ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

秋の色

2023-11-13 13:01:55 | 風景写真/紅葉

 前記事の表題は「11月の夏日」投稿した翌日の7日(火)は、何と東京都心の気温が27.5度と11月の最高気温を100年ぶりに更新した。ところが、12日(日)は一転して冬。上空に強い寒気が入り、東京都心は最高気温が11℃と今シーズンで1番の寒さになった。13日(月)も各地で寒い朝となり、東京や名古屋、大阪などでは、前日に続いて今季最低気温を更新した。一体、秋はどこへいったのだろう?そのうちに季節は夏と冬だけになってしまうのではないだろうかと心配である。こうした異常気象は、生態系を変化させ、昆虫をはじめとする動植物の生態も変えてしまい、私たち日本人の生活にも影響を及ぼすだろう。
 日本の四季は、食や行事と密接に関係があり、様々な伝統文化を生み出してきた。「衣替え」「花見」「夏祭り」「花火大会」「お月見」・・・などの行事がある。食に関しては「食欲の秋」。新米にサンマ、マツタケ・・・「旬」のものを頂くと言う食文化がある。また、古くから伝わってきた季節と密接に関係した日本の伝統色もある。十二単(じゅうにひとえ)にみるように、日本の色をあわせる文化である襲の色目(かさねのいろめ)は、季節の変化を色彩として表現する日本の伝統的な配色方法だ。昔から色彩豊かな自然に囲まれていた所以の色彩感覚である。季節の違いがなくなってしまえば、四季の中で過ごしてきた私たち日本人のこうした様々な伝統文化にも影響を与えるかもしれない。
 一年で一番、彩が豊かな秋。「茜色」「柿色」「朽葉色」「黄金色」などの日本の伝統色は、里山の紅葉から生まれている。こうした「秋の色」は、自然の具体的な物の色のみならず、衰えていく気配や 寂莫とした寂寥感などを表す季語にもなっている。

「夕づく日むかひの岡のうす紅葉まだきさびしき秋の色かな」 藤原定家

 実際に、紅葉は落葉広葉樹にとっての冬を生き残るためのリストラ戦略。落葉広葉樹は、葉の中の葉緑体や窒素等の栄養成分を葉を落とす前にできるだけ回収し、その後、道管と師管が閉し、葉にはエネルギーも水分もいかなくなってしまう。回収されずに葉に残ったアントシアニンやカロテノイド等は、葉を赤や黄色に変え、寒さなどから身を守ろうとする。これが紅葉だが、やがて枯れて落ちるのである。
 襲の色目が美しく表現され、様々な色彩の艶やかさや穏やかさに、季節の移り変わりの切なさも感じさせる秋。秋の十二単を愛でつつ、自然の美しさやその源となる生命の尊厳、そして日本の伝統文化の歴史に思いを馳せたい。

 まったく出掛けていないため、今回も、過去撮影の写真ばかりを掲載した。ただし、その多くは初掲載のもので、どこかに行った時に何気なく撮ったものもある。当時、何かを感じて写したのだろうが、現像もせずにハードディスクに保存したままになっていた。そうしたRAWデータから、私の「秋の色」をもう一度心で見つめ、冬の旅立ちへと支度をしたい。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

紅葉の写真
紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 5秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2010.11.21 9:04)
紅葉の写真
紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/20秒 ISO 100(撮影地:東京都あきる野市 2011.11.12 14:00)
紅葉の写真
紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1秒 ISO 100 -1EV(撮影地:東京都あきる野市 2010.11.21 9:59)
紅葉の写真
紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.0 1/13秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県茅野市 2012.10.20 13:45)
紅葉(秋川渓谷)の写真
紅葉(秋川渓谷)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 0.5秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:東京都あきる野市 2013.11.17 13:50)
大銀杏を背景にカエデの紅葉の写真
大銀杏を背景にカエデの紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 0.35秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:東京都青梅市 2014.11.24 7:39)
ススキ原の写真
ススキ原(霧ヶ峰高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 1/25秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:長野県諏訪市 2012.10.20 12:14)
晩秋の御射鹿池の写真
晩秋の御射鹿池
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F14 6秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県茅野市 2011.10.23 6:16)
初冬の御射鹿池の写真
初冬の御射鹿池
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F18 1.6秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:長野県茅野市 2010.12.05 8:58)
初冬の星空の写真
初冬の星空(高ボッチ高原にて)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 189秒 ISO 400(撮影地:長野県塩尻市 2010.12.05 5:26)
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11月の夏日

2023-11-06 16:47:40 | 風景写真/秋

 11月なのに暑い。4日は、日本ホタルの会の会議で、久しぶりに対面で行い中野まで行ってきたが、東京都心では最高気温26.3℃を観測し14年ぶりに25度以上の夏日となった。気象庁によれば、年間の夏日の日数が4日で141日目となり、1875年の観測開始以降最多だという。全国915の観測地点のうち219地点で夏日となり、38地点で11月の観測史上最高を記録したらしい。まさに異常である。
 異常といえば、この秋はクマの被害がとても目立つ。環境省は、今年4月から10月末までにクマに襲われるなど被害に遭った人が全国で180人に上ったと発表している。こちらも統計を開始した2006年以来、過去最多という。私も過去に5回ほどツキノワグマに遭遇している。幸い襲われたことはないが、昆虫や自然風景の写真を撮りに行く場所は、ほとんど人が来ない山の中でツキノワグマの生息地が多い。最近では、山奥でなくても住宅地にまで出没しており、東京ではあきる野市街でも目撃されているというから注意が必要である。
 せっかく紅葉が美しい季節でありながら、これまでの経験を思うと野山まで一歩を踏み出す勇気がない。今年は身の安全を優先して、紅葉を愛でる遠征はしない方が良さそうである。このまま暑さが続けばクマの冬眠が先になるかもしれないが、長期予報では来週末あたりから寒波がくるというから、「月のない快晴無風の夜と放射冷却の朝」という条件の日を待って、冬期通行止めになる前に撮りたい自然風景を撮りに行こうと思う。

 この記事では、未掲載写真を含めた、この時期らしい風景とトンボの写真を集めてみた。
 富士山を撮った草原では、夏は多くの絶滅危惧種のチョウが見られるが、秋は閑散としていて寂しい。撮影時は、大きなイノシシ2頭と遭遇したが、無事にやり過ごすことができた。
 秋らしく真っ赤に成熟したナツアカネは、里山の田んぼで盛んに産卵しており、空中からばらまく卵も写すことができた。別の稲刈りが終わった田んぼでは、カトリヤンマのオスが数十秒のホバリングを行っており、この時期の撮影の楽しみの1つである。小さく細いヤンマであるが、秋の柔らかい日差しの下で、その美しさが際立つ。今年の夏に撮影したホソミモリトンボでもそうだが、最新機種に頼ることなく古い一眼デジカメと中古のレンズでマニュアルフォーカス、ワンショットで頭の先から腹部先端までピントが合った飛翔写真を撮るのが拘りである。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

秋の富士山と草原の写真
秋の富士山と草原
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F14 1/25秒 ISO 100(撮影地:山梨県 2013.11.17 13:50)
ツキノワグマの写真
ツキノワグマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2021.7.24 9:51)
ナツアカネの写真
ナツアカネの連結飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 800 +2/3EV(撮影地:東京都 2014.10.18 11:57)
ナツアカネの写真
ナツアカネの連結打空産卵
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F6.3 1/500秒 ISO 640 +2/3EV(撮影地:東京都 2014.10.18 11:50)
ナツアカネの写真
ナツアカネの連結飛翔
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F4.0 1/500秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:東京都 2014.10.18 12:00)
カトリヤンマの写真
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 640(撮影地:神奈川県 2013.10.14 15:02)
カトリヤンマの写真
カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1EV(撮影地:神奈川県 2016.10.23 13:06)
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トビナナフシ

2023-11-06 15:04:31 | その他昆虫と話題

 トビナナフシは、ナナフシ目(Order Phasmatodea)トビナナフシ科(Family Diapheromeridae)トビナナフシ属(Genus Micadina)で、短い翅をもつナナフシの仲間である。前翅は小さく円形で後翅は腹部中央に達する程度の長さで扇状に広げることができるが、飛翔能力は高くない。日本には以下の3種類が生息している。

  • ニホントビナナフシ Micadina phluctainoides (Rehn, 1904) 分布:本州(茨城県以西)、四国、九州、沖縄奄美地方の沿海地から低山帯の雑木林
  • ヤスマツトビナナフシ Micadina yasumatsui Shiraki, 1935 分布:北海道、本州、四国、九州の低山帯から山地帯の雑木林
  • シラキトビナナフシ Micadina fagi(Ichikawa and Okada, 2008) 分布:北海道、本州、四国のブナ林

 ナナフシ科の「ナナフシモドキ」や「エダナナフシ」は、雑木林などでは普通に見られ、先日は、山梨県内の道の駅においてトイレの中で出会ったりしたが、トビナナフシは、探してもなかなか出会う確率は少ない。上記3種ともに環境省版レッドリストに記載はないが、都道府県版レッドリストでは、群馬県などでは絶滅危惧Ⅱ類に、埼玉県、長野県などでは準絶滅危惧種としている。
 トビナナフシは、メスの未受精卵から発生する単性生殖をすることで知られており、気温が高い地域ではオスとメスが交尾し産卵するが、緯度が高くなるにつれオスは見られなくなる。関東各地では、稀にオスが見つかる程度である。

 これまで様々な昆虫を撮影してきたが、未掲載未発表の写真も多い。今回は、その中からトビナナフシの写真4枚を掲載した。写真1及び2は、複眼の両脇から伸びる黄色い線、そして前胸背板と中胸背板の両側に淡いオレンジ色の線が見られる特徴からニホントビナナフシと分かる。写真3及び4は、それが見られないためヤスマツトビナナフシとしたが、幼虫であるため断定はできない。違っていたら、ご指摘いただきたい。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。

ニホントビナナフシの写真
ニホントビナナフシ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影地:埼玉県 2011.9.24 13:48)
ニホントビナナフシの写真
ニホントビナナフシ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:埼玉県 2011.9.24 13:44)
ヤスマツトビナナフシの写真
ヤスマツトビナナフシ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:埼玉県 2011.7.02 13:41)
ヤスマツトビナナフシの写真
ヤスマツトビナナフシ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 -2/3EV(撮影地:埼玉県 2011.7.02 13:42)
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