ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

岐阜県郡上市の和良蛍

2024-06-20 12:13:44 | ゲンジボタル

 岐阜県郡上市の和良蛍を、今年も観察し、写真と動画を撮影してきた。和良町は、和良川や鬼谷川などに国の特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオが生息していることで有名だが、ゲンジボタルも見ることができる。地元では和良蛍と呼んでおり、おそらく本州一の発生数であろう。
 鬼谷川の東野地区では、およそ1kmにわたって1,000頭以上のゲンジボタルが乱舞し、2つの違った景観を見ることができる。1つは、ファブリダムによって流れが穏やかになる場所では、平面的ではあるが対岸で乱舞するゲンジボタルの光が水面に映り、光の数が2倍になって見える。一方、川の蛇行を正面から見る下流の場所では、ゲンジボタルの舞いが立体的に見えるのである。どちらも西日本型ゲンジボタル特有の2秒間隔の発光で、一斉に集団同期明滅する様は圧巻である。

 和良町には一昨年と昨年の6月に成虫の飛翔写真と動画を撮影(参照:郡上和良のホタル)、昨年の12月はホタル勉強会の講師として招かれ、今年の4月には幼虫の上陸観察で訪れている。私がこの場所に惹かれた理由は、まったくの自然発生地で乱舞を見ることができるということもそうだが、毎年多くのゲンジボタルが発生する理由が知りたいのである。興味深いことに、幼虫のエサとなるカワニナが非常に少ない。おそらく数十億匹いるだろう幼虫の成長を支えるだけのカワニナがいないのである。富山県ではミミズを食べている様子が観察されているので、カワニナ以外のものを食べている可能性は高いが、それが何かは分かっていない。また、発光飛翔の時間が長いことも挙げられる。午前0時近くまでオスが飛びまわっているのである。こうした素晴らしい場所を、今後も保全したく地元の「守る会」の皆さんに微力ながら協力もしたいとの思いもあり通っている。
 先に記したが、4月には幼虫の上陸観察で訪れている。上陸場所を保全するためには、どこに上陸し潜土するのか確かめなければならない。西日本型であるから、数百という幼虫が集団で上陸することを期待し、上陸条件が合致する日に行ってみたが、何と観察できたのはわずか2頭。もしかしたら今年の発生は極端に少ないのではないかという懸念があったが、成虫の発生は、現地の「守る会」の観察結果を頻繁にお知らせ頂いており、昨年に比べて発生初日が数日早く5月30日に7頭が飛び始め、6月5日では100頭を超え、順調に数が増えているとのこと。実際に6月10日と17日、いずれも月曜日に訪れてみると、いったい、いつどこにこれだけの幼虫が上陸したのだろう!?と不思議に思える程の成虫が発生していた。
 まず6月10日はファブリダム付近で観察を行った。気温21度でくもり。17時半頃から待機したが、残念なことに護岸より上の乱舞する場所の草が綺麗に刈られてしまっていた。自治会が行ったそうだが、これではメスの居場所がない。19時40分から発光が始まり、20時を超えた頃には約200頭が発光飛翔したが、昨年よりも数が少なく、21時を待たずに終息傾向になってしまった。その後下流に移動すると、そちらは両岸と中洲に草が茂っていて、多くの数が発光飛翔しており、21時半になっても減ることはなかった。
 翌週の17日は、15時から産卵しそうな場所など周囲の環境を見て回り、17時から下流の場所で待機した。天気予報では21時から雨であったが、18時ころからぽつぽつと降り始め、19時には本降りの雨となってしまったが、ゲンジボタルは、19時半から発光を始めた。気温は18度で肌寒いが、発光数は少しずつ増え、20時頃には見渡せる範囲だけで500頭を超えるゲンジボタルの乱舞が見られた。晴れていれば、月齢10.6の半月よりも大きな月明かりが、南の空40度の高さに輝くので、ここまで乱舞することはなかったであろう。飛翔中に雨粒に打たれて落下する個体もいたが、本降りの雨でも何ら変わらず飛び回るオスたちの行動には、子孫を残したいと言う本能が強く感じられた。

 以下には、写真5枚と動画を掲載した。動画は、3年間で撮影した記録を編集した。岐阜県郡上市の和良蛍の魅力が伝わるものになっていると思う。
 写真1~3枚目は、17日に下流付近撮影したもので、時系列的に発光飛翔が増えている様子を表している。4枚目は10日にファブリダム付近で撮ったもの、そして5枚目は、国道256号線および県道329号線を通る車のライトが生息域をなめるように照らしている様子を写したものである。
 車は、地元の方々の生活の為であるから仕方のないことだが、平日で20時から21時で20台ほどが通過する。川面よりかなり高い位置を照らすことと、四六時中ではないことが救いであるが、週末ではホタル観賞に来られた車が加わるから大変な光害となることが想像できる。写真から、平日であってもどれだけ酷い光害であるかは分かっていただけるだろう。光が当たるたびに発光をやめてしまう。
 ゲンジボタルの発光飛翔の時間帯は、概ね21時を過ぎると一旦終息するが、この和良蛍は、23時を過ぎてもオスが活発に飛翔している。深夜になるほど車の通行量が減ることとも関係しているのかもしれない。例を挙げれば、都内のあるホテルの庭園にいるヘイケボタルは、客室の灯りが消える23時頃から発光を始める。和良町において、4月に2頭しか確認できなかった幼虫の上陸も、深夜に行われているのかもしれない。

 これまでの観察結果を踏まえて、岐阜県郡上市の和良蛍を守る上での重要な課題をいくつか挙げてみた。

  • 産卵場所の調査
  • 幼虫の食べ物調査(カワニナが他地域に比べて極端に少ない)
  • 幼虫の上陸場所の調査(どこに潜土するのか、上陸時間と光害の関係)
  • 草刈の時期の検討
  • 光害対策(車のライト及び観賞者の懐中電灯)

 近年では、日本各地において台風及び線状降水帯による大雨と洪水によって、ゲンジボタルの生息地も大きな被害を受けている中、岐阜県郡上市の和良蛍は、ここ数年、毎年コンスタントに数千頭が乱舞している。環境や生態系が豊かなだけではなく、地形や川の形状等の物理的特性やゲンジボタルの生態の地域特性もあろう。登録云々に関わらず、ここは「自然遺産」であり「天然記念物」であると思う。上記の事柄を調査し対策を立て、この貴重な場所を今後とも存続させなけれならない。私も、協力は惜しまない。

以下の掲載写真は、横位置は1920×1280ピクセルで、縦位置は683×1024ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画は 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂き、暗い部屋でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

岐阜県郡上市和良町のゲンジボタルの写真
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 10秒 ISO 400 2分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市 2024.06.17)
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタルの写真
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 1000 1分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市 2024.06.17)
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタルの写真
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 1600 7分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市 2024.06.17)
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタルの写真
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 20秒 ISO 400 6分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市 2024.06.10)
ゲンジボタル生息地における光害写真
ゲンジボタル生息地における光害
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2024.06.17 20:09)
岐阜県郡上市和良町のゲンジボタル
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂き、暗い部屋で フルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


野川に生きるホタル

2024-06-01 21:02:04 | ゲンジボタル

 野川に生きるホタルを今年も観察し、写真と動画を撮ってきた。水面に光が映る様子を残すという目的は達成できた。

 野川は、東京都調布市、小金井市、三鷹市にまたがる都立野川公園の北地区を流れており、ゲンジボタルが生息している。元々は、隣接する野川公園自然観察園内で発生していたが、今ではホタル自ら生息範囲を広げて野川の本流でも発生するようになった。野川は、冬季に渇水することがあるが、年々、ゲンジボタルの生息に不可欠な物理的環境が整い、ゲンジボタルの飛翔数も増加している。西日本型のゲンジボタルではあるが、優雅な光景に心から癒される。
 私の自宅から車で20分ほどで行ける場所で、昨年は5月28日に訪れた。今年は29日に訪れたが、すでに発生のピークに達していた。野川のゲンジボタルは、発生が都内で一番早い自然発生地の1つであり、例年5月下旬に見頃を迎える。4月16日のブログ記事「ほたる出現予想(2024)」で、当地の発生予想として、出現開始日を5月29日、ピーク日を6月7日としたが、これが大ハズレ。野川自然観察園ボランティア有志の皆さんによる調査では、5月10日に1頭の飛翔を確認されており、5月24日には、ピークに達したようである。
 調査によれば、年々、発生が早くなっている。これは上陸後の気温が毎年高くなっていることで、羽化までの期間が短くなっているのであるが、それだけではない。「ほたる出現予想(2024)」の記事で、まだ上陸が行われていないと書いたが、実は上陸条件が合致した3月28日29日、4月9日に上陸が行われていたようなのである。それならば、5月中頃に多くが発生するのも、うなずける。東京の多摩西部では、ブログ5月15日の記事「ゲンジボタルの幼虫上陸(東京)」に記述したように4月下旬頃からGW期間あたりが上陸時期であるが、都心に近い野川は、それよりも一か月早いのである。千葉県では、やはり3月下旬から4月上旬に上陸するから不思議ではない。

 さて、今年も野川のゲンジボタルについて、観察は勿論の事、写真と動画も撮影してきた。気温21度、晴れで微風。月明かりはなし。野川公園の駐車場に車を止めて、徒歩5~6分の野川に18時から待機。川岸に生える桑の木を下から覗くと、あちこちの葉裏にオスのゲンジボタルの成虫が止まっている。また足元の草むらもよく探せば止まっている個体を見つけることができる。
 その後、19時近くなると葉の上にいた個体が静かに発光を始めた。明滅ではなく弱い光を放ち続けるという発光である。19時半になると発光飛翔が始まり、20時を過ぎると発光飛翔の個体数もかなり増えた。今回は前回と違う、流れがとても穏やかな場所にカメラを設置した。水面に光が映る様子を残すことが目的である。写真では分かりにくいが、動画では光が移動するので水鏡になっていることが分かると思う。

 今年も昨年同様に平日に訪れたので、鑑賞者は思ったほど多くはなかった。ここは広い遊歩道もあり夜でも真っ暗ではない。それでも懐中電灯をホタルに向けたり、スマホの明かりを向ける方がいるのは残念だ。その他、年配のグループが多かったのが印象的で、ご婦人方が歓声を上げると男性は幾つになっても格好つけだがるものである。内容までは書かないが、知ったかぶりとマナー違反は恥ずかしい。また、家族連れも何組かおられたが、1組のお子さんが、片っ端からホタルを捕まえては虫かごに入れており、30頭以上が虫かごの中で光っていた。その子の気持ちはよく分かる。50年前の私もそうだったからである。もしかしたら、将来、ホタルの研究者になるかもしれないが、ここは優しく「帰る時に放してあげてね。」と言うしかなかった。ちなみに、少し離れた所で観賞していたご婦人からも同じ言葉をかけられていた。30歳代くらいの父親は、息子に対して「10日くらいしか生きられないのだから放してあげよう」と言ってくれていたのは嬉しい。ただし、今日初めて地上に出てきて飛び出した個体なら、運が良ければあと10日くらいは生きられるだろうが、すでに何日も飛び回っていた個体ばかりなら、家に持ち帰っても1日~2日の命だろう。それに、この短い命の中での一番の目的は、子孫を残すことである。雌雄がお互いの光によって出会いを果たし、無事に交尾を終えて産卵しなければ絶滅してしまうのである。このお子さんが30頭のオスを持って帰っただけでは絶滅することないが、100人のお子さんがそれぞれ持ち帰ったらどうだろう。翌年は、まだ同じように発生するが、毎年繰り返されれば5年で絶滅してしまうだろう。
 この野川は、まったくの自然発生である。養殖した幼虫を毎年放流するようなことはしていない。このように多くのゲンジボタルが舞うのは、豊かな自然環境が維持されているからに他ならない。カワニナと幼虫の放流に頼って、毎年それを繰り返しているだけの所は、放流を止めた途端にホタルは飛ばなくなってしまう。飛ばないことが怖くて放流を止められないのだ。幼虫を放流するならば、卵からふ化したばかりの1齢幼虫がよい。3月に上陸間際の大きな終齢幼虫を「元気に大きく育ってね」と放流する園児や小学生の姿が新聞やテレビで報道されるが、不思議でたまらない。

 野川に生きるホタルは、都心に近い所にも関わらず、ホタル自らが懸命に生きている姿を誰でも安心して観察したり観賞できる貴重な場所である。ホタルが舞う光景がいつまでも続くように、どの生息地でも訪れる方々におかれては、ホタルがなぜ光っているのかを理解して欲しい。曖昧な知識は間違いの選択肢を選ぶ一番の要因となってしまう。細かな生態は知らなくても、100の曖昧な知識より10の確実な知識を持って訪れて頂きたい。

昨年のブログ記事/野川のホタル

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画も 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/30秒 ISO 5000(撮影地:東京都小金井市/野川 2024.05.29 18:54)
ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 5秒 ISO 400×1分相当の多重(撮影地:東京都小金井市/野川 2024.05.29 20:44~)
ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 10秒 ISO 400×約3分相当の多重(撮影地:東京都小金井市/野川 2024.05.29 20:12~)
野川に生きるホタル
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定設定をクリックした後、画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタルの幼虫上陸(東京)

2024-05-15 21:34:13 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの幼虫上陸の様子は、これまで各地で観察し撮影してきたが、今回、初めて東京都内のゲンジボタル生息地で観察し、写真に記録として残すことができたので掲載したいと思う。

 ゲンジボタルの幼虫は、およそ8か月から個体によっては3年8か月の水中生活を終え終齢に達すると、陸地で蛹になるために上陸をする。その時期は、全国各地の生息地ごとにおおよそ決まっており、その時期に達して以下に示した細かな基本的条件が合致した夜に上陸が行われる。(飼育して放流した幼虫は体内時計が狂っており、以下の条件とは関係なく上陸する場合がある。)

ゲンジボタルの幼虫上陸の基本的諸条件
  • 日長時間が、12~13時間であること。
  • 上陸時の気温が、水温より高い、もしくは約10℃以上であること。
  • 降雨であること。(または降雨後で陸地が十分に濡れていること。)

 ゲンジボタルの幼虫上陸の観察は、基本的諸条件の合致もさることながら、これまでは私の休日とも重ならなければ行うことができず、なかなか十分な観察ができていなかった。そこで、秋までは時間を自由に使うことができる今年は、いつでも上陸の観察に行けるよう毎日天気予報をチェックしながらチャンスを待ち、上陸すると思われる日に出掛けた。
 4月と5月の訪問記録を列挙すると以下になるが、特に岐阜県では、6月中旬頃に数百という西日本型ゲンジボタルが乱舞するにも関わらず、観察できた上陸数が少なかった。現地の守る会による連日の観察でも、極少数の上陸個体しか見られていない。上陸場所が見えない場所なのか、観察していない深夜に多数が上陸しているのか、上陸条件の定説を覆すような特別な地域特性があるのか、あるいは、今年は上陸数が極端に少ないのか・・・はっきりしたことは分からないままである。

2024年のゲンジボタルの幼虫上陸の訪問記録
  • 4/04 山梨県の生息地/気温15℃ 雨が降らず上陸なし
  • 4/21 岐阜県の生息地/気温13℃ 17時から小雨 上陸は3頭のみ(4/16に守る会が初上陸を確認)
  • 4/24 山梨県の生息地/気温15℃ 雨 上陸は1頭のみ
  • 5/01 東京都の生息地/気温11℃ 雨 見える範囲で100頭以上が上陸
  • 5/02 東京都の生息地/気温15℃ 朝から晴天で、新たな上陸個体はなし。昨夜の居残り個体が陸地の途中で発光
  • 5/07 東京都の生息地/気温14℃ 雨は朝だけで、新たな上陸個体は数頭のみ
  • 5/08 東京都の生息地/気温11℃ 雨 見える範囲で40頭以上が上陸
  • 5/13 東京都の生息地/気温17℃ 雨 見える範囲で20頭ほどが上陸

 今回、観察を行った東京都内の生息地は、山間部の渓流で生息域はおよそ5kmに及ぶ。上流域の発生地は点在で発生数も多くはないが、下流域はまとまって発生しており、毎年6月下旬頃になると多くのゲンジボタル(残念ながら西日本型)が舞い、その様子は、何度も通って写真と動画にも収めている。2019年の台風による記録的豪雨で2020年から発生が激減してしまったが、昨年からようやく復活の兆しが見え始めたので、今回は下流域の約300mにおいて集中的に観察を行い、撮影も行った。
 現地には、上記のように計5回訪れた。17時から待機し、上陸の時を待っていると、幼虫は、石組みの垂直護岸、砂利のなだらかな岸、淵からいきなり岩壁、早瀬の岩をいくつも乗り越えながら岸にたどり着くと言った様々な岸辺の物理的環境において上陸を行っていた。全体的に河川の南側の岸に上陸する幼虫が多いが、対岸の北側に上陸する幼虫も少なからず見られた。幼虫の生活場所から近い岸辺に上陸すると考えると、幼虫は、河川のある一部に集まっているのではなく、下流域の約300mの平瀬、早瀬、淵に分散して生息していると言える。
 降雨時における上陸の開始時間は、岸辺の樹木が河川まで覆いかぶさっている暗い場所では18時45分。そうでない場所では、その日の空の暗さで異なるが、概ね19時半頃からで、水中から出ると発光を始める。最初に1頭が発光を始めて上陸しだすと、次々に他の幼虫も上陸を始める。22時頃から上陸を始める幼虫もいるが、極少数であった。上陸の最中では、複数の幼虫の発光が同期することもあり、先を行く幼虫の後を追うように、離れた場所からルートを変更して同じ方向へと上って行く幼虫も見られた。
 水際から潜土できそうな場所までは最低でも5mあり、場所によっては10m以上もある。地域によっても違いはあるだろうが、幼虫は、上陸開始から3時間程度が這い上がる限度のようであり、それを過ぎると発光を止めて、その場に留まってしまう個体が多かった。したがって、一晩で潜土場所までたどり着けない幼虫も多く、その場合は翌晩に再開し、雨が降っていなくても暗くなると発光を始めて這い上がっていた。
 朝から全く雨が降っておらず、陸地が乾いていると水中からの上陸は一切ない。実験的に、ジョウロで一時間ほどかけて川の水を撒いて濡らしてみたが、上陸はしなかった。また、雨が降っても上陸開始時刻の19時の時点で止んでいた場合も、水中から新たに上陸を開始する幼虫は極めて少なく、上陸をしようとしても水際で止めてしまう個体が多い。居残り幼虫に関しては、深夜にしか雨が降っていない次の夜に観察しているから、雨の降りだしが深夜になった場合は、その時間から上陸していることが分かる。これは、以前に山梨県での観察がそうであり、この時は22時から小雨で23時過ぎから本降りとなり、0時からようやく幼虫が上陸を始めている。
 屋外の自然河川の生息地では、とにかく「雨」が上陸のキーワードになっている。ちなみに、人工飼育の場合は、雨が降らない水槽で毎晩のように上陸することが不思議である。
 今回の観察地(山間部)は、知人の観察によれば4月24日から上陸が始まっており、私も観察した5月1日が上陸数のピークで5月13日で終了したようである。これも地域によっても違いはあるだろうが、当地でのゲンジボタルの幼虫上陸 の期間は、おおよそ3週間で、その間の降雨日に上陸が行われたという結果である。成虫の発生は今後の気温次第ではあるが、例年通りの6月中旬頃からで6月25日頃がピークとなると思われる。尚、丘陵地では、4月22日に上陸が確認されているので、6月10日頃には発生ピークになるであろう。

 ゲンジボタルの幼虫上陸の観察は、河川における幼虫の生活圏と蛹になるための潜土場所を把握でき、また、上陸の条件を知ることもホタルの生息環境保全に大いに役立つ。これまで、休日や天候とのタイミングから東京都内のゲンジボタル生息地において幼虫の上陸を観察することができなかったが、今年は観察により知見を深め、証拠となる記録写真も撮影することができた。暗い河川の水際から上がった途端に発光する幼虫たち。その光景は、まさに「地上の星」であった。
 以下には、同じ河川における上陸光景2カ所の写真3枚と過去に別の場所で撮影した上陸幼虫の写真1枚を掲載した。上陸光景の写真には、それぞれ発光しながら岩の上や地上を這う幼虫の様子が光跡となって写っている。1枚目は、上陸後、かなり時間が経過してから撮影を開始したので、光跡が途切れ途切れになってしまっているが、早瀬の中の岩を乗り越える様子が写っていたので掲載することにした。3枚目の写真で、岩壁の途中から光跡が写っているのは、水際から上陸した幼虫ではなく、前日に上陸したものの潜土場所までたどり着けなかった居残り幼虫の光跡である。

 「これまでできなかった事をやり抜く」と、自分に誓って早3か月。このゲンジボタルの幼虫上陸の観察もその1つである。まだ、次回降雨日には、東京都内の渓流源流部において上陸の観察を行いたいと思うが、今回、5回にわたり同行下さった竹本氏に心から御礼申し上げたい。

関連ブログ記事:ホタルの蛹と羽化

以下の掲載写真は、1920×1280ピクセルで投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ゲンジボタルの幼虫上陸の写真
ゲンジボタルの幼虫上陸(光跡)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.8 30秒 ISO 640 ×約2時間相当の多重(撮影地:東京都 2024.05.1 20:18~22:05)
ゲンジボタルの幼虫上陸の写真
ゲンジボタルの幼虫上陸(光跡)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F4.0 30秒 ISO 2500 ×約3時間相当の多重(撮影地:東京都 2024.05.13 19:31~22:18)
ゲンジボタルの幼虫上陸の写真
ゲンジボタルの幼虫上陸(光跡)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 30秒 ISO 1600 ×約3時間相当の多重(撮影地:東京都 2024.05.8 18:54~22:21)
ゲンジボタルの幼虫上陸の写真
発光しながら上陸するゲンジボタルの幼虫(腹部第8節の左右両側に発光器がある)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 16秒 ISO 400(撮影地:千葉県 2011.4.09 20:24)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2024 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


和良蛍を守る ホタル勉強会

2023-12-11 17:31:15 | ゲンジボタル

 和良蛍を守るためのホタル勉強会の講師として、和良蛍を守る会の招きで12月3日から一泊二日で岐阜県郡上市和良町を訪れた。
 自宅を朝の5時に出発し、中央道国立府中ICから土岐JCTで東海環状道を走り、美濃関JCTで東海北陸道の郡上八幡ICで降り、そこからは一般道で和良町へ。片道およそ390kmの道のりである。現地には正午前に到着し、勉強会は13時から市民センターの会議室で行った。休憩を挟みながら90分ほどホタルの基礎的な話から、ゲンジボタルの生態と生息環境の詳細について話し、和良のゲンジボタルの特徴と保全方法についても述べさせて頂いた。
 和良蛍は、まったくの自然発生で、幼虫やカワニナの放流は勿論、特に環境を保全する作業等も行ってはいない。それでも、数千を超えるゲンジボタルが乱舞する素晴らしい場所であるが、問題は、全国から訪れる鑑賞者への対応である。守る会のスタッフは、ボランティアでその対応を行っており、鑑賞者のマナーの問題もあるが、最大の課題は、車のライトによる光害への対策である。昨年と今年の6月に実際に訪問した時にも、光害が気になった。道を走る車のライトがゲンジボタルが乱舞するところを照らすのである。この問題をクリアすることが大変重要であろう。和良町は観光地ではなく、国の特別天然記念物であるオオサンショウウオも生息している農村地帯である。訪れる方々も、そのことを知って来る必要がある。
 和良蛍は、他の地域にはない特徴も多い。数千頭が乱舞するにも関わらずカワニナがとても少ない。また気象条件が良ければ、深夜23時近くまで多くのオスが飛び回るといった活動時間の長さも挙げられる。今後は、こうした地域特性も調べることも必要だ。来年の4月には、集団で上陸する光景が見られるだろうから、その時に再度訪れることとしたい。

 当ブログの更新はかなり久しぶりになるが、10月23日以来、写真撮影に出掛けておらず、掲載できる写真がないというのが理由である。出掛けていないのは、気象条件の悪さもあったが、撮って残しておきたいと強く思う風景が思い浮かばないというのも正直なところ。被写体はいくらでもあり、昆虫ならば「観察」の意味で出掛けることもあるが、過去に撮っていれば同じようなカットを繰り返すだけになるのも悔しい。
 今週15日の午前0時頃からは、ふたご座流星群が極大なのだが、どうも天気が怪しい。そうなると、今年はもう何も撮らずに終了し、一年を振り返った風景と昆虫の「自己ベスト10」を掲載して締めることになりそうである。

今年の6月に撮影した和良蛍写真を一部再現像しサムネイルで表示しました。元画像は1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

和良蛍の写真 和良蛍の写真 和良蛍の写真 和良蛍の写真
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタルのメスの飛翔

2023-06-25 14:20:43 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルのメスの飛翔の様子を記録として写真に撮影した。

 ゲンジボタルは、生息地によっても多少の違いはあるが、概ね19時半頃になると発光しながら飛翔するが、そのすべてはオスである。メスは、川辺の草の葉の上に止まって発光している。メスを見つけたオスはメスの所に降りて行き、発光によるコミュニケーションが成立すれば交尾に至る。交尾は夜が明けても続けられ、日の当たらない葉陰などに移動し15時間前後続く。
 葉先で目立つように光るメスは未交尾のメスで、既交尾のメスはオスが飛び回る時間帯は、茂みの中で静かに光ったり、歩き回ったりしており、オスの発光飛翔時間のピークが過ぎた22時半頃になると、産卵場所を求めて川面を飛び交うが、オスのようにふわふわ飛ぶのではなく、水面すれすれの高さを一直線に光りながら飛ぶのである。
 メスは、基本的に小川の上流に向かって飛翔する。これは遡上飛翔と呼ばれている。増水などにより幼虫が下流へ流されるために、その分成虫が上流に向かうと考えられている。この行動は、ゲンジボタルだけでなくカゲロウやトビケラなどの水生昆虫に広くみられるが、下流方向に飛んでいく場合もある。そして、産卵に適した場所を見つけると、そこに止まって産卵を始めるのである。
 この行動は、2011年に千葉県において東日本型ゲンジボタルで観察しているが、今回は岐阜県郡上市の西日本型ゲンジボタルで観察し、記録として写真に収めた。

 前記事に記載したが、22時半から川沿いを歩きながら観察を開始した。まだフワフワと発光飛翔するオスもいるが、多くは草や木の葉に止まって発光している。そんな中、下流から早いスピードで上流に向かって直線的に発光飛翔する個体が出現し始めた。これがメスである。写真では、右側が上流であり、左から右の方へと飛んでいる。明らかに、それまでのオスの飛翔とは、異なっていることが写真でも分かる。
 何頭ものメスの行方を目で追うと、それぞれが何カ所かに止まり、数頭がまとまって一カ所に集まる場所もあった。おそらく産卵場所と思われるが、数十メートル先の対岸であり、産卵の詳細を観察することはできなかった。しかし、これまでゲンジボタルのメスの飛翔の様子を写真に写していなかったので、今回、証拠として残すことができたことは、大きな成果であった。
 23時半を過ぎると、飛翔する個体はほとんどいなくなり、メスが止まった場所では、明滅ではなく静かな発光が続けられていた。

 そろそろ時期的にゲンジボタルの発生は、志賀高原などを除いて終わりである。成虫の集団産卵とマクロ映像を取り損ねたことが心残りであるが、それは来年の課題とし、7月5日から三泊四日で行く沖縄(山原)遠征に備えたいと思う。その後は、東京都内と長野県においてヒメボタルの観察と撮影を予定している。東京都内のヒメボタルは、まだ最盛期における発生状況を未確認であり、長野県においては、2021年に撮影した場所とは違う初訪問の場所を選んだので、楽しみである。

 ちなみに6月26日(月)は、高知県仁淀川波川地区のヒメボタル保全に関して、国土交通省 高知河川国道事務所等とのWeb会議である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ゲンジボタルのメスの飛翔の写真
ゲンジボタルのメスの飛翔
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 25秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 23:20)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


和良蛍

2023-06-19 18:26:43 | ゲンジボタル

 和良蛍は、岐阜県郡上市和良町に生息するゲンジボタルのこと。昨年の6月12日に初めて訪れたが、あいにくの月明かりと発生初期であったため、発光飛翔の数が少なかった。そこで、今年も訪れ、これぞ「和良蛍」という写真と映像を撮影することができ、また深夜まで滞在してメスの産卵行動などを観察してきた。

 和良蛍を守る会の水野英俊会長より、先週に本年の発生状況をご連絡をいただき、19日前後が発生のピークであろうとの予測。迷わず私の休日である18日(日)に遠征することに決定。17日(土)は、仕事が終了次第、北陸に向かって再度ヒサマツミドリシジミを狙うつもりであったが、仕事が忙しく疲労困憊。そもそも、11日(日)にヒメボタルを撮ってからというもの、先週はPCを前にして椅子で2日寝てしまい朝を迎えている。にも関わらず北陸から岐阜への遠征では車中二泊が強いられるため、体力的なことを考えてヒサマツミドリシジミは来年に延期することにし、土曜の夜は自宅のベッドで寝ることにした。
 翌18日。天候は晴れ。予想最高気温は30℃である。自宅を9時に出発。ナビゲーションは、中央道を土岐ジャンクションまで行くのではなく、八王子ジャンクションから圏央道で東名高速、新東名高速経由を指示。走行距離が50km以上も多いのになぜか?取り敢えず指示に従い、途中の浜松SAで昼食。家康フェアーをやっており、旨辛味噌カツ丼を頂く。道は空いていたが、結局、郡上八幡ICで降りて和良町に着いたのが15時。6時間もかかってしまった。
 今回の目的は、和良蛍らしい写真と映像の撮影の他、西日本型ゲンジボタルの集団性、特にメスの集団産卵を観察することである。早速、生息地を散策し、環境を見て回る。一体、メスはどこに産卵するのか、見当が付くところをいくつかピックアップした。川には降りることができないが、のぞく限りでは、あまりカワニナがいないことに驚いた。

 この日は、晴れで無風。気温は日中は30℃だったが、夕方で25℃。月もない。まさにホタル日和である。17時から三脚とカメラをセットし待機。昨年は19時45分に一番ボタルが発光を始めたが、今年は19時40分。5分後には別の場所で二番ボタル。10分後には飛翔。20時を過ぎたころから多くのゲンジボタルが発光を始めた。
 昨年の経験から、一番多く発光が見られた場所に2台のカメラを左右に向けてセットしたが、どちらでも、これまで見たことがない光景が広がった。川岸から背後の林の上まで無数のゲンジボタルが発光する。しかも堰があるため川の流れが穏やかで、ホタルの光が川面に映るから、光の数が2倍になるのである。川面に映る様子は、かつで高知県宿毛市で撮っているが、郡上の和良蛍の光景は、それを上回る。オスたちの同期明滅する光で山が動いているようにもみえる。このロケーションは、ここならではである。
 発生しているゲンジボタルの数は、とても数えることはできないが、目の前だけで数百頭はいるだろう。500mほどの散策路全体では数千頭はいるのではないだろうか。このロケーションは、ゲンジボタルが毎年一定数を保って発生するのに大切な役割を果たしている。堰は、大雨が降った時には濁流になるのを防ぎ、また渇水にもならない。また護岸の石組みは、幼虫の格好の隠れ場所になっているのである。
 昨日の土曜日は、鑑賞者がとても多く、散策路が渋滞したそうだが、さすが日曜日とあって、鑑賞者は20人ほど。カメラマンも数人しかいない。残念なことに、数人がスマホの明かりを向けたりしていたが、それよりも街道を車が通るたびにライトが当たるのである。しかも、地元の車ではなく鑑賞者の車なのである。ライトが当たるたびに発光を止めてしまう。やはり、ヘッドライトを付けなくてもよい、明るい時間に来てほしい。この問題の対策には、大きな看板を設置するなどして遮光するなどの工夫が今後必要であろう。

 21時になり、発光活動も終わりかと思いきや、一向に収まる気配がない。そこで、場所をそれまでとは違った風景である川下へ移動してみた。そこでは、フィルムカメラと同じ撮影方法である長時間露光で何カットも撮影し、22時半からは、和良蛍を守る会の水野英俊会長とともに、メスの飛翔や産卵場所を観察することにした。
 その時間になっても、発光するオスは相変わらず多い。20時台の1/3程度ではあるが、こんな光景を見るのも初めてである。その中を、水面上を一直線に発光飛翔する個体が何頭もいる。メスである。そのほとんどが上流に向かって飛んでいく。そして対岸の水際に止まって発光すると、何頭かが、そこに引き寄せられるように飛んでいく。残念ながら対岸までは行くことができないため、その様子は遠くから見ただけであるが、おそらく産卵場所なのであろう。23時半頃になると、発光数もかなり少なくなり、飛翔するメスも見られなくなった。

 駐車場に戻り、帰り支度をしていると、生息域から遠くであるにも関わらず、2頭のゲンジボタルが私の所に飛んできた。きっと見送りの挨拶に来てくれたのだろう。また、スーと生息域の方へ戻っていった。現地を翌19日(月)午前0時に出発し、帰路は中央道を選んだ。途中、駒ケ岳SAで2時間の仮眠を取り、6時に帰宅した。和良蛍を守る会の水野英俊会長より、今年の11月にホタルの勉強会の講師を依頼されたので、秋に再訪の予定である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 15秒×30カット ISO 4000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / マニュアル露出 F1.4 13秒×35カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 63秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:38)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 16秒 ISO 1000(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 21:48)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:00)
和良蛍の写真
和良蛍
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒×7カット ISO 1600(撮影地:岐阜県郡上市 2023.6.18 22:10)
和良蛍(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


三鷹市大沢のホタル

2023-06-05 14:41:50 | ゲンジボタル

国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル

 三鷹市大沢のホタルについて、講演会と観察会および写真撮影を行ってきた。

 東京都三鷹市市スポーツと文化部生涯学習課(共催:ほたるの里・三鷹村)の依頼により、6月4日三鷹市教育センターにて「ほたるの一生-大沢ほたるの生態を知る-」と題して 講演会を行い、終了後に大沢の里(ほたるの里)に移動してホタルの現状を観察し撮影を行ってきた。講演会は、定員70名で満員御礼。市内はもちらん、市外からも大勢おこし下さり、2時間の講演は無事に終了。 大多数は年配の方々であったが、お子さんも4名ほどおり、最後まで私の話を聞いてくれたのが、何より嬉しい。

 さて、先週は自然発生している「野川のホタル」を観察し撮影したが、今回、講演会の終了後に訪れた三鷹市大沢のホタルは、前回の撮影場所(小金井市)からおよそ800mほど野川を下った場所で、住所は三鷹市大沢の大沢の里(ほたるの里)である。国分寺崖線と野川、水田、湧水が保全され、三鷹のかつての農村風景が見られる公園として整備されている。
 公園化される以前は、昭和40年頃までホタルが沢山飛翔していたそうだが、野川の水路を固定し、水田や水路が埋め立てられ市街地化が進む同時に、湧水が減り、ホタルの数も少なくなったそうである。 そこで、昭和60年頃に、現在の公園部分の市街地化を止め、公園として残すための機運が高まり、同時にホタルを保全する取り組みが始まったとのことである。水田の管理やホタル生育のための環境整備は、地元のボランティア団体「ほたるの里・三鷹村」が昭和63年(1988年)から行っている。
 大沢の里の大きな特徴は「ハケ」と呼ばれる環境になっていることである。JR中央線の南側を流れる野川の北側には、高低差が15~20mの崖ないしは急な斜面が東西に走っている。この崖は、多摩川が10万年以上の歳月をかけて武蔵野台地を削り取ってできた河岸段丘で、斜面地が東京都の立川市から世田谷区までおよそ30kmも続いており、国分寺崖線と呼ばれている。この国分寺崖線を武蔵野地方の方言で「ハケ」と言う。
 ハケの周辺には、里山の雑木林として利用されてきたコナラ、クヌギ、イヌシデ等の落葉広葉樹が中心の雑木林があり、武蔵野の面影を残している。また斜面から染み出す湧き水による小さな水路や湧水池などがあり、豊かな自然環境が残されており、ホタルも生息しているのである。「ハケ」という環境に生息するホタル(ゲンジボタル)は、とても貴重である。
 三鷹市大沢のホタルでは、ホタルの他に貴重なものがある。江戸時代後期から三鷹市大沢地区で栽培され、現在、江戸東京野菜にも登録されている「三鷹大沢わさび」である。 「三鷹大沢わさび」は約200年前の文政2(1819)年、大沢地区の国分寺崖線の豊かな湧水に着目した伊勢出身の箕輪(小林)政右衛門が、故郷の五十鈴川流域から持ち込んで栽培を始めたと伝えられている。
 「三鷹大沢わさび」は、国内にほとんど残っていない在来種(幻のワサビ)であることがワサビ研究の第一人者で岐阜大学の山根京子准教授の分析で判明している。DNA鑑定の結果、岐阜県山県市の山間部で自生している野生種と一致しており「岐阜県西南部がルーツで、伊勢神宮周辺に持ち込まれ、さらにそれが三鷹に持ち込まれた」と推測している。その原種が、大沢の里(ほたるの里)のワサビ田に生き残っており、その上をホタルが舞うのである。

 講演会が終了したのち、早速、大沢の里周辺を散策。古民家(かつての箕輪家)の隣に「三鷹大沢わさび」のワサビ田がある。ワサビ田の手前は湿地になっており、ブライダルブーケに使われるサトイモ科のカラーの白い花(正確には、ミズバショウと同じ葉が変形した仏炎苞)が目立つ。同じく白い看板や百葉箱、木の構造物などがあり、更には柵越しに遠くから眺めるため、ホタルが飛んでも写真的には絵にならない。しかし、貴重な光景は、是非とも残しておきたい。そこで、現場では映像のみを撮影することにした。(ゲンジボタルのマクロ写真は、別の東京都内で撮影したものである。)
 気温24℃、晴れで無風。満月であるが、昇ってくるのは20時近くで、ワサビ田の背後は国分寺崖線と林があるため、月明かりの心配はいらない。18時半過ぎからカメラをセットし待機。19時頃になると、地元の家族ずれが増えてきた。ワサビ田を覗ける範囲が10mほどしかないため、人々が列をなす。お子さんたちが多く、活発に動き回る。19時半を過ぎてホタルが発光飛翔を始めると、皆、歓声を上げていた。
 小さなお子さんも、安心してホタルの観賞ができる場所であり、三鷹市でホタルが飛ぶという素晴らしい環境であるが、この時は、広げた三脚にドンドンとぶつかってくるので、撮影は行ったものの良い映像にはならなかった。また、生息しているホタル(ゲンジボタル)は、東日本型であることを期待したが、発光を見る限り、残念だが西日本型であった。野川のホタルが、中部地方から移入したとのことであるから、こちらも西日本から移入したと思われる。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

三鷹まるごと博物館講座パンフレット
三鷹まるごと博物館講座パンフレット(ほたるの一生)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
三鷹市大沢のホタル -国分寺崖線(ハケ)の湧水に生きるホタル-(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


野川のホタル

2023-05-29 20:38:19 | ゲンジボタル

 野川のホタルを初めて観察し、撮影してきた。

 野川は、東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川である。国分寺市東部の日立製作所中央研究所敷地内を水源とし、世田谷区南部の二子玉川で多摩川と合流する。全長は20.5km。野川の北側は、武蔵野段丘面を多摩川が削りこんで作った国分寺崖線で「ハケ」と呼ばれる崖の斜面からは多くの清水が湧き、都内でも珍しい自然が残っている。
 野川は、途中に調布市と小金井市、三鷹市にまたがる都立野川公園内を流れるが、小金井市側には自然観察園がある。自然観察園では、昭和60年から園内のホタルの里で育成に努力し続けてきたが、令和元年から野川本流でゲンジホタルが自然発生し始めたのである。台風による影響で、自然観察園のホタルが野川に流出したとみられるが、けして清流とは言えない野川に、ゲンジボタルが定着することが素晴らしい。生息環境が整っていれば、ゲンジボタルは自らの力で生息地範囲を広げ生き抜くことができるという証である。

 野川公園は、自宅から車で20分もかからない。子供が小さい頃は、よく遊びに訪れ、広い芝生の上でお弁当を食べたものだ。公園を突き抜けるように走る東八道路は、毎日車通勤で通ってはいるが、公園は20年以上訪れていなかった。園内の自然観察園内でホタルの保全活動を行っていることも以前から知ってはいたが、それも未訪問。実は、野川において6月3日に「日本ホタルの会」の観察会が行われることになっており、今回、その下見も兼ねて野川の本流で飛び始めた様子を、見ておきたいと思い訪問してみた。
 自宅を17時に出発。日曜の夕方であるから公園駐車場は出口に車が並んでいる。こんな時間に入庫するのは、いないようだ。入庫は20時までだが、出庫は24時間であるから心配はない。とにかく広い公園で、一番南側にある駐車場から北側の野川まで10分ほど歩く。
 まずは、土手沿いを歩きロケハン。ホタルの発生状況やどの辺りで飛ぶかは、事前に地図上で知っていたが、写真に撮るなら構図的に良い場所を探すことが大切である。飛ぶホタルの数よりも、土手を歩く人やライトを付けた自転車が入らない所で、川の流れも分かる場所を選んだ。日中は風が強かったが、これまでの経験通りに日没にはピタッと止んだ。気温は25℃で曇。まさにホタル日和である。

 待つこと1時間40分。19時10分に目の前の木陰で1頭が発光。5分後にまた発光。19時半になると、あちこちで発光飛翔が始まった。晴れていれば、上弦の月が真上にこうこうと輝くが、この日は曇りで月は見えない。ところが、空一面を覆う雲が都会の明かりを反射して真っ白。ボルトルダークスカイスケール(class7)である。ちなみにあきる野市のゲンジボタル生息地では(class5)で、比べものにならない程、明るいのである。すぐ隣には東八道路があり、車の往来が激しいが、音はうるさく聞こえても、土手の上の桜並木によって車のライトはもちろん、街灯の明かりも遮断されているのは良いが、明るい曇り空は予想できなかった。
 ホタルは、それでも多くが飛翔してくれたが、写真撮影が難しい。ISO感度を200にしても3秒以上露光すれば昼間のように写ってしまう。コマ切れで生態写真とは程遠い結果になってしまったが、野川のホタルの記録は残せたと思う。映像の方も、いつものように撮影し残すことができた。流域全体では、200~300個体はいるだろう。メスも多く発生しているようで、全体的に発生ピークであるように思う。

 日曜の夜ではあったが、鑑賞者もそれなりに訪れていた。お子さんやお年寄りまで家族ずれが多く、カメラマンも数人があちこちで撮影していた。この明るさだからであろう、懐中電灯を照らす方は誰もいなかった。というより、ほとんどの方は、持参すらしていなかった。ご家族連れには、安心して自然発生のホタルを観賞できる素晴らしい場所と言えるだろう。本年最初のホタル観察と撮影でもあったが、マナーの良さにとても気持ちの良いスタートとなった。
 本ブログ記事では、ホタルをはじめ昆虫類の撮影場所は、原則として知らせておらず、問い合わせにもお答えしないが、今回の野川のホタルは、都立野川公園自然観察園のホームページでも公表しており、環境保全の取り組みや大切さを広く知っていただくために撮影場所を公表した。

参考:Light pollution map
ボルトルダークスカイスケールとは、夜空の光害の量を説明するために、「50年近くの観測経験に基づいて」ジョンボルトルによって開発されたもの。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

野川の写真
野川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 4秒 -1EV ISO 100(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28 18:41)
野川のホタルの写真
野川のホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 ISO 200 2分相当の多重(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28)
野川のホタルの写真
野川のホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 ISO 200 7分相当の多重(撮影地:東京都小金井市 2023.5.28)
ゲンジボタルの写真
ゲンジボタル
東八道路の写真
東八道路
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 20秒 -1/3EV ISO 100(撮影地:東京都調布市 2023.5.28 20:23)
野川のホタル(再生時は、設定からHDお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2023 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


滝とホタル

2022-07-04 17:26:20 | ゲンジボタル

 滝を背景に舞うゲンジボタルを観察し、写真には初めて収めた。

 当初の予定では、昨年の秋にヒメボタルの生息環境調査と保全指導で招かれた宮城県仙台市へ、ヒメボタルの発生状況を実際に確認するつもりであったが、沖縄遠征から帰ってきて直ぐに東京も梅雨明けとなり、連日の猛暑で睡眠不足。疲れも抜けないことから、仙台遠征は見送ることにした。
 その代わりに滝を背景に舞うゲンジボタルを観察し、写真に収めてきた。このゲンジボタル生息地は、2019年の台風19号の影響によって大きな被害を受けた。二日間の総雨量610mm、渓流は濁流となって直径1mもある岩をも流した。これによりゲンジボタルの幼虫やカワニナの多くも流されてしまい、2020年の発生は激減してしまったのである。観察時では2頭のオスのみであった。
 しかしながら、ゲンジボタルは一年ですべての幼虫が成虫になるわけではなく、最長4年かかる個体も存在する。小さな幼虫ほど流されないため、何にもなければ3~5年かかって再び増えていく。今年が3年目であり、どの程度回復したのか確認しておきたかった。
 またこの生息地には大きな滝があり、滝の周辺もゲンジボタルが舞うのであるが、雨量が多い時期では滝風が強くなり、その数は減ってしまう。今年は6月24日以降まったく雨が降っておらず、しかも連日の猛暑。滝の水量も少なくなりゲンジボタルが舞うに違いない。天候は曇りで月はない。そして無風。滝を背景に舞うゲンジボタルの写真は、これまで撮影したことがなかったので、またとないチャンスであった。

 現地には17時半に到着。気温は25℃。思った通り水量は多くなく滝風も弱い。構図を決め待機する。1頭目のゲンジボタルが発光を始めたのが、19時40分。下流の茂みの中であった。しばらくすると発光する数も増え始め、飛翔も開始。滝方向では、高さ20m以上もある木の梢で光っている。すべての個体が高い場所におり、川岸の茂みにはまったくいない。その高い梢から滝の周囲を舞い始めた。滝風に巻き込まれるのか、光りながら早いスピードで滝つぼの方へ降りていく個体もいる。それが、長い光の線で写っている。(写真3)
 2020年に観察し撮影した、滝から50mほど下流の場所にも行って見た。5~6頭ほどが飛翔しているが、ほとんどが頭上の遥か上である。他の場所でもそうであるが、渓谷で細く深い谷では、オスは高い所を飛翔する傾向にある。水面近くを飛翔しても、休む時は地上10mほどの杉の梢に上がっていき、川岸の茂みではない。こちらでは、映像を記録した。
 まだ乱舞という数ではないが、災害からの復活の兆しが見え始めたという印象である。同じような被害が無ければ、来年、再来年は更に多くのゲンジボタルが舞うに違いない。

 本年のゲンジボタルの観察と撮影は、これで終了である。他には、千葉県と岐阜県の生息地しか訪れなかったが、新たに多くを学ぶことができた。今週末以降は、ヒメボタルの観察と撮影である。
 東京都内に生息するヒメボタルの写真と映像を記録として残すこと、そして都内の新たな生息地の探索、また富士山麓にて日本ホタルの会主催の「ヒメボタル観察会」もある。今年は「天の川とヒメボタル」を撮ってみようと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約6分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約1分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

滝とホタルの写真

滝とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F1.4 ISO 640 約1分相当の多重(撮影日:2022.7.03)

渓流源流部に棲むゲンジボタル

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2022 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


郡上和良のホタル

2022-06-13 20:46:01 | ゲンジボタル

 郡上和良のホタル通称「和良蛍」の里に行ってきた。
 結果から言うと、発生の初期でまだ少なく、夜の気温17℃という低温、更には月齢12.6(満月の3日前)の明るい月が川面を照らしており、ほとんどが草むらでの発光。しかしながら、高知県宿毛のゲンジボタルに匹敵する数の発光数であり、西日本型ゲンジボタル特有の2秒間隔の集団明滅発光も見られた。

 岐阜県郡上市の東に位置する和良町は、日本一の鮎・和良鮎が育ち、特別天然記念物であるオオサンショウウオが生息している。さらには、川面を埋め尽くすようにゲンジボタルが飛び交い、幻想的な風景を目にすることができる。7月上旬~中旬には森の中でヒメボタルも観察することができるのである。2017年に有志が集い「和良蛍を守る会」が発足。和良蛍を守っていくための活動を行っている。
 和良蛍は、今回が初めての訪問である。守る会がインターネットで発信している発生情報でも出始めという文字。おそらく18日くらいがピークと思われたが、あいにく次の週末は高知県にヒメボタルの保全対策指導の予定があり、その後は沖縄遠征。11日土曜日は夜まで仕事のため、12日の夜しかチャンスがない。場合によっては、土曜の夜から大阪へ向かい、翌朝一番で三草山でウラジロミドリシジミ、或いは北陸へ向かって午前中はヒサマツミドリシジミを撮ってから郡上へ移動とも考えたが、一週間の疲れでそれは断念。
 12日日曜は良い天気である。郡上へ向かう途中にグンバイトンボとハッチョウトンボの生息地がある。そこに寄るためには、朝3時半に出発しなければならず、10年前に撮影していることから、これも断念。結局、自宅を12日午前9時に出発し、中央道の諏訪経由、土岐ジャンクションから東海環状自動車道の郡上八幡ICで降り、あとは一般道で和良町まで片道およそ430kmの遠征である。途中、駒ケ岳SAで昼食。一番のおすすめというソースカツ丼を頂く。
 現地近くの道の駅に14時半到着。快晴で気温は27℃。かなり蒸し暑い。早速、ロケハンである。公開されているホタルマップを見ながら歩くが、一番のポイントになる場所まで2.5kmもあった。ロケハンで5kmも歩き疲労困憊。道の駅から車をポイント近くの駐車場に移動させ、夕方まで休憩。
 到着時はかなり風が強かったが、夕方には無風状態。これはこれまでの経験通りである。18時から出動開始。実際にどこでどのように飛翔するのかが分からない。子供ずれで散歩をしていた奥様方に尋ねると、昨日はこの辺で沢山飛んでいたと教えていただき、これまでの知識と経験、そして写真映えする場所にカメラをセットした。
 待つこと1時間半。19時40分に1頭が林の中で発光。45分には、いきなり発光数が増えたが、なかなか飛び出さない。気温17℃で肌寒い。おまけに明るい月が山から顔を出し、こちら側の川岸を照らしている。私自身の影がはっきとみえるほどである。
 散策路は川沿いに500mほどで、観賞者も10数人に増えたが、私の後ろで歓声が上がっている。振り向けば、カメラを向けていない私の斜め後ろ側の対岸で、100頭ほどのゲンジボタルが集団明滅していたのである。川幅は30mほどで、中州や草の茂みは一切なく、堰の上部であるため流れが非常に緩やかである。その対岸の林が迫る岸辺である。集団明滅の光が川面にも映って素晴らしい。まさか、そこで多数のゲンジボタルが発光するとは思わなかった。ただし、カメラを向けた方向と同じで川面には一切飛び出して来なかった。

 和良蛍の里を21時に引き上げ、帰路も同じルートを進んだ。中央道の双葉SAに23時半に到着し、日本そばを食べて車中泊。午前4時半に出発し、国立インター近くのスタンドで洗車し6時に帰宅した。
 今年は、千葉県のゲンジボタル、埼玉県のヒメボタル、今回の郡上和良のゲンジボタルと観察と撮影をしてきたが、観察では十分な事を学んでいるものの、写真では今回も残念ながら良い結果が出せていない。和良蛍の発生ピーク時は、山が動くほどの乱舞だと言うので、来年は時期を合わせて再び訪れてみたい。(2023年に訪れた時は、まさに乱舞であった。→「和良蛍」)
 今後の予定は、沖縄のホタル、東京都内のゲンジボタルとヒメボタル、仙台と静岡のヒメボタルを観察し撮影する計画となっている。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

和良蛍の写真

ゲンジボタルの飛翔風景(和良蛍)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 2分相当の多重

和良蛍の写真

ゲンジボタルの飛翔風景(和良蛍)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 51秒 ISO 400

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2022 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル 千葉県2022

2022-05-31 21:25:09 | ゲンジボタル

 今年初のホタルは、石垣島でのヤエヤマヒメボタルの観察と撮影であったが、ゲンジボタルの観察と撮影は、千葉県からスタートである。
 前記事のムカシヤンマの産卵を撮影後に向かったのは、2004年から観察を続てけいるゲンジボタルの生息地。2006年には、テレビ東京の番組「トコトンハテナ」の収録で当時のお笑いタレント「クワバタオハラ」さんらを案内した場所でもある。自然発生の東日本型ゲンジボタルが乱舞する素晴らしい生息地であるが、2019年の台風15号、台風19号、そして低気圧による1時間100mmの雨という甚大な被害によってゲンジボタルも影響を受け、翌年から発生数が激減してしまっていた。谷戸の細流に生息している場合は影響をそれほど受けないが、河川の場合は台風や大雨の影響を受けやすいのだ。
 この生息地では、幼虫の上陸や産卵も観察し写真も撮影しており、成虫の飛翔風景はリバーサルフィルムとデジタルでも撮影済である。ただし映像は残していなかったので、今回は映像を主に撮影することを目的とした。この日は、月明りはなく気温も23℃であったが、少々風が強かった。それでも19時41分に一番ボタルが発光を開始し、少しずつ数が増え始めた。決して乱舞ではなく10頭ほどの飛翔だが、台風の被害から3年。ようやくここまで復活してきたかと思う光景に感動である。元のように乱舞するには、あと2年はかかるだろう。
 ここに生息している東日本型ゲンジボタルは、西日本型に比べて発光の間隔が4秒で、飛翔もかなりゆっくりである。そのため、写真に撮ると光跡が弧を描かないので写真芸術的には「絵」にならない。掲載写真を見て「物足りない」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、これが台風の被害から復活してきた姿であり、光跡は東日本型の確かな証でもある。ただし映像では、ゆったりと発光飛翔する様子に優雅を感じて頂けると思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

水田の風景の写真

水田の風景
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 320 +2/3EV(撮影地: 千葉県 2022.5.29 17:14)

東日本型ゲンジボタルの飛翔風景の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 5秒 ISO 400 2分相当の多重(撮影地: 千葉県 2022.5.29 20:00~)

東日本型ゲンジボタルのの映像

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2022 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い

2021-07-06 19:43:31 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違いを映像で分かりやすくしたものを作成してみた。

 撮影した千葉県の谷戸では、同じ水田で5月末にゲンジボタルが発生し、6月末になるとヘイケボタルが発生する。ゲンジボタルは、幼虫が水田脇を流れる小さな流れに生息しており、成虫もその小川上を飛翔する。林が隣接しており、時には梢高くまで飛ぶ様子が見受けられる。一方、ヘイケボタルは小川とは反対側の畔付近のみで飛び回る。あまり高くは飛ばない。
 発光の様子も、ヘイケボタルはゲンジボタルのような集団同期明滅はなく、それぞれがタイミングを合わせることなくバラバラに発光している様子が分かる。
 両種が生息する場所は日本各地にあるが、その多くは発生時期がずれている。しかしながら、両種が同時に発生し同じ場所で乱舞する生息地もある。映像では、後半にゲンジボタルとヘイケボタルが乱舞する様子も収めている。

参考:ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルとヘイケボタルの光り方の違い

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル(新潟)

2021-06-20 11:44:52 | ゲンジボタル

新潟県のゲンジボタル生息地へ

 ゲンジボタルの観察と撮影で新潟へ。ホタル前線は徐々に北上しており、新潟県でもホタルの発生が始まった。新潟県には、星峠や美人林の風景、ギフチョウやオオトラフトンボ、オオルリボシヤンマのオス型メス等の撮影で何度も訪れているが、新潟のゲンジボタル生息地は、初めてである。遠征は、当初、18日(金)夕方に計画していたが、仕事が17日(木)は昼で終了し、翌日は年次有給休暇。また天候も17日は新潟方面は晴れと言う予報であったため、予定を繰り上げて午後から新潟県へ向かった。
 14日頃に梅雨入りした東京。17日午前中は、曇り時々土砂降りであったが、関越道の前橋あたりは夏空が広がり、水上から湯沢までは曇天で、時々雨がぱらつくという状況。山々は黒い雲で覆われ、稲光が見えた。ただし、長岡の手前からは再び夏空が広がっており、順調に現地へと向かった。
 新潟県内には多くのゲンジボタル発生地があり、Web上で「名所」と呼ばれる所の情報が載っているが、私が目指したのは普通の農村である。現地到着は17時半。まずは、周辺の環境調査を行う。山間に集落が点在する農村地帯で、標高は110mほど。谷に沿って水田が広がっている。ゲンジボタルが生息する川は、中流域の河川環境で、流れはかなり早く水量も多い。2面がコンクリート護岸で中州は植物が繁茂している。川底は礫であるが、川に降りることが出来ないためにカワニナ等の生息状況は確認できなかった。50mほど離れた県道に街灯と民家が数軒あるが、光の影響は無さそうである。幼虫の上陸場所や産卵場所がどこなのか分からなかった。全体的に「日本の原風景」に相応しい景観である。

ゲンジボタルの生息地環境と同期明滅の発光間隔について

 18時。川に架かる橋のたもとから上流へ向けてカメラをセットした。あいにくカメラは1台しか持参しなかったので、最初に上流方向で比較明合成の写真と映像を撮影したのち、下流方向はフィルム撮影同様の一発長時間露光で写真を撮ることにした。
 当地の日の入りは19時09分だが、開けた場所で河川の幅もあり、木々で覆われている箇所もないため、なかなか暗くならない。気温21℃。無風で湿度も高い。先ほどまで輝いていた月齢7.0の半月も雲で隠れ、条件としては良いが、肝心のゲンジボタルの発生状況が分からない。公にはあまり知られていない生息地で、インターネットにも情報は出ていない。たぶん発生はしているだろうと言う予想での訪問であったが、地元のカメラマン5人のグループがやってきて、カメラをセットし始めたので、一安心。ちなみに、他には観賞者が二組だけであった。実際にあまり知られていない場所のか、訪れた日が木曜日という平日であったからかは分からないが、人間が少数なのは嬉しい。
 川を凝視すること40分。ようやく1頭光りだしたのが19時44分であった。その後、あちこちで光り始め、周囲が真っ暗になった20時15分頃から本格的な飛翔が始まった。ただし、橋を挟んで250mの範囲内だけである。この場所へ来る途中でも、ホタルが沢山飛んでいても良いように思う環境が随所にあったが、実際はいないようだ。今が発生初期なのか、最盛期なのかも不明。勿論、最盛期にどれほどの発生数なのかも分からない。この日は、橋から見て上流も下流も50頭ほどのゲンジボタルが河川の流れ上を飛翔しており、中には隣接する水田の方へ飛んでいく個体もいた。また、水田はごく少数であったがヘイケボタルも発生しており、河川で舞うゲンジボタルに混じって飛翔していた。

 新潟のゲンジボタルは、地域的に東日本型の遺伝子(東北グループ)であり、オスの集団同期明滅の間隔は気温20℃で4秒であるはずだが、当地のゲンジボタルを観察したところ、明滅の間隔がかなり速く、これは掲載している映像からも分かる。明滅間隔は気温によっても変化するが、この夜の気温は21℃であった。採集して遺伝子解析しなければ明確なことは言えないが、明滅間隔、発光飛翔のスピードは西日本型ゲンジボタルの特性に類似している。もし、西日本型の遺伝子であるならば、過去に人為的移入によって西日本のゲンジボタルが持ち込まれて定着したと思われるが、当地はホタル保存会などもないようで、詳細は不明である。
 また、新潟県内の他地域のゲンジボタルを観察していないので、比較することができないが、当地特有(地域特性)、あるいは生息地の物理的環境特性も関係しているのならば、新しい発見である。映像をご覧頂き、ご意見を頂戴したいと思う。

ホタルの写真について

 先週訪れた富山県のゲンジボタル生息地は、河川のすぐ近くで撮影したのでホタルに取り囲まれる状態でったが、今回の新潟県の生息地は、中規模な河川で橋の上からの観察と撮影のため、写真には周辺環境も写すようにした。前述のように河川下流方向は、比較明合成をしない1分ほどの長時間露光で撮影している。「農村風景とホタル」という貴重な光景を写真として残せたように思う。

 長時間露光写真は、時間に切れ間のない連続した写真であり、露光時間内におけるホタル1頭1頭の発光飛翔の方向や発光間隔の光跡が明瞭にかつ正確に記録されている。時間の連続性からホタルの生態学的観点や写真芸術の観点からも価値がある1枚になるのだが、背景を写すには高感度で長時間の露光が必要になる。私のカメラではISO感度400で露光時間40秒を越えたあたりから熱ノイズが発生してしまうというデメリットがあり、美しい写真とは言い難い結果である。しかしながら、フィルムで撮影していた頃を思い出し、写真はこうあるべきだと思い出した結果でもある。最新のデジタルカメラは技術も進んでおり、長時間露光でもノイズのない画像が得られるので、そろそろ機種を変更したいところではあるが、高価であり手が届かないのが現実で、今の機材を最大限活用するしかない。

 一方、上流方向に向けて撮影した写真は、比較明合成したものである。まず明るい時間に背景を撮影し、そのままカメラを動かさずに暗くなってホタルが飛んだらホタルの光跡だけを撮影する。これら数枚をパソコンソフトで合成するのである。比較明合成は、基本的にはノイズのない美しい背景を表現するための手法だが、重ねる光跡写真の枚数をいくらでも増やすことができ、アマチュア・カメラマンが撮るヒメボタル写真に見るような現実離れした単なる創作写真にしてしまいがちである。美しい1枚にはなるが、時間の連続性がないため価値ある1枚とは言い難い。見栄え重視の創作写真なのである。極端な事を言えば、ホタルが実際に飛んでいない所でも、写真上で乱舞させることもできる。

 比較明合成により、今では誰でもいとも簡単にホタルの写真が撮れて1枚の写真にすることが出来るようになったが、創作して単にインスタ映えを狙うのも良いが、ホタルの生態について学んだ上で撮影し作品にして頂きたい。特にカメラマンに人気のあるヒメボタルの写真では、今も尚、ヒメボタルが乱舞する中に立ち入り、人物と共に写している写真を目にする。勿論、人物と発光飛翔するヒメボタルは比較明合成だが、立ち入ることが問題だ。翅がないメスは、立ち入ったモデルの足元にいるのである。その光景を撮るカメラマンは、排除しなければならない!

あとがき

 今月3週連続での遠征。今回は往復640kmであったが、前回の富山、前々回の大阪を合わせると、この3週間の週末だけで2,560km走行したことになる。ちなみに、高速道路で青森から鹿児島まで走ると約2,059kmだ。緊急事態宣言中のことであるから、褒められたことではないが、被写体の発生時期、天候、私の休日という条件が見事に合致し、また経験値を積んだこともあり、7年越しでようやく撮影できたゼフィルス2種は、今年決行していなければ、今後いつ出会えるか分からない存在である。奇跡の連続に心から感謝したいと思う。
 ホタルの季節はまだまだ続く。7月末までに、ゲンジボタルは最低でも2カ所以上、ヒメボタルは3カ所の未訪問生息地での観察と撮影を予定している。また、今年はゼフィルス撮影を多く計画しており、ウラジロミドリシジミの全開翅を主目的に、撮り直しも含めて数種の撮影を予定している。他では、未撮影であるクモマベニヒカゲやホソミモリトンボ、開翅が撮れていないサツマシジミなどを予定。自然風景写真は、秋山郷の紅葉からになるだろう。

 今月20日で緊急事態宣言は解除されるが、宣言中であろうとなかろうと、新型コロナウイルスに感染しないことが重要だ。ワクチン接種券がまだ届いていないので、私の接種はまだまだ先になりそうだが、打ったから安心ではない。そもそもワクチンは感染ではなく発症を防ぐものである。接種を終えた人が他人にウイルスを感染させないようにできるとは限らないと言われている。諸説あるが、誤解せずに科学的根拠に基づいた内容を正しく理解することが必要だと思う。私は、今後も感染予防の対策を徹底して行いながら活動を続けていく所存である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F11 1/40秒 ISO 100 -1EV(撮影地:新潟県 2021.6.17 18:24)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 68秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:37)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 46秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:45)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 11分相当の比較明合成 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:00)

新潟県のゲンジボタル Genji firefly in Niigata (フルハイビジョン映像)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル(富山)

2021-06-13 21:40:21 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの観察と撮影で富山を訪問してきた。先週は、岐阜県関ケ原のゲンジボタル生息地を訪ねたが、護岸工事で激減したという悲しい現実を目の当たりにした。今回の富山も、当初予定していた生息地が護岸工事で激減という知らせを頂き、富山県在住のプロの写真家「安念 余志子」さんにご教示いただき、違う場所を訪ねてみた。安念さんは、ホタルの写真もお撮りになっており、日本ホタルの会の会員でもある。
 6月11日17時半に現地到着。駐車場に車を止めたが、帰る時に車のベッドライトが川を照らさない向きに止めた。勿論、引き上げる時刻は、ホタルの発光飛翔活動が終了してからである。
 まずは、周辺の環境を観察。この地域は、78%が森林、13%が田園地帯で占められており、1.800m級の山岳から平野に広がる田園地帯に至るまで、豊かな自然環境が随所に残されている。見れば、その山地や麓、平野の至る所にホタルが生息していそうな印象を持つ。この日、訪れたのは複合扇状台地の田園地帯の中を流れる細い河川である。雑木林は隣接していない。水田の所々に民家が点在し、舗装道路も走っているが、交通量は極めて少ない。
 河川は、流れの幅2.0mほどで両岸はコンクリート護岸である。川底は砂礫で、一部に中州があり草が繁茂しており、川底や壁面には多くのカワニナが生息しているのが分かる。1.5mほどの護岸の上は草地で、農道を挟んで水田が広がっている。幼虫は、護岸を登り草地で蛹になることが安念さんの観察から判明しているが、最近、雨が降っていないからだろう、草地はカラカラに乾燥していた。それでも、多数の成虫が羽化して出てきている。また、河川のごく一部およそ200mの岸辺に桜や杉の並木があり、ゲンジボタルはその範囲内を飛翔する。
 かつて、埼玉県内のある大学の敷地内にこれと似た河川があり、ゲンジボタルの生息環境再生に関わったことがあるが、こうした環境でゲンジボタルが乱舞するということは、今後、様々な地域においてのホタルの保全活動に大いに参考になるだろう。

 18時半頃に安念さんが現地に来られ、色々とお話を伺い、すぐにお帰りになるまで情報交換を行った。その後、ゲンジボタルが多く飛翔するという場所にカメラをセットし、日没を待った。
 気温21℃。薄曇り。無風。月は無し。絶好のホタル日和である。日の入り時刻は19時11分。一番ボタルは早くて19時45分頃、おそらく河川の上に覆いかぶさる桜の葉裏だろうと思っていると、19時半に自分の足元近くの低い草むらで光り始めた。予想外の出来事である。その後も、次々に護岸上の高さ10cmほどの草むらで発光を始め、中州の茂みでも光り始めた。この時、光っているのはオスだが、これら個体は、昼間はそこで休んでいるということである。つまり、土手の草刈りは行ってはならないということである。
 飛翔開始は19時46分。20時を過ぎた頃から数が多くなり、見える50mほどの範囲で100頭を越えるゲンジボタルが発光飛翔をしていた。全体では、単純計算で400頭ということになる。すべてがゲンジボタルと思っていると、1頭だけヘイケボタルがゲンジの中をかき分けるように飛んでいたのが印象的であった。おそらく隣接する水田で羽化したものであると思われる。写真では分かりにくいが、ヘイケボタルであった。
 安念さんからは、地元の観賞者はあまり来ないと伺った。なぜなら、「ホタルは、普通にたくさんいて、見飽きている」との事。この日は、私以外に、カメラマンが3人。観賞者は、家族ずれが10組くらいであった。「初めて見た~」などという声が聞こえたので、地元の方ではないのだろう。ただし、懐中電灯を照らす行為は2例あった。そもそも、暗くなってから来ても懐中電灯なしで歩ける田んぼの脇道。今後もホタルのために照らさないで頂きたい。

 懐中電灯を照らす行為であるが、「写真を撮っている人から文句を言われる」と勘違いしている方々が多い。いや大多数の一般の方々はそう思っている。フィルムで撮っていた頃は、一回の懐中電灯の灯りでその日の撮影は台無しになるが、今はデジタルだから、そのような灯りが入れば、そのカットだけ削除すれば問題ない。人が写っても消せる時代だ。ホタルは、お互いの光でのみコミュニケーションを図り、繁殖する昆虫であり、月明りでさえ繁殖を阻害してしまうのである。ホタルのために灯りは禁物である。
 「ほんの数人が数回照らして問題があるのか」といった言い訳をする方もいるが、ホタルの発生期間を仮に3週間としよう。メスはオスより1週間ほど遅れて発生するから、繁殖日数は2週間に減る。ホタルは、満月の夜や風が強かったり、気温が15℃を下回るとあまり活動しない。それらを差し引くと繁殖日数は更に減る。そして一日の中での繁殖できる時間は、20時頃から21時頃の1時間だけである。そのわずかな繁殖の機会を人為的な光で邪魔をすればどうなるのか、お分かりになるだろう。

 さて、この日に撮影したホタルの写真であるが、まず背景を別撮り(明るい時間帯に予め撮っておくこと)しない5秒露光のカット8枚(40秒相当)及び4秒露光のカット35枚(140秒相当)を比較明合成したが、ここは街灯がなくても開けた場所なので、ISO200 F2.8で一発露光20~30秒露光の方が写真芸術的に美しいものになるような気がする。
 参考までに、明るい時間帯に予め撮影した背景に光跡を比較明合成する手法の写真も掲載した。5秒露光のカット35枚(170秒相当)であるが、ゲンジボタルが一番盛んに飛翔する時間帯のものである。飛翔するゲンジボタルに取り囲まれる撮影位置であるため、比較明合成で重ねすぎると、ホタルの光跡だらけで何だか分からなくなってしまう。
 また、ヘイケボタルが混じって飛翔していた写真も掲載した。こちらは別撮りした背景に5秒露光のカット4枚を比較明合成したものを掲載した。ホタルと花の写真は、写真家 安念さんの作品を真似させていただき、岸辺に咲く野菊の背後に乱舞するホタルを玉ボケにしたものである。これは、プロの写真家の作品とは比較にならない駄作である。
 また、昨今力を入れている映像も編集して掲載した。一発露光ならともかく、比較明合成は創作写真に他ならない。実際のホタルの飛翔は、やはり映像が良いと思っているからである。この映像から集団同期明滅はおよそ2秒なので、ここのゲンジボタルは西日本型であることが分かる。

 撮影は、活動が終了した21時過ぎに止め、この地を後にし帰路に就いた。帰りは、富山市内から国道41号線で岐阜県飛騨市を通り、471号線で平湯、158号線で長野県松本、その後松本ICから高速に乗って東京国立まで帰った。
 ブログ記事を見ればお分かりのように、毎週末遠方に出掛けている。人によっては「けしからん」と思うだろう。20日までは、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、人流を抑制し都県をまたぐ移動は自粛するよう要請されているからである。エビデンスが示されない限りは、基本的対処方針を厳守し、移動は車。食事はコンビニ等で買ったものを車内で食べる。他人とはソーシャルディスタンスをとる。会食は一切しない。路上飲みは以ての外。今後も、緊急事態宣言が解除された後においても、これらを厳守して感染予防に心がけていきたい。
 次の週末は、これまた初めての「新潟のゲンジボタル生息地」を訪ねる予定である。

 最後になったが、色々とご教示いただいた安念 余志子さんに、心より御礼申し上げるとともに、簡単ではあるが以下に紹介させて頂きたいと思う。

安念 余志子
写真家・フォトプラニングan 代表
http://www.pp-an.com/
https://www.facebook.com/annen.yoshiko

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 200 -1EV(撮影地:富山県 2021.6.11 17:36)

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 1.3秒 ISO 100(撮影地:富山県 2021.6.11 18:54)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×8カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 19:53)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 4秒×35カット比較明合成 ISO 200(撮影地:富山県 2021.6.11 20:00)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×34カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:20)

ゲンジボタルとヘイケボタルの写真

ゲンジボタルとヘイケボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×4カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:17)

野菊とホタルの写真

野菊とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1秒×15カット比較明合成 ISO 6400(撮影地:富山県 2021.6.11 20:40)

ゲンジボタル(富山)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

2021-06-09 22:30:39 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルは、中部山岳地帯(フォッサマグナ)を境に遺伝子が異なっており、発光パターンも明瞭に異なっている。オスの気温20℃におけるオスの集団同期明滅の間隔は西日本は2秒、東日本では4秒である。以下の映像は、岐阜県と千葉県で撮影したゲンジボタルの発光の様子を比較したものである。発光の違いが明確である。ちなみに、長野、静岡、山梨の3県周辺では3秒の「中間型」も存在し、長崎県五島列島に生息するゲンジボタルの明滅リズムは1秒に1回という日本一速いリズムで光ることが報告されている。(注意:気温によって集団同期明滅の発光間隔は異なり、西日本型ゲンジボタルでも気温が低ければ2秒より長くなる)

 どんな生物でも「分布域」というのを持っており、これは自然の摂理によって定められている。そして、生物の分布に大きな関わりを持ってくるのが土地の歴史である「地史」であり、地史における地形の変化が生物の分布に影響を与え、その結果、現在の分布域が成立したと考えられている。ホタルも同様である。
 ゲンジボタルを復活させたい、増やしたいという思いから、分布域を無視して、東日本に西日本のホタルを安易に移動することが多く行われているが、これは生物地理学上の系統や分布を攪乱することになるのである。ゲンジボタルはそれぞれの生息環境に適応した生態的特徴もあり形態的相違も見られる。それぞれの分布域には、生物地理学上生じた「地域固有性」があるのである。
 もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われる「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響はないし、見た目には何も変わることのないホタルだ。繁殖して増えれば嬉しいものである。しかしながら、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。守るためには、人為的移動は避けなければならない。安易な移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知っていただきたい。

以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.