ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

石垣島のチョウ

2022-04-03 15:13:12 | チョウ

 石垣島遠征の主目的はヤエヤマヒメボタルの観察と撮影だが、チョウも撮っておきたい。目指すはミカドアゲハの集団吸水である。到着時に目撃はしたものの撮影にはならず。林道を探索したが、イシガケチョウは、至る所に飛んでいるが、他のチョウの姿はなし。ちょっと期待したコノハチョウも見ることはできなかった。
 於茂登岳(おもとだけ)の山麓を後にして、次に向かったのはバンナ公園。さすが蝶の楽園である。様々な種類のチョウが舞っている。顔ぶれは、東京多摩動物公園にあるチョウの生態園で見られるものが多いが、こちらはすべて天然。温室ではなく、普通に見られるのが素晴らしい。ただし、午後14時過ぎからでは、飛んでばかりで花での吸蜜はほとんどしないため、撮影できなかった種も多く、また撮っても証拠程度のものばかりであるが、以下に紹介しておきたい。
 尚、本ブログに開催している昆虫は、昆虫園などの施設ではなく、すべて自然界で生きているところを撮影したものである。今回撮影した種を含めると、掲載済みの種数は鱗翅目148種になる。(参照:昆虫リスト

  • ヤエヤマカラスアゲハ 初撮影
  • ベニモンアゲハ 初撮影
  • クロアゲハ 沖縄・八重山亜種 初撮影
  • シロオビアゲハ
  • アオスジアゲハ
  • オオゴマダラ 初撮影
  • ツマムラサキマダラ 初撮影
  • リュウキュウムラサキ 初撮影
  • イワサキタテハモドキ 初撮影
  • イシガケチョウ
  • タイワンクロボシシジミ 初撮影

以下の掲載写真は、全て1024*683 Pixels で投稿しています。サムネイルの写真はクリックしますと拡大表示されます。

ヤエヤマカラスアゲハの写真

ヤエヤマカラスアゲハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/3200秒 ISO 640(撮影地:石垣市 2022.3.31 13:05)

ヤエヤマカラスアゲハの写真 ヤエヤマカラスアゲハの写真 ベニモンアゲハの写真 ベニモンアゲハの写真 クロアゲハ 沖縄・八重山亜種の写真 シロオビアゲハの写真 アオスジアゲハの写真 アオスジアゲハの写真 オオゴマダラの写真 オオゴマダラの写真 オオゴマダラの写真 ツマムラサキマダラの写真 ツマムラサキマダラの写真 リュウキュウムラサキの写真 イワサキタテハモドキの写真 イシガケチョウの写真 タイワンクロボシシジミの写真

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2022 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


無念の8月

2021-08-29 09:53:10 | チョウ

 無念・・・仏教においては「悟りの境地に入り、何事も思わないこと」という意味だが、今の心境は「物事が思い通りにいかず悔しい」だ。今月は秋雨前線の停滞による長雨と大雨、新型コロナワクチンの副反応、そしてこの週末は倦怠感に腰痛。猛暑の疲れも出てきた。先週で「我慢の8月」を終えたかったが「無念の8月」で締めくくることになってしまった。
 そもそも8月は、生息地が局所的なトンボ1種だけに目標を定めたのが、成果なしの原因である。生息地3カ所に遠征したが、一か所は、おそらく採集圧によって絶滅したと思われる。二カ所目は特別保護地域であり生息の確認はできたが、撮影には不向きな状況であり、撮れた写真は証拠にもならない1枚だけ。三カ所目は、訪れた時期が遅く、湿地は既にルリボシヤンマ天国と化していた。ネット上では、8月上旬に撮影記録があるため、同時期に二カ所目には行かずにそこに行っていれば撮れていたかも知れない。当時、どちらに行こうか迷ったことを後悔している。このトンボについては、場所を三カ所目に絞って、また来年に挑戦である。

 毎年、年末にその年に撮影した写真の中から自然風景と昆虫に分けて、自己ベスト10を選んで振り返っているが、自然風景写真はそれなりに撮ってはいるものの、昆虫写真においては、今のところヒサマツミドリシジミとヒロオビミドリシジミの2種しか選ぶものがない。季節も進み、予定している計画も11月上旬までの間にごく僅かであるが、無念の季節で終わらせぬよう、自分がすべきことのロードマップを再構築し、運を意志の力で引き寄せようと思う。
 以下には、過去撮影であるが個人的に「8月のチョウ」という印象が強く、思い出深い3種を掲載した。

  • ゴマシジミ Phengaris teleius (Bergstrasser, 1779)
    環境省カテゴリにおいては絶滅危惧ⅠA類に選定され、2016年には「国内希少野生動植物種」に追加指定されたことで、国内のどの地域でも捕ることができない。ゴマシジミの翅の斑紋や色は、地理的並びに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。中でも青い鱗粉がのったタイプ(通称:青ゴマ)は美しいが、ゴマシジミはほとんど翅を開かない。その開翅を撮るために4年間で9回も生息地に通いようやく撮影が叶った。
  • ヤマキチョウ Gonepteryx maxima Butler, 1885
    分布は極めて狭く、青森県と岩手県、長野県と山梨県の一部地域にしか生息しておらず、環境省カテゴリで絶滅危惧IB類に選定されている。あちこち探索して、食樹であるクロツバラの群生地と草原をポイントにしてようやく見つけた場所で撮影することができた。
  • キベリタテハ Nymphalis antiopa (Linnaeus, 1758)
    シックな色合いから「高原の貴婦人」とも呼ばれている。ヨーロッパから中央アジア、シベリア、北アメリカ、メキシコまで、北半球の温帯~寒帯に広く分布しており、アメリカでは、Mourning Cloak(喪服のマント)と呼ばれ、イギリスでは、Camberwell Beauty(キャンバーウェルの美人)と呼ばれている。一時期、ある地域で姿が見られなくなったこともあるが、昨今ではシラカンバのある信州の高原を散策していると、一回は出会えるチョウである。

参照:ゴマシジミ(青ゴマ開翅)

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ゴマシジミ(青ゴマ)の写真

ゴマシジミ(青ゴマ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.8.11 9:32)

ヤマキチョウの写真

ヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:山梨県 2013.8.27 10:33)

キベリタテハの写真

キベリタテハ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/160秒 ISO 200(撮影地:群馬県 2012.8.25 11:40)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


長野へチョウ探索

2021-07-04 16:57:02 | チョウ

 梅雨末期で連日の降雨、そして昨今よく聞く線状降水帯。2日から東日本の太平洋側、特に東海関東の南側にできた線状降水帯によって、3日に数か所で土砂災害が発生し、静岡県熱海市では土石流で少なくともおよそ130棟の建物が流されると言う被害が出た。まずは、被災した方々に心よりお見舞い申し上げたいと思う。

 さて、今の会社に入社して25年。今回、初めて夏休み(9連休)を頂いた。初日の3日(土)は、長野県へ。狙いはサファイア・ブルーのチョウである。このチョウは、何度も撮影しオスも撮ってはいるが、朝陽が当たって翅色がブルーではなかったり、奇麗な色でも半開翅であったりと不満が残る結果であるため、撮り直しである。
 奇麗な翅色を捉えるには、曇空でなければならない。そして気温が20℃以下と低いこと。高いと下草に降りてこないのである。生息地において天候条件を満たすのが、予報では3日の朝であり、会社を19時に退社し、そのまま向かった。中央道は、かなりの土砂降り。諏訪SAで食事を済ませ、霧雨の現地には23時過ぎに到着した。ここへの遠征時では定番となっている場所で車中泊である。その日は4時半に家を出て会社に向かい、通常業務を終えてからの遠征。すぐに寝てしまった。
 翌朝4時半に目が覚めると、何とアルプスのモルゲンロートが目に入った。オレンジに染まる山々は美しいが、青空が広がっている。朝日が出る前に急いでポイントに向かい探索を開始した。ハヤシミドリシジミが1頭下草から梢へと飛び立ったが、目的のチョウはいなかった。
 周辺の草地では、アサマシジミのメスが1頭だけ翅を開いて止まっていた。ここは、アサマシジミの生息地でもある。アサマシジミは、生息地がたいへん局所的である上に、開発による生息地の破壊、そして生息地によって異なる班紋から採集者による乱獲が絶えず、各地で絶滅に瀕している。環境省RDBでは絶滅危惧種に選定されており、長野県においては、希少動植物保護条例(2016.4.25)によって採集を禁止している。
 当地には、中部低地帯亜種 Plebejus subsolanus yaginus (Strand, 1922)が生息しており、青い鱗粉が広がったオスが多く見られる。今回は、メスの半開翅ではあるが、前翅にも赤斑が広がる個体であり、貴重な1枚となった。参考までに2017年に撮影したオスの写真も掲載した。

 8時に現地を引き上げたが、あまりに天気が良いので、予定にはなかった乗鞍高原へ行ってみた。ただし、標高1,600mでは流石にゼフィルスは未発生で、トンボ類はヨツボシトンボのみがいるだけであった。
 この一か月間、ずっと連戦連勝できたが、ここで玉砕。連休中にもう一度行きたいと思う。この休み中には色々と計画があるが、天気と相談しながら1つ1つ達成したい。ちなみに、本日4日は選挙もあり休養。5日は、新型コロナウイルスのワクチンを職域接種で打つ予約をしている。その後は、東京都内のゲンジボタルとヒメボタルの観察と撮影を行う予定である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

アサマシジミの写真

アサマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/320秒 ISO 160 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 7:01)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:長野県 2017.6.24 6:09)

アサマシジミの写真

アサマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320 -2/3EV(撮影地:長野県 2017.6.24 7:09)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/200秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:56)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/200秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:58)

キョウカノコの写真

キョウカノコ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/400秒 ISO 100 +1EV(撮影地:長野県 2021.7.03 6:53)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


北か、南か・・・

2020-11-01 15:39:47 | チョウ

 北か、南か・・・北に紅葉の写真を撮りに行くか?それとも南にサツマシジミの写真を撮りに行くか? 31日の朝は、この秋一番の冷え込みの予報。奥日光の小田代ヶ原へ行けば、昨年同様のカラマツ霧氷が見られるかもしれない。栃木や群馬の北部では紅葉が盛りで、素晴らしい光景に出会えるだろう。さんざん悩んだ挙句、どうしてもサツマシジミの開翅写真を撮っておきたくて、2週続けての紀伊半島遠征に決めた。
 先週の和歌山は往復1,350km、今回は三重県南部で往復900km。ほぼ全線、高速道路なので体力的、精神的にも少し楽である。30日は仕事が昼で終わりの日であったため、会社を13時に出発し、自宅へは帰らずにそのまま向かった。新東名高速道路から伊勢湾岸自動車道へ。途中、御在所SAで昼食と夕食を兼ねた食事。先週は、南紀まで行きながら、SAで食べたものは日本そばとカレーライス。今回は、ご当地名物の味噌カツ定食を頂いた。渋滞もなく伊勢道の多気PAに19時着。ここで車中泊である。
 翌31日は、PAを6時に出発しサツマシジミのポイントへ向かう。その場所は、食樹であるサンゴジュが多くあり、2015年の5月には6頭がまとまって飛んでおり、初めてサツマシジを撮影した所である。2018年は10月20日に訪れ、1頭もいなかったが、10日も違えば出ているだろうと言う予測の下での場所決定である。当地では朝7時からロケハン開始。気温は9℃だが、快晴無風。サツマシジミが翅を開く絶好の気象条件だと思われる。食樹付近の花咲く場所にて待機することにした。
 太陽の日差しも強くなり、日の当たる下草ではムラサキシジミが開翅。多くのヤマトシジミとウラナミシジミも飛び始めたが、いつになってもサツマシジミは現れない。10時の時点での気温は16℃。それらしいチョウが飛んできたと思ったら、ヤクシマルリシジミのメスであった。後30分、もう30分待てば・・・結局、11時になっても現れず、私的な時間切れ。開翅どころか出会いさえ叶わなかった。
 帰りの伊勢道で、このまま先週と同じ和歌山のポイントに移動し、車中泊して翌日曜日もと一瞬思ったが、現地を午前11時に出発すると帰宅は19時は過ぎる。翌月曜日の仕事の事を考えると無理はできない。現役会社員は、仕事が一番大切なのである。心折れながら、帰宅することにした。帰路も450km。休憩を1回も取らずに高速道路を走り切り、中央道・国立IC近くで洗車し、16時に帰宅した。

 先週は和歌山で新鮮なオス1頭の翅裏を撮影しているので、今回も和歌山に行っていれば、開翅写真を撮れたかも知れないが、確実ではない。とにかく情報もなく遠方の生息地に行くのは、賭けである。情報があったとしても、天候の問題もあるから、次の週末に行けるかどうかも分からない。私にとって「サツマシジミの開翅」は、ヒサマツミドリシジミ同様に永遠の課題である。(ヒサマツミドリシジミは、メスの撮影済んでいるが、オスは一度も出会ったことすらない被写体である。)
 この記事は撮影日誌にすらならないものだが、今後に訪問する時の参考記事としたい。写真は、待機中に撮影した花と蝶を掲載しておきたいと思う。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメツルソバの写真

ヒメツルソバ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 100(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 8:11)

ヒメツルソバの写真

ヒメツルソバ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 100(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 8:53)

ヨメナの写真

ヨメナ(野菊)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 10:50)

ムラサキシジミの写真

ムラサキシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 8:36)

ヤクシマルリシジミの写真

ヤクシマルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 10:06)

ウラナミシジミの写真

ウラナミシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1EV(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 10:28)

キタキチョウの写真

キタキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 500 +1EV(撮影地:三重県伊勢市 2020.10.31 10:39)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2020 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ハルジオンが咲く頃

2020-04-21 20:28:59 | チョウ

 更なる自粛が要請される中、来週から出勤。通常勤務なのでちょっと複雑な気持ちである。ただ、仕事(収入)の面では行き先の不安は少し解消されそうだ。 感染しないように気を付けたいと思う。
 前記事では「お家で撮ろう」というメッセージを込めて、私自身も身近な「美」を見つけて気を紛らわそうとしたが、精神的に限界がある。やはり、自然の中に身を置いて撮りたい。しかし、もうしばらく我慢である。
 プロの写真家A氏は自身のFBで次のように訴えている。
「お願いです。こちらでも感染者がどんどん増えています。不要不急の外出は避けてください。〇〇の撮影に来られる方、来ないでほしい。このままだと医療は崩壊。写真家は撮影ができないしロケもできません。収入がほとんどなくなるのです。どれだけみんなでStay Homeと叫んでも、"三密じゃなければいい、人が少ない所だからいい"と思っている方、みんな困っています。」
 プロもアマも写真家が今すべきことは何か?「お家で撮ろう」ができなければ過去を見る。私は、ポジフィルムや過去のRAWデータである。外付HDに保存しているデータをさかのぼって見直すと、無心に撮っていた写真がたくさんある。今回投稿したものもそんな写真だ。一枚一枚に反省もあり、それぞれに思いでも詰まってる。今、過去を振り返りながらこの自粛を堪え抜いて、後に一気に自分を開放した時には、きっと自然を見る目も感じる心もこれまでとは違っているのだと思う。
 我々が頑張って自粛していてもニュースでは休業要請無視して営業を続けるパチンコ店が報道されていた。また19日の東京都内「世田谷公園」などでは大勢がピクニックなどを楽しんでいたらしい。 シート広げて宴会する若者もいたとか・・・公園の隣は感染者を受け入れて最前線で戦っている自衛隊中央病院があるが、こいつらの頭の中は空っぽなのか?こうしたパチンコ店や公園に群がる人々は 皆「馬鹿者」としか言えない。

 さて、投稿した写真は春の野の「花と蝶」。春の野の花と言えばハルジオン(春紫苑)。北アメリカ原産で、要注意外来生物指定の植物だが、今では春の野を代表する花である。今回はハルジオンと春のチョウを集めてみた。
 ハルジオンそのものには花言葉がないとの事。一般的にはシオン属の花言葉を当てはめて、英語では「忍耐」、日本では「追想の愛」が与えられているそうだ。強い繁殖力を持つため、根さえ残っていればまた元気に生えてくる、たくましさ。過去のつらい出来事と向き合いながら何とかそれを乗り越えていく・・・そんな意味があるのではないだろうか。
 ちなみに5枚目の花だけヒメジョオンである。ヒメジョオンは、ハルジオンよりも少し遅い時期に咲く。今に立ち止まるのではなく、前を向いて先に進もうという気持ちを持ちたいと思い、あえて最後にヒメジョオンを載せた。
 表題は乃木坂46の曲名から頂いた。「ハルジオンが咲く頃」私たちは頑張った!後から振り返った時、誰もがそう言えるよう、今、この難局に立ち向かい乗り越えようではないか!

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

春の野の写真

ハルジオンが咲く頃
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/2500秒 ISO 200(撮影地:東京都 2012.05.04)

ハルジオンの写真

ハルジオンが咲く頃
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/640秒 ISO 200(撮影地:長野県 2011.06.04)

モンキチョウの写真

ハルジオンとモンキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:東京都 2012.05.04)

ツマキチョウの写真

ハルジオンとツマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F11 1/320秒 ISO 640(撮影地:東京都 2012.05.04)

トラフシジミの写真

ハルジオンとトラフシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200(撮影地:東京都 2012.05.04)

ウスバシロチョウの写真

ハルジオンとウスバシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.2 1/2500秒 ISO 200(撮影地:東京都 2012.05.13)

ダイミョウセセリの写真

ダイミョウセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 500(撮影地:東京都 2012.05.13)

スジグロシロチョウの写真

ヒメジョオンとスジグロシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F3.5 1/320秒 ISO 200 +1/3EV(撮影地:東京都 2016.06.26)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2020 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


チョウの北上

2018-11-08 16:39:29 | チョウ

 日本ではここ100年の間に年平均気温が約1℃上昇し、昨今では豪雨による自然災害も頻発するなど気象の大きな変化が目立っているが、この変化は生物の世界にも変化を及ぼし、桜の開花が年々早まる現象が起きている。影響は植物のみならず昆虫にも変化が見られる。例えば、南方系(暖地系)のチョウが日本列島を北上し、これまで記録の無かった地域で繁殖しているのである。40年以上前に千葉県の松戸市でモンキアゲハが飛んでいたのを見た時は、「何で南のチョウが・・・」と驚き、そして興奮したものだが、今ではすっかり定着し普通種になっている。現在、東京都内においては、以下の7種が見られ2種を除いて定着しているので、写真とともに挙げてみた。

  • モンキアゲハ Papilio helenus nicconicolens Butler, 1881 越冬態:蛹
  • ナガサキアゲハ Papilio memnon thunbergii von Siebold, 1824 越冬態:蛹
  • ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius hyperbius (Linnaeus, 1763) 越冬態:幼虫または蛹
  • クロコノマチョウ Melanitis phedima oitensis Matsumura, 1919 越冬態:成虫
  • ムラサキツバメ Arhopala bazalus turbata (Butler, [1882]) 越冬態:成虫
  • ウラナミシジミ Lampides boeticus (Linnaeus, 1767) 越冬態:卵,幼虫,蛹,成虫だが、東京では越冬できない
  • クロマダラソテツシジミ Chilades pandava (Horsfield, [1829]) 越冬態:卵,幼虫,蛹,成虫だが、東京では越冬できない

 チョウは、自らが耐寒性を増大させたり、休眠期間を長くさせるなどの適応能力を持つが、これらチョウの北上は、気温の上昇(温暖化)と極めて密接な関係があることが分かっている。例えば、ナガサキアゲハは各都市の年平均気温が約15℃を超えると侵入し生息するようになると言う。ただし、越冬態によっては冬の寒さが生存個体数に影響し、発生数や分布域の拡大を左右しており、ウラナミシジミにおいては、発生を繰り返しながら北上してきても、最終的には越冬できずに死んでしまう。
 北上後の繁殖においては、食草も関係しており、食草が限定的な地域にしかなければ、チョウの繁殖域も限定的になるが、園芸種のパンジー等も食べるツマグロヒョウモンでは、公園や庭先も繁殖域であり、北上後に爆発的に繁殖しているようである。
 チョウの北上は、日本に限ったことではない。カナダ・モントリオールで、これまで同国で生息が確認されていなかった中南米産のアゲハチョウの一種 クレスフォンテスタスキアゲハ Papilio cresphontes Cramer, [1777] の幼虫が発見された。他のチョウ類の生息域は10年に平均16kmのペースで北上しているのに対し、クレスフォンテスタスキアゲハはその15倍もの速度で生息域を北上・拡大していると言う。これまで生育可能な個体数を維持するのが困難であった地域にも進出し、現在までに400kmにもわたって生息域を広げており、寒冷な国で進む温暖化の影響だとしている。

 チョウの北上は、種によっては生態系に影響を及ぼす場合もある。クロマダラソテツシジミはソテツが食樹で、メスは300個ほどの卵をソテツの未展開葉や展開後間もない柔らかい葉に産む。孵化した幼虫は柔らかな葉を食害し、未展開の新芽を食べつくすこともあるのである。クロマダラソテツシジミは、産卵から羽化までが25~32℃条件で平均18.5日、30℃定温では12日で羽化する個体もいると言われているが、11月中旬以降はソテツの新葉の展開はなく、耐寒性の弱い蛹は羽化できずに死亡、羽化しても正常に羽が伸ばせずに成虫で死亡するので、世代交代はしていないようである。
 クロマダラソテツシジミは、チョウ自身の北上の他、ホソオチョウやアカボシゴマダラのように愛好家による「放チョウ」の噂が絶えない。本種の成虫は美しい色彩をもち、季節によって斑紋に変異を生じることから愛好家による人気が高く、飼育も容易であることが要因として挙げられる。

 北上はチョウに限ったことではなくトンボ等にも見られるが、昆虫が自ら生息分布を広げ北上するのは本能であり罪はない。しかし反面、寒さを好む北方系の昆虫の生息分布が狭くなっている現実もある。これら現象は、人為的な「温暖化」が一番の原因であることを知っておくべきだろう。ただ、温暖化は地球規模で起きているため、我々一人一人が危機感を持って何かを始めても食い止めることは難しいかもしれない。

参考文献
北原正彦, 入來正躬, 清水剛(2001) 日本におけるナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)の分布の拡大と気候温暖化の関係. 蝶と蛾(日本鱗翅学会誌)52(4):253-264.
北原正彦(2006)チョウの分布域北上現象と温暖化の関係地球環境研究センターニュースVol.17 No.9
河名利幸、安田清作、鎌田由美子 ほか、千葉県におけるクロマダラソテツシジミの初発生確認後の分布拡大と越冬の可能性 関東東山病害虫研究会報 Vol.2010

モンキアゲハの写真 モンキアゲハの写真

モンキアゲハ

ナガサキアゲハの写真 ナガサキアゲハの写真

ナガサキアゲハ(左:オス 右:メス)

ツマグロヒョウモンの写真 ツマグロヒョウモンの写真

ツマグロヒョウモン(左:オス 右:メス)

クロコノマチョウの写真 クロコノマチョウの写真

クロコノマチョウ(左:夏型 右:秋型)

ムラサキツバメの写真 ムラサキツバメの写真

ムラサキツバメ(左:オス 右:メス)

ウラナミシジミの写真 ウラナミシジミの写真

ウラナミシジミ(左:オス 右:メス)

クロマダラソテツシジミの写真

クロマダラソテツシジミ

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


地味なチョウたち

2017-08-19 19:51:14 | チョウ

 8月の三連休の信州遠征にて撮影したチョウを紹介したい。特に目的とした被写体ではなく、何気なく撮影した地味な種ばかり。普段ほとんどカメラを向けないセセリチョウやヒョウモンチョウ、ヒカゲチョウしか飛んでいなかった。
 あまり撮影しないので未撮影種も多い。帰ってから気が付いたが、2種が初見初撮影であった。

 コキマダラセセリ Ochlodes venatus (Bremer et Grey, 1852)は、セセリチョウ科(Family Hesperiidae)コキマダラセセリ属(Genus Ochlodes)のチョウ。北海道から本州中部や中国山地に分布し、本州では標高1000m程度の高原でよく見られる。
 環境省カテゴリに記載はないが、東京都では絶滅、島根県、山口県では絶滅危惧Ⅰ類に、茨城県、神奈川県、愛知県では絶滅危惧Ⅱ類に選定している。

 コキマダラセセリは、当ブログの昆虫リスト「鱗翅目」で137種類目となる。

 ウラギンヒョウモン Fabriciana adippe ([Denis et Schiffermuller], 1775) は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)ドクチョウ亜科(Subfamily Heliconiinae)ウラギンヒョウモン属(Genus Fabriciana)のチョウ。北海道から九州に分布し、山地の草原で普通にみられる。翅表はヒョウモン類では一般的な模様だが、後翅裏には銀白色斑が顕著に現れるのが特徴である。
 ウラギンヒョウモンは、当ブログの昆虫リスト「鱗翅目」で138種類目となる。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

コキマダラセセリの写真

コキマダラセセリ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 200 +1EV(2017.8.13)

ウラギンヒョウモンの写真

ウラギンヒョウモン
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(2017.8.13)

クロヒカゲの写真

クロヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.13)

ヒメキマダラヒカゲの写真

ヒメキマダラヒカゲ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.13)

ミドリヒョウモンの写真

ミドリヒョウモン(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 800 +1/3EV(2017.8.11)

ミドリヒョウモンの写真

ミドリヒョウモン(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 2000 +2/3EV(2017.8.11)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


翅表が見たいチョウ2種

2016-05-05 19:34:41 | チョウ

 チョウの形態的特徴や美しさは、それぞれ翅の裏側であったり表側だったりする。翅を閉じた姿の撮影は、どこかに止まってくれれば難しくはないが、撮影者としては、翅を開いた表の姿も撮りたいものである。しかしながら翅を開いた表の姿は、なかなか撮らせてくれない種が多い。ミスジチョウの仲間等は、止まれば必ず翅を開くが、ミドリシジミ属(ゼフィルス)の仲間は、朝の活動前や占有行動時でなければ見られない。つまり、それぞれの種の生態や行動を知っていれば可能性は高いのだが、飛ぶ時以外は、 絶対に翅を開かない種もいる。代表的なものは、コツバメアオバセセリである。

 コツバメCallophrys ferrea Butler,1866)は、シジミチョウ科コツバメ属で早春にのみ発生するスプリング・エフェメラルである。ツバメのように敏速に飛んでいてもすぐに草の葉や地面に止まり、春の陽に向けて毛深い体を倒すことが多いので、翅裏の撮影は簡単だが、止まれば頑なに翅を閉じ、翅をすり合わせる行動はしても絶対に開かない。
 アオバセセリ日本本土亜種(Choaspes benjaminii japonica Murray,1875)は、セセリチョウ科アオバセセリ属で、年2回5月と8月頃に見られる。 セセリチョウ科では、日本国内で唯一青色の翅を持つ種で翅裏も美しい。飛翔力が強く、目にもとまらぬ高速で飛翔し、花から花へと移動する。他のセセリチョウ科では、ミヤマセセリのように止まれば開く種や、チャバネセセリのように半分くらい開く種が多いが、アオバセセリは絶対に翅を開かない。
 両種ともに超ハイスピードで飛ぶため、肉眼で見ても翅表の色はかすかに確認できる程度。一瞬を止めることができる写真に賭けるしかないが、どちらも手強い。翅表を写すどころか、飛翔写真そのものが難しすぎる。いつも証拠程度の画像しか撮れない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別に公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像し編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.4.8)

コツバメ

コツバメ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 1000(撮影地:東京都あきる野市 2011.5.8)

アオバセセリ

アオバセセリ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 ストロボ使用(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


成虫で越冬するチョウ

2016-04-05 22:52:59 | チョウ

 この時期に見られるチョウは、この春に羽化したスプリング・エフェメラルか春型、もしくは昨年の夏か秋に羽化して成虫で越冬したチョウである。 「スプリング・エフェメラル」と「チョウの季節型」については、それぞれの記事を参照いただき、本記事では、成虫での越冬に関して記しておきたい。
 日本に生息するトンボ類で成虫で越冬する種は、記事「成虫で越冬するトンボ」において3種類のみであると記したが、チョウ類では、全体の約10%の種が成虫で越冬する。キタテハ、ヒオドシチョウ、アカタテハ、ルリタテハ、テングチョウ等のタテハチョウ科が多く、キタキチョウ、ヤマキチョウ等のシロチョウ科の一部やムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ルーミスシジミ、ウラギンシジミ等のシジミチョウ科の一部がそれに当たる。本記事では、例としてキタテハ、ヒオドシチョウ、スジボソヤマキチョウの越冬前と越冬後の写真を掲載した。

 このチョウ達は、なぜ成虫での越冬を選んだのだろうか?成虫の目的は、どんな種でもただ1つ「産卵して子孫を残すこと」であるが、越冬態が卵や幼虫、蛹に比べてリスクが高いように思われる。成虫で越冬するチョウは、越冬後に産卵するので、確実に冬を越さなければ種が絶滅してしまうのだ。昆虫は変温動物であるから、寒い冬でも晴れた日などでは太陽光で体が温まり、 飛ぶこともあるが、体温が下がれば動くことができず、葉につかまり、または落葉に横たわってじっとしている。特に、季節型を持たない年一化の種は、夏に羽化しているから翅が痛み、ボロボロの状態になっていることが多い。キタテハには季節型があり、秋に羽化した個体が越冬するので越冬後の翅の傷みは少ないが、ヒオドシチョウとスジボソヤマキチョウは夏に羽化した個体であるため、越冬後には翅はボロボロになり、色もかなり褪せているのが分かる。
 チョウの生態は、幼虫の期間が食樹・食草の食べ頃時期と重なるようになっているが、同じ食樹でも越冬態が異なる。オオムラサキの越冬態は幼虫であるが、同じエノキを食べるヒオドシチョウは成虫である。また、スジボソヤマキチョウと近類種のヤマキチョウは、越冬しても翅がボロにならず色も褪せないから不思議だ。オスは秋に交尾を済ませた後に死んでしまいメスだけが越冬する種もいれば、ムラサキツバメのように同じ種のチョウが集団で越冬するものもいる。ルーミスシジミは、未だ年一化なのか、季節型があるのか不明である。
 昆虫の生態は、不思議な部分がまだまだ多く、私の興味が尽きることはない。

注釈:本記事は、過去に様々な地域や場所において撮影し個別にブログにて公開していた写真を、時節柄の話題として提供するために再現像して編纂したものです。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

キタテハ

キタテハ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 320(撮影地:東京都あきる野市 2011.10.18)

キタテハ

キタテハ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:山梨県上野原市 2012.5.6)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 500(撮影地:山梨県北杜市 2013.06.08)

ヒオドシチョウ

ヒオドシチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2012.5.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬前)
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ

スジボソヤマキチョウ(越冬後)
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 200 -1/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.5.3)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


スプリング・エフェメラル

2016-03-23 22:20:57 | チョウ

 スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)は、春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称で、直訳すると「春の儚いもの」「春の短い命」というような意味で、「春の妖精」とも呼ばれるが、春先のみ成虫が出現するチョウもスプリング・エフェメラルと呼ばれている。トンボや甲虫類等では呼ばない。やはり「妖精」はチョウなのだろう。本記事では、以下のスプリング・エフェメラル全種から、北海道に生息する3亜種を除いた8種類を紹介したい。

スプリング・エフェメラルと呼ばれるチョウ

  • ギフチョウ(Luehdorfia japonica
  • ヒメギフチョウ北海道亜種(Luehdorfia puziloi yessoensis
  • ヒメギフチョウ本州亜種(Luehdorfia puziloi inexpecta
  • ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)(Parnassius citrinarius
  • ヒメウスバアゲハ北海道亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii hoenei
  • ヒメウスバアゲハ利尻島亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii tateyamai
  • キイロウスバアゲハ(ウスバキチョウ)(Parnassius eversmanni daisetsuzanus
  • ツマキチョウ(Anthocharis scolymus
  • クモマツマキチョウ(Anthocharis cardamines
  • スギタニルリシジミ(Celastrina sugitanii
  • コツバメ(Callophrys ferrea ferrea)
  • ミヤマセセリ(Erynnis montanus

 スプリング・エフェメラルの中でも人気があるのは、何と言ってもギフチョウではないだろうか。雪どけ直後の早春の雑木林で舞う姿は、まさに「春の妖精」である。
 ギフチョウとヒメギフチョウは、たいへん近い種類で姿も形も非常に似ているが、生息地域がはっきと分かれている。これは、ギフチョウの幼虫の食草がカンアオイでヒメギフチョウの幼虫はウスバサイシンを食べることで違いが生じている。食草の分布と重なるようにギフチョウとヒメギフチョウの分布も本州中央部で東と西に分けられている。この分布境界線はギフチョウの学名を取って「リュードルフィア・ラインと呼ばれていて、ライン上にはギフチョウとヒメギフチョウの混在地域が8ヶ所ほど確認されている。

 掲載した種の各々の詳しい生態については、この記事では省くが、これらスプリング・エフェメラルの特殊な生活スタイルだけは記しておきたい。ウスバアゲハは、1年のほとんどの期間を卵で過ごし、ミヤマセセリは幼虫で過ごす。同じ年1化のゼフィルス類の多くは、9ヵ月ほどが卵の期間であるし、国蝶オオムラサキは幼虫の期間が10ヵ月くらいあるので、それほど珍しいことではないが、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ツマキチョウ、クモマツマキチョウ、スギタニルリシジミ、コツバメは、1年のほとんどを蛹で過ごすのである。10ヵ月も蛹のままなのである。ギフチョウをはじめスプリング・エフェメラルの多くが、氷河期の頃から地球環境の変化に耐えて生き残ってきたと考えられているから、これらの生態は種の保存戦略で、それが現在に至っても変わっていないのだろう。
 種類や地域にもよるが、3月下旬頃から5月上旬頃の間の僅か数週間しか舞うことのないスプリング・エフェメラル。この春、是非、実物をご堪能いただきたい。

注釈:画像は左右に配置していますが、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

ギフチョウ ギフチョウ
ギフチョウ(左:相模原市/右:十日町市)

ヒメギフチョウ本州亜種 ヒメギフチョウ本州亜種
ヒメギフチョウ本州亜種(左:赤城山/右:白馬村)

ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ) ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)
ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)

ツマキチョウ ツマキチョウ
ツマキチョウ

クモマツマキチョウ クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ(富山県)

スギタニルリシジミ スギタニルリシジミ
スギタニルリシジミ

コツバメ コツバメ
コツバメ

ミヤマセセリ ミヤマセセリ
ミヤマセセリ

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


チョウの季節型

2016-03-16 19:22:25 | チョウ

 モンシロチョウやキタテハが飛び交う様子が見られるようになってきたが、モンシロチョウは蛹で越冬して、この春に羽化した「春型」で、一方、キタテハは前年の晩秋に羽化して、成虫で越冬した「秋型」の個体である。
 トンボの仲間では、先述のホソミイトトンボ以外は年1化であるが、チョウ類では、1年に一回しか羽化せずに一か月も経たないうちに産卵して死んでしまう種(ギフチョウやミドリシジミ等)や夏に羽化してそのまま冬を越して、翌年の初夏まで生きる長寿の種(ヤマキチョウやキベリタテハ等)がいる。また、一年のうちに何回も羽化する種もいる。こうした種は「季節型」と言って、羽化した時期によって「春型」「夏型」「秋型」に分けられ、それぞれ翅の色彩や形状が異なっているという特徴がある。
 この記事では、代表的な種の写真を掲載しながら、チョウの季節型について紹介したいと思う。

 まず、チョウの季節型には形態的差異が見られる。例えば、アゲハやクロアゲハは夏型の方が春型より大型となり、一方、シルビアシジミは春型の方が大きい。これは、幼虫期の食草の状況と幼虫の成長期間に関係があり、栄養価の高い新芽の時期に比較的ゆっくりと十分な大きさに達するまで成長した後に蛹化へと進めば大型になる。
 他の形態的差異では、外来種であるホソオチョウでは、夏型は春型に比べて尾状突起がかなり長いという違いがあり、キタテハは、越冬する秋型の翅の縁の切れ込みが夏型に比べて深いという特徴がある。キタテハでは、生理的にも夏型は低温に弱く、越冬できるのは秋型である。また、メスの成熟も夏型では羽化後1週間もすれば産卵できるのに対し、秋型では越冬後はじめて卵の成熟が見られるなど大きな差をもっている。ただし、同じく成虫で越冬するキベリタテハやヒオドシチョウは年1化で、夏に羽化してそのまま成虫で越冬するから面白い。
 チョウの季節型による差異で最も顕著なものは、翅の色彩的差異ではないだろうか。サカハチチョウやトラフシジミ、外来種のアカボシゴマダラの春型と夏型は、別種かと思われるほど色彩を異にしている。また、ベニシジミでは春型の方が紅色が鮮やかである。また、キタキチョウやヤマトシジミでは、夏型の方が翅の外縁の黒い部分が大きいという特徴がある。

 チョウの季節型を決定する要因は、幼虫期や蛹期の日長条件が主であり、温度条件が副次的であることが研究で分かってきている。例えば、キタテハでは老令幼虫の日長条件が長日では夏型が羽化し、短日では秋型になると言われ、臨界日長はおよそ13時間であるという。しかし、短日条件下でも高温がはたらくと秋型化が抑制されることが分かっている。ベニシジミにおいても、幼虫期の短日条件で春型、もしくは秋型になり、長日・高温条件により夏型になることが分かっている。
 これまで年1化と考えられていた種でも季節型が存在する可能性も示唆されている。例えば、ルーミスシジミがそうである。ルーミスシジミの詳しい生態は、未だ完全には解明されておらず、特に成虫の発生回数や時期については諸説ある。以前は、初夏に1回の発生と言われていたが、6月中~下旬に第1世代、さらに8月に第2世代、9月に第3世代が発生する(川副・今立, 1956)という説や年2回という説があるが、11月下旬の翅の痛み具合や同属のムラサキシジミとムラサキツバメが複数回発生していることから、少なくとも年に2回以上発生し、夏型と秋型が存在することは間違いないように思う。(参照記事:ルーミスシジミ
 また、季節型(春型、夏型、秋型)の差は連続的なものなので、年5~6回の発生のうちには、その中間型も出現する。例えば、春型初期の成虫から生まれた幼虫が一ヶ月で成長して羽化した個体は、形態的に春型と夏型の中間型になることがある。(参照:ヤマトシジミ(季節型)

 ここに掲載し紹介した季節型をもつチョウは一部にしか過ぎない。私自身、この記事を書きながら希少種を追いかけるばかりに、普通種であるナミアゲハやモンシロチョウの季節型を撮影してないことに気づいた次第である。また、春型だけで夏型を撮っていない種も多いので、時間があれば揃えていきたい。
 もうすぐ春本番で、多くのチョウたちが見られるようになる。季節型というものを念頭に置いてチョウの撮影をするのも有意義ではないだろうか。

注釈:掲載写真のチョウは、同種の雌雄を同じにし季節型の違いが分かるように画像を左右に並べています。
尚、写真は、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

サカハチチョウ サカハチチョウ
サカハチチョウ(左:春型/右:夏型)

トラフシジミ トラフシジミ
トラフシジミ(左:春型/右:夏型)

ベニシジミ ベニシジミ
ベニシジミ(左:春型/右:夏型)

ヤマトシジミ ヤマトシジミ
ヤマトシジミ(左:春型/右:夏型)

ホソオチョウ ホソオチョウ
ホソオチョウ(左:春型/右:夏型)

アカボシゴマダラ アカボシゴマダラ
アカボシゴマダラ(左:春型/右:夏型)

シルビアシジミ シルビアシジミ
シルビアシジミ(左:春型/右:夏型)

キタキチョウ キタキチョウ
キタキチョウ(左:夏型/右:秋型)

クロコノマチョウ クロコノマチョウ
クロコノマチョウ(左:夏型/右:秋型)

キタテハ キタテハ
キタテハ(左:夏型/右:秋型)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------