ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ホソミモリトンボ(ホバリング)

2023-08-28 14:05:31 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、国内では北海道と本州に分布し、本州では、これまで福島、栃木、群馬、長野、新潟、岐阜の6県で記録があるが、いずれも局所的であり、近年では確認されていない場所も多い希少種である。10年間探し続け、今年の7月下旬にようやく確実な生息地を自力で見つけ、観察と撮影を続けてきた。4回目の訪問となる今回は、初訪からおよそ一か月後でも出現しているのかを確認すること、そして出現しているならば、ピントの合った飛翔写真を撮る、この2つが目的である。

 ホソミモリトンボの生息地には6時半に到着。天候は快晴。早速、これまで毎回のように飛翔していた場所で待機することにした。前回8月11日に比べて、アキアカネの数が激減していた。多くが麓に降りて行ったのだろう。また、クロヒカゲなどのチョウの姿もほとんど見かけなかった。それだけ季節が進んだということである。
 気温が上がってきた8時。体感的にはこれまでと変わらないが、小さな虫を捉えるために飛び回るアキアカネの姿はない。前回は、すでにホソミモリトンボのオスの飛翔が確認でき、メスも産卵にやってきたが、 今回はその姿もない。もう、いなくなってしまったのか、あるいは前日の午後に激しい雷雨があったようなので、その影響も考えられるが、定かではない。その代わりに、ルリボシヤンマのオスが長いホバリングを行いながら飛び始め、別の場所ではオオルリボシヤンマのオスが縄張り飛翔を始めた。この2種が発生したとすると、体の小さいホソミモリトンボは追い立てられるので、その影響も心配である。
 待機から3時間以上経過した10時。ようやく湿原のはるか遠くを飛んでいるホソミモリトンボ1頭を発見。11時になると、いつも飛翔している場所とは違う湿地で、比較的長いホバリングを交えて飛んでいる ホソミモリトンボを発見。この場所では3頭のオスを確認。ただし、こちらに近い方でルリボシヤンマが縄張り飛翔をしており、20mほど先からなかなか近くに寄ってこないため、小さくしか写らず撮っても証拠写真にもならない。
 そして12時。いつもの場所で飛び回るオスが現れた。この個体は、メスが産卵に訪れる水路がある一定の範囲を2~3秒のホバリングを行いながら細かく移動していた。4回訪れた中で、一番ホバリングの時間が長い。途中、疲れたのか湿原の草むらに降りて止まったりもしていた。13時頃になると、ようやくメスが産卵に訪れたが、近くには寄ってくることはなく、しばらくして見失ってしまった。オスも飛んでくることがなくなり、今回は、現地を13時半に引き上げることにした。
 帰路は、相変わらずの渋滞。中央道は小仏トンネル手前から20kmの渋滞で上野原IC手前では事故も発生。韮崎では工事車線規制で6kmの渋滞。写真が撮れていなければ、疲れただけの遠征であっただろう。

 ホソミモリトンボを4回観察したなかでの結果をまとめてみた。勿論、個体や気象条件(今年は4回ともに早朝から快晴)によっても違いがあると思われる。

  • 出現期間は、およそ一か月である。(7月下旬~8月下旬)
  • メスは、7月下旬から産卵する。
  • オスの飛翔開始時刻は、季節が進むごとに遅くなる。
  • 季節が進むほど、ホバリングの時間が長くなる。
  • 季節が進むほど、産卵開始の時刻が遅くなる。

 今回の目的の1つであった「ピントの合った飛翔写真を撮る」ことは、何とか達成できた。トンボの静止飛翔(ホバリング)の撮影は、広角レンズのパンフォーカスで背景も写し込む方法や望遠レンズで背景をぼかして被写体だけをクローズアップする方法等があるが、今回の撮影場所では、被写体までの距離が遠いため、望遠レンズで撮るしかない。静止飛翔(ホバリング)は、トンボの種類や気象条件、活動時間、個体によっても違うが、ルリボシヤンマのように数10秒も同じ位置でホバリングしていれば、撮影は簡単であるが、本種のように移動しながら2~3秒のホバリングであるならば、難易度が高い。
 最新のデジタルカメラならば、被写体と認識した昆虫にピントを合わせ、動きを追尾するAI自動追尾機能やオートフォーカスが早いAF駆動用超音波モーターのレンズであれば、簡単に最良の画像を撮影することができるであろう。しかし、私の機材はそうではない。未だに、Canon EOS 7D に今回のレンズは Tokina AT-X 304AF 300mm F4 である。頭の先から尾の先端までピントが合い、触覚や細毛までブレることなく細かく描写でき、そして色彩等の特徴も分かる真横からの構図を撮ることは容易ではない。
 カメラとレンズで合計約2kg。長玉であるから三脚に付けなければ手振れしてしまう。上下左右に動くようにし、左目でトンボを追いながら右目でファインダーを覗いてレンズ内に収めようとするが、望遠レンズの狭い画角内にトンボを収めるのに一苦労する。オートフォーカスは使えないから左手の親指でピントリングを回す。ピントが合う前にトンボは移動してしまう。運よくピントが合ったと思ったらシャッターを切るが、合焦音がなることは稀である。トンボが3秒以上静止してくれれば成功率は高いが、それ以下ならば撮った写真は、ほとんどがゴミ箱行きである。
 今回は、4回の訪問の中で比較的長い2~3秒ほどのホバリングを繰り返し行ってくれたので、連写した1割くらいの確率で飛翔写真を残すことができた。尚、1と2枚目、3枚の体色が異なって写っているのは、個体差ではなく、1と2枚目は順光、3枚目は逆光での撮影の違いからである。また、背後からのカットでは、ホソミモリトンボのオスの特徴である尾部付属器が弧状に湾曲した様子も捉えることができた。
 来年は、本種の産卵の様子を詳細に観察すること、交尾態の撮影を目標に訪れたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:46)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 125(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:38)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.27 11:40)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 12:51)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.27 11:41)
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ホソミモリトンボ(飛翔と静止)

2023-08-13 09:54:00 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボ Somatochlora arctica (Zetterstedt, 1840)は、前々回の記事「ホソミモリトンボ」において証拠程度の写真ではあるが、初掲載として紹介したものの、やはりピンボケの証拠写真では気が済まない。8月4日にも再訪したが、個体の確認はしたものの写真撮影までには至らなかった。そこで、今回8月11日に3回目の訪問である。
 天候は晴れ。8月4日同様に、現地に5時半から待機。6時過ぎには湿原全体に太陽があたり、徐々に気温が上がっていく。初回は7時には飛翔が確認できたが、2回目は8時になってから、ようやく現れた。今回は7時半頃に現れたが、湿原上空で摂食飛翔するばかりでなかなか降りてこない。8時を過ぎると、メスが産卵にやってきた。今回も同じ場所での産卵であり、湿原に茂みの中に潜ってしまうので、どのように産卵しているのかは全く見えなかった。今回も産卵個体を確認できたことで、本種の確実な生息地であると言えるだろう。
 8時半頃になると、オスが頻繁に探雌に現れるようになった。今回は、3回訪れた中で一番個体数が多く、こちらからそれほど遠くない位置で短いホバリングも行っていた。また、飛翔の合間に草や枝で静止する様子も見られた。

 3回目の訪問となると、当地におけるホソミモリトンボの飛翔範囲や行動パターンが分かってきた。オスは、メスが産卵する場所の近くをこまめに移動しながら、1~2秒足らずの短いホバリングを行う。この飛翔を撮影するのは、撮影場所が限られるため難易度が高い。チャンスは何度もあったが、なかなかジャスピンが得られない。
 草や枝に止まれば、撮影は難しくはない。周囲を群れ飛ぶアキアカネより若干大きいかなというくらいの体長。同属の普通種であるタカネトンボに比べれば、かなり細身で小さい。飛翔時では確認することは困難であるが、静止時は、ホソミモリトンボのオスの特徴である弧状に湾曲した尾部付属器を確認することができる。顔面が意外に毛深いことも分かる。
 ホバリングや産卵の様子など、写した結果にはまだまだ課題が多く残る。また、いつまで出現するのかも知りたいところ。今季もう一度訪問して、更なる観察と撮影を行いたいと思う。(→こちら ホソミモリトンボ(ホバリング)8月27日訪問参照)

 前回は、正午まで6時間も直射日光を浴び続けたところ、翌日に体調を崩してしまったので、今回は午前10時で撤収することにした。お盆と三連休の初日でもあり、上りとは言え午後になると渋滞が怖い。さすがに帰路はまったく渋滞がなく、正午には自宅に到着した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:34)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:34)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 160(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:29)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:07)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 3200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 500(撮影地:本州中部 2023.08.11 9:15)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:19)
ホソミモリトンボ(メス)の写真
ホソミモリトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100(撮影地:本州中部 2023.08.11 8:19)
ホソミモリトンボのの飛翔及び産卵場所の写真
ホソミモリトンボの飛翔及び産卵場所(湿原の中に細流があり、産卵場所となっている)
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日射病?

2023-08-07 10:13:50 | その他

 8月4日に再び前記事で紹介したホソミモリトンボの観察と撮影に行ってきた。毎日、出勤時は午前4時半に起きるのも辛いが、昆虫となれば午前2時半でも平気である。3時に自宅を出発し、現地には5時過ぎに到着。前回は7時頃からすでにホソミモリトンボが飛んでいたので、何時から現れるか確かめるために5時半より待機した。
 この日は快晴で、東京では見られない濃い青空が広がっている。6時半頃からはたくさんのアキアカネが飛び始めた。7時。湿原全体に太陽が当たり、そろそろかろ思いきや、飛んでこない。たった4~5日でいなくなってしまったのかといやな予感がしたが、8時になって、ようやく現れた。朝の食事で、周囲を早いスピードで飛び回る。そこにもう1頭が現れ、バトルが始まる。
 そんな様子を見ていると、8時半、30m先をタンデム飛翔する姿。慎重に目で追うが、途中で見失ってしまった。こんなに早くからメスは産卵に訪れているのだろうか?しかし、オスは目ざとい。
 オスもメスも、いつ飛んでくるのか分からないため、この場所を離れるわけにはいかない。結局、正午近くまで6時間ほど同じ場所で観察を続けた。その間、オスは1時間おきくらいに現れ、メスも産卵に訪れた。また、新たなタンデム飛翔する様子も見られた。残念ながら、良い写真は撮れなかったので、今季、もう一度訪れたいと思う。

 この日は、昼で引き上げ帰路に就いたが、平日だと言うのに高速道路はいつもの場所で11kmの渋滞。おまけに八王子から国立まで事故で通行止めとの表示。仕方なく、現地からずっと一般道を走り、自宅まで5時間以上かかってしまった。
 翌土曜日は出勤である。4時半に辛い思いをして起き、仕事に向かう。普通に元気であったが、社員食堂で昼食をとった後から、腰から下にかなりの倦怠感。頭痛とめまいもする。なんとか仕事を終え、帰宅した時はまだ平気であったが、夜は日に焼けた顔と腕が熱を帯び寝苦しい。翌日曜日は、頭痛とめまいに加え極度の腰痛で起きられない。食欲ゼロ。1日中、寝ていた。最近、職場でコロナが再び猛威を振るっているため、感染も疑ったが、どうやら日射病のようだ。標高が高く空気が澄んだ場所で直射日光を6時間も浴び続けた結果である。
 今までこんなことはなかったが、還暦近くになると、無理がきかなくなっているのだろう。幸い、腰痛は残っているものの月曜日は頭痛とめまいはなくなった。休日であるため、仕事に備えてのんびり過ごそうと思う。

 掲載の写真は、前回、訪れたときに撮った朝のカラマツ林である。朝もやの湿原の素晴らしい光景も撮っているが、場所が特定される可能性があるために掲載を見送った。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

朝のカラマツ林の写真
朝のカラマツ林
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 320(撮影地:本州中部 2013.07.30 6:36)
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