ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

冨嶽十景 星景編

2021-09-27 22:03:43 | 風景写真/星

 富嶽とは富士山の異称で、葛飾北斎が富士を描いた浮世絵(富士図版画集)「冨嶽三十六景」「富嶽百景」は有名である。現在では、「絵」はもとより「写真」で富士山を表現する方々がプロ・アマ問わずとても多い。素人の私も、駄作ばかりではあるが、富士山の写真を何枚かは撮っており、本ブログにて「富士10景」や「富嶽十景」という記事でまとめてある。今回は「冨嶽十景 星景編」と題して、富士山と星空を撮ったものばかりを集めてみた。ちなみに星景(星景写真)とは、星空と風景を一緒に撮った写真のことである。星空だけを写した写真は、星野(せいや)写真、星を写した写真は天体写真と呼び区別している。

 私は「美しいものを 一番美しい瞬間に 美しく残す」ことを目指して、ホタルをはじめチョウやトンボ等の昆虫、そして自然風景の写真を撮っている。例えば「美しいチョウが、翅の擦れていない羽化したばかりの時期に翅を全開にしている」そういった場面を撮って残そうと思った時、美しく残す作業よりも、美しい種に出会うことに苦労し、一番美しい瞬間に出会う事は更に難しい。
 自然風景写真では、「美しいもの」や「一番美しい瞬間」は個人の感性によって異なり、撮った側が作品として提案することもできるが、有名な撮影地における定番と言われる光景を撮るには、季節や天候・時間などのタイミング以上に運を味方に付けなければ叶わないことが多い。「富士山」も有名な撮影地の1つに挙げられる。週末カメラマンが真っ赤な朝焼けや傘雲等とのコラボを撮るには、やはり運が良さが必要だ。以前のブログ記事で書いたが、運と偶然は異質なものだ。宝くじに当選するのは「運」ではなく「偶然」であり、意志の力ではどうにもならない。一方、運は意志の力で引き寄せることが出来る。昔から「運も実力のうち」とよく言う。運の無さや悪さは結果論であり、失敗には何らかの理由がある。学ぶべきことは学び、事前の準備を怠らず、努力と継続が必要である。
 富士山と星空は、どちらも美しい。時期と天候、時間というタイミングを見計らって現地に行けば、運の力で「一番美しい瞬間」を捉えることはそれ程難しくはない。(流星を一緒に写すことは、偶然の奇跡である)しかしながら、撮影結果を「美しく残す(表現する)」ことは簡単ではなく、私の今の大きな課題となっている。

 星景写真は、星の色再現とノイズとの闘いである。低感度で長時間露光が望ましいが、時間と共に動く星を止めて写すには、赤道儀を使わない星景写真では20秒~30秒の露光時間でなければならない。レンズの開放値によっては、ISO感度を上げる必要があるが、感度を上げればノイズが出てしまう。高感度に強い4Kや8Kの高価な最新のカメラにF1.8の明るい単焦点の超広角レンズを付けて撮影したり、カメラをHKIR改造すれば、より良い表現ができるが、今のところ、所持するカメラとレンズで試行錯誤している。
 本記事では、これまでに撮影した中から「富士と星空」をすべて再現像し直して10点を選び、冨嶽十景 星景編として掲載してみた。Dxo pureRAW というソフトでRAWデータを最適化した後、LightroomでRAW現像し、最後は解像度を2倍にする処理を施してjpegで出力した。星景写真を専門に撮られている方々の足元にも及ばない駄作ばかりであるが、今後も「美しいものを 一番美しい瞬間に 美しく残す」ことを目指して挑戦していきたい。

HKIR改造とは
色調整フィルターを取り除くと撮像センサーに入射する光がカットされなくなるため有効感度が上昇し、特に赤く輝く散光星雲などから放たれるスペクトル領域(Hα)付近の感度が大幅にレベルアップするため、比較的短時間の露出でも色彩豊かな美しい写真が撮れるようになる。改造費用は、機種で違うが、およそ33,000円。https://www.hayatacamera.co.jp/astrophotography/

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

富士山と星空の写真
富士山と天の川(本栖湖)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1250(撮影地:山梨県身延町 2018.3.17 3:19)
富士山と星空の写真
逆さ富士と星の水鏡(山中湖)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F3.5 15秒 ISO 3200(撮影地:山梨県山中湖村 2021.2.07 0:16)
富士山と星空の写真
富士山と星空(山中湖パノラマ台)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / 絞り優先AE F3.5 19秒 ISO 3200(撮影地:山梨県山中湖村 2021.2.06 23:19)
富士山と星空の写真
富士山と星空(精進湖)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F3.5 3.2秒 ISO 2500(撮影地:山梨県富士河口湖町 2021.2.06 19:19)
富士山と星空の写真
富士山と星空(西湖)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:山梨県富士河口湖町 2020.1.04 1:01)
富士山と星空の写真
富士山と星空(水ヶ塚)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1000(撮影地:静岡県裾野市 2018.1.13 22:30)
富士山と星空の写真
富士山と天の川(梨ヶ原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:山梨県山中湖村 2019.8.11 2:24)
富士山と星空の写真
富士山と天の川(梨ヶ原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:山梨県山中湖村 2021.7.18 0:10)
富士山と星空の写真
富士山と天の川(富士ヶ嶺)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1250(撮影地:山梨県富士河口湖町 2020.2.24 4:38)
富士山と天の川アーチの写真
富士山と天の川アーチ(朝霧高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F3.2 20秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:静岡県富士宮市 2021.2.20 4:53)

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ルリボシヤンマ属の青色型メス(オス型メス)

2021-09-26 11:08:40 | トンボ/ヤンマ科

 ルリボシヤンマ属(Genus Luehdorfia)は、国内に以下の4種が生息しており、これら4種のメスには、青色型メス(オス型メス)が存在する。ここでは北海道にのみ生息するイイジマルリボシヤンマ(未撮影)を除く3種の青色型メス(オス型メス)について、これまでに撮影した写真からを選別してまとめてみた。

  1. マダラヤンマ Aeshna mixta soneharai Asahina, 1988
  2. オオルリボシヤンマ Aeshna crenata Hagen, 1856
  3. ルリボシヤンマ Aeshna juncea juncea (Linnaeus, 1758)
  4. イイジマルリボシヤンマ Aeshna subarctica subarctica Walker, 1908

 マダラヤンマおよびオオルリボシヤンマの青色型メス(オス型メス)は、一部を除いては比較的多く存在するが、ルリボシヤンマに関しては、ほとんどのメスが緑色型であり、青色型メスは北海道および本州中部山岳地帯等において、極めて稀に見られる程度である。
 ルリボシヤンマは、オスにおいてもオオルリボシヤンマに比べて青色の部分は少なく、複眼と腹部の1節後半と2節前半及び6(または7)~8節の斑紋のみが青色で、他の斑紋は黄色であるが、高標高の寒冷地では、胸部の翅の付け根と腹部の斑紋全部が青色になる個体が少ないが存在する。(参照:ルリボシヤンマ 青色型オス
 ルリボシヤンマの青色型は、雌雄ともに一部の寒冷地だけに稀に見られることから、青色の出現(変異)は、後代に遺伝しない環境要因によってのみ生ずる環境変異なのかもしれない。これまで長野県の標高1,450mの湿地及び岐阜県の標高1,400mの湿地で撮影しているが、更に青い個体を求めて今後も探索を続けたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

マダラヤンマ(青色型メス)の写真
マダラヤンマの青色型メス(オス型メス) / 下がメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地:長野県 2016.9.10 8:49)
マダラヤンマ(青色型メス)の写真
マダラヤンマの青色型メス(オス型メス) / 下がメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:長野県 2019.9.22 9:32)
マダラヤンマの写真
マダラヤンマの緑色型メス(ノーマルタイプ) / 下がメス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F4.5 1/250秒 ISO 2000 -2/3EV(撮影地:栃木県 2010.10.11 9:56)
オオルリボシヤンマ(青色型メス)の写真
オオルリボシヤンマの青色型メス(オス型メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1 2/3EV(撮影地:新潟県 2018.9.22 13:47)
オオルリボシヤンマの写真
オオルリボシヤンマの緑色型メス(ノーマルタイプ)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2018.9.22 11:39)
ルリボシヤンマ(青色型メス)の写真
ルリボシヤンマの青色型メス(オス型メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 2000(撮影地:長野県 2020.8.29 9:50)
ルリボシヤンマ(青色型メス)の写真
ルリボシヤンマの青色型メス(オス型メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F5.6 1/2000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.8.29 8:07)
ルリボシヤンマ(青色型メス)の写真
ルリボシヤンマの青色型メス(オス型メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/40秒 ISO 400 -1 1/3EV(撮影地:岐阜県 2019.9.14 9:28)
ルリボシヤンマの写真
ルリボシヤンマの緑色型メス(ノーマルタイプ)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 400 -1EV(撮影地:長野県 2021.9.19 6:55)

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大山千枚田(初秋)

2021-09-24 18:42:58 | 風景写真/秋

 大山千枚田は、千葉県鴨川市にある棚田で農林水産省選定の「日本の棚田百選」に選ばれている。375枚の水田が階段状に並んだ光景は、将に日本の原風景であり、千葉県指定文化財にもなっている。特定非営利活動法人大山千枚田保存会が管理し景観の保全を行っている。

 シルバーウイーク後半は4連休。23日の祭日は混雑が予想されるのと、腰痛がひどく自宅で自粛。RAWデータを最適化するソフト(Dxo pureRAW)で、過去に撮影した星景写真を色々と現像し直して、ブログ記事に掲載済みの写真を7割ほど差し替える作業で終了。土日は愛車が車検で身動きがとれないため、平日の金曜日に遠征を決定。痛い腰を騙しつつ午前3時に自宅を出発し、アクアライン経由で千葉県入り。2時間弱で現地に到着した。
 大山千枚田には、過去に何度も訪れており、様々な昆虫や両生類、風景では天の川と日の出の光景を撮っている。主目的は棚田の風景撮影ではなかったが、畔のあちらこちらに曼珠沙華が咲いており、この光景は初。すで三脚を立ててスタンバイしているカメラマンが数人。5時29分の日の出を待っているようだ。こちらもカメラをセットし、周囲をぶらぶらと歩きながら、初秋を感じるようなカットを数枚記録した。
 大山千枚田は、私有地であるために畔に立ち入ることはできない。撮影許可(有料)を申し込めば良いようだが、許可がなければ車道から撮るしかない。ドローンも禁止されている。私を含め皆ルールを守って撮影していたが、ルールを守れない人間もいる。
 袖ヶ浦ナンバーの乗用車が、中腹にある展望スペースの脇に路上駐車すると、初老の男性が2名降りてきた。棚田を眺めるのかと思いきや、二人そろって棚田へ放尿である。済ませると、そのまま走り去っていった。ここには、駐車場が二カ所あり、トイレも二か所ある。にも関わらずである。ルールやマナー以前に人間性を疑う。

 シルバーウイーク前半に遠征した信州で撮影したトンボの写真やそれにまつわるトンボの話、そして現像し直した星空の写真(富士山と星空でまとめた)でブログ記事を投稿できるのだが、今はちょうどお彼岸(彼岸入り9月20日・中日(秋分の日)9月23日・彼岸明け9月26日)でもあるので、曼珠沙華(彼岸花)を主体とした光景を掲載した。
 曼珠沙華は、自宅から1時間ほどの埼玉県飯能市にある巾着田の群生が有名で、何度か訪れているが、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、曼殊沙華を開花前にすべて刈り込むという対策が講じられている。残念ではあるが、今回は、曼殊沙華を初秋の里山の光景として目に焼き付けたいと思う。
 また、現地では嬉しいことにモンキアゲハ、ナガサキアゲハ、クロアゲハの3種が曼殊沙華で吸蜜をしていた。「絵」になる構図では撮れず、更には翅もボロボロではあったが、実はナガサキアゲハのメスを証拠程度以上に撮影するのは初であった。

参照:棚田と天の川大山千枚田の朝景

以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 5:45)

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 5:51)

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 800 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 5:49)

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 6:05)

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田にて
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/200秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 6:01)

初秋の大山千枚田の写真

初秋の大山千枚田にて
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 6:02)

モンキアゲハの写真

モンキアゲハ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 8:04)

ナガサキアゲハの写真

ナガサキアゲハ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1000 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 8:30)

クロアゲハの写真

クロアゲハ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:千葉県鴨川市 2021.9.24 8:34)

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オオルリボシヤンマ メスの体色変異

2021-09-22 17:26:57 | トンボ/ヤンマ科

 オオルリボシヤンマ Aeshna crenata Hagen, 1856のメスには、青色型(オス型メス)と緑色型(メス型メス)が存在することは前記事「オオルリボシヤンマの青色型メス(松本市)」で述べているが、青色型は緑色の基本形質に青色が出現する変異であり、こうした表現形質レベルの変異は一般的に遺伝的要因と環境要因の両方の作用によって生ずると言われている。遺伝子と形質の関係はきわめて多彩で複雑であり、それを解明するのはDNA解析のスペシャリストの方々に期待するとして、ここでは、青色型と緑色型の間に存在する様々な体色変異を写真で紹介したい。
 以下9枚の写真は、次の各部位に注目してご覧頂きたい。

  • 複眼、胸部翅の付け根、腹部斑紋、腹部体節の環状斑紋

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/40秒 ISO 3200(撮影地:兵庫県 2017.9.23 10:17)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 400(撮影地:兵庫県 2017.9.23 11:46)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:新潟県 2018.9.22 14:09)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 250 -2/3EV(撮影地:兵庫県 2017.9.23 10:51)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 320(撮影地:新潟県 2017.10.08 12:10)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 800 +2/3EV(撮影地:新潟県 2018.9.22 12:47)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 9:57)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマのメス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:長野県 2018.8.26 9:26)

オオルリボシヤンマのメスの写真

オオルリボシヤンマの緑色型メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地:長野県 2016.8.30 11:14)

オオルリボシヤンマの産卵

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オオルリボシヤンマの青色型メス(松本市)

2021-09-20 13:12:04 | トンボ/ヤンマ科

 オオルリボシヤンマの青色型メスを長野県松本市で撮影したので紹介したいと思う。

 9月7日にフィリピンの東で発生した台風14号は、17日(金)に福岡県に上陸(福岡県に台風が上陸するのは初)、翌18日午前3時には東海道沖で温帯低気圧に変わったが、前線や湿った空気の影響で各地で大雨を降らせた。この日は出勤日であり、朝から土砂降りの中でソーシャルワークを行った。
 仕事は昼過ぎには終了し、帰宅する頃には雨も小降りになった。雲に切れ間が見え始めた22時に自宅を出発し、今年8回目になる信州を目指した。目的はトンボ探索である。途中の道の駅で車中泊し、最初は標高1.618mにある池で探索。台風一過の素晴らしい秋晴れ。朝の気温は14℃ほどで、朝陽のぬくもりが心地良いくらいの肌寒さであった。
 池に太陽の光も差さない6時15分。1頭のルリボシヤンマのメスが飛んできた。その後6時50分には、繁茂するミツガシワの間で産卵を開始。20分ほど移動しながらあちらこちらで産卵を行っていた。9時頃まで待機したが、残念ながら目的の個体は現れず、標高1,450mの池に移動したところ、オオルリボシヤンマの青色型メスを発見した。

 オオルリボシヤンマのメスには、オスと同色の青色型(オス型メス)と緑色型(メス型メス)が存在し、10年ほど前からに日本各地で観察と撮影を続けてきた。青色型と緑色型は、地域によってその割合が異なっている。自身の観察では、兵庫県の六甲山(オオルリボシヤンマ(オス型メス/兵庫))では、メスの個体ほとんどが青色型であり、新潟県では混在し(オオルリボシヤンマの青メス)、東京都や福島県では緑色型しか確認していない。
 長野県松本市の標高1,450mにある池は、オオルリボシヤンマが多数生息しているが、これまで何度となく観察し撮影してきた中では、ほとんどすべてのメスが緑色型であった。しかし今回、完全な青色型メス(オス型メス)ではないが、複眼が緑色で、翅の付け根部分と腹部第一節の斑紋が青色であるメスを発見した。
 時期的に個体数が少なく、青色型メスは撮影した1頭のみであった。ちなみに、2018年8月26日には、複眼上部が青色のメスも撮影している。メスにおける青色の出現は表現形質レベルの変異であり、遺伝的要因と環境要因の両方の作用によって生ずるので、来年以降も継続観察していきたい。以下には、比較の意味でオオルリボシヤンマのオス、そして緑色型(メス型メス)の写真も掲載した。

 オオルボシリヤンマの青色型メスにおける青色の出現には、いくつかのパターンがある。これについては、次の記事にて写真を掲載したいと思う。また、青色型メス(オス型メス)はルリボシヤンマ属4種に存在するので、これについてはその次にまとめておきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

オオルリボシヤンマのオスの写真

オオルリボシヤンマのオス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 320(撮影地:長野県 2021.9.19 9:43)

オオルリボシヤンマのオスの写真

オオルリボシヤンマのオス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 320(撮影地:長野県 2021.9.19 9:43)

オオルリボシヤンマのオスの写真

オオルリボシヤンマのオス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 320(撮影地:長野県 2021.9.19 9:43)

オオルリボシヤンマの青色型メスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 9:56)

オオルリボシヤンマの青色型メスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 9:57)

オオルリボシヤンマの青色型メスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 10:39)

オオルリボシヤンマの青色型メスの写真

オオルリボシヤンマの青色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 10:39)

オオルリボシヤンマの緑色型メスの写真

オオルリボシヤンマの緑色型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 11:05)

オオルリボシヤンマの青眼型メスの写真

オオルリボシヤンマの青眼型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 500 +2/3EV(撮影地:長野県 2021.9.19 11:07)

オオルリボシヤンマの青眼型メスの写真

オオルリボシヤンマの青眼型メス
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:長野県 2018.8.26 9:26)

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ゴマダラチョウとアカボシゴマダラ

2021-09-16 20:43:49 | チョウ/タテハチョウ科

 ゴマダラチョウ Hestina persimilis (Westwood, [1850]) およびアカボシゴマダラ Hestina assimilis (Linnaeus, 1758)は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)コムラサキ亜科(Subfamily Apaturinae)ゴマダラチョウ属(Genus Hestina)で、ゴマダラチョウ属はこの2種である。コムラサキ亜科には他にコムラサキ Apatura metis Freyer, [1829] とオオムラサキ Sasakia charonda (Hewitson, [1863]) が属している。今回、同じエノキの木の下で吸水する両種を撮影した。尚、過去の撮影データを調べてみると、ゴマダラチョウは2010年8月にたったの1枚しか撮っておらず、今回が2度目の撮影であった。また、同じエノキに羽化不全の個体が1頭止まっていた。本種も季節型(春型・夏型・秋型)があるようなので、秋型であろう。

 ゴマダラチョウは、北海道の一部、本州、四国、九州のほぼ全域に分布し、地域ごとに成虫の大きさや斑紋、季節型などが分化している。食樹はニレ科のエノキであり、平地から山地の雑木林に生息している。クヌギ、コナラなどの樹液によく飛来し、オスは地表で吸水することも多い。
 アカボシゴマダラの基産地は、中国の広東である。和名通り後翅の外縁に赤の環状紋が並ぶのが特徴。本種は東アジアの広域分布種であり、ベトナム北部から中国、台湾、朝鮮半島まで分布し、日本では奄美大島とその周辺の島々だけに固有の亜種 Hestina assimilis shirakii Shirozu, 1955 が分布するが、1995年に埼玉県秋ヶ瀬公園などで突如として中国大陸産の名義タイプが確認された。数年間には神奈川県を中心とする関東地方南部でも確認され定着するようになる。2006年には東京都内でも発生し、2010年以降は千葉県、茨城県、栃木県、群馬県へと関東全域に分布を拡大し、近年では静岡県、山梨県でも目撃情報がある。
 なぜ、中国大陸産が突如出現したのか?これは、蝶マニアによる人為的な放蝶の可能性が高いといわれており、気候風土が好適であったために急激に個体数が増加したと考えられている。「在来蝶類との競合の可能性」が指摘され、2018年1月に「特定外来生物」(日本の在来生物の生態系や人体、農林水産業に悪影響を与える恐れがある国外由来の生物)として指定されている。

 同じエノキを食樹とする在来種ゴマダラチョウと駆除対象のアカボシゴマダラ。その生態はほとんど同じであるが、アカボシゴマダラの幼虫の方が、エノキの低木・幼木を好み、ゴマダラチョウの生育に悪影響を及ぼしたという具体的な例は報告されていない。また、野外での浸透性交雑の可能性は低いと考えられている。
 人為的放蝶によって繁殖している外来種のチョウは、アカボシゴマダラだけでなく「ホソオチョウ」も知られている。チョウ自らが移動して繁殖地を広げているならともかく、生息域から遠く離れた本来生息していない所に、人為的に放すことは生物地理学上行うべきではない。これは、チョウだけでなくホタルでも同様である。元来、北海道にはゲンジボタルは生息していないし、上高地に人為的に放され定着したゲンジボタルは駆除された。昆虫や植物に罪はなく、既に広範囲で定着し生態系に悪影響を及ぼす危険性が低い種を駆除する必要もないと思うが、人間の勝手な行為は慎むべきである。
 2021年8月現在、特定外来生物に指定された昆虫は25種類であり(環境省:特定外来生物等一覧)これら昆虫を無許可で飼育したり野外に放したりすると3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金となる。法人では最高1億円の罰金が科される。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ゴマダラチョウの写真

ゴマダラチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1600 +1EV(撮影地:栃木県 2021.9.12 11:03)

ゴマダラチョウの写真

ゴマダラチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 2000 +1EV(撮影地:栃木県 2021.9.12 11:03)

アカボシゴマダラの写真

アカボシゴマダラ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1000(撮影地:栃木県 2021.9.12 11:04)

アカボシゴマダラの写真

アカボシゴマダラ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 640(撮影地:栃木県 2021.9.12 11:05)

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リスアカネの連結飛翔と打空産卵

2021-09-12 19:42:27 | トンボ/アカネ属

 リスアカネ Sympetrum risi risi Bartenef, 1914 は、トンボ科(Family Libellulidae) アカネ属(Genus Sympetrum)で、北海道、本州、四国、九州に分布する。平地から丘陵地にかけての、周囲を樹林に囲まれたような閉鎖的な池沼でよく見られる。成虫は6月下旬頃から羽化が始まり、羽化後も羽化水域の近くに留まり11月下旬頃まで見られる。和名のリスはスイスのトンボ学者Friedrich Risの名前に由来する。
 産卵は、空中から卵を振り落とす打空産卵で、水のない池畔の土や枯れ草の上で雌雄が連結して行うことが多いが、途中で連結を解いて雌の単独産卵に移行することもある。今回、リスアカネの連結飛翔と打空産卵を撮影したので掲載したい。

 久しぶりの写真撮影遠征である。この週末は星空撮影とヤンマ探索で信州遠征を予定していたが、天候不順のため延期。日曜日は栃木方面の天気が良いとの予報であったため、絶滅危惧1B類(環境省)のチョウの生息地に8年ぶりに行くことにした。結果的には、目的のチョウは見つけられなかったが、代わりに同じく絶滅危惧1B類のチョウ2種と出会うことができた。その写真は、次の記事で掲載したい。
 次に、ちょうど帰り道にあるカトリヤンマの多産地に寄ってみることにした。昨年は交尾態を撮影し写真を掲載している。(参照:カトリヤンマの交尾態)小一時間ほど探索したが、時間や気温の関係だろうか、メスを探す多数のオスは見られたが、交尾態は一組確認できただけで撮影には至らなかった。
 帰路に就く間際、止めた自家用車の傍らで多数のリスアカネのペアが産卵をしていた。雌雄が連結しながら空中で卵を落とす様は、写欲を掻き立てる。いつものように300mmレンズでマニュアルフォーカス。ファインダーを覗きながらトンボを追い、ピントが合ったところでシャッターを切るスタイルである。本種の連結打空産卵は、一昨年に撮影したことがあるが、薄暗い場所でほとんどがピンボケであった。今回は、メスの腹部先端から落ちる卵も運良く写っており、何とか掲載できるレベルのものを残せたように思う。
 リスアカネの連結飛翔と打空産卵は、ブログ初掲載である。また、本ブログに、今年撮影した昆虫写真を掲載するのは、8月14日以来であり、トンボの写真は今年初である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

リスアカネの連結飛翔の写真
リスアカネ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 800(撮影地:栃木県 2021.09.12 11:37)
リスアカネの連結飛翔の写真
リスアカネ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 1000(撮影地:栃木県 2021.09.12 11:35)
リスアカネの連結飛翔の写真
リスアカネ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1000(撮影地:栃木県 2021.09.12 11:36)
リスアカネの連結打空産卵の写真
リスアカネ(連結飛翔打空産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1000(撮影地:栃木県 2021.09.12 11:35)
リスアカネの連結打空産卵の写真
リスアカネ(連結飛翔打空産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1000(撮影地:栃木県 2021.09.12 11:36)

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夏の大三角

2021-09-11 17:07:21 | 風景写真/星

 9月二度目の週末。本来ならば新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言は12日で解除の予定であったが、何と東京をはじめ19都道府県で今月30日まで延長され、高速道路の休日割引も同日までない。天候も不安定なため、仕方なく土曜日は自宅で自粛である。星空に関しては、この週末を逃すと今後は月明かりが邪魔をしてしてしまうため、残念ながら10月まで撮ることが出来ない。
  そこで本日も、先週末に引き続きソフト「DxO PureRAW」を試用して、過去に撮影した星景の再現像を行い、この記事では「夏の大三角」をテーマに取り上げてみた。他の再現像した写真は、掲載済み記事において差し替えを行っている。(参考:星峠より天の川

 夏の大三角 The Summer Triangle とは、夏の夜空を彩る3つの1等星である「はくちょう座α星のデネブ」、「わし座α星のアルタイル」、「こと座α星のベガ」これらの星を結んでできる大きな三角形のことである。3つの星の中で1番明るいのはベガで、ベガ→アルタイル→デネブの順番で輝きが弱まっていく。
 これらの星のうちベガとアルタイルは、七夕の伝説における「織姫(おりひめ)」と「彦星(ひこぼし)」である。伝説とは、織姫と彦星という夫婦が遊んでばかりいたので神様が怒って2人を天の川で分けてしまったというものだ。年に一度、7月7日の七夕の夜に会うことを許されたが、雨で再会が叶わないと織姫と彦星は涙を流す。この雨は「催涙雨(さいるいう)」と言われている。織姫と彦星の間は距離は、15年光年。かなりの遠距離だが夫婦の絆は強くありたい。
  夏の大三角は20世紀に定着した呼び名であるため、この三角形にまつわる古い神話は存在しないようだが、こと座、わし座、はくちょう座は、それぞれギリシャ神話にも登場する。織姫と彦星にとどまらず星座には様々な物語が関連している。今後は、満天の星の美しさだけではなく、隠された物語とともにロマンを感じるような星景写真を撮れるようになりたいと思う。

以下の掲載写真は、683×1024ピクセル、およびで1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。尚、モノクロ写真は「夏の大三角」が分かりやすいように線を引いて加工したもで、拡大表示はされません。

夏の天の川と夏の大三角の写真
夏の天の川と夏の大三角
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 38秒 ISO 2000(撮影地:長野県松本市/乗鞍高原 2018.07.21 1:38)
夏の天の川と夏の大三角の写真
夏の天の川と夏の大三角
夏の天の川と夏の大三角の写真
夏の天の川と夏の大三角
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / 絞り優先AE F2.8 25秒 ISO 2500(撮影地:長野県松本市/乗鞍高原 2020.08.29 2:02)
夏の天の川と夏の大三角の写真
夏の天の川と夏の大三角

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ティンガーラ

2021-09-05 21:17:04 | 風景写真/星

 9月最初の週末も雨。September rain 九月の雨は冷たくて・・・無念の8月を引きずったまま9月の雨は心に沁みる。
 自然風景ならば雨の日にしか撮れない光景もあるが、予定していたのはトンボとチョウ。こんな天気では撮れるものも撮れない。仕方なく土日ともに自宅で自粛である。ただし、昭和のサラリーマンのようにゴロゴロと過ごしたのではない。時々はパラリンピックの主要種目のテレビ中継を見たが、多くの時間は過去撮影のRAW現像に費やした。
 この二日間は、今年4月にフランスの企業が販売したソフト「DxO PureRAW」を試用して、私的に難のあった星景写真数点を再現像してみた。(DxO PureRAW は、前記事の「夏の天の川(開田高原)」でも使用している。)昆虫写真では、撮影前の準備3割、撮影は6割、現像は1割であり、自然風景写真でも同じであるが、星景写真においては、それを作品にするには撮影前の準備3割、撮影は1割、現像が6割である。その再現像した星景写真を以下に 掲載したいと思う。
 DxO PureRAW とは、RAWファイルを高品質化してくれるソフトで、Lightroomでの現像の前段において、AIを使ってRAWファイルの様々なレンズ収差を補正し、ノイズを除去し、シャープにしてくれるものである。特に星景写真においては、これまでノイズ除去が大きな課題であった。勿論、元になるRAWデータが適正露出でなければならないが、このソフトを使用することによる効果は大きい。

 まずは、宮古島で撮影した天の川(一部)を最初に掲載した。ちなみに表題にしたティンガーラとは、沖縄地方の方言で「天の川」のことである。
 今から9年前。2012年9月8日に沖縄県立宮古高等学校の招きで、宮古島の固有種であるミヤコマドボタルの観察と勉強会講師のために訪れた宮古島。ホタルの観察の後、宮古島と来間島に架かる来間大橋からみた星空は、例えようにない素晴らしさであったが、あいにく最小限の機材しか持っていかなかったため、 Canon EOS 7D に シグマの50mmマクロレンズという昆虫用の機材での撮影である。
 ちなみに、宮古島は見上げれば満天の星、森ではミヤコマドボタルとキイロスジボタルの光が輝き、海中ではウミホタルの青い光が煌めいている。陸、海、空、全てが美しい自然の光で埋め尽くされていた。また宮古島は全天88星座あるうち、84星座を見ることができ、1月~6月は「南十字星」も見ることができる最北端である。新型コロナウイルスが終息したら、今度はフル装備で訪ねてみたい場所の1つである。
 今回「DxO PureRAW」を試用しての再現像の写真は他に数点行い、それぞれ該当するブログ記事において差し替えを行っているが、富士山と天の川アーチ、開田高原の天の川アーチ、この2点を本記事でも掲載しておきたいと思う。これらは、RAWデータをDxoPureRAWで処理した後、Lightroomで5カットをパノラマ合成し、Lightroomでナチュラルグレーを基本に、コントラスト、テクスチャ、明瞭度等を調整した。ノイズはほとんど目立たなくなっている。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

宮古島から夏の天の川の写真
ティンガーラ(宮古島から夏の天の川)
Canon EOS 7D / SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG / 絞り優先AE F2.8 10秒 ISO 6400(撮影地:沖縄県宮古島市 2012.09.08 21:03)
富士山と天の川アーチの写真
富士山と天の川アーチ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F3.2 20秒 ISO 3200 5カットパノラマ合成(撮影地:静岡県富士宮市 2021.02.20 4:53)
開田高原より天の川アーチの写真
開田高原より天の川アーチ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / 絞り優先AE F2.8 20秒 ISO 2000 10カットをパノラマ合成(撮影地:長野県木曽町 2021.03.20 3:22)

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夏の天の川(開田高原)

2021-09-02 21:15:51 | 風景写真/星

 9月である。一年の2/3が過ぎてしまった。この間に撮った自然風景と言えば、栃木の桜を除くとすべてが夜間であり、ホタルの光跡以外は星空ばかりを撮ってきた。理由は3つある、1つは新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、ほとんど人と接しない時間帯と場所で活動すべきと考えた結果である。2つに星・宇宙に対する魅力である。小さな地球から際限のない広大な宇宙と星々を眺めた時に感じる思いは一言では表せない。3つ目の理由は、星空の写真を本格的に撮り始めてまだ4年。初心者の域を何とか脱したいと言う欲である。
 星空の写真には二通りある。星や星雲そのものを撮る天体写真と星空を自然風景写真の一つとして捉えた星景写真・星野写真だ。私は赤道儀を使わない固定撮影の星景写真である。現在所持するカメラとレンズの性能を最大限活かしながら、試行錯誤を繰り返しているが、撮影時の設定や現像方法のコツがようやく掴めてきたので、今回、開田高原で撮影した夏の天の川を掲載したいと思う。

 夏の夜空と言えば、南の空で明るい三つの星が形づくる「夏の大三角」と、南の空に赤く光る「サソリの心臓」アンタレスが挙げられるが、もっとも魅力的なのは、日没後に南の地平にまっすぐ立つように伸びる「天の川」であろう。その見え方は季節によって変わる。地球は太陽を中心に回転しているため、3月頃から9月頃は星の数が大変多い天の川銀河の中心を見ることができ、冬は星の少ない天の川銀河の端を見ることになる。天の川らしいのは、やはり3月頃から9月頃に見られる夏の天の川である。
 夏の天の川には、特に濃い部分がある。そこはいて座にあり、地球から約2万8000光年離れた天の川銀河の中心でグレートスタークラウドと呼ばれている。またその少し上のたて座の付近にも濃い部分があり、こちらはスモールスタークラウドと呼ばれている。いて座からたて座の辺りが、夏の天の川の一番綺麗な部分である。ちなみにグレートスタークラウドは、3月頃では午前2時過ぎに地平線からやっと昇ってくるが、今の時期は午前0時には沈んでしまう。沈む時間は月日と共に早くなるため、天気が良く月明りに邪魔されずグレートスタークラウドを写そうと思うと、チャンスは多くない。
 天の川を撮るには、月明りと街明かり等の光害のない、そして良く晴れた日と場所を選ぶことが必須であり、さらに天の川が昇ってくる時間や沈む時間と方向も調べてから臨むことになる。これまで富士山周辺と開田高原、乗鞍高原を撮影地に選んで何枚もの天の川を撮ってきたが、今回の写真は、開田高原の木曽馬の里にて、地上の一本のナラの木を生命の象徴とし、銀河と対比させた。
 この撮影は、月齢18.5の明るい月が21時過ぎには昇ってきてしまうため、西の空が暗くなった19時半から撮影を開始し、2時間ほど連続でシャッターを切った。写真の現像は、今回初めてDxO PureRAW を用いた。DxO PureRAWとはフランス パリのDxO社が開発した撮影したRAWファイルを高品質化してくれるソフトで、Lightroomでの現像の前段において、AIを使ってRAWファイルの様々なレンズ収差を補正し、ノイズを除去し、シャープにしてくれるのである。
 以下には、過去に撮影した3枚も掲載した。これらも、まずRAWデータを DxO PureRAW で処理した後 Lightroom で補正し、最後に解像度を2倍にする高品質化という処理を行っている。またタイムラプス動画は、今回の撮影分についてはフリーソフトのSequatorで5枚を加算平均合成し、過去に撮影した映像とともに編集した。

 夏の天の川は、今年は週末であと3回、10月2日がラストチャンスになる。今後の天候次第では、この写真が夏の天の川の今年の見納めになるかもしれない。その後は、東から冬の綺麗な星座が昇ってくるので、ソフトフィルターを付けて星空を楽しみたいと思う。また、この8月は残念ながら「ペルセウス座流星群」は天気が悪く見ることができなかったが、12月には「ふたご座流星群」がやってくるので期待したいと思う。

 9月と言えば関東大震災をはじめ、台風など自然災害が多い月である。天の川を撮影した開田高原からも見える御嶽山が噴火したのも今月。2014年9月27日。火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡し、現在も依然として5名が行方不明のままという日本における戦後最悪の火山災害となった。
 噴火からまもなく7年が経とうとしている。2019年7月1日からは山頂登山規制も解除され、現在の御嶽山は写真のようにすっかり噴火前の美しい姿を見せてくれているが、自然の猛威・脅威を忘れてはならない。撮影した九蔵峠には、駐車場の奥に展望台があり献花台もある。犠牲となった63名のご冥福を、心よりお祈りしたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.8.27 19:36)

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.8.27 20:47)

夏の天の川の写真

夏の天の川(一番大きく輝いている星は、木星)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM/ PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2019.5.05 0:32)

夏の天の川の写真

夏の天の川(一番大きく輝いている星は、木星)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2019.5.05 0:34)

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM/ PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.5.04 0:56)

御嶽山の写真

御嶽山
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 100(撮影地:長野県木曽町開田高原/九蔵峠)

天の川のタイムラプス動画(長野県木曽町開田高原/木曽馬の里)

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