ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ハネビロエゾトンボ(ホバリング)

2024-07-29 13:15:15 | トンボ/エゾトンボ科

 ハネビロエゾトンボは、2012年に千葉県、2020年と2022年に栃木県で撮影し当ブログにも掲載しているが、産卵の様子は未撮影で、飛翔に関しては、真横からのカットはピントが甘く、ジャスピンのものは斜め後ろからで複眼と胸部の色彩が分からないものばかりであった。これは、生息地がかなり暗い場所であったり、小川に近づけなかったり、個体数が少ないなどの理由による。今年は、何とかして複眼の先の触角から尾部付属器までピントが合っていて他種との区別ができ、エゾトンボ科らしい金属光沢の色彩を写して残したい。
 しかしながら、ハネビロエゾトンボは、北海道から九州まで分布しているが、環境省版レッドリスト(2020)では絶滅危惧Ⅱ類として記載され、都道府県版レッドリストでは、何と40の都道府県で絶滅、絶滅危惧Ⅰ類、絶滅危惧Ⅱ類、準絶滅危惧種として記載されているほどの希少種であり、どこでも撮影できるトンボではない。そこで、トンボの羽化撮影ではスペシャリストである知人S氏に相談し、S氏がいつも撮影されている場所をご教示いただき、向かうことにした。

 ハネビロエゾトンボの生息地は、私が過去に他のトンボの撮影も含めて何回も訪れている場所から、ほんの数百メートルしか離れていない所で、小川沿いに歩くことができ、撮影がし易い環境であった。まずはロケハンと思い小川に近づくと、すでに10頭を超えるハネビロエゾトンボのオスたちが、流れのあちこちで縄張り飛翔を行っていた。早速、準備を整え撮影開始である。
 今回の目標は、先に記したように複眼の先の触角から尾部付属器までピントが合っていて他種との区別ができ、エゾトンボ科らしい金属光沢の色彩を写すことである。前記事のマルタンヤンマやネアカヨシヤンマのように木の枝に止まっていれば容易だが、ハネビロエゾトンボの場合はそうはいかない。ただし、個体数が多く、それぞれが狭い範囲でホバリング(静止飛翔)しており、その長さがエゾトンボ科の中でもトップクラスで、最長で10秒くらいある。
 飛翔撮影は、いつものようにAPS-CのCanon EOS 7D に21,000円で購入した中古の Tokina AT-X 304AF 300mm F4 レンズを付けて勝負である。撮影方法は人それぞれで、広角レンズで絞り込み、被写界深度を深めにして「置きピン」で撮る方法もあるが、今回の目標を達成するには、トンボを画面一杯にアップで撮りたい。勿論、プロキャプチャーモードやトンボを認識して追尾するオートフォーカス機能などないから、「置きピン」もせずマニュアルフォーカスで撮るスタイルである。近くの大木で樹液をなめている翅がボロボロのオオムラサキに誘惑されながら、更には同じく樹液をなめているオオスズメバチの大群に耐えながら、撮り続けること1時間。何とかそれらしい写真を撮ることができた。S氏に対し、心より御礼申し上げたい。
 オスの撮影に疲れてきた頃、小川沿いを歩いてみると、木の枝にハネビロエゾトンボのメスが止まっていた。メスは、初撮影である。産卵も撮りたいのだが、昼からはゲリラ雷雨の予報で、昼前に訪問したい場所があったため、午前9時でこの場を引き上げた。産卵は昼近くに行われることが多いため、次回は、遅めの時間に訪れて交尾態と産卵の様子を収めたいと思う。
 ちなみに、7月26日にホソミモリトンボの生息地に今期2回目の訪問をしたが、飛んで来るものの雌雄共に1枚も撮ることができなかった。(昼近くになって、そろそろ帰ろうとしたところ、30m先に熊がいて目が合ったので、すぐに退散)こちらも再度訪れ、交尾態と産卵の様子をしっかりと撮って残したいと思う。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 8:00)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 7:58)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 7:36)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 7:10)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 400 -1/3EV E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 7:10)
ハネビロエゾトンボの写真
ハネビロエゾトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 3200(撮影日:2024.07.24 6:43)
ハネビロエゾトンボ(メス)の写真
ハネビロエゾトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 8:32)
ハネビロエゾトンボ(メス)の写真
ハネビロエゾトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 8:33)
ハネビロエゾトンボ(メス)の写真
ハネビロエゾトンボ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/320秒 ISO 3200 E-TTL評価調光(撮影日:2024.07.24 8:33)
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オオムラサキ

2024-07-27 16:40:34 | チョウ/タテハチョウ科

 オオムラサキ Sasakia charonda charonda (Hewitson, 1863) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)コムラサキ亜科(Subfamily Apaturinae)オオムラサキ属(Genus Sasakia)に分類されるチョウで、日本の国蝶である。本種は最初に日本で発見され、学名の Sasakia は佐々木忠次郎博士に献名された。ちなみに、国蝶は、法律や条例で規定されたものではなく、1956年にオオムラサキが記念切手の図案に採用されたことを契機として、その翌年に日本昆虫学会が選んだものである。勇ましく、堂々としていて、華麗である事と日本中に分布していることが理由に挙げられている。
 日本では北海道から九州まで各地に分布し、翅を広げると10センチ以上あり、日本に分布するタテハチョウ科の中では最大級である。幼虫の食樹はエノキやエゾエノキで、食樹のある雑木林に生息している。成虫は、年に1回6月下旬~7月下旬にかけて羽化し、クヌギ、コナラ、ニレ、クワ、ヤナギなどの樹液に集まってなめる姿をよく見かける。
 オオムラサキは、環境省版レッドリスト(2020)では準絶滅危惧として記載され、都道府県版レッドリストでは、千葉県で絶滅危惧Ⅰ類に、埼玉県、茨城県、滋賀県、鳥取県、島根県、鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類に、その他多くの都道府県で絶滅危惧種として記載している。雑木林の減少が大きな原因となっており、雑木林の保全に取り組む山梨県北杜市長坂町は全国一の生息地として知られている。また、埼玉県嵐山町のようにシンボルとして掲げている地域もある。

 オオムラサキというチョウの存在を知ったのは、今から49年前。私の師である故 矢島稔先生の著書「小さな知恵者たち―昆虫の決定的瞬間 (朝日ソノラマ1975年)」であった。オオムラサキの羽化の瞬間の写真が表紙になっており、ページをめくると、将に決定的瞬間が何枚も掲載され、羽化したばかりの美しい翅色に魅了されたものである。
 冬には、エノキの根本で幼虫探しをしたものだが、屋外で実際に成虫を見たのは中学生になってからである。雑木林の中でクヌギの樹液をカブトムシと一緒になってなめている様子に感動したことは忘れない。残念ながら写真には撮っておらず、記憶の中だけの思い出である。
 昨今では、食樹が同じゴマダラチョウや外来種のアカボシゴマダラはよく見かけるが、オオムラサキは見る機会がとても少なくなった。先日、栃木県でトンボを撮影していると、クヌギの幹に止まっている大きなチョウが目に入った。もしかしたらと近づいてみると、オオムラサキのオスであった。翅はすでにボロボロであるが、濃い紫色が美しい。周囲で飛び回るものも多数いた。オオムラサキは、「ひらひら」とは飛ばない。羽ばたきが俊敏で滑空する。以前、山梨県韮崎市にある茅ヶ岳の山麓で、何頭ものオスが縄張り飛翔している様子を目撃したことがあるが、近くを飛ぶと「バサ」っと羽音が聞こえるのだ。(キベリタテハも羽音がする)今回も、その凄い飛翔に改めてオオムラサキの威厳を感じた。

 オオムラサキは、これまでブログに単独で掲載したことがなかったので、先日撮影した写真と過去に撮影していた数枚を合わせて、以下に掲載した。いずれの写真も、オスの成虫は翅が色あせていたり、ボロボロの個体ばかりである。「生態」と言えばそうなのだが、いつか羽化したばかりの新鮮で美しい個体を撮って残したいと思う。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

オオムラサキの写真
オオムラサキ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/320秒 ISO 1600光(撮影地:栃木県 2024.07.24)
オオムラサキの写真
オオムラサキ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/250秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影地:栃木県 2024.07.24)
オオムラサキの写真
オオムラサキ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
オオムラサキの写真
オオムラサキ(オス1頭、メス5頭)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/125秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
オオムラサキの卵の写真
オオムラサキの卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F14 1/100秒 ISO 3200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
オオムラサキの幼虫の写真
オオムラサキの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
オオムラサキの越冬幼虫の写真
オオムラサキの越冬幼虫
Canon EOS 5D Mark II / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / Canon マクロツインライトMT-24EX E-TTL / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 200(撮影地:群馬県 2010.1.31)
オオムラサキの幼虫の写真
オオムラサキの幼虫
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
オオムラサキの羽化の写真
オオムラサキの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/160秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2010.7.24)
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猛暑日はマルタン・ネアカ

2024-07-25 14:41:06 | トンボ/ヤンマ科

 一日の最高気温が摂氏25度以上の日を「夏日」、30度以上の日を「真夏日」、35度以上の日を「猛暑日」と言うが、ここ数日は連日の猛暑で、10年に一度の暑さであるという。昼間は、屋外での運動は危険であり、冷房の効いた室内にいたい。しかしながら、こんな暑い日だからこそ虫撮りに出掛けてしまう。目的は、そう、吸い込まれそうなくらい青い眼が美しいマルタンヤンマである。暑い日中はトンボも涼しい木陰の枝に止まっていて撮り放題なのである。2011年に撮影済(参照:マルタンヤンマ)だが、久しぶりに会いたくなった。
 目的地までは、自宅から車で40分ほど。午前9時半に到着したが、気温はすでに35℃で容赦なく照り付ける太陽。黒い私の愛車のボンネットで、目玉焼きが作れるに違いない。ポカリスエットを買って、マルタンヤンマの生息域である池のほとりに向かうと、早速、マルタンヤンマのオスが木の枝にぶら下がっていた。いつもなら昼近くになって、ようやく飛んでくるのだが、さすがの猛暑日。朝から木の枝でお休みである。
 薄暗い場所であるため、手振れ補正のないレンズとカメラでは三脚が必須。自然光だけでは、深いブルーの複眼が輝かないので、柔らかくストロボ光を当てるが、ブレ防止にレリーズも欠かせない。池のほとりは湿度が高いので、撮影の準備をしながら汗が噴き出る。逃げやしないので、落ち着いて汗をぬぐいながらセットを完了し、撮影開始である。先週の飛び回るホソミモリトンボを撮るのと違って、枝に静止しているのだから撮るのは楽勝。構図はあまり変えることができないので仕方ないが、これでカメラぶれしたりピンボケだったら恥ずかしい。ここは風景写真と同じで、背面のモニターで拡大表示してマニュアルで慎重にピントを合わ、レリーズでシャッターを切った。
 最初の個体は、かなり見上げる位置に止まっていたので、移動しながら、もう少し撮影しやすい位置に止まっている個体を探索。すると、今度は、太い木の根元付近にしがみ付いているマルタンヤンマのオスを発見。撮っては見るが、あまり絵にならない。しばらく見ていると飛んで別の場所の枝に止まった。かなり林の奥で構図は限られるが、今度は、背景がうるさくなく良い感じである。メスも1頭だけ、見つけることができた。いずれも老熟個体ではあるが、久しぶりに見たオスのブルーアイズは、言葉にならないほど美しい。
 当地では、他にヤブヤンマとネアカヨシヤンマも見ることができるが、もう、マルタンヤンマだけで十分。あまりの暑さに負けて1時間で引き上げることにした。

 マルタンヤンマを撮影した翌日も猛暑日。今度は、別の場所へネアカヨシヤンマの産卵を見に行った。こちらも撮影済み(参照:ネアカヨシヤンマの産卵ネアカヨシヤンマの産卵(2020))だが、もっと良いカットを残しておきたいとの思いで、気合を入れて遠征。
 現地には午前10時半に到着。気温は36℃で暑い。こちらは湿地帯で、前日よりもきつい。とりあえず、前回、産卵を撮影した場所にカメラを向けて待機である。11時半と12時半に撮影しているが、いつ飛んでくるかは分からない。エアコンをかけた車で待って居ようものならチャンスを逃すかもしれない。その場で飛んでくるまで我慢大会である。
 とは言え、我慢にも限界がある。正午まで待って、飛んでこなければあきらめようと決めた11時45分、大きなヤンマが飛んできた。ネアカヨシヤンマのオスである。メスを探しに来たのだろう。辺りを旋回しながら飛び周る。目で追っていると、藪の中へ消えてしまった。その方へ行って見ると、藪の中から出てきて再び飛び回ったが、しばらくすると藪の入口の木の枝に止まった。しかも目の高さである。やはり、暑さのためだろう。こんなに低い所に止まったのを見た経験は、あまりない。翅がボロボロの老個体であったが、十分に楽しませてもらった。
 今度は産卵の撮影である。時間的にも来る頃である。元の場所に戻ると、急に強風が。空を見上げると黒い雲が近づいてきていた。こればやばいと思い、すぐに撤収。車に戻ると、目の前でつむじ風。太い木も折れた。車に乗り込み走らせて数分後にゲリラ豪雨である。気温が一気に10℃下がった。ネアカヨシヤンマの産卵の撮り直しはできなかったが、ゲリラ豪雨がなければ、熱中症で病院行きだったかもしれない。

 以下には、今回撮影したマルタンヤンマの写真とネアカヨシヤンマの写真と動画を掲載した。尚、動画に収めた産卵は、2020年に撮影したものを編集し、今回初めて公開した

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

マルタンヤンマの写真
マルタンヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 4秒 ISO 100 +1 2/3EV E-TTL評価調光(撮影地:東京都 2024.07.23 20:27)
マルタンヤンマの写真
マルタンヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / プログラムAE F3.5 1/60秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影地:東京都 2024.07.23 9:49)
マルタンヤンマの写真
マルタンヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / プログラムAE F3.2 1/60秒 ISO 400 +2/3EV E-TTL評価調光(撮影地:東京都 2024.07.23 9:53)
マルタンヤンマの写真
マルタンヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / プログラムAE F3.2 1/60秒 ISO 400 +2/3EV E-TTL評価調光(撮影地:東京都 2024.07.23 9:54)
マルタンヤンマの写真
マルタンヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/20秒 ISO 3200(撮影地:東京都 2024.07.23 10:12)
マルタンヤンマ(メス)の写真
マルタンヤンマ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/10秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:東京都 2024.07.23 10:17)
ネアカヨシヤンマの写真
ネアカヨシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / プログラムAE F4.0 1/60秒 ISO 400 E-TTL評価調光(撮影地:埼玉県 2024.07.24 12:07)
ネアカヨシヤンマの写真
ネアカヨシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/320秒 ISO 3200(撮影地:埼玉県 2024.07.24 11:53)
ネアカヨシヤンマの写真
ネアカヨシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / プログラムAE F4.0 1/60秒 ISO 400 +2EV(撮影地:埼玉県 2024.07.24 11:58)
ネアカヨシヤンマの写真
ネアカヨシヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / シャッター速度優先AE F4.0 1/320秒 ISO 3200(撮影地:埼玉県 2024.07.24 11:52)
ネアカヨシヤンマ
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)
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山梨のヒメボタル(2009~2024)

2024-07-24 20:21:24 | ヒメボタル

 山梨のヒメボタル生息地(一ヵ所)には、2008年からほぼ毎年訪れ、観察と撮影を続けている。当地は標高およそ1,000mで、赤松林とブナ林に挟まれた急斜面の尾根であり、下草は極めて少ない。尾根道は地肌が見えており、豪雨があれば全て流してしまうような環境である。幼虫の生息調査も行ったが、幼虫も餌となる陸生巻貝も発見できなかった。これまで日本各地のヒメボタル生息地を訪れてきたが、このような環境の生息地は他では見たことがない。狭い範囲で様々な環境とヒメボタルの飛翔光景を観察できる貴重な生息地である。
 以下には、2009年から今年2024年の間に撮影した写真から9枚を選び、さらに動画1点を掲載した。1枚目は、ネガカラーフィルムでの撮影で、他はデジタルカメラで撮影したものである。成虫は、薄暮型で19時半頃にブナ林から発光を始め、しばらくすると飛翔するようになる。しばらくはブナ林の中を飛び交っているが、森全体が暗くなる20時頃になると尾根を越えて赤松林の急斜面を下るようにもなる。それは「光の川」といっても過言ではない光景である。そして21時には発光を止めてしまう。
 掲載した写真は、尾根から前後左右にカメラを向けて撮影している。つまり、自分の周囲すべてに発光飛翔しており、ヒメボタルに取り囲まれている状況なのである。年によっては、まったく飛翔がない年もあった。それは、発生しなかったのではなく、当地は毎年の発生時期にかなりの差があり、天候状況と休日が合致せずに発生が終わってしまった後に行ったことによる。ちなみに、今年は発生の終盤で発光飛翔する個体は少なかった。
 山梨のヒメボタルは、今後も継続して観察を行い、当地における生態を明らかにするとともに、写真という記録を残していきたいと思う。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒメボタルの写真
ヒメボタル
CANON EOS 3 / Canon EF 50mm F1.4 USM / FUJICOLOR NATURA 1600 / バルブ撮影 F1.8 60分露光(撮影地:山梨県 2009.07.18)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 4分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2011.07.16)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 5分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2011.07.16)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / バルブ撮影 F1.4 ISO 1600 30秒露光(撮影地:山梨県 2011.07.23)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 1600 4分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2016.07.16)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 1600 15分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2017.07.22)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 1600 8分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2019.07.19)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル撮影 F2.8 ISO 1600 約10分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2021.7.17)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 ISO 1600 5分相当の多重露光(撮影地:山梨県 2024.07.20)
ヒメボタル(山梨2021)
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)
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ホソミモリトンボ(2024その1)

2024-07-22 16:53:12 | トンボ/エゾトンボ科

 ホソミモリトンボは、北海道と本州に生息しているが、本州での確実な生息地は数か所しかない。古い文献に掲載されている生息地も、実際に行って見た所、現在では尾瀬と上高地以外はほとんど絶滅状態であると言える。それは、高山性トンボであり、高層湿原にのみ生息していることで、温暖化と湿原の乾燥化により生息できなくなってきていることが原因と思われる。
 これまで、この極めて希少な種を写真に収めようと試みてきたが、尾瀬と上高地は撮影できる状況ではなく、探し始めて10年目の昨年に、ようやく間近で撮影できる生息地を自力で見つけることができた。当地には4回通い、オスの老個体の飛翔写真は満足できるレベルのもの残すことができた。(参照:ホソミモリトンボ(ホバリング))しかしながら、まだまだ課題を多く残しているため、今年も訪れることにしたのである。

 このホソミモリトンボの生息地も、植生遷移が進んでおり、10年以内には生息環境ではなくなってしまう可能性が大きい。当地は閉鎖的であり、同じ生息環境の場所は数十キロも離れているから、草原化すれば、この場所では絶滅し貴重な生息地がまた1つ失われることになる。と、分かっていても、保全に関しては何もできない。
 唯一できることは、絶滅の速度を早める採集者を排除するために、写真仲間であっても情報を広げないこと。そして本種の生態に関して、当地でのライフスタイルを明らかにし、各ステージの写真を記録として残すことであり、今年は以下の目標を掲げて、7月21日より訪問を開始した。

ホソミモリトンボの観察と撮影の内容
  • 発生時期の調査
  • 活動時間と内容
  • 若い個体の体色に重点を置いた撮影
  • 交尾態の撮影
  • 産卵の撮影

 写真はピンボケが多いが、今回知りえた事柄とともに以下に掲載した。今後も訪問は継続して行い、証拠となる記録を1つでも多く残していきたいと思う。

ホソミモリトンボの観察結果(2024.7.21現在)
  • 7月7日では飛翔個体なし(知人の観察)
  • 朝6時の気温18℃
  • オスは、8時15分頃から摂食活動を開始
  • オスは4頭を確認したが、探雌行動は1頭で1回だけ
  • 30分から1時間おきに摂食活動し、終えると森へと飛び去る
  • 8時半過ぎに産卵を確認
  • 1時間おきくらいに4回ほど産卵(確認の最後は11時。午後は不明)
  • メスは警戒心はなく、人の足元近くの湿地でも産卵
  • 産卵は、湿地に降りて草につかまり、腹部先端を水中に入れる(産み付けるのは、植物か土かは不明)
  • オスの飛来は11時半で終了(午後は不明)

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ(オスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 320 +1/3EV(撮影日 2024.07.21 10:29)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ(メスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 320 +1/3EV(撮影日 2024.07.21 9:33)
ホソミモリトンボの写真
ホソミモリトンボ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 500 +1/3EV(撮影日 2024.07.21 10:54)
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東京のヒメボタル(ブナ林編)

2024-07-15 15:05:08 | ヒメボタル

 東京のヒメボタルの発生が始まって一週間。発生数の状況確認のため7月9日と同じ生息地を訪れた。結果から言うと、前回と発生数はほとんど変わらず、50mくらいの範囲で、30頭余りであった。
 杉林は間伐と下草狩り、ブナ林では乾燥が懸念材料であったが、12日金曜日には雨が降り、訪れた13日も夕方に雨が降ったので、乾燥が原因ならば発生数が増えるだろうと期待したが、思ったほど増えていなかった。ただし、メスが確認できなかったことから、まだこれからが発生のピークになる可能性もある。あるいは、ヒメボタルは成虫になるまで2年を要するため、小規模な生息地では2年周期で発生数が増減するため、今年は少ない年とも考えられるが、環境の急変で減少したならば、復活にはゲンジボタル以上に時間がかかる。飛ぶことができないメスが産卵する場所は局所的であり、産卵数も30~90と少ない。幼虫も狭い範囲で生活しているから、何かあれば多くが一度に死んでしまうからである。
 今のところ何とも言えないが、原因が環境の急変だとしても、この東京のヒメボタル生息地においては、対策を立てることも、具体的な保全策を講じることもできない。ただただ自然に回復するのを待つだけの無力さが悔しい。

 東京のヒメボタル生息地では、肉眼での観察とともに、様々な場面を写真と動画に記録として残しておきたい。他の地区では10年前から観察し何枚もの写真を撮ってきており、この生息地においても4年間でいくつもの証拠を残してきた。先週は、舗装された林道にカメラをセットしたが、今回は、ブナ林にカメラを2台据えた。1台は動画撮影用で、もう1台は向きを変えて写真撮影とした。
 発光の開始時刻は19時20分。9日よりも10分早い。特に生態学的な理由はなく、その個体がたまたま一番早く暗くなる場所にいたのだろう。19時40分頃になると発光する個体が増え始め、45分には飛翔も始まった。
 発光飛翔する個体を見ていると、2~3頭がまとまって飛翔する場合が多く見られた。またどの個体も、おおよそ決まったルートで50m位の範囲を行き来している。漆黒の闇の中で、よく木々にぶつかることもなく飛べるものだと感心する。どこに行ってもそうなのだが、ヒメボタルのオスは、メスが全くいない場所へも飛んでいく。発光飛翔の目的は、勿論飛べないメスを見つけて交尾することなので、周囲を隈なく探索しているのだろうか?あるいは、何頭ものオスが、広範囲を発光飛翔することで、メスに存在を知らせ、メスの発光を促しているのだろうか?
 メスの発光は弱く、下草の葉上よりも地表で発光していることが多い。林道脇などの目立つところにはいるが、発光器が地面を向いているから、光っていても上からでは見つけにくい。限られた時間内で、そのメスとの出会いを果たさなければならないのだから、本能のままに飛び回っているに違いない。
 「ホタルは、なぜ光っているのか」それを理解して初めて、単に幻想的という一言でしか表現できない人たちには分からない"silent sparks"の光景が見えてくる。

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 2分相当の多重 焦点距離フルサイズ換算42mm(撮影地:東京都 2024.07.13)
東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 4分相当の多重 焦点距離フルサイズ換算42mm(撮影地:東京都 2024.07.13)
ヒメボタルの動画(都多摩西部)
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)
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東京のヒメボタル(林道編)

2024-07-10 21:06:32 | ヒメボタル

 東京のヒメボタルの発生が始まった。多摩西部の標高700m以上の山間部には、居所的ではあるが、かなり広範囲にヒメボタルが生息している。2004年から観察を続けているが、どの生息地も概ね19時半頃から発光を始め、21時頃までの活動で、生息地ごとの標高やその年の気候によって発生の時期は多少差があるが、全体では7月6日から20日までの2週間が発生時期である。
 今回は、2021年から毎年定点観察を行っている生息地を訪れた記録である。当地は、標高1,000mを越えるブナとミズナラ、シラカンバの原生林と杉林からなる秩父多摩甲斐国立公園の一角である。知人T氏によれば、今年は7月7日から発生。前日夕方の雷雨が地上に出てくるためのサインとなったようである。例年では7月10日が初見日であるから、若干早いようである。翌日も観察に訪れていただいたが、発生数が少ないと言う。私が訪れたのは9日だが、やはり発生数が少なく、見渡せる範囲で20頭足らずであった。

 9日は、17時半に現地入り。東京都心の最高気温は34.5℃であったが、現地17時半の気温は25℃。心地よい気候の中、生息地内の状況を見て回った。舗装された林道を挟んで杉林とブナの原生林があり、そのどちらにもヒメボタルは飛び交うが、残念なことに杉林は間伐と下草刈りが行われていた。杉林を管理するためには必要不可欠なことであるが、この環境の急変はヒメボタルにとっては打撃である。ただし、杉林を生息環境としてきたからには、長い間で何回もこうした変化はあったはずであり、また、それが生息環境の維持にもつながっているので、今回、ダメージがあっても数年すれば復活するに違いない。
 一方、ブナの原生林では異常なまでの乾燥で、地表はカラカラ状態であった。東京は梅雨でありながら、ひじょうに雨が少なく、ここ数日は晴れで猛暑日の連続である。6日の雷雨も一時的なものであり、大地を潤すまでには至らなかった様である。おそらく、杉林の間伐と乾燥が、昨日までの発生数の少なさの原因であるように思われる。
 当日の日の入り時刻は19時ちょうど。尾根であるから、なかなか暗くならない西の空が良く見え、しかも薄雲が広がっており、生息地内も暗くなるまで時間を要する。それでも19時35分に足元の草地で発光が始まり、その数は少しずつ増えて行った。しかしながら、最盛時期の発生数とは比較にならないほど少ない。先述のように見渡せる範囲で20頭足らずであり、21時過ぎには発光飛翔する個体はいなくなった。まだ発生初期でもあり、次のまとまった雨に期待し、再度訪れたい。

 東京のヒメボタルの生息地では、これまでに杉林とブナ林におけるヒメボタルの飛翔風景は撮影しているので(以下のリンクを参照)、今回は杉林とブナ林を行き来する様子を収めようと林道にカメラを据えた。結果は、予想通りに林道を渡ってくれ、その様子を記録として残すことができた。
 私は「ホタルがどんな環境に生息し、どのように光りながら飛んでいるのかが分かるように、そして、その貴重な場面を証拠として残すこと」を目的として写真を撮影しているが、ここで、少しヒメボタルの写真について触れておきたいと思う。
 私が東京のヒメボタルの撮影に初めて成功した2009年は、OLYMPUS OM-2というフィルムカメラにネガカラーFUJICOLOR NATURA 1600で撮っており、それまでの数年間は試行錯誤でかなり苦労したが、今ではデジタルカメラで誰でも簡単にヒメボタルの写真を写すことができる。フィルムと同じ長時間露光で撮る方は少数で、大多数の方々はカメラ本体やパソコンにおいて比較明合成という方法で仕上げる。比較明合成は、背景もヒメボタルの光も美しい1枚にすることができる画期的な方法であると思う。ただし、連続シャッターでもタイムラグがあるので、比較明合成したものは時間連続性がないため写真芸術、あるいはホタルの生態学的な観点からは評価の対象外となることは知っておかなければならない。
 表現は自由であり、比較明合成によって重ねる枚数も人それぞれであるが、昨今、スマートフォンでニュースを見ていると、ある「ヒメボタルの写真」が話題として取り上げられていた。「幻想的」「こんな光景を見たい」などという反響がすごいと言う。何のことはない比較明合成の写真で、撮影者によれば3時間分をすべて重ねたと言う。まさにヒメボタルの光の洪水である。
 表現は自由であり、どんな写真に仕上げようと撮影者の自由であり、それに対して何かを言うつもりはないが、その写真を見た人々が「写真と同じ光景が実在する」と勘違いしてしまうことが恐ろしい。かつてヒメボタル観賞会を行った時、初めてヒメボタルを見たと言う女性の感想は「ガッカリした」であった。写真のようにたくさん光っているものと思っていたらしい。「写真」というものや「撮り方」の知識がなければ、勘違いするのはやむを得ないことかもしれないが、実際に生きているヒメボタルを前にして、感動どころかガッカリとは、こちらがガッカリであった。世にあふれるヒメボタルの写真に騙されてはいけない。

東京のヒメボタルのブログ記事一覧

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 2分相当の多重 焦点距離35mm(フルサイズ換算)(撮影地:東京都 2024.07.09)
東京のヒメボタルの写真
東京のヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 7分相当の多重 焦点距離35mm(フルサイズ換算)(撮影地:東京都 2024.07.09)
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ホタルの谷(東京)

2024-07-09 11:00:43 | ゲンジボタル

 ホタルの谷は、東京都内にもある。そういった名前の場所があるわけではなく、私が勝手にそう呼んでいるだけだが、多摩西部の標高約300mの山間部にある。吸い込まれそうな細い深谷の底を流れる渓流にゲンジボタルが生息しているのである。
 多摩地域は、2019年10月12日に通過した台風19号が1日で550mmを超える大雨を降らし、川は濁流と化した。10月一か月の平年降水量が200mm前後であるから、たった1日でそれを大きく上回る雨が降ったのである。これにより、各地で大きな被害が出たが、多摩西部の渓流に生息するゲンジボタルの幼虫やカワニナの多くが流され、翌2020年の発生は激減し、わずか数頭しか飛ばなかった。2022年7月4日に訪れた際は、5~6頭が飛翔しており復活の兆しが見え始めていた。そこで今年、7月2日と4日に様子を見に行ったところ、両日ともに40頭を超えるゲンジボタルが飛翔しており、ようやく回復したと言えるだろう。
 大雨や台風などによる増水は、長い歴史の中で何度も起こっている。そのたびに多くの幼虫たちが流されるが、決して絶滅はしない。それは、ゲンジボタルは1年で成虫になる個体の他、2年から4年かかって成虫になる個体もいるからである。小さな幼虫ほどわずかな隙間に隠れて、かなりの水量でも流されることはない。もし、すべての幼虫が揃って成長したならば、一気に流されてしまう可能性が高いが、成長をずらすことで生き残る確率が高くなる。環境変化の大きい河川において生き残りの戦略の1つであると言える。

 ホタルの谷には、中腹に幅2mほどの林道があり、奥まで進むと川原まで降りることができる。岸の両側は、急斜面の杉林が迫っており、見上げて見える空は狭い。その川原に17時半から待機した。
 都心は猛暑日となったが、さすがにこの谷は涼しい。18時半頃では25度を下回り、まくっていた長袖シャツの袖を下した。次第に暗くなると、こんな谷底の渓流に一人では心細く、しきりに周囲を見渡しながらひたすら待つ。すると19時半。1頭が光り始め、2分後には急にその数が増え、20時を過ぎた頃には40頭を超えるゲンジボタルが発光飛翔を繰り返した。奥の小さな滝の上は木々が川まで迫っているので、周囲より一段と暗くなっているため、その場所で飛び交う個体が多いが、しばしば、上流から下流へ、下流から上流へと行き来もする。時折、川面から2mほどの高さを飛ぶ個体もいるが、ほとんどが10m以上の高い所を飛び交っている。
 観賞するには、谷底から星を見るように見上げるのが一番である。このようなホタルの谷は、東京都内では数少ない。

 ホタルの谷においては、写真と動画を撮影し、2024年現在におけるゲンジボタルの発生状況と周辺環境の記録を残すことができた。写真は縦構図と横構図のもの、そして谷底から見上げて星と一緒に撮ったものを掲載した。撮影は19時半から21時まで行っているが、90分間に撮ったカットをすべて比較明合成することはしていない。動画においては、オスたちの集団同期明滅の様子を捉えているので、ご覧頂くと西日本型ゲンジボタルであることが分かる。
 当地は、保護も保全もされていない全くの自然発生地であるが、50年ほど前に西日本型ゲンジボタルは放された経緯があり、そのホタルが定着している。このような個所は近隣にいくつかある。ゲンジボタルの遺伝子は、西日本と東日本で明確に異なっているが、それが分かったのは今から25年程前である。当時はどのゲンジボタルも一緒と思われていたので仕方がない。今となっては、東京都内に生息している東日本型のゲンジボタルが絶滅しないように守るしかなく、そのために環境保全や交雑を防ぐ手立てが必要だが、今日でも、兵庫県等の養殖業者から購入して放ち、ホタル祭りを行っている自治会などがあるというから悲しくなる。
 そもそも東日本型ゲンジボタルは、ホタルの谷のような山間部の深谷には生息していない。里山の河川中流域や谷戸の細い流れなどに生息している。しかしながら、そうした場所は開発や耕作放棄で荒れ果て、あるいは農薬の散布で一気に死滅し、一部を除いてかつての光景はほとんど見られない状況である。東日本型ゲンジボタルが生息する里山環境を保全するよりも、人が手を入れなくて済む手間のかからない場所に飛んでくれれば、そんな楽なことはない。西日本型ゲンジボタルの生息環境ならば、産卵数が多いからカワニナなどがいれば適応が早く、定着するのも自然災害からの復活も早い。今、ゲンジボタルが見られるホタルの谷をはじめ、玉川上水や野川なども、皆、西日本型ゲンジボタルである。
 勿論、放たれた西日本型ゲンジボタルに罪はなく、乱舞する様子は素晴らしく美しい。定着しているならば、現状を保全する価値はある。しかしながら、東京都内において本来あるべき光景も忘れてはならない。観賞だけのために養殖され放された料亭やホタルの庭園のホタルを見て楽しんでいる間にも、八王子市川町の谷戸に舞うゲンジボタルとヘイケボタルは、今尚、開発の危機にさらされている。あきる野市の里山「横沢入り」も、保全が不十分なために20年前の1/10以下にまで発生数が減少したままである。江戸時代に庶民の間で夏の風物詩として行われていた「蛍狩り」の光景は面影すらなく、戻ることはないが、自然を壊す一方で違う環境を作ってもいる。我々のDNAに刻み込まれた文化さえもすり替えようとしているように感じてしまう。
 里山の環境保全や再生、文化の問題だけではなく、昨今のゲリラ雷雨や猛暑酷暑の連続という異常気象。地球規模で起きている異変は深刻である。我々は、今まさに何が何でも越えなければならない「深谷」に直面しているが、一人谷底で嘆いても天には届かない。

以下の掲載写真は、縦構図は683×1024ピクセルで、横構図は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ホタルの谷の写真
ホタルの谷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 1分相当の多重 焦点距離30mm(撮影地:東京都 2024.07.04 20:07~20:08)
ホタルの谷の写真
ホタルの谷
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1600 4分相当の多重 焦点距離30mm(撮影地:東京都 2024.07.04 20:07~20:11)
ホタルの谷の写真
ホタルの谷
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 20秒 ISO 1250 8分相当の多重 焦点距離約27mm(35mm換算)(撮影地:東京都 2024.07.02 19:56~20:04)
ホタルの谷の写真
ホタルの谷(谷底から見上げて)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 2000 4分相当の多重 焦点距離30mm(撮影地:東京都 2024.07.04 20:51~20:55)
ホタルの谷(東京)
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンに しますと高画質でご覧いただけます)
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沖縄のトンボたち(2024)

2024-07-06 10:53:09 | トンボ

 3年連続の沖縄遠征(6/26~29)。今年は、自己満足の範疇であるが充実した4日間であり、コノハチョウ、カラスヤンマ、天の川という主要な撮影目標をすべて達成し、その他の昆虫、特にトンボ類に関しては多くの写真を撮ることができた。これは、過去2回の知識と経験があってこその成果であった。
 沖縄には、那覇市内に妹が移住して住んではいるが、時期になると自宅近くでホタルが出たと連絡があるくらいで、トンボチョウなどの生息場所を知っている訳でもない。また、現地に昆虫に詳しい知人もおらずガイドを頼むこともできない。したがって、トンボやチョウの生態や生息環境を学んだ上で、現地の自然環境をインターネットの情報やGoogleMapのストリートビューなどから調べて計画を立て、後は実際に行って見てみるしかない。過去2回これを繰り返し、積み重ねた知識と経験が今回の成果につながったと言える。しかし、それだけではない、遠征日程の決定と発生時期、何より天候が良かった。遠征の飛行機・レンタカー・ホテルは、半年も前に予約しているので、天候は良いことを祈るしかない。もし沖縄の梅雨明けが伸びていれば、多くは撮れなかっただろう。結果的には、運の良さを使い果たさんばかりであった。
 季節的に未発生の種は勿論、チョウ類に関してはほとんど撮影しておらず、更にはホタルも観察のみであるから、今度は時期を変えて、また沖縄に行って見たいと思うが、過去に訪問している宮古島や石垣島、未訪問の西表島も魅力的である。
 最後に、今回の沖縄遠征での撮り納めの1枚「ベニトンボと沖縄の空」の写真とともに、美しい大自然がいつまでも残るよう心より願い、報告を終わりたい。

ベニトンボと沖縄の空の写真
ベニトンボと沖縄の空
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 100 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.29 11:13)

 以下には、今年、沖縄で撮影したトンボ類で先に掲載した4種を除いた6種の写真を掲載した。尚、初見初撮影の3種についての解説は省く。サムネイル写真は、 元画像は1920×1280ピクセルで投稿しており、写真をクリックすると別窓で拡大表示される。

  • ハネビロトンボ Tramea virginia (Rambur, 1842)
  • アカナガイトトンボ Pseudagrion pilidorsum pilidorsum (Brauer, 1868)(初見初撮影 116種類目)
  • オキナワオジロサナエ Stylogomphus ryukyuanus asatoi Asahina, 1972(初見初撮影 117種類目)
  • ヒメイトトンボ Agriocnemis pygmaea pygmaea (Rambur, 1842)(初見初撮影 118種類目)
  • コフキヒメイトトンボ Agriocnemis femina oryzae Lieftinck, 1962
  • セスジイトトンボ Paracercion hieroglyphicum (Brauer, 1865)
ハネビロトンボの写真 ハネビロトンボの写真 アカナガイトトンボの写真 アカナガイトトンボの写真 オキナワオジロサナエの写真 オキナワオジロサナエの写真 ヒメイトトンボ(メス)の写真 ヒメイトトンボ(メス)の写真 コフキヒメイトトンボの写真 コフキヒメイトトンボの写真 コフキヒメイトトンボ(未成熟メス)の写真 コフキヒメイトトンボ(成熟メス)の写真 セスジイトトンボの写真 セスジイトトンボの写真
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オオキイロトンボ(飛翔と産卵)

2024-07-05 09:57:57 | トンボ/トンボ科

 オオキイロトンボ Hydrobasileus croceus (Brauer, 1867)は、トンボ科(Family Libellulidae)オオキイロトンボ属(Genus Hydrobasileus)で、沖縄本島の他、渡嘉敷島、久米島、石垣島、西表島に分布する国内のトンボ科では最大種である。平地や丘陵地の挺水植物がよく繁茂する池沼や水田・水路に生息している。翅全体が黄橙色に着色しており、後翅の広角部に褐色の部分があり、サイズと独特の翅の模様で他種とは簡単に区別できる迫力あるトンボである。
 オオキイロトンボは、昨年の7月7日に沖縄で撮影し本ブログに「オオキイロトンボ」として掲載しているが、タンデム飛翔2カットのみであった。そこで、今年も同じ生息地に行って、今回は2回訪問してみたところ、たいへん個体数が多く、朝7時頃から目の前で連結飛翔するペアや産卵する多くの個体がおり、飛翔撮影の楽しさを味わうことができた。
 まず、連結飛翔では、メスがオスの腹部先端に6本の脚でつかまっていることが面白い。他のトンボ類ではほとんど見られない仕草である。メスは、連結飛翔しながら腹部先端に黄緑色の卵塊を作っていく。そして連結したまま1~2回ほど打水産卵した後、連結を解き単独産卵に移る。メスはホバリングしながら腹部先端に卵塊を作っていき、ある程度の塊になると1回だけ打水して産卵を行う、この間、オスはメスの近くでホバリングしながら警護飛翔している。メスは、何回でも同じ行動を繰り返していた。
 こうした様が、午前11時頃まで周囲の至る所で行われており、打水産卵の瞬間は捉えることができなかったが、それでも十分にオオキイロトンボの観察と撮影はできたように思う。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

オオキイロトンボ(連結飛翔)の写真
オオキイロトンボ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 800(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:34)
オオキイロトンボ(連結飛翔)の写真
オオキイロトンボ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 1000 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.29 9:24)
オオキイロトンボ(連結飛翔)の写真
オオキイロトンボ(連結飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 1000 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.29 9:58)
オオキイロトンボ(飛翔)の写真
オオキイロトンボ(上がオスの警護飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 400(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:41)
オオキイロトンボ(オスの警護飛翔)の写真
オオキイロトンボ(オスの警護飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 1000(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:53)
オオキイロトンボ(メスの飛翔)の写真
オオキイロトンボ(メスの飛翔)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:49)
オオキイロトンボ(メスの飛翔)の写真
オオキイロトンボ(メスの飛翔/腹部に卵塊を作りはじめる)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1600(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:39)
オオキイロトンボ(メスの飛翔)の写真
オオキイロトンボ(メスの飛翔/腹部に卵塊)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1600(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:36)
オオキイロトンボ(メスの飛翔)の写真
オオキイロトンボ(メスの飛翔/腹部に卵塊)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:沖縄県 2024.06.28 7:33)
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カラスヤンマ

2024-07-04 13:23:48 | トンボ/ヤンマ科

 カラスヤンマ Chlorogomphus brunneus brunneus Oguma, 1926 は、ミナミヤンマ科(Family Chlorogomphidae)ミナミヤンマ属(Genus Chlorogomphus)のトンボで、沖縄本島北部のやんばる地域にのみ分布している。山間の渓流源流域に生息し、4月中旬~8月下旬(5月中旬~6月下旬に多い)に出現する体長70㎜~83㎜内外の大きなヤンマである。メスの翅がカラスのように黒褐色であることが名前の由来であるが、翅色には個体差があり、翅全体が黒褐色のものや透明部分が現れる個体もいる。
 ミナミヤンマ科は、国内では1属3種2亜種が分布しており、四国南部、九州南部、薩南列島、トカラ列島、奄美大島、徳之島にはミナミヤンマが、沖縄本島にはカラスヤンマとオキナワミナミヤンマが、慶良間諸島にはアサトカラスヤンマが、そして西表島にはイリオモテミナミヤンマがそれぞれ分布している。分布が重なる沖縄本島のカラスヤンマとオキナワミナミヤンマの違いについては、カラスヤンマのオスの翅の先端に小さな褐色斑があるので区別でき、カラスヤンマのメスは、翅が黒褐色なので一目瞭然である。

 カラスヤンマもコノハチョウ同様に今回の沖縄遠征の主目的。一昨年はオスの飛翔写真はピンボケで、メスは産卵を目撃しただけで終了。昨年は1頭も目撃すらできなかったので、今度こそはと気合を入れての遠征である。
 撮影場所は、当初3ポイントを計画した。Aポイントは、畑や草地が広がる農村地区。Bポイントは、一昨年に産卵を目撃した渓流。Cポイントは、生息環境からGoogleMapで見当をつけた河川の源流である。Cポイントは、今回初訪でカラスヤンマの生息を確認しているわけではなく、インターネットにも情報が出ている訳ではないので、遠征最終日に立ち寄る程度の計画にしていた。

 遠征初日は、那覇からレンタカーですぐさま他のトンボの生息地に向かい撮影したが、Cポイントの場所が、そこから遠くはなかったので下見を兼ねて行って見ることにした。深い谷を下りて行った幅2mほどの源流は、小さな滝や流れが早い部分もあるが、勾配が緩やかな所には、所々に小さな粒の礫や砂が堆積した浅瀬があり、何と3つの浅瀬それぞれでカラスヤンマのオスが5メートルほどの範囲を行ったり来たり 探雌飛翔を繰り返していた。そして14時半を過ぎるとメスが飛来。産卵場所を飛翔しているとオスにつかまり交尾態となって上空へ。その姿を目で追っていると、撮影可能な高さと場所の枝先に止まったのである。
 このCポイントには遠征四日間で3回訪れ、蒸し暑い中で長時間待機しながら観察をしていると、オスは、午前9時頃から探雌飛翔を始め、途中、枝に止まって休憩するのだろう現れない時間帯もあるが、夕方17時になっても飛翔を繰り返していた。一方メスは、午前10時から11時の間に1~2回ほど産卵のために飛来し、午後は14時半から16時半頃の間に数回飛来していた。木の上に止まっているようで、いつも上の方から降りてくるように思われた。ただし、常に数頭のオスが待機しているために、メスが飛来してもオスに連れ去られてしまうか、あるいは産卵せずに飛び去ってしまうので、産卵の様子を観察することも撮影することも叶わなかった。オスを網で捕獲しておかなければ、産卵を観察し撮影することは、わずかな期間では難しいと思われた。

 Aポイントの農村地区には、早朝に1回、夕方に2回訪れた。夕方においては、18時半頃から草地の上を低空で飛ぶカラスヤンマのメスが何頭も現れた。いわゆる黄昏飛翔である。あまり羽ばたかず滑空するような飛び方で、草地の上の虫を捉えていた。しばらく飛翔した後、どの個体も樹林のほうへ飛び去ってしまい、撮影はできなかった。
 朝は4時過ぎから待機していると、日の出時刻を過ぎた頃(この朝は雲がかかり朝陽が遮られていた)1頭のメスが上空を旋回しながら飛んでいるのが目に入った。その後、数が増えて全部で4頭のメスが同じ場所で飛翔し、飛んでいる虫を捉えていた。この農村地区は7時に切り上げ、別のトンボを撮影するために移動を開始すると、海岸沿いの松林の上を10頭近くのメスが、群飛している様子も見られた。オスもいるのだろうと思うが、翅の黒いメスが目立つので確認はできていない。この光景も、3年目の訪問で初めてである。

 カラスヤンマの写真を撮ると言う今回の遠征の大きな目標は、初日から期待以上の成果を残すことができた。結局、遠征の四日間でAポイントとCポイントに3回ずつ訪れ、Bポイントの渓流には一度も行かなかったが、オスの飛翔と枝止まり、メスの黄昏飛翔、そして交尾態を2回も撮影することができた。また、メスの翅色については全体が黒褐色の個体や透明部分が現れている個体など個体差も写すことができた。Cポイントには遠征初日に下見のつもりで立ち寄ったが、そうしなければ今回の成果は少なかったかもしれない。
 以下には、今回撮影できたカットの中から、先の記述に合うものを選んで掲載した。3年目にしてこれほど様々なシーンが撮影できたのは、発生時期や天候など様々な条件の合致もあるが、一言でいうと「運が良かった」のだろう。残るシーンは、産卵である。
 カラスヤンマは初撮影の種で、私が撮影した「昆虫リストと撮影機材」のリスト「蜻蛉目」で115種類目となった。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

カラスヤンマ(オス)の写真
カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/60秒 ISO 400 1/3EV Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.27 11:08)
カラスヤンマ(オス)の写真
カラスヤンマ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F3.5 1/60秒 ISO 400 +1EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 13:18)
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)の写真
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 100 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 6:06)
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)の写真
カラスヤンマ(メスの黄昏飛翔)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 500 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 5:43)
カラスヤンマの写真
カラスヤンマ(産卵のための現れたメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 3200 Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:46)
カラスヤンマの写真
カラスヤンマ(産卵のための現れたメス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 3200 Nissin i40 E-TTL評価調光(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:46)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200 +1 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.26 16:11)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/200秒 ISO 3200 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.26 16:36)
カラスヤンマ(交尾態)の写真
カラスヤンマ(交尾態)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.28 11:27)
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コノハチョウ

2024-07-03 10:31:53 | チョウ/タテハチョウ科

 コノハチョウ Kallima inachus eucerca Fruhstorfer, 1898 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)タテハチョウ亜科(Subfamily Nymphalinae) コノハチョウ族(Tribe Kallimini)コノハチョウ属(Genus Kallima)のチョウで、翅の裏面が枯葉のように見えることが和名の由来である。模様は個体変異が多く、1頭ずつ模様が異なると言ってもよい。
 コノハチョウ属はインド、東南アジア地域を中心に10種が知られ、コノハチョウは、インド北部からヒマラヤ、インドシナ半島、中国、台湾に、そして日本国内では沖縄本島、沖永良部島、石垣島、西表島、徳之島などの南西諸島の島々に分布しており、日本に分布するものは7亜種に内の Kallima inachus eucerca とされる。
 本種は、丘陵から山地にかけての日ざしの比較的多い川沿いの樹林内やその周辺に多くみられ、幼虫はオキナワスズムシソウ、セイタカスズムシソウなどを食べ、成虫は年に複数回発生し、3月頃から晩秋まで見られ、成虫で越冬する。訪花はせず、日中にアカメガシワなど樹液や腐った果実に集まる。また、高所を素早く飛行し、林縁や林冠で占有行動を取っている。越冬態は、成虫である。
 コノハチョウは、環境省版レッドリストで準絶滅危惧(NT)にリストされており、都道府県版レッドリストでは、鹿児島県(平成26年改訂)で準絶滅危惧としている。昭和44年(1969年)には、沖縄県の天然記念物に指定され、昭和48年(1973年)には、名護市の「市民の蝶」にも指定されており、採集は禁止されている。

 コノハチョウの撮影は、今回の沖縄遠征の主目的の1つであった。一昨年は、石垣島では見られず、沖縄のやんばるでは翅がボロボロの1頭を見かけただけ。昨年は1頭も見ることすらできなかった。今年こそ、との思いで、これまで訪れたことのない場所に行って見ることにした。
 現地に午前9時頃に到着すると、早速、飛び回るコノハチョウを発見。昨年までの探索は何だったのかと思えるほど、周囲には10頭を超える数がいる。頭上の木の葉に止まっていたり、地面にも止まるが、すぐに飛び立って写真に写すのは難しい。そこで、二か月前から準備しておいたトラップが役に立った。パイナップルを黒砂糖を溶かした35度の泡盛に漬け込んだものである。その液を木の幹に塗ると、次から次へと吸汁にやってきた。習性なのだろう。面白いことに、どの個体も頭を下にして止まる。翅を閉じたり開いたりしながら吸汁しているが、敏感で近くによると飛んでしまう。それでも、木の葉のような翅裏と、びっくりするくらい鮮やかな色彩の翅表を十分に写すことができた。
 コノハチョウは、初見初撮影の種で、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」のリスト「鱗翅目」で149種類目の撮影となった。

 今回の沖縄遠征で撮影できたチョウ類は、コノハチョウだけで、他の昆虫写真はすべてトンボ類であった。未撮影のフタオチョウ、イワカワシジミ、リュウキュウウラボシシジミも計画には入れていたが、時期的に難しく、また、過密スケジュールと暑さから気力と体力が奪われ断念してしまった。今後、沖縄に行く機会があれば挑戦したいと思う。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

コノハチョウの写真
コノハチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 400 1+2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:07)
コノハチョウの写真
コノハチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 3200 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:02)
コノハチョウの写真
コノハチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 3200 2/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:02)
コノハチョウの写真
コノハチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 400 1/3EV(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:19)
コノハチョウの写真
コノハチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:05)
コノハチョウの写真
コノハチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 2000(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:16)
コノハチョウの写真
コノハチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県 2024.06.27 9:17)
天然記念物・コノハチョウ
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オキナワトゲオトンボ

2024-07-02 11:49:00 | トンボ/トゲオトンボ科

 オキナワトゲオトンボ Rhipidolestes okinawanus Asahina, 1951は、トゲオトンボ科(Family Rhipidolestidae)トゲオトンボ属(Genus Rhipidolestes)のトンボ。トゲオとは「棘尾」の意味で、オスの腹部第9節背面にトゲ状の小さな突起があることに因んでいる。
 昨年は、沖縄本島に分布する同属のヤンバルトゲオトンボ Rhipidolestes shozoi Ishida, 2005 を撮影しているが、2005年までは、オキナワトゲオトンボとヤンバルトゲオトンボは、同一種のリュウキュウトゲオトンボとされていた。しかしながら、トゲオトンボ属の分類整理及び種の細分化がなされ、またDNAを使った分子系統解析が行われ、沖縄本島北部の山原(やんばる)だけに分布すえう種をヤンバルトゲオトンボとし、名護市の平南川、源河大川、大浦川以西、および渡嘉敷島に分布する個体群をオキナワトゲオトンボとしている。
 本種は、樹林に囲まれた河川源流域に生息し、オスの翅には先端には、ヤンバルトゲオトンボにはないノシメトンボと同様な明瞭な褐色斑がある。今回の沖縄遠征では、名護市の林道沿いで山の斜面から水がしみ出している場所で見つけることができた。残念ながら1頭のみであったが、初見初掲載のトンボで、ブログ記事「昆虫リストと撮影機材」「蜻蛉目」で114種類目の撮影となった。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

オキナワトゲオトンボの写真
オキナワトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:10)
オキナワトゲオトンボの写真
オキナワトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/50秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:07)
オキナワトゲオトンボの写真
オキナワトゲオトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 3200(撮影地:沖縄県 2024.06.26 14:09)
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リュウキュウルリモントンボの青メス産卵

2024-07-02 11:45:57 | トンボ/モノサシトンボ科

 リュウキュウルリモントンボの青メス産卵を撮影した。

 リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis Asahina, 1951 は、2022年に沖縄を訪れた際、6月23日に撮影し本ブログ記事「リュウキュウルリモントンボ」として掲載しているが、今年は、青メス(オス型メス)の産卵シーンを撮ることができた。
 リュウキュウルリモントンボは、オスメスともに未成熟の時は黄色い体色で、オスは成熟に伴い体色が青く変化する。一方、メスは黄色のまま成熟する個体と、オスに似た青色になる個体がいる。青メス(オス型メス)は、ルリボシヤンマ属(Genus Luehdorfia)などでも表れる変異だが、環境要因による地理的変異と思われる。本種は、沖縄北部に広く分布しているが、青メス(オス型メス)が見られるのは、ごく限られた生息地で、今回訪れた場所では多く見られるようである。(青色でない本来の体色であるメスには、出会っていないのが残念である)
 産卵は連結静止型で、多くは水際のコケや落葉などに行うが、目撃したメスは、山の斜面からわずかに染み出る湧水によって湿った砂利に行っていた。いったい、そこで孵化した幼虫はどこで過ごすのだろうか。

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リュウキュウルリモントンボの青メスの写真
リュウキュウルリモントンボの青メス
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F7.1 1/160秒 ISO 1600(撮影地:沖縄県 2024.06.26 13:54)
リュウキュウルリモントンボの青メス産卵の写真
リュウキュウルリモントンボの青メス産卵
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F7.1 1/125秒 ISO 1600(撮影地:沖縄県 2024.06.26 13:54)
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沖縄辺戸岬から天の川

2024-07-01 21:00:37 | 風景写真/星

 沖縄辺戸岬から天の川を撮ってきた。

 3年連続三泊四日の沖縄遠征。今年は、6月26日(水)から29日(土)の期間、昆虫は、これまで撮れなかったカラスヤンマとコノハチョウ、風景では天の川を主な撮影目的として行ってきた。
 昨年同様に成田空港から8時10分発のジェットスターGK337便に搭乗し、那覇11時15分着。レンタカーでやんばるを目指し、各種トンボを撮影後に天の川撮影を行ったが、一昨年は国頭郡今帰仁村の古宇利島から撮影し(沖縄の天の川)、昨年は、東村の高江展望台から撮っている。(七夕の天の川(沖縄にて))今年はどこから撮ろうかと、色々と悩んだ結果、沖縄本島最北端の辺戸岬(へどみさき)から撮る事にした。なぜなら、沖縄本島で一番暗い空だからである。
 空の暗さを評価する値ボートル・スケール (The Bortle scale ) で表すと、辺戸岬は21.93等/秒角2で、マックスが22等/秒角2であるから、いかに暗い空であるか分かる。昨年、撮影した高江展望台は、同じ沖縄でも21.85等/秒角2であり、今年5月に行った大台ヶ原は21.81等/秒角2である。ちなみに、西表島などは22等/秒角2で、日本一暗い空がある。
 問題は天候である。沖縄は、6月20日に昨年より5日早く梅雨明けしており、連日の晴れマーク。梅雨明け一週間は天候が安定しているが、その後は雲が出やすく夕立もあるので、日程的には微妙である。しかしながら、当日は那覇に到着した時点から雲1つない快晴。その天候は夜まで続いた。
 20時頃までトンボを撮影した後、辺戸岬へ向かう。平日の国道58号線は、車など走っていない。30分ほどで辺戸岬の駐車場に到着し、海が見える場所へ向かった。風もない。見上げれば、昨今では見たことがない「天の川」が横たわっている。まずその大きさに圧倒される。見えない部分もはっきりと見える。勿論、色までは見えず「薄い雲」のようであるが、ここでしか見ることのできない壮大さである。
 早速、南から北まで見渡せる場所でカメラをセットし、撮影を始めた。撮影中に、オキナワスジボタルが1頭、発光しながら飛んでいた。昨年も高江展望台で1頭見たが、この辺戸岬でも生息していることに驚く。今回は、時期的に沖縄のホタルは撮影計画に入れておらず、この時も写すことができず記録は残せなかったが、素晴らしい天の川とともに、しっかりと記憶には残せた。
 いかに暗い空で素晴らしい天の川でも、写真に写せなかったら、そこで出会ったホタルと同じで記憶にしか残せない。私は、星景写真は素人であるから、赤道儀も明るい単焦点広角レンズも 持っていない。今年は、嬬恋村と大台ヶ原で天の川を撮っているが、上手く写すことができていない。今回はマップカメラでレンズを借りようとも思ったが、結局、いつもの Canon EF17-35mm f/2.8L USM で撮る事にした。結果、インターネット上で見る天の川の写真のような本来の天の川の色と形までは表せず、また作品とも言えないものだが、沖縄辺戸岬から天の川の記録は残せたのではないかと思う。(日程的にはあと二晩撮るチャンスはあったが、この夜以外は雲が広がり撮ることができなかった。)

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

沖縄辺戸岬から天の川の写真
沖縄辺戸岬から天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F3.2 15秒 ISO 6400(撮影地:沖縄県辺戸岬 2024.06.26 20:51)
沖縄辺戸岬から天の川の写真
沖縄辺戸岬から天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 2500(撮影地:沖縄県辺戸岬 2024.06.26 21:34)
沖縄辺戸岬から天の川の写真
沖縄辺戸岬から天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F3.2 15秒 ISO 6400(撮影地:沖縄県辺戸岬 2024.06.26 21:35)
沖縄辺戸岬から天の川アーチの写真
沖縄辺戸岬から天の川アーチ
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 2500 ×5枚をパノラマ合成(撮影地:沖縄県辺戸岬 2024.06.26 21:37)
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