色彩の饗宴と題して、四万温泉近辺で撮った写真を掲載したいと思う。
11月5日金曜日は、午後から病院に行かねばならず、そのために年次有給休暇を頂いた。午前中はフリーであり、天気も良い。そして平日。木曜日の19時に都内の勤務先から、そのまま四万温泉に向かった。
現地のトイレのある無料駐車場に21時半に到着。誰もいない。そして真っ暗。空を見上げると満天の星。プレアデス星団(すばる)の輝く星の集まりは5個までは肉眼ではっきりと確認できる。群馬もここまで奥に来ると星空が美しい。ただし今回は広角レンズを持ってこなかったので、そのまま車中泊。翌日は、朝6時から行動開始。まずは、前記事のトップに掲載した「桃太郎の滝」を撮り、以後は奥四万湖を天候に合わせてゆっくりと2周。タイムリミットである午前9時まで、様々な光景を切り取ってみた。
自分は、一体何を美しいと感じているのか?何を表現したいのか?光景を見つめながら自問自答し、ファインダーを覗く。主役や脇役はいない。そこには、ありとあらゆる色彩があるだけである。
その色彩は、朝日によって輝き、あるいは曇天で柔らかく馴染む。個々の木々が競い合いながらも見事なハーモニーを奏でる。東山魁夷が御射鹿池をモデルにした名画「緑響く」は、モーツァルトの「ピアノ協奏曲23番K.488 第2楽章」から触発を得て誕生したと言われ、「白い馬はピアノの旋律で、木々の繁る背景はオーケストラです。」と魁夷は記してるが、奥四万の紅葉は、まるでリヒャルトシュトラウスの「ドン・ファン」であったり、ヴォーン・ウィリアムズの「トマス・タリスの主題による幻想曲」のようである。時としてラヴェルのオーケストレーションの如く様々な色彩が怒涛のように迫ってくる。不協和音を排除することなく、そのハーモニーをバランス良くとまとめ、テンポをとる事が私の仕事なのだと感じた。そのために、どうタクトを振れば良いのか・・・
また、撮りたい紅葉写真は、日本の伝統文化を感じる1枚のお盆に盛り付けた五色の和食のようでもありたい。そのために、どう料理すれば良いのか・・・そんなことをあれこれ考えながら、木々と向き合いシャッターを切った。
今回の紅葉撮影は、「自然とどこまで対峙できるか、そして感じたものを自分なりに写実として表現できるか」ということを課題にした。前記事の写真は、撮影する場所を予め決めており「こんな絵にしたい」というイメージトレーニングも行った上で現地に赴き、じっくりと観察して撮影した。オーケストラの指揮者も、本番の指揮台でタクトを振る前に、作曲者からのメッセージを読み、どう表現するか考え、大人数の楽団員にも理解させ、演奏をまとめなければならない。
その意味では、奥四万湖の周遊道路から見下ろして撮った「四万ブルーと紅葉」はイメージ通りの写真になったが、この記事の写真は「流し」ながらの撮影。結局は色彩の饗宴に圧倒され、単にカメラを向けて撮っただけのものばかり。ご覧頂いた方の心には、何も響かないだろう。現場では指揮者になれず、最高の食材が揃っていながら料理を仕上げられない料理人でもあった。すべては、自身の未熟さ、心の醜さを反映した結果であるように思う。
自然をこよなく愛し「光と色彩の魔術師」と謳われたオーギュスト・ルノワールは、「もはやどのように絵具を塗るべきか線を引くべきか、まったく分からない」と若い頃に悩んでいる。また、帝王カラヤンは「自分の目標を全て達成してしまった人は、恐らくその目標の設定を低くしすぎたのだろう。」と言っている。
私は、画家でも音楽家でもプロの写真家でもないが、自然芸術に接しそれを写そうとするならば、自然に敬意を表し、準備を怠らず、こだわりを持って臨み、それなりの領域には達したい。そこはどこまでも際限なく遠くに存在するが、今後も、色々と悩みながら自然芸術に目を向け、少しでも高みに昇って行けるよう、感性を磨いていきたい。駄作ばかりではあるが、今回、最期の瞬間まで美しい姿を見せてくれた木々たちには感謝したい。
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/80秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:03)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F8.0 1/10秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:04)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F14 13秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 6:33)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/30秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 7:57)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F8.0 1/4秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:42)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F11 0.6秒 ISO 100(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 8:57)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F11 1/4秒 ISO 100 -1EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 9:00)
奥四万の紅葉
Canon EOS Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / CPLフィルター / 絞り優先AE F2.8 1/25秒 ISO 100 -1EV(撮影地:群馬県中之条町 2021.11.05 7:24)
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