持ち込まれている。長野県の上高地に人為的に持ち込まれ定着したゲンジボタルは、環境省によって外来種として駆除されたこともある。見た目には何も変わることのないホタルであり、繁殖して増えれば嬉しいものだが、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。五島列島に他地域の個体を放せば、発光間隔が「1秒に1回」という特徴は失われてしまう。安易な人為的移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知らなければならない。
 すでに他地域のゲンジボタルが定着した所では、ホタルに罪はなく、上高地のような理由がなければ駆除する必要はないが、今後は、遺伝子型を踏まえた保護・保全、再生活動をお願いしたい。

 ゲンジボタルの発光の違いや飛び方の違いは、肉眼で見ると明確に区別することは難しいが、長時間露光(多重露光)による写真では、その違いが顕著に表れる。
 以下に掲載した写真3~5は、東京都内におけるゲンジボタルの自然発生地で撮影したもので、写真6及び7は、千葉県の自然発生地で撮影したものである。写真2及び3の生息地は、かつて西日本のゲンジボタルを放流したことが明白であり、遺伝子解析からも西日本型であることが分かっており、写真4及び5は、東日本型であることが分かっている。2つの地域を比較すると、光跡の違いがよく分かる。ちなみに、五島列島の写真はこちら「メクル第453号 全国で最も速く点滅する!?「五島列島型」ホタル

 ゲンジボタルの発生は、千葉県は今週末から6月中旬まで、東京では6月中旬から7月上旬頃が発生時期であるが、昨年の台風15号と台風19号による豪雨で河川が氾濫しており、そのため多くの幼虫が流された可能性がある。従って今年のゲンジボタルの発生は、かなり少ないかもしれない。
 また、新型コロナウイルスの影響で「ホタル祭り」等のイベントは中止になっている地区が多い。ホタル観賞やインスタ映えするからという撮影目的だけで生息地に来る方々の中には、ホタルの生態を知らず、自身の目的達成のためにホタルを滅ぼす行為をする方々がとても多いので、保全の観点からも良いだろう。また、遺伝子型など考慮せずに、ホタルを単なる見世物、客寄せパンダ同様の商品として養殖する業者、自然発生地から乱獲してホテル等に販売している業者にとっては、ホタル関連のイベントが中止なれば商売が成り立たなくなるが、私としては、こんなに嬉しいことはない。これを機に永遠に止めて頂きたい。
 個人的にホタルの観察や撮影、観賞に行かれる場合は、ホタルの生態を十分に学んだ上で、新型コロナウイルス感染拡大防止のための対策を十分に行って頂きたいと思う。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 9秒 ISO 1600(撮影地:東京都 2012.6.19 19:45)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 2秒 ISO 400(撮影地:東京都 2011.6.11 21:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 16秒 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.21 20:58)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F2.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 20:50)

ゲンジボタルの飛翔写真

西日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.8 180秒分の多重 ISO 200(撮影地:東京都 2011.6.25 21:13)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 12分相当の多重 ISO 200(撮影地:千葉県 2019.5.31)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 640 5分相当の多重(撮影地:千葉県  2019.6.08)

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ベニシジミ(白化型、黒化型、青紋型)

2020-05-16 17:36:48 | チョウ/シジミチョウ科

 ベニシジミは、あまりに普通に見られるため、これまでの主目的としては撮影してこなかったが、この10年間で撮影した本種の撮影データを見直してみると、ベニシジミの白化型と黒化型を撮っていたので紹介しておきたいと思う。
 ベニシジミ Lycaena phlaeas chinensis (C. Felder, 1862) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ベニシジミ属(Genus Lycaena)で、日当りのよい草原などに普通にみられる赤色系のシジミチョウである。年に3~5回ほど、春から秋にかけて発生する。春と秋に発生する低温期型は赤橙色の部分が鮮やかで、夏に発生する高温期型(夏型)は黒褐色部分が太くなる特徴があるが、低温期型には赤橙色の部分が白化する個体がおり、高温期型には赤橙色の部分が黒化する個体の存在が知られている。また、低温期型のメスの一部には、後翅表の外縁に青色の紋列が出現する個体がおり、caeruleopunctata という形質として知られている。
 季節型の相違では、高温期型後翅の赤橙色の部分は、低温期型のそれと比べると尾状突起のような形になっており、秋に発生する低温期型にも同じ形の個体が見られる。

 5月14日に39の県で緊急事態宣言が解除されたが、私の住む東京は、引き続き外出自粛が要請されたままである。当ブログ5/6の記事(ライフスタイルの形態と基本事項)では、基本事項を遵守しながら活動を5月16日(土)から再開すると記載したが、本日16日は雨。明日は晴れの予報で行きたい場所があるが、都県をまたぐ遠征になるので、今年は我慢することにした。というより、今週11日~15日までの会社業務が激務で疲労困憊。次週末の遠征のために休養日としたい。

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ベニシジミ(白化型)の写真

ベニシジミ(白化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 -2/3EV(撮影日:2015.4.18)

ベニシジミ(黒化型)の写真

ベニシジミ(黒化型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影日:2011.8.06)

ベニシジミ(青紋型)の写真

ベニシジミ(青紋型 caeruleopunctata)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640 +1EV(撮影地:栃木玄真岡市 2021.4.03 11:02)

ベニシジミ(黒化傾向の個体)の写真

ベニシジミ(黒化傾向の個体)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影日:2011.8.06)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(低温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200 +1/3EV(撮影日:2024.4.20)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(低温期型/青紋型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 200(撮影日:2012.4.21)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(低温期型/青紋型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/320秒 ISO 200 +2/3EV(撮影日:2011.4.02)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(低温期型/青紋型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 800(撮影日:2012.6.02)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(高温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影日:2010.10.02)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(高温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/800秒 ISO 200(撮影日:2011.8.06)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(低温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200V(撮影日:2011.10.16)

ベニシジミの写真

ベニシジミ(高温期型)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 200 +2/3EV(撮影日:2018.9.15)

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心如水

2020-05-10 19:50:02 | 風景写真

 まだ、霧が晴れない。社会全体の見通しもそうだが、心の中にわだかまりがあって、さっぱりしない。いつ希望の光が差してくるのだろうか?

 「心如水」(心は水のごとく)という言葉がある。これは「水は四角い器だと四角に収まり、丸い器だと丸く収まる。形だけでなく、川に流れる水は浅瀬をさらさらと流れ淵はゆったりと流れる。色が付く事もあるが、水の性質は変わらない。心もそうである。」という意味らしい。
 水は、沸騰することもあれば氷にもなる。生命の源であるが、濁流となって大切なものを破壊することさえある。人の心も同じである。イライラしたり、怒ったり怒鳴ったり・・・ブログにて、誤解を生む記述とともに私個人を中傷し、脅迫とさえ受け取れる記事が掲載されれば、表面上は冷静に対処しても、心の中は煮えたぎる。記事がサーバーから削除されなければ沸点に達するだろう。
 人の心は複雑なものである。感じ方、感想、視点は人によってまったく異なる。私もその日の気分によって違うことを考える。「心如水」。こんな時だからこそ、心に沁みる言葉である。

 緊急事態宣言が発令されての外出自粛要請。私の住む東京都は解除されていないので、この土日も結局ずっと家の中で過ごした。前記事にて、基本事項を遵守しながら 5月16日から自粛要請対象外である活動を再開させると述べたが、それも天候次第。要請は「お願い」で法的強制力がないのは承知の通りだが、国と東京都(神奈川県や千葉県、埼玉県)からの根拠ある「お願い」である。3密ではなくても、都県をまたぐ移動は要請を無視することになるので、当然のことながら、道義的責任から都県をまたぐ移動は緊急事態宣言発令後はしていないが、今のところ、次の土日も外出自粛になりそうである。
 写真撮影は、4月1日にゲンジボタルの幼虫上陸を撮ってからは、4月19日に庭で梅の実を撮ったのみ。この土日は、HDに保存しているRAWデータを10年前から1つずつ見ながら選んで現像することに費やした。今回は、その中から本ブログ未掲載のもの5枚を選んで掲載した。
 明日からは、また朝5時半に出勤である。皆さんの生活を支えるために頑張りたいと思う。

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朝霧の写真

朝霧
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/125秒 ISO 800(撮影地:静岡県 2010.7.03)

水に映る光景の写真

水に映る光景
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 1250(撮影地:東京都 2010.9.26)

森の中の光芒の写真

森の中の光芒
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:栃木県 2014.7.26)

せせらぎの写真

せせらぎ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 1秒 ISO 100(撮影地:青森県/奥入瀬渓流 2010.7.18)

せせらぎの写真

せせらぎ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F11 1秒 ISO 100(撮影地:青森県/奥入瀬渓流 2010.7.18)

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ライフスタイルの形態と基本事項

2020-05-06 16:49:10 | その他

 5月4日、政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が終息状況にないとして、本日6日に期限を迎える「緊急事態宣言」を今月31日まで延長すると発表した。
 「基本的対処方針」では、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められる時は、期間内であっても速やかに解除するとしているが、東京や大阪など13の「特定警戒都道府県」では、これまでと同様の行動制限が求められ、引き続き、医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など以外は外出自粛を要請し、「接触機会の8割削減」の目標を掲げている。それ以外の県では、「3つの密」を避け、手洗いや人と人の距離の確保といった基本的な対策の継続など「新しい生活様式」を徹底することを前提に、制限の一部を緩和するとしている。

 「緊急事態宣言」の延長が与える影響は大きい。昨日は「こどもの日」であったが、鯉のぼりをほとんどみかけない寂しい日であった。学校は3月初めから休校で、自治体によっては更に延長で5月末までに。子供達はストレスとの闘いがまだ続く。親御さんも大変な日々を過ごしておられ、さぞご心労のことと拝察申し上げたい。
 店舗や企業の経営者も困惑している。休業要請に従っても行政からの支援策は十分でなく、やむなく経営を継続する店舗には「自粛警察」と呼ばれる嫌がらせや中傷が多発するなど、周囲のから自粛圧力に悩まされている。私が以前、経営コンサルタントとして指導していた頃にクライアントであった企業は、法人破産の手続きを行ったところもあると聞いた。経営が成り立たない状況で緊急事態宣言の延長が報じられ倒産や自殺が増えてきているのは、「目の前の厳しい現実」である。
 経営者だけではなく、当然働く人々にも影響が大きい。派遣切り、雇い止め、内定取り消、自宅待機・・・収入減どころか、まったく収入がなくなってしまった方々も大勢いる中での延長。国からの給付金もいつ貰えるかも分からない。明日の生活に困っている方々がたくさんいる。一方、様々な苦労はあっても給料が減ることなく在宅で勤務している方々もいる。私の妹は、外資系の企業に勤めるカリフォルニア州公認の会計士だが、3月からずっと実家でテレワークであり一度も出社していないと言う。同居する高齢の親を守ってくれていることに感謝したい。他の方々を含めて在宅勤務は、今後定着していくのではないかと思う。
 私の本業は会社員である。一昨年の暮れに癌の手術をしていることから、感染すると重篤化する危険性があるとして、会社からの指示で4月1日から自宅待機になった。1日と4日は少々外出したが、それ以外の日はすべて犬の散歩とコンビニへの買い物だけに留め、このゴールデンウイークも STAY HOME を守り通した。新宿の動物病院に勤める長女と地元スーパーに努める長男は通常勤務で、私も心配しながらの毎日。霞が関の東京第二弁護士会に努める家内は、緊急事態宣言が出されてからは自宅待機になり、共に自宅で過ごした。夫婦がこれだけ長い時間一緒にいたことは、結婚29年で初めてかもしれない。一人より二人。二人より大勢。日本人は、他人がどうしようと自分は自分だという欧米人と違い、「一般的に他の人と同じ行動をとっていれば安心する」傾向がある。行動経済学における「バンドワゴン効果」とか「同調効果」等と呼ばれる心理現象だが、大勢が外出自粛をしていることに不安も和らいだ。
 しかしながら私は、4月27日からは出勤要請があり、自宅から40km先の都内に出勤し通常業務に当たっている。デスクワークではないから、毎日一日中外である。40~50ほどのオフィスビルに出入りする。時にはコロナ患者が入院している病院にも行かねばならない。「密閉」「密接」「接触」が避けられず感染リスクが医療従事者に次いで高い職種と言われているが、社会的インフラとしての仕事をこなして、人々の生活を支えなければならない。私が自宅待機している間も懸命に仕事をしていた仲間がおり、他にも大勢頑張って仕事をしている方々がいる。医療従事者も含めて大勢の方々に敬意を表しながら、私自身もまた7日から仕事に行く。

 「緊急事態宣言」の延長は予想されてはいたものの、やはり6日での解除を願っていた人々は少なくないと思う。延長の発表とともに落胆があっただろう。それは「ストックデールの逆説」に似ている。
 ストックデールとは、ベトナム戦争時捕虜として8年を過ごしたアメリカの元軍人のことである。彼は生き残ったが、誤った楽観主義にしがみついていた捕虜たちは生き残れなかったという。捕虜たちは 「クリスマスまでに解放される」と言って、クリスマスが来て去っていった。すると「イースターまでには解放される」と言っていた。イースターも過ぎていった。次はサンクスギビング、そしてまたクリスマス。彼らは失意で亡くなっていったという。自分が生き延びられたのは、揺らがぬ将来への希望を、確固たる現実主義と組み合わせることができた能力のお陰だと言い、今日では「ストックデールの逆説」と呼ばれている。
 もし、6日で「緊急事態宣言」解除されると信じていたなら、また解除後は以前と変わらない社会に戻れると信じていたなら、それは解放されると信じ続けた捕虜たちと同じで、延長とともに失望へつながる。「最後にはかならず勝つという確信を持ちながら、同時に自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視すること」が重要であり、現実の直視から生まれた活力は、楽観視から生まれたそれよりもずっと長く続くというから、目の前の厳しい現実から目をそらさず、頑張るしかないのだろう。

 とは言っても、新型コロナウイルスとの闘いは長期化することが確かであり、既に封じ込めることは困難だと専門家は言う。どんなに手を洗おうと、表面を除菌しようと、どれだけ自宅に籠っていたとしても、感染して死ぬ可能性はなくならないとも言っている。集団免疫率に到達すれば終息するが、新型コロナウイルスの基本再生産数(染した1人が何人に直接感染させるかという人数)は 1.4~2.5 と試算されているから、日本人の 29~60% が感染すれば終息に至ると理論上は考えられている。つまり、最低でもおよそ3,600万人が感染し、100万人が死ぬことになる計算だ。それを防ぐのは「ワクチン」しかない。今後は、ワクチンが開発されるまで、医療崩壊を防ぎながら高齢者や基礎疾患のある人たちを守っていくことが重要であり、その後はインフルエンザ同様に新型コロナウイルスとの「共生」となっていくだろう。
 国と自治体には、十二分な対策を早急に講じてもらいたい。そして、我々は、各自に委ねられた「やるべきこと」をやらねばならない。

 私の住む東京都は特定警戒地区であるから、これまで同様の自粛が求められるが、仕事をする以上、今後はこれまでと同じじっと耐え忍ぶ「自粛=我慢」はできない。そもそも自粛要請という「お願い」を強制すれば、営業の自由を法律の根拠なく不当に制限するものであり憲法違反になる。個人的に緊急事態を解除し要請を完全に無視して出歩いても法的には許されているが、倫理的・道義的にできない。そうかといってパラダイムシフトも不可能である。従って、政府に忖度してしまっている専門家会議が、制限が緩和された県に提言した「新しい生活様式」を参考にしつつ、実情に合わせた自分なりの「ライフスタイルの形態」を構築し、感染拡大防止を大前提とした具体的な基本事項を自ら決めて遵守していくのが良いと考える。
 平日については、ここで明言することは止めておくが、私にとって会社業務同様に重要な「ホタル」に関して記しておきたい。ホタルの研究および保全指導はライフワークであり、NPO等団体役員でもある。また早急な自然保全・再生も必要なことから、それに関連するすべての活動(越境を含む観察・撮影・指導等)は自粛要請対象外の事業と位置づけ、基本事項を遵守しながら活動を5月16日(土)から再開するが、既に予約済の案件や5月下旬に予定している遠征を除き、私が休日に行う全ての活動は「緊急事態宣言」が解除されても今年1年は「3つの密」を避けるために、私的なものも含めて、例外なくパートナーを一切伴わない単独で行うこととしたい。

掲載写真は本文とは関連性のない、過去に撮影したものです。尚、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

浄連の滝の写真

浄連の滝
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F13 0.5秒 ISO 100 -1EV(撮影地:静岡県伊豆市湯ヶ島 2012.1.02)

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お詫び

2020-05-03 16:38:09 | その他

 国の緊急事態宣言を受けた各自治体の措置に反し、社会通念上も不適切と個人的に思った不特定多数に対し、当ブログ及びFacebookで差別的な発言、感情的・暴力的な言い回しで投稿した事により不快な思いをされた方に対し、謝罪をしたい。
 今般の不特定多数への批判は、根拠があるもので、決して個人を傷つける悪意がある誹謗中傷ではないものだが、誤解を生む内容も含んだため私自身反省をしている。長期にわたる自宅待機とその後の仕事復帰から受けた過度のストレス、友人の訃報等の心の痛みを払拭するための感情のはけ口に、SNSを利用した事実は否めない。心よりお詫び申し上げたい。
 尚、不特定多数ではなく特定の個人に対する批判をネット上に公開し、社会的評価を下げる記述を含み名誉毀損と受け取られる可能性がある内容であれば、侮辱罪や名誉毀損罪が成立する場合がある。個人名を出さなくても、その人物が想像され噂が拡散されてしまうと、想像できないくらい大きな範囲に影響が及ぶ。そうなれば刑事罰の他、精神的損害の慰謝料を払う民事責任も負うことになる。かつて、写真の著作権侵害で個人を刑事告訴したこともあるが、個人の発言に対する批判も十分に注意しなければならない。
 2015年に「白樺湖の霧氷」を撮影し投稿した記事に「撮影を終えて、車に戻って帰る支度をしていると、4台の他県ナンバーの車がやってきて、写真を撮り始めた。白樺湖の霧氷に歓喜の声を上げながら、高級なデジタル一眼レフで手持ち撮影。」という一文を入れた。するとご丁寧にコメントを頂いた。「多分後から来た県外ナンバーというのは私達の事かと思います。白樺湖に私が到着した頃はすっかり陽が上がっていたため、シャッタースピードも十分にとれると判断して手持ちで撮影しました。人それぞれの撮影スタイルがあると思います。他の人がどのような写真を撮っているのかも知らずに、あまり他人を馬鹿にするような事をブログに書かれない方がよろしいかと思います。」
 誹謗中傷ではない憲法上保障されている表現の自由の範囲の一文に対し、反論することで足りたようだが、人々の考え方、意味の捉え方は様々であり、配慮が必要だ。

 亡くなった友人にお線香をあげ合掌し、冷静さを取り戻したので、今後は個人は勿論の事、不特定多数への批判は一切しないが、ここで一つだけ考えておきたい。「自己責任」についてである。
 自粛要請が続く中、企業や店舗の経営者は休業要請も重なり、大きな痛手を受けている。倒産するケースも今後増えるかもしれない。そんな中、仮に要請を無視して感染者を出した場合は、感染拡大が懸念されるという予見が可能であることから「回避すべき義務を怠った」事で過失が認められ、民事上の責任を負う事になる。休業要請がない業種においても同様だ。
 では要請を無視して感染した個人の責任はどうなのか?責任とは、行為自体や行為の結果に関して法的または道徳的に対処する義務の事であり、自己責任とは、自分の行動には自分に責任があり、自身の行動による過失の場合にのみ自身が責任を負うことである。
 例えば、立ち入り禁止にも関わらず侵入して釣りをする人々、休業要請を無視して営業するパチンコ店に入り浸る人々。これら人々の行動は自己責任であるとか、感染しても自己責任であると言われるが、果たして最悪の結果に対して自身が責任を負う事ができるのであろうか?
 ちなみに車で人身事故を起こした場合は、業務上過失が明確であり、3つの責任が問われ負う事になる。免停等の行政責任、罰金懲役等の刑事責任、相手への保障等の民事責任である。自動車の運転は自己責任であり、事故を起こさないように安全運転しなければならない。私は今から30年ほど前に苦い経験をしている。六か月の免許停止処分、略式裁判で30万円の罰金刑、民事は保険会社に助けて頂いた。それ以来、毎日運転しているが、事故は起こしていない。
 では、自身の過失で新型コロナウイルスに感染した場合の責任は何なのだろうか?感染すれば、他人にも移すかもしれない。知らずに殺人者になる場合もある。感染した本人は、献身的に治療してくれる 医療関係者のお世話になる。自分のために医療崩壊し、重傷患者が入院できないかもしれない。ホテル隔離の軽症の場合でも、多額の税金が使われる。偏見等の社会的制裁を受けるかもしれないが、責任は問われない。つまり「無責任」なのである。
 国や自治体からの要請は「お願い」であるから、最終的な判断は、各個人に委ねられている。法的責任はないが、道義的責任を感じ、各々が行動しなければならないと思う。

 このGWは、とても静かだ。とても多くの方々が我慢しているのだと実感する。これだけ皆が頑張っているので、きっと良い結果が出るものと信じたい。後は薬が開発されて、インフルエンザ同様に付き合って行けば良いのではないだろうか。
 私も、外出自粛には我慢の限界がある。仕事以外で家に閉じこもっているのは嫌だ。3密どころか人のいない野山で写真を撮るのは、医学的にも安全だと思う。移動も車なら大丈夫だと思われるが、平日は都内で仕事をしている以上、その業務内容からすでに感染しており、無症状の保菌者である可能性もあるから、人に感染させてしまうかも知れない。従って、道義的責任を感じ、友人、知人、家族の為に、GWは外出自粛する。

 あるプロの写真家の方が「過去の風景写真も掲載すると、行きたくなってしまう人がいるので出さないで欲しい」と仰っていたが、私の写真を楽しみにして下さっている方々もいらっしゃるので、家で撮った1枚を添えておきたいと思う。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

タンポポの綿毛写真

タンポポの綿毛
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 640 +2/3EV

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