鏡池の紅葉を撮影してきた。
鏡池は長野市戸隠高原の標高1,200mにあり、その名の通り、荘厳な戸隠連峰や季節ごとに新緑や紅葉が、まるで鏡のように水面に映り込む妙高戸隠連山国立公園屈指の絶景スポットと言われている。有名な景勝地であるからカメラマンも多く、同時刻に撮影された写真は、どれも同じようなものばかりになりオンリーワンではないが、自分なりに自然と対峙し、自らのアーカイブに残してはおきたい。そう思いつつもなかなか行く機会がなかったが、今年は半年前から計画に入れてチャンスを伺っていた。今年は10月になっても気温が高く全国的に紅葉が遅れ気味であり、当地も10月8日現在で「色付き始め」という情報であった。
紅葉シーズンの土日祝日はマイカー規制になり、池の近くまで車で行くことができない。更には長野市街地から戸隠方面へ向かう戸隠バードラインが渋滞するので平日の訪問がお薦めとある。いつも私の休日は日曜日と月曜日であるが、今回は14日の金曜日も仕事が休みで、現地の天気予報も運よく晴れ時々曇り。紅葉の見頃を考えれば日程を一週間遅らせることは可能だが、少しでもチャンスがあるならばと14日の金曜日に遠征することを決めた。
13日の就業後、19時に小雨降る都内の会社からそのまま車を走らせた。首都高から外環道を通り、関越道から上信越道へ。佐久を過ぎた頃にようやく雨が止み、東部湯の丸SAで夕食。須坂長野東ICで降りて一般道を進むころには星空が見えていた。自宅からの直線距離では白馬村の方が遠いが、戸隠高原は長野市街から1時間もかかるため、とても遠いと感じる。ただし深夜ではほとんど車が走っていないので、鹿の飛び出しさえ注意すれば快適に走行できる。最後はかなり細い道であるが、何とか鏡池に23時15分に到着。無料駐車場は二か所あり、今回は森の中にある40台くらい止められる大きい方へ駐車。先客は1台であった。仕事の疲れもあり、すぐに車中泊。
翌朝は、仕事で起きる時間と一緒の4時半に起床。駐車車両は増えていない。すぐに準備をして徒歩2~3分の池畔へと歩いて行った。ここでも先客は1名。どこでも好きな位置に三脚をセットできる状況である。まだ暗くて池や紅葉の状況は目視できないが、とりあえず三脚をセットして夜明けを待つことにした。
日の出時刻は5時54分。5時半頃には周囲の様子も分かるようになり、鏡池の全貌が明らかになってきた。実は宝光社地区の農業溜池として湿地を堰き止めて造成された人工の池である。池の中には鉄製の人工物もあるので、それが写らない場所と画角を調整。少しずつ訪れる方々が増え始めたが、平日で紅葉の見頃前とあってか撮影者は10名程。ひしめき合う醜い状況はない。時間の経過とともにシャッターを切っていった。
鏡池の紅葉は、14日の状況では確かに「色付き始め」であった。この場の最上級の美しい瞬間ではないが、それでも日の出前の色温度の低い色彩と日の出後の鮮やかな色彩への変化、そして緑、黄、オレンジ、紅という豊富な色彩は、この時期ならではの光景であろう。更には運よく「無風」で、鏡池の名の通り、地上の光景がそのまま池の水鏡に映しだされている。また、水面には枯葉がほとんど浮いていなかったことも美しさの要因の1つだ。
残念なことに荒々しい岩山の戸隠連峰(左の西岳と右の戸隠山)には雲がかかって全体を見る事はできなかったが、一部が見られれば雲の中にあることを想像できる。撮影は7時で切り上げたが、もっと待っていれば雲が取れ、戸隠連峰全体が見えたかもしれない。しかし、その時間にはコントラストが強くなり、紅葉の優しい色彩が失われてしまうので、少し悔しいが、今回はこれがベスト。
鏡池の紅葉は、この週末(10月22日)が見頃になるだろう。おそらく早朝から大勢のカメラマンが訪れるに違いない。ただし、風が少しでもあれば、この光景を見ることはできない。水鏡に映ってこその「鏡池」である。かつて、信州・中綱湖のオオヤマザクラを満開と水鏡という条件で撮るために5年を要したことを思えば、気力が湧いてくる。「美しいものを一番美しい時に美しく撮る」この信念の元、鏡池の紅葉は、また来年挑戦したいと思う。
鏡池の光景は、四季を通してその美しさが変化する。池面に映る星空も奇麗だろう。戸隠神社周辺にはヒメボタルが生息しているので、夏にヒメボタルを撮影してから寄るのも良い。これからは霧氷も楽しみである。御射鹿池と同様に様々な時期に訪れてみたいと思わせる池であった。
以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。
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