ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

モートンイトトンボ

2016-07-28 21:08:28 | トンボ/イトトンボ科

 モートンイトトンボ Mortonagrion selenion (Ris, 1916) は、イトトンボ科モートンイトトンボ属で、体長は、約23mm~32mmとたいへん小さく、オスは、胸部が淡黄緑色で黒色の条斑があり、腹端があざやかなオレンジ色で美しい。メスは、未成熟のメスは、あざやかなオレンジ色だが、成熟すると全身が明るい緑色になる。和名は、イギリスの昆虫学者 Kenneth J Morton(1858~1940)に献上されたものである。
 本州、四国、九州に分布し、平地や丘陵地の湿地、休耕田、ため池の一部、水田横の水路等、小規模な湿地状の水域に生息しており、5月から7月下旬頃まで見られるが、生息地は局地的である。昨今では、湿地開発や生息地乾燥化などにより、絶滅が危惧されており、環境省RDBでは準絶滅危惧種、北海道及び東京23区では絶滅したと言われ、多摩地域においても絶滅危惧ⅠA類、その他、多くの自治体のRDBで絶滅危惧種として選定している。

 掲載の写真は、東京都あきる野市及び神奈川県北西部で撮影したものであるが、都内では八王子市の生息地も含め、発生個体数がたいへん不安定で、年々減少傾向にある。休耕田の遷移、乾燥化が大きな原因となっているように思う。一方、神奈川県内の生息地では毎年安定した発生が見られ、訪れた日も多くのモートンイトトンボが水田内を飛んでいた。農薬を使用しないことによって生態系が豊かになったことによるが、生態系の豊かな里山の維持は、農業経営的には成り立たないことが多い。「希少種がいるから保全が大切」等と他人が軽く口にするのは無責任すぎる。こうして貴重な昆虫たちが生息できるのは、地元農家の方々の地道な努力の結果であることを忘れてはならない。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 400(2016.7.24)

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 400(2016.7.24)

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2000 -1/3V(2011.7.2)

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 500(2016.7.24)

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 1600(2011.7.2)

モートンイトトンボ

モートンイトトンボ(未成熟メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/80秒 ISO 400(2011.7.2)

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コオイムシ

2016-07-26 19:36:58 | その他昆虫と話題

 コオイムシ Appasus japonicus (Vuillefroy,1864). は、カメムシ目コオイムシ科に属する水生昆虫で、世界で146種、日本では5種が知られている。体長17から20mm ほどで、扁平な卵のような形をしている。体色は黄褐色や暗褐色で、前脚は鎌のような形の捕獲脚、後脚は遊泳脚になっている。日本全土に分布し、水草などの植物が豊富な小川や池沼、水田、用水路などの浅い水域に生息している。モノアラガイなどの貝類を主食とし、口針を刺して体液を吸う。尚、近縁種である オオコオイムシ Appasus major (Vuillefroy,1864). は、小魚や他の水生昆虫類を主食としている。
 4~7月頃、メスはオスの背中に50~100 個の卵を産みつけ、オスが卵を背負っているように見えることから「子負い虫」という和名が付いている。オスは卵が孵化するまで背に卵を乗せたまま生活を続け、卵に酸素を与える為に定期的に卵を水面よりも上に出すなどしている。
 かつてはどこの水田や池にも見られ、私が子供の頃は江戸川区にも生息していたが、現在は環境悪化によって激減しており、環境省RDBには準絶滅危惧種、東京都、神奈川県、埼玉県のRDBには絶滅危惧Ⅰ類に選定されており、その他、多くの自治体のRDBにも絶滅危惧種として記載されている。

 神奈川県内の水田には、トンボの撮影で訪れたが、水田のほんの一角に8匹ものコオイムシがいるのを観察した。多くは卵を背負ったオスで、 稲の根元に逆さまに捕まっていたり、浅い部分にじっとしていた。ただ、ちょっと刺激を与えただけで、素早く水中に潜ってしまう。卵を守るためなのだろう、かなり敏感である。一方、メスは稲の葉につかまって日光浴をしていた。

 コオイムシは、初撮影の種で当ブログに初掲載である。

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コオイムシ

コオイムシ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/320秒 ISO 1250 +2/3V(2016.7.24)

コオイムシ

コオイムシ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F9.0 1/250秒 ISO 500 +2/3V(2016.7.24)

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キリシマミドリシジミ

2016-07-25 23:14:41 | チョウ/ゼフィルス

 キリシマミドリシジミ Thermozephyrus ataxus (Westwood, [1851]) は、シジミチョウ科ミドリシジミ族キリシマミドリシジミ属(Thermozephyrus属)で以下に分類されるゼフィルスである。

  1. キリシマミドリシジミ 日本・朝鮮半島亜種
    Thermozephyrus ataxus kirishimaensis (Okajima, 1922)
  2. キリシマミドリシジミ 屋久島亜種
    Thermozephyrus ataxus yakushimaensis (Yazaki, [1924])

 キリシマミドリシジミは、1921年(大正10年)7月に鹿児島県霧島山で発見された個体が新種と認定されたため「霧島」の地名が和名に付けられた。(このチョウは霧島山での発見以前に、既に四日市の山内甚太郎氏によって菰野町の湯の山で採集されていた。)関東では神奈川県、東海では静岡県に、近畿地方では鈴鹿山脈、そして四国・九州・屋久島に分布し、標高300m~800mの照葉樹林帯に生息し、常緑広葉樹のブナ科の仲間であるアカガシを主な食樹としている。
 オスの翅表はエメラルドグリーンで、アイノミドリシジミやメスアカミドリシジミ等のクリソゼフィルスを凌ぐ輝きをもっている。その輝きの強さ、美しさは、日本のミドリシジミの仲間のなかでは一番であろう。また、雌雄で翅裏の斑紋が異なるのも、日本産ミドリシジミの仲間では本種のみである。

 キリシマミドリシジミを撮り続けて4年目。今回の記事は、今年撮影した写真とこれまでに撮影した写真を掲載し、実際に観察した結果をまとめた。

 2016年7月24日。早朝の5時から、いつものポイントで待機する。朝日が、谷の上部を照らしはじめ、それがゆっくりと降りてくる。谷底付近から生えるアカガシの大木の樹冠に朝日が当たると、谷の西側上部の木々からキリシマミドリシジミがアカガシに降りてきた。(7時半頃)ねぐらは、食樹とは違う場所のようである。次第に数が増え、この日は全部で6頭のオスを確認。かなりの高速でアカガシの梢を飛びまわる。ただし、日が当たらないと飛び出すことはない。また他のゼフィルスと違って、早朝に長竿で梢を叩いても、一切、下に降りてくることはない。
 この生息地における撮影ポイントは何ケ所かあり、一ケ所だけは、4~5mほど先の梢に止まるので、翅裏の写真は比較的高画質で撮影できるが、生憎、光線が逆光気味のトップライトであるため、開翅してもキリシマミドリシジミ特有の輝きが見られない。(写真1~3)この場所以外は、キリシマミドリシジミとの距離が20m以上もあるため、600mm(35mm換算で960mm)のレンズで狙うことになる。20m先で高速で飛び回るキリシマミドリシジミを目で追い、止まった所にレンズを向ける。超望遠は画角が狭いのでフレーム・インさせるまでに時間がかかる。その後、モニターを拡大表示させてマニュアルでのピント合わせ、ブレないようにレリーズでシャッターを切る。それでも、画面の一部に小さくしか写らない。仕方なくトリミングするが、画質は悪い。(写真4~9)

 この生息地では、オスが飛び回りテリトリーを見張る行動を見せるのは、7月中旬から8月上旬頃である。ゼフィルスでは、かなり遅い。羽化が遅いのであろうか?
 調べてみると、飼育では孵化から羽化までは一ヵ月半ほどである。孵化は、アカガシの冬芽が展開する少し前で、幼虫の生育は、アカガシの新芽の伸び具合と比例するから、どんなに遅くとも生息地において5月上旬までには孵化していると考えられる。それならば、6月中旬頃までには成虫が羽化していることになる。キリシマミドリシジミは、ヒサマツミドリシジミ同様に、成虫が飛び回る時期よりもかなり前に羽化し、羽化後は、一ヵ月以上も不活性な時期を過ごすのではないだろうか。
 この仮説が正しければ、撮影に新たな道が開ける。つまり、不活性時期において吸水現場を狙えば良いのである。朝日の当たる西側の湿った岩の斜面で吸水後に翅を開くというイメージが浮かぶ。この生息地における今の時期の撮影は、掲載した写真が限界であるため、来年は、仮説を信じて6月の梅雨の晴れ間にこの地を訪れ、北陸のヒサマツミドリシジミとの連戦に勝利したい。

追記:この生息地は採集者も多く、皆、竿の長い網を振り回しているが、10m以上もあるアカガシの大木の樹冠付近を高速で飛び回るため、捕獲率はかなり低い。(網を持った輩は、早々に諦めて帰って頂きたい。)

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キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/500秒 ISO 3200 -2/3V(2013.8.3 10:01)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/640秒 ISO 3200 -2/3V(2013.8.3 10:02)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/640秒 ISO 3200(2013.8.3 9:50)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F9.0 1/800秒 ISO 3200V(2016.7.24 7:46)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F12 1/250秒 ISO 3200 -1/3V(2013.7.27 7:16)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/40秒 ISO 3200 -2/3V(2013.7.27 10:24)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/640秒 ISO 200(2013.8.3 7:51)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/400秒 ISO 3200(2013.8.3 7:54)

キリシマミドリシジミ

キリシマミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F10 1/800秒 ISO 2000(2016.8.3 7:49)

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ミヤマモンキチョウ

2016-07-20 20:26:02 | チョウ/シロチョウ科

 ミヤマモンキチョウ Colias palaeno (Linnaeus, 1761) は、浅間山系及び飛騨山脈の森林限界(1,800m)以上の高山帯にのみ生息するシロチョウ科モンキチョウ属(Colias属)の高山蝶で、 Colias palaeno aias Fruhstorfer, 1903 (浅間連山亜種)と Colias palaeno sugitanii Esaki, 1929 (北アルプス亜種)に分類されている。普通種のモンキチョウよりもひと回り小さく、オスは、地色が黄色で翅表の外縁には黒い帯模様があり、翅縁・触角・脚がピンク色なのが特徴で、高山帯の岩礫地に生育するツツジ科スノキ属のクロマメノキを食草としている。尚、クロマメノキの選抜品種である浅間葡萄は、ブルーベリーに似た甘酸っぱい味で食用になっている。
 ミヤマモンキチョウは、マニアの採集とクロマメノキの盗掘による減少が著しく、2亜種とも環境省RDBでは準絶滅危惧(NT)として記載され、群馬県では絶滅危惧Ⅰ類、長野県では準絶滅危惧種、富山県・岐阜県では、絶滅危惧Ⅱ類に選定している。また、長野・群馬・富山では、県の天然記念物に指定しており、採集することはできない。

 ミヤマモンキチョウ(浅間連山亜種)は、2014年7月に撮影しているが、同一個体のオス2カットのみであったため、 2年ぶりに生息地を訪れての再挑戦である。
 現地のクロマメノキが群生する場所に到着すると、そこそこの数の黄色いチョウが飛んでいたが、モンキチョウ Colias erate poliographa Motschulsky, [1861] も生息しているため、より小さく、しかも翅表外縁の黒い帯模様のものを探すと、何頭も飛んでいる。ミヤマモンキチョウは、太陽が隠れると、まったく飛ばない。飛んでくれないと、見つからない。日が差すと飛ぶが、今度は良い位置に止まらない。木道からしか撮れないので苦労したが、何とかオスとメス、飛翔、産卵の場面を撮影することができた。本記事では、比較のために普通種である「モンキチョウ」の写真も併載した。

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ミヤマモンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 250 +2/3EV (2014.7.12)

ミヤマモンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 400(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 250(2016.7.18)

ミヤマモンキチョウ(産卵)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 200(2016.7.18)

モンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(2010.06.26)

モンキチョウ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1000秒 ISO 200(2010.06.26)

モンキチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1250秒 ISO 200(2010.07.17)

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ウラジロミドリシジミ

2016-07-19 22:24:12 | チョウ/ゼフィルス

 ウラジロミドリシジミ Favonius saphirinus saphirinus (Staudinger, 1887) は、シジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、北海道、本州、四国、九州に分布し、東日本ではカシワを主に、西日本ではナラガシワを食樹としている。生息地は極めて局所的で、更には開発等によるカシワ林の消失や乱獲により各地で絶滅が危惧されており、多くの自治体のRDBに絶滅危惧Ⅰ類として記載されている。
 オスの翅表は光沢ある緑色で、見る方向によっては学名(saphirinus)にあるように濃青色(サファイア・ブルー)を呈する。一方、メスの翅表は暗い褐色で地味である。翅裏の地色は、雌雄ともに銀白色で数本の暗色条があるが、オスでは弱いか消失する個体もいる。翅裏の銀白色と翅形が丸みを帯びてることが、他のミドリシジミ類と異なり、本種の特徴となっている。また、前翅長は14~20mmとミドリシジミ類としては小型で、特にオスは小さく、春型のルリシジミほどの大きさの個体もいる。
 活動時間は夕方で、オスはメスを探すために食樹の樹冠付近を飛ぶが、テリトリーを見張る行動や卍飛翔を繰り広げることはほとんどない。

 ウラジロミドリシジミは、長野県にて自力で生息場所を見つけて撮影してきたが、「サファイア・ブルーの全開翅」を撮るという課題が残っている。今年も長野県を訪れたが、1回のみであり、しかも早朝から気温が高くてカシワの樹冠から降りず、全く撮影することができなかった。そこで知人にお願いをして群馬県内の生息地を案内していただいた。
 群馬県内では、かつて榛名山に多産していたが、現在では開発と乱獲により絶滅したと言われている。案内いただいた場所は、そのような心配はないと思われる環境条件である。また、 今回の群馬の生息地の標高は、長野県の生息地よりも、およそ400mほど高いため発生時期が2~3週間ほど遅いこともあり、転戦が可能となった。

 7月16日の初訪。前日は雨、当日も朝から霧雨が降る生憎の天候。気温は18℃だが蒸し暑く感じる。カシワの枝を刺激して飛び出しても、下草には降りてこない。元気よく飛び回って逆に高い所の葉に止まってしまう。この日は、翅裏を撮影するのが精一杯であった。
 18日、2回目の訪問。朝4時半からカシワの枝を刺激する。天候は曇りだが、やはり蒸し暑い。ウラジロミドリシジミは降りてこない。1時間半粘って、ようやく1頭のオスが地上2mの所に止まった。「もっと下に」と欲を出して刺激を与えると、上にいってしまい取り返しのつかない事態になると思い、このまま待機。チョウの方は、落ち着いた様子で、徐々に向きを変えた。空を見上げると、雲が切れ始め、朝日が見え始めていた。1時間が過ぎたころ、止まっているカシワの葉に木漏れ日が差し始めた。すると、予想通りに翅を開いた。
 目的は達成できたが、点数を付けるなら50点。翅の輝きは素晴らしいが、夏の太陽が強すぎて「サファイア・ブルー」とは違った色合いになってしまった。「サファイア・ブルーの全開翅」を求めて、また来年挑戦である。(写真は、長野と群馬の個体を掲載した。)

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ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.16)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:長野県 2015.7.5)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.16)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 2000 -1EV(撮影地:長野県 2014.7.13)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 -1/3EV(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 -1/3V(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:群馬県 2016.7.18)

ウラジロミドリシジミ

ウラジロミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1600 +2/3EV(撮影地:長野県 2015.7.5)

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ヒメボタル(山梨)

2016-07-17 17:01:36 | ヒメボタル

 ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 の発生もそろそろ全国的に終盤。5年ぶりに山梨県内の生息地を訪れた。例年よりも一週間ほど早い訪問だが、予想通りにヒメボタルの飛翔が観察できた。
 ヒメボタルは、活動時間の違う2タイプに分けられる。1つは、ゲンジボタルと同じ時間帯に発光飛翔する宵の口型と、もう1つは23時頃から発光飛翔する深夜型である。今回の生息地のヒメボタルは宵の口型である。過去の観察では、19時半から発光を開始したが、今回は曇天のため空が明るく、発光は19時45分からであった。まだ、メスが確認できないため発生初期なのだろう、飛翔数も少なく、10数頭が周囲を行き交うといった様子であった。

 ヒメボタルの写真は、リバーサル・フィルムでは相反則不軌の影響で感度の低下と色再現性の低下があり、またラチチュードが狭いため、なかなか綺麗に撮ることが難しく、ISO1600のネガ・フィルムで30~60分の長時間露光でようやく撮影できるといったものであった。(参照:ホタル写真の変遷)しかしながら、デジタル・カメラの技術進歩によって、昨今では簡単に撮影することができるようになった。そのため、独特の発光から写しだされる写真の人気が急上昇し、各地の生息地で多くのカメラマンが撮影をし、パソコンでの作品づくりを楽しんでいる。
 ネット上で公開されているヒメボタルの写真を拝見すると、そのほとんどが、ヒメボタルの光をより多く重ねることに主眼が置かれているように思う。地面を光の絨毯で覆うばかりである。 昔のフィルムでも、発生数の多い生息地において適正露出になるまで30分も露光すれば、やはり同じように光の絨毯になるし、デジタルでも、1つの作品ならばそれも良いと思う。中には、昼間に飛んでいるのか?と思うような背景の明るい写真もあるが、それらの写真を見て、嘆くこともなければ言いたい文句もない。(勿論、見た目でそんな感じには見えない。)
 私の場合は、撮影を開始した昭和50年(1975年)当初から一貫して、ホタルの生態と生息環境の調査研究の一部として、1つは「生態写真」、そして、こうした飛翔風景に関しては、ホタルがどのような自然環境で、どのように飛翔するのか、そしてどのような発光なのかを写す「記録写真」という考えで撮影を行ってきている。デジタル・カメラを使用するようになってからは、その利点を活かして、それぞれのホタルの発光色と同じになるように現像している。ヒメボタルに関しては、他の多くの写真をみると、黄緑色やとても明るいレモン・イエローに写っているものがほとんどであるが、測光微光度計A型でヒメボタルの発光スペクトルを分析すると、530~660nmの波長の光を含んでおり(神田左京)、ピークは橙色に近い黄色である。ヒメボタルをかごに入れて観察すれば分かるが、見た目では黄金の発光色に見える。 しかし、飛翔しているときは、違う色合いに見えることもあり、人によっても見える色が違う。白っぽかったり、黄緑色にみえたり・・・これは、湿度の違いや人の色覚の違いによるものだ。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメボタル

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 240秒多重 ISO 1600(2016.7.16)

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ヒメシジミ

2016-07-15 20:08:57 | チョウ/シジミチョウ科

 ヒメシジミ Plebejus argus (Linnaeus, 1758)は、シジミチョウ科ヒメシジミ属(Plebejus属)のシジミチョウで、北海道には、北海道亜種 Plebejus argus pseudaegon (Butler, [1882]) が広く分布し、本州には、本州・九州亜種 Plebejus argus micrargus (Butler, 1878) が分布しており、山地の高原や渓流沿いの草地で見られる。
 食草は、マアザミ、ヤマボクチなどのキク科植物およびタイツリオウギ、イワオウギなどのマメ科植物で、そのほかバラ科、タデ科、ユキノシタ科、ヤナギ科植物も食草となることがあり、 40種にも及んでいる。しかしながら、分布・生息地ともに局所的で、更には幼虫がアリと共生関係にあるため生育場所が安定せず、発生数は減少傾向にある。そのため環境省RDBには準絶滅危惧に、多くの都道府県のRDBに絶滅危惧Ⅰ類、絶滅危惧Ⅱ類として記載しており、東京都、神奈川県、九州では絶滅している。

 ヒメシジミは、個体の大きさや翅の斑紋と色に地域特性や個体差が見られる。発生地の気象条件、環境条件、食草の種類や発生量、摂食期間、共生アリとの関係、遺伝形質などが要因となり、また蛹時の鱗粉が形成される際に急激な気温の変化が起きると「斑紋異常」になりやすいと言われている。
 翅表では、クロヘリ型、クロテン型、朝日型等の地域変異が確認されており、翅裏では、これまでないと言われていたオレンジ帯の黒斑にある水色の構造色が、富山県の個体ではあることを 確認している。(尚、富山県に於けるヒメシジミは、標高600m以上の山間部及び渓谷部に生息しているが、今回撮影した場所は標高210mであり、たいへん貴重な記録である。)

 各地に遠征した際に、草原では頻繁に目撃するヒメシジミ。興味のない者にとっては、気を留めることにないただの小さなチョウだが、私は、地域特性を記録に収めておきたいと思い、どこにいっても見かければ撮影している。

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ヒメシジミ

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500 +1(撮影地:富山県黒部市 2016.5.28)

ヒメシジミ

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 200(撮影地:新潟県十日町市 2014.7.5)

ヒメシジミ

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 500 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

ヒメシジミ

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

ヒメシジミ

ヒメシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 500(撮影地:富山県黒部市 2016.5.28)

ヒメシジミ

ヒメシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320 -/3EV(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

ヒメシジミ

ヒメシジミの交尾
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/250秒 ISO 2500(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

ヒメシジミ

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F11 1/200秒 ISO 320 +1EV(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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オオイチモンジ

2016-07-11 21:35:22 | チョウ/タテハチョウ科

 オオイチモンジ Limenitis populi jezoensis Matsumura,1919 は、タテハチョウ科(Family Nymphalidae)/イチモンジチョウ族(Tribe Limentidini)/オオイチモンジ属(Genus Limenitis)に属するチョウである。前翅の開張幅がオスで 66mm内外、メスで 80mm内外もある大型で、翅表は黒地に白条を持ち、後翅外縁に沿って青色の構造色を持つ光沢部と赤斑が並び、地味ながらも美しい。
 北海道と本州(主に中部山岳地帯の標高1000m~1600m)に分布し、幼虫の食樹となるヤナギ科であるドロノキ(ドロヤナギ)やヤマナラシが多い沢沿いの林縁、湖沼の周辺林、 沢沿いの林道に生息するが、本州においては、生息域の標高が上昇し、生息域の面積が縮小傾向にあると同時に、河川改修や針葉樹の植林による食樹の減少により絶滅が危惧されており、環境省RDBでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)として記載、群馬県・静岡県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類、福島県のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類、長野県・岐阜県・富山県のRDBでは準絶滅危惧種として選定しているが、群馬県・栃木県・福島県では絶滅したと言われている。群馬県、長野県、山梨県では県指定の天然記念物であり、長野県においては、種の保存法および関連した都道府県条例での指定種となっており、採集はできない。しかしながら、オオイチモンジはチョウ・マニアの垂涎の的であり、過去に自然公園保護法違反、文化財保護条例違反、県希少野生動植物保護条例違反(無届けの捕獲)等で書類送検された採集者が何人もいる。

 オオイチモンジを撮影するために長野県の上高地に通って3年。一昨年は天候不順で1頭も現れず、昨年は1頭を撮影したものの翅がボロボロ。そして今年。他の多くの昆虫の発生が例年よりも10日ほど早いことから、昨年よりも9日早く訪問したところ、ようやく綺麗な姿を撮ることができた。
 沢渡を予約したタクシーで4時半に出発し、バスターミナルに一番乗り。梅雨の時期であるが、快晴で無風。気温18℃。最高の条件である。早速、ポイントを目指して歩き始め、現地に7時から待機。しばらくすると、1頭のオオイチモンジが頭上を滑空し、木立の中へ。7時半を過ぎると飛来する数も増え始め、石に止まったりするが、まだ落ち着きがなく、すぐに飛び立ってしまう。その後、石に止まって翅を開き、ミネラルを吸う個体が多くなり、じっくりと観察しながら撮影することができた。(その内1頭に手を近づけると、手に乗ってきて汗を吸い始めた。)このポイントには、30分で6頭ほどのオオイチモンジが飛来したが、すべてオスであった。
 ここでの撮影(目線の高さでの開翅)を終え、次のポイントへと移動すると、川原の一ケ所に多くのオオイチモンジが集団でいるのを発見。近づくと何頭かは飛んでしまったが、2頭のオオイチモンジ(他にコムラサキとセセリチョウ)が動物の排泄物で吸汁している様子を観察できた。タテハチョウ科は、コンクリートや石岩等でミネラルを吸う他、地面での吸水、動物の排泄物や樹液の吸汁が特徴であり、花での吸蜜は稀である。(昨年は、花での吸蜜を撮影している。)

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オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/200秒 ISO 400 +1 1/3EV 内臓ストロボ使用(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1 1/3EV(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 400(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1 1/3EV(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 640 +1 1/3EV(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

オオイチモンジの写真

オオイチモンジ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1 1/3EV(撮影地:長野県松本市上高地 2016.7.10)

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幻の蝶

2016-07-05 22:35:23 | チョウ/ゼフィルス

 これまで、そこそこの種数の昆虫を撮影してきたが、絶滅危惧種であっても生息地に行けば撮影ができた。知人から生息地をご教示いただいて楽に撮影に至った種もあるが、多くは自力で生息地を探してきた。一番苦労したのは、オオキトンボである。
 自宅から比較的近距離である栃木県の生息地に4年間で6回通ったが、どうやら絶滅した模様。ならば多産地である兵庫県に行くしかない。とは言っても、どこに行けばよいか分からない。 まずは、生息環境を学び、兵庫県内にある数千という池を1つ1つ航空写真で調べる。ターゲットにした池に行ってみるが見つからない。今度は、生態と活動時間等を調べ、再度行ってみる。 この繰り返しで、2年の間に往復1,100kmを4回通ってようやく撮れた。(参照:オオキトンボ

 現在、オオキトンボよりも撮影に苦労している昆虫がいる。ヒサマツミドリシジミである。確実な生息場所なのに撮ることができないのである。 目的は、図鑑写真、そして生態写真を撮ること。兵庫県北部の有名な多産地に行けば高確率で撮影可能だが、距離もある上に採集者も多いので、北陸の生息場所に何度となく訪れた。メスは、吸水している様子と開翅の写真を昨年の9月に3泊4日の4日目にようやく撮影できたが、(参照:ヒサマツミドリシジミ(メスの吸水行動))、オスは、未だに撮影どころかその姿さえ確認できていないのである。
 今年の6月18日には、私は生息地Bにおいて成果ゼロであったにも関わらず、同日、知人は生息地Aにおいてオスの吸水と開翅の観察をしている。それならばと、生息地Aに7月2日に行ってみたのだが、6時間以上も張り込んで1頭も確認できなかった。15時半からゼフィルスがテリトリーを見張りはじめ、2頭が卍飛翔を行った。種の同定ができなかったのが少々心残りである(エゾミドリシジミも可能性が大である)が、いずれにせよ、私にとってヒサマツミドリシジミは、依然として幻の蝶なのである。

  • 2015年6月27日~28日 生息地A地区 成果なし
  • 2015年7月04日 生息地A地区 成果なし
  • 2015年7月10日 生息地A地区及びB地区 成果なし
  • 2015年9月20日~23日 生息地A地区 メスの吸水行動の撮影
  • 2016年5月28日 生息地A地区及びB地区 成果なし
  • 2016年6月18日 生息地B地区 成果なし
  • 2016年7月02日 生息地A地区 成果なし

 ヒサマツミドリシジミの生息場所は分かっている。そして生態に関する知識も得た。ヒサマツミドリシジミは、5月の下旬には羽化するが、その後一ヵ月ほどは、オスはテリトリーを見張る行動を一切せず、天候のよい日は雌雄ともに吸水するが、それ以外はほとんど飛ぶことなくじっとしている。7月になってから、オスはテリトリーを見張る行動を行い、メスとの交尾に至る。オスは、交尾後に死んでしまうが、メスは夏眠をし、9月に再び活動を開始して産卵をするのである。また、他地域のヒサマツミドリシジミは、羽化後は、生育した場所を離れて山頂付近に移動するが、生息地B地区では、生育場所に留まって一生を終えるのである。(参照:ヒサマツミドリシジミの発生時期に関する考察
 しかしながら、北陸においても地域特性があろう。活動時刻にも差があるかもしれない。生息地A地区における生態は、知人ともに自ら調べるしかない。ただし、時期的に梅雨と重なり、 特に北陸は雨の日が多いから、週末しか動けない私には難儀である。

 日本国内のゼフィルスは25種で、未撮影種は、キタアカシジミとヒサマツミドリシジミであり、まずはヒサマツミドリシジミを収めたい。 証拠程度の写真ではダメで、誰もが、「これぞヒサマツミドリシジミ!」というオスが開翅した美しい図鑑写真とテリトリーを見張る生態写真を撮りたい。北陸の生息地において撮影するには、ポイントにて羽化後の不活性時期に吸水にくるタイミングを狙うのが一番良いという結論に至った。来年は、これまでの経験と知識を活かして、何としても美しい姿を収めたいと思う。その後に、行動を観察してテリトリーを見張る生態写真という順である。
以下に、北陸における生息環境の写真のみを掲載する。渓谷の断崖に群生するウラジロガシを食樹としている。

 (その後、5年経過した2021年6月に北陸の生息地にてオスの撮影に成功した。投稿記事はこちら→ヒサマツミドリシジミ

 今期、ヒロオビミドリシジミのリベンジを逃したが、まだウラジロミドリシジミとアイノミドリシジミ、そしてキリシマミドリシジミのリベンジが残っているので、天候が良いことを祈りながら気合を入れて望んでいきたいと思う。

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ヒサマツミドリシジミの生息地

ヒサマツミドリシジミの生息地A

ヒサマツミドリシジミの生息地

ヒサマツミドリシジミの生息地B

ヒサマツミドリシジミの生息地

ヒサマツミドリシジミの吸水ポイント(生息地A)

ヒサマツミドリシジミの生息地

ヒサマツミドリシジミの生息地A

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ウラクロシジミ(メス開翅)

2016-07-03 20:06:46 | チョウ/ゼフィルス

 ウラクロシジミのメスの開翅を撮ることができた。ウラクロシジミ Iratsume orsedice orsedice (Butler, [1882]) のオスは、先般の記事で紹介したように、今年は6月12日に撮影しているが、その2週間後に生息場所に訪れてみると、日中からウラクロシジミのメスが食樹であるマンサクの周囲を飛び回り、止まると翅を開くという行動をとっていた。また、撮影はできなかったが、産卵もしていた。オスの活動時刻は、早くても14時半以降で、16時頃から日没前が一番活動するが、メスはほとんど飛ぶことはない。しかしながら、産卵期には、メスは日中から飛び回って産卵をするようである。この日、夕方まで観察したが、オスは1頭も見られず、発生は終了したようであった。
 ウラクロシジミのオスの翅表は、真珠の輝きであるが、メスは濃灰色の地に薄い青が少しだけ乗っている。ルリシジミのメスに似ているが、翅裏の違いですぐに分かる。来年は、オスの 開翅をもっと美しく完璧に撮れるよう努力したい思う。

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ウラクロシジミ(メス開翅)

ウラクロシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 3200 +1/3EV(2016.6.26 11:25)

ウラクロシジミ(メス開翅)

ウラクロシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F9.0 1/1000秒 ISO 2000 +1/3EV(2016.6.26 11:27)

ウラクロシジミ(メス)

ウラクロシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F9.0 1/640秒 ISO 3200 +1/3EV(2016.6.26 12:06)

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