キトンボ Sympetrum croceolum (Selys, 1883)は、トンボ科(Family Libellulidae)アカネ属(Genus Sympetrum)で、北海道・本州・四国・九州に分布している。主に丘陵地や低山地の森林に囲まれているような水面が開けた池、沼などに生息し、晩秋の最も遅くまで見られるトンボである。環境省版レッドリストに記載はないが、改変を受けやすい環境に生息するため都道府県版レッドリストでは、東京都、神奈川県、千葉県では絶滅、茨城県、群馬県、静岡県、愛知県では絶滅危惧Ⅰ類、栃木県、埼玉県、山梨県などでは絶滅危惧Ⅱ類として記載している。
この週末は、当初、土曜日の夜から出掛け、信州戸隠の鏡池の紅葉撮影を計画していたが、紅葉が見頃でも無風でなければ水鏡にならないため、天気予報を信じて断念。土曜日の夜からはオリオン座流星群が極大になるのだが、同所では快晴ではないため、これも断念。流星群は、夜空が暗く雲のない場所ならば、どこでも撮れるだろうが、流れ星だけ撮っても、主役を引き立てる脇役がなければ絵にならないので仕方がない。日曜日は、お出かけ日和の秋晴れ。白馬村の夕暮れを撮った後、戸隠に移動することも考えたが、これも月曜朝の風速が1mとあり、やはり水鏡にならないと判断し断念。
週末ごとに計画はあるものの、天候であきらめることばかり。段々と出不精になり、自宅でのんびり過ごすことに慣れてしまい、出掛けようと思っても色々と理由を探して出掛けない選択をすることの方が多くなってしまっているが、翌日の月曜日も東京は良い天気。このまま自宅で過ごすのはもったいない陽気である。家内からも出掛けた方が良いとのアドバイスもあり、キトンボだけを撮ることを目的に出掛けることにした。何と56日ぶりの写真撮影である。
キトンボは、これまで栃木県、埼玉県、新潟県、長野県、山梨県で撮影しているが。今回は1時間半で行ける山梨県を選んだ。本ブログに掲載はしていないが、この生息地では、かつて止まっている様子は撮影していた。今回、久しぶりに訪れ、主にキトンボの飛翔撮影を楽しむことにした。
自宅を午前8時に出発。中央道で進むが、途中から一般道に降りて現地を目指し、10時前に到着。気温は16℃。池畔を散策すると、オスのキトンボが草に止まっていた。気温が低いのだろう、まだメスは池にはいない。気温が18℃を超えた11時近くになると交尾態も多く現れ、池で産卵する様子も見られるようになった。ただし、この池は岸から数メートル離れた浮島で産卵するため、産卵の様子は非常に撮影し難い。したがって、今回はオスの単独飛翔をメインにシャッターを切った。
正午を過ぎると、キトンボのペアは一斉に姿を消し、それぞれが単独で樹林の草に止まりだし撮影も終了。平日午後の空いている中央道上りを走って15時に帰宅した。
今回56日ぶりの写真撮影で出不精を解消し、久しぶりに自然環境の中に身を置いて、その美しさや神秘さを身をもって感じることができた。しかし、写真はそこに生きている様子を写しただけで、キトンボの生態の解明や保全につながるものではなく、単に撮影を楽しんだ私自身のストレス解消でしかない結果である。
昆虫写真では、特徴が分かる鮮明な図鑑写真であること、生態の一部始終が分かるもの、芸術的であることなどを目指したい。(勿論、ホタルにおいては実現している。)自然風景写真においては、オンリーワンの光景を残したい。有名な景勝地で大勢のカメラマンが訪れる場所でも誰も来ない場所でも、より一層、自然風景と対峙して、一枚の写真として自分自身の心の風景を残したい。そう思っている。チャンスを待つ忍耐と撮影技術や機材も大切だろうが、何より感性を豊かにすることだろう。今後もその努力を惜しみなく続けたい。
参照ブログ記事
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