ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヘイケボタル(千葉県)

2021-06-27 15:28:13 | ヘイケボタル

 私がホタルと出会ったのは、今から49年前。千葉県松戸市の水田でヘイケボタルを見たのが最初であり、それが始まりである。

 ヘイケボタルの生態については細かく調べ、飼育では1976年に羽化させるまで成功させている。11月21日に羽化させ、26日間生存させたこともある。1978年には、昆虫愛好会月刊誌「インセクタリウム」において「ヘイケボタルの研究」を発表し、同年に東京動物園協会より奨励賞を受賞、NHKの朝の番組にも出演するなど、ヘイケボタルとの昔の思い出は多い。
 昨今では、ゲンジボタルの保護保全、環境再生等に多く関わっているが、ヘイケボタルを忘れたわけではない。やはり、私にとっては大切な昆虫であり、今回、千葉県の生息地を訪れた。残念ながら、49年前にヘイケボタルと出会った千葉県松戸市の水田は今はなく、房総方面の水田を訪れた。
 そのヘイケボタルの水田は、先月28日にゲンジボタルの観察で訪れた場所と同じである。(記事:ゲンジボタル(東日本型))当地は、ゲンジボタルよりも一か月遅れてヘイケボタルが発生する。昨年と一昨年に観察した東京都八王子市川町の谷戸のようにヘイケボタルとゲンジボタルが同時に発生し、両種が同じところで乱舞するいわゆる「源平合戦」が見られる生息地も全国にはいくつもあるが、ほとんどの所はヘイケボタルの方が発生は遅く、地域によっては、8月になってからという所もある。
 今回、現地には25日の17時に到着し、18時より準備を開始した。農家の奥様お一人ずつお二人に「ホタルですか?」と声を掛けられ、色々とお話を伺うことができた。お一人は田んぼの管理をされているとのことで、聞けば、農薬を空中散布したと仰っていた。年々、ゲンジボタルが谷戸の最奥の湿地に追いやられている原因が判明した。おそらく、来年以降も水田脇で乱舞するゲンジボタルは見ることができないだろう。
 では、ヘイケボタルはどうなのだろうか?私の親友が先週訪れたらしく、数は多かったとの事。この週末が最盛期だろうとの連絡を頂いているので、いつもの田んぼ脇にカメラをセットした。今回は、映像が主目的である。2年前にも映像を撮っているが、1分ワンカットのみであったため、若干違う光景を残したかった。「いつもの田んぼ脇に・・・」谷戸には、いくつも水田があるが、ヘイケボタルが発生する水田は1つなのである。数頭が他の田んぼでも発光したり飛翔もするが、幼虫が生息しているのは、おそらく水田一枚である。その水田は、一年を通じて部分的に水が溜まった場所が存在しているのである。
 6月21日が夏至で、日の入りは18時59分。なかなか暗くならない。いつもどこでも、ホタルの生息地では日の入り時刻のかなり前から待機しているので、目が慣れて、余計に暗さを感じない。それでも、19時半に畔の草むらで1頭が発光開始。20時頃には50頭以上が発光飛翔していたのではないかと思う。それもいつもの範囲内だけである。

 ヘイケボタルの発光は、映像をご覧頂くと分かるようにゲンジボタルと違ってオスがリズムを合わせる集団同期明滅はない。淡い黄緑色の光で1秒に1回程度、不規則に弱く発光する。勿論、地上で発光するメスを探すためである。オスの発光を見たメスは、地上で光る。それを見つけたオスはメスに近寄っていき、光によるコミュニケーションが始まる。何頭ものオスが1頭のメスに集まるが、一番強く発光するオスが選ばれるのである。

農薬とホタルについて

 ヘイケボタルの発生状況を見る限り、農薬の空中散布の影響は、まったく感じられない。今回、農薬の種類までは伺っていないが、ヘイケボタルは極めて毒性の強いものでない限り、一時的な散布では壊滅的な打撃を受けることがないと言える。ただし、ゲンジボタルは大きなダメージを受けて水田近辺は発生がほぼゼロであり、他の地域では、ヘイケボタルも姿を消してしまったという話も聞く。
 ヘイケボタル同様に水田に生息するトンボ類も各地で減少傾向にあるが、近年、水稲栽培で用いられる浸透移行性の育苗箱施用剤、特にネオニコチノイド系殺虫剤の普及が原因となっているのではないかと指摘されており、これに関して国立環境研究所が実験水田を用いて、水稲栽培で用いられる新タイプ稲作農薬が、トンボ類を含む水田の生物相に対してどのような影響を与えるのかを調べている。
 実験では、現在国内でも広く使用される浸透移行性殺虫剤3剤、クロチアニジン(ネオニコチノイド系)、フィプロニル(フェニルピラゾール系)、及びクロラントラニリプロール(ジアミド系)を用いて行われている。その結果、いずれの農薬も、水中濃度は田植え後最初の2週間で急速に減少し、3か月程度で検出限界レベルまで減少するが、土壌中濃度は田植え後から徐々に増加し、土壌中に長期間残り続けることが分かった。また、3種の殺虫剤のうち、特にウンカ類やカメムシ、イネドロオイムシの防除に使用されているフィプロニルは、トンボ類の発生数を顕著に減少させることが分かっている。
 トンボの幼虫は水底で生活し、時には稲の茎等で静止するが、ヘイケボタルの幼虫は土壌に潜ることが多い。国立環境研究所の実験にはヘイケボタルに関するデータはないが、トンボ以上に影響があることは容易に想像できる。
 従来の農薬は、DDTなどの有機塩素系農薬から有機リン系農薬、そして浸透移行性殺虫剤へと移行した。現在の稲作では、殺菌剤と除草剤に殺虫剤を加えて散布するのが一般的で、殺虫剤には浸透移行性殺虫剤のフィプロニルが多用されている。浸透移行性殺虫剤は、生産者にとって使い勝手が良い。農薬の散布回数が少なくて済むので「減農薬」登録ができるのである。農水省も“減農薬”推進のために浸透移行性殺虫剤は欠かせない農薬として位置づけているのである。
 農作物の栽培において殺虫剤は害虫の発生をコントロールするために必要な薬剤である。トンボやホタル、ひいては生態系や生物多様性に対する影響に配慮しながら使用して頂きたいが、それは非生産者の勝手な言い分である。法人化し販路も独自に開拓できる農場・農家であれば、殺虫剤を使わない有機肥料無農薬栽培で環境保全型農業をアピールしたり「ホタル米」などのブランド力で販路拡大もできるだろうが、現在の日本のほとんどの稲作農家は、農協の指導に従わなければならない。農薬の散布に関しては、地域ごとに日取りを決めて一斉に決められた薬剤を空中散布する一斉防除が当たり前である。自分の田んぼだけ外そうとすれば、周囲の農家から迷惑がられ、農薬の売り上げ低下から農協からの風当たりも強くなると言う。農薬の種類と使用量を自分でコントロールできる農家は、ほとんどないのが現実である。

 千葉県のヘイケボタル生息地。地元の方も他地域からの観賞者も来ない。将に真っ暗な地上で瞬き煌めく小さな星々。20時半頃にり天空にストロベリームーンが顔を出すと、田んぼの中の銀河は徐々に消えていった。この懐かしく美しい日本の原風景。この日に撮影した写真と映像が最後にならないことを祈るばかりである。

参考論文

  • A. Kasai, T. I. Hayashi, H. Ohnishi, K. Suzuki, D. Hayasaka and K. Goka. (2016) Fipronil application on rice paddy fields reduces densities of common skimmer and scarlet skimmer. Scientific Reports. DOI: 10.1038/srep23055
  • 上田哲行,神宮字寛 (2013) アキアカネに何が起こったのか:育苗箱施用浸透性殺虫剤のインパクト.TOMBO, Fukui, 55: 1?12.

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

千葉県のヘイケボタルの写真

ヘイケボタル(千葉県)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 140秒相当の比較明合成 ISO 400(撮影地:千葉県 2021.6.25 20:00)

ヘイケボタル(千葉県)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ヒメボタル(千葉県)

2021-06-26 17:31:43 | ヒメボタル

 千葉県のヒメボタル生息地を11年ぶりに訪れた。5週連続でホタルの観察と撮影である。同県にてヘイケボタルの観察と撮影を済ませてから移動したが、ヘイケボタルの映像編集に時間がかかるため、この記事を先に投稿したいと思う。

 千葉県のヒメボタルは、かつて県立高校の生物部が部誌に記載していたが、その後半世紀以上もの間、生息が確認されていなかった。しかしながら、2004年6月、偶然に生息が確認され新聞紙上を騒がせたのである。生息地には林道が通っているが、集落から数km離れており街灯はない。ここのヒメボタルは深夜型であるため、再発見が遅くなったのであろう。今の所、千葉県唯一のヒメボタル生息地となっている。
 生息地周辺は冬暖かく夏涼しいという海洋性気候の特徴を示し、雨量は年間2,000mmを越す最多雨地域である。周囲は常緑広葉樹を主体とした照葉樹林が広がっており、その林内に生息している。標高150mほどで、2004年当時は、低標高に生息するヒメボタルはたいへん珍しく貴重と言われていたが、今では瀬戸内海の無人島において海岸を飛翔するヒメボタルも発見されている。
 千葉県のヒメボタルは、千葉県レッドリスト(2019年改訂版)において A 最重要保護生物(尚且つ特に留意が必要な種)として記載されている。

 さて、6月25日。午後から千葉県のヘイケボタル生息地へ向かい、21時から移動。ヒメボタル生息地には、22時過ぎに到着。気温20℃で無風。晴れ。早速、林道を1.5kmほど徒歩で進む。かなり広範囲に生息しているようだが、まったく光らない。時間が早いのか?そもそも発生時期が合致しているのかも不安である。訪れたのは今回が2回目で、前回は11年前の6月19日。温暖化の影響で発生が早まっているかも知れない。ヒメボタルは、発生期間が10日~2週間なので一週間の差で見られなくなってしまう。そして一番の懸念事項は、月である。空には、何と満月(ストロベリームーン)が輝いている。本来、真っ暗で恐怖との闘いである林道も、普通に歩くことが出来る。結局、どこでどのくらい飛翔するのかが分からず、11年前に撮影した同じ場所に三脚を据えて待機することにした。
 23時を過ぎた頃、ようやく傍らの林内で1頭のヒメボタルの発光を確認。しかし、飛翔しない。飛んでも林内の僅かな範囲のみである。23時半頃になると、全部で6頭のヒメボタルを確認。内2頭が林道まで出てきて飛翔してくれたが、他は相変わらず林内で発光するだけであった。やはり、満月の明るさが原因だろう。2014年当時は、林道周辺だけで数千個体は発生していると推計されたようだが、台風などの影響で激減しているようである。幾分復活してきていると聞いたが、この満月では仕方がない。この日が発生時期のどこに当たるのかもわからないまま翌午前1時まで粘ったが、疲労が溜まってきたので、引き上げる事にした。
 今回の撮影は、135秒相当の比較明合成の1枚である。参考として2010年に同じ場所で撮影した一発長時間露光の写真も併載した。どちらの写真も、光で埋め尽くされたネット上に溢れるヒメボタル写真ではない。今回の訪問は、そうした創作写真を作ることが目的ではなく、千葉県のヒメボタルを記録として残すことであった。
 ヒメボタルの観察と撮影は、今後7月中に様々な生息地3~4カ所で行うことを予定している。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。

ヒメボタル(千葉県)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 135秒相当の比較明合成 ISO 1600(撮影地:千葉県 2021.6.26 0:41)

ヒメボタル(千葉県)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 275秒 ISO 800 合成なし(撮影地:千葉県 2010.6.19 22:03)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル(新潟)

2021-06-20 11:44:52 | ゲンジボタル

新潟県のゲンジボタル生息地へ

 ゲンジボタルの観察と撮影で新潟へ。ホタル前線は徐々に北上しており、新潟県でもホタルの発生が始まった。新潟県には、星峠や美人林の風景、ギフチョウやオオトラフトンボ、オオルリボシヤンマのオス型メス等の撮影で何度も訪れているが、新潟のゲンジボタル生息地は、初めてである。遠征は、当初、18日(金)夕方に計画していたが、仕事が17日(木)は昼で終了し、翌日は年次有給休暇。また天候も17日は新潟方面は晴れと言う予報であったため、予定を繰り上げて午後から新潟県へ向かった。
 14日頃に梅雨入りした東京。17日午前中は、曇り時々土砂降りであったが、関越道の前橋あたりは夏空が広がり、水上から湯沢までは曇天で、時々雨がぱらつくという状況。山々は黒い雲で覆われ、稲光が見えた。ただし、長岡の手前からは再び夏空が広がっており、順調に現地へと向かった。
 新潟県内には多くのゲンジボタル発生地があり、Web上で「名所」と呼ばれる所の情報が載っているが、私が目指したのは普通の農村である。現地到着は17時半。まずは、周辺の環境調査を行う。山間に集落が点在する農村地帯で、標高は110mほど。谷に沿って水田が広がっている。ゲンジボタルが生息する川は、中流域の河川環境で、流れはかなり早く水量も多い。2面がコンクリート護岸で中州は植物が繁茂している。川底は礫であるが、川に降りることが出来ないためにカワニナ等の生息状況は確認できなかった。50mほど離れた県道に街灯と民家が数軒あるが、光の影響は無さそうである。幼虫の上陸場所や産卵場所がどこなのか分からなかった。全体的に「日本の原風景」に相応しい景観である。

ゲンジボタルの生息地環境と同期明滅の発光間隔について

 18時。川に架かる橋のたもとから上流へ向けてカメラをセットした。あいにくカメラは1台しか持参しなかったので、最初に上流方向で比較明合成の写真と映像を撮影したのち、下流方向はフィルム撮影同様の一発長時間露光で写真を撮ることにした。
 当地の日の入りは19時09分だが、開けた場所で河川の幅もあり、木々で覆われている箇所もないため、なかなか暗くならない。気温21℃。無風で湿度も高い。先ほどまで輝いていた月齢7.0の半月も雲で隠れ、条件としては良いが、肝心のゲンジボタルの発生状況が分からない。公にはあまり知られていない生息地で、インターネットにも情報は出ていない。たぶん発生はしているだろうと言う予想での訪問であったが、地元のカメラマン5人のグループがやってきて、カメラをセットし始めたので、一安心。ちなみに、他には観賞者が二組だけであった。実際にあまり知られていない場所のか、訪れた日が木曜日という平日であったからかは分からないが、人間が少数なのは嬉しい。
 川を凝視すること40分。ようやく1頭光りだしたのが19時44分であった。その後、あちこちで光り始め、周囲が真っ暗になった20時15分頃から本格的な飛翔が始まった。ただし、橋を挟んで250mの範囲内だけである。この場所へ来る途中でも、ホタルが沢山飛んでいても良いように思う環境が随所にあったが、実際はいないようだ。今が発生初期なのか、最盛期なのかも不明。勿論、最盛期にどれほどの発生数なのかも分からない。この日は、橋から見て上流も下流も50頭ほどのゲンジボタルが河川の流れ上を飛翔しており、中には隣接する水田の方へ飛んでいく個体もいた。また、水田はごく少数であったがヘイケボタルも発生しており、河川で舞うゲンジボタルに混じって飛翔していた。

 新潟のゲンジボタルは、地域的に東日本型の遺伝子(東北グループ)であり、オスの集団同期明滅の間隔は気温20℃で4秒であるはずだが、当地のゲンジボタルを観察したところ、明滅の間隔がかなり速く、これは掲載している映像からも分かる。明滅間隔は気温によっても変化するが、この夜の気温は21℃であった。採集して遺伝子解析しなければ明確なことは言えないが、明滅間隔、発光飛翔のスピードは西日本型ゲンジボタルの特性に類似している。もし、西日本型の遺伝子であるならば、過去に人為的移入によって西日本のゲンジボタルが持ち込まれて定着したと思われるが、当地はホタル保存会などもないようで、詳細は不明である。
 また、新潟県内の他地域のゲンジボタルを観察していないので、比較することができないが、当地特有(地域特性)、あるいは生息地の物理的環境特性も関係しているのならば、新しい発見である。映像をご覧頂き、ご意見を頂戴したいと思う。

ホタルの写真について

 先週訪れた富山県のゲンジボタル生息地は、河川のすぐ近くで撮影したのでホタルに取り囲まれる状態でったが、今回の新潟県の生息地は、中規模な河川で橋の上からの観察と撮影のため、写真には周辺環境も写すようにした。前述のように河川下流方向は、比較明合成をしない1分ほどの長時間露光で撮影している。「農村風景とホタル」という貴重な光景を写真として残せたように思う。

 長時間露光写真は、時間に切れ間のない連続した写真であり、露光時間内におけるホタル1頭1頭の発光飛翔の方向や発光間隔の光跡が明瞭にかつ正確に記録されている。時間の連続性からホタルの生態学的観点や写真芸術の観点からも価値がある1枚になるのだが、背景を写すには高感度で長時間の露光が必要になる。私のカメラではISO感度400で露光時間40秒を越えたあたりから熱ノイズが発生してしまうというデメリットがあり、美しい写真とは言い難い結果である。しかしながら、フィルムで撮影していた頃を思い出し、写真はこうあるべきだと思い出した結果でもある。最新のデジタルカメラは技術も進んでおり、長時間露光でもノイズのない画像が得られるので、そろそろ機種を変更したいところではあるが、高価であり手が届かないのが現実で、今の機材を最大限活用するしかない。

 一方、上流方向に向けて撮影した写真は、比較明合成したものである。まず明るい時間に背景を撮影し、そのままカメラを動かさずに暗くなってホタルが飛んだらホタルの光跡だけを撮影する。これら数枚をパソコンソフトで合成するのである。比較明合成は、基本的にはノイズのない美しい背景を表現するための手法だが、重ねる光跡写真の枚数をいくらでも増やすことができ、アマチュア・カメラマンが撮るヒメボタル写真に見るような現実離れした単なる創作写真にしてしまいがちである。美しい1枚にはなるが、時間の連続性がないため価値ある1枚とは言い難い。見栄え重視の創作写真なのである。極端な事を言えば、ホタルが実際に飛んでいない所でも、写真上で乱舞させることもできる。

 比較明合成により、今では誰でもいとも簡単にホタルの写真が撮れて1枚の写真にすることが出来るようになったが、創作して単にインスタ映えを狙うのも良いが、ホタルの生態について学んだ上で撮影し作品にして頂きたい。特にカメラマンに人気のあるヒメボタルの写真では、今も尚、ヒメボタルが乱舞する中に立ち入り、人物と共に写している写真を目にする。勿論、人物と発光飛翔するヒメボタルは比較明合成だが、立ち入ることが問題だ。翅がないメスは、立ち入ったモデルの足元にいるのである。その光景を撮るカメラマンは、排除しなければならない!

あとがき

 今月3週連続での遠征。今回は往復640kmであったが、前回の富山、前々回の大阪を合わせると、この3週間の週末だけで2,560km走行したことになる。ちなみに、高速道路で青森から鹿児島まで走ると約2,059kmだ。緊急事態宣言中のことであるから、褒められたことではないが、被写体の発生時期、天候、私の休日という条件が見事に合致し、また経験値を積んだこともあり、7年越しでようやく撮影できたゼフィルス2種は、今年決行していなければ、今後いつ出会えるか分からない存在である。奇跡の連続に心から感謝したいと思う。
 ホタルの季節はまだまだ続く。7月末までに、ゲンジボタルは最低でも2カ所以上、ヒメボタルは3カ所の未訪問生息地での観察と撮影を予定している。また、今年はゼフィルス撮影を多く計画しており、ウラジロミドリシジミの全開翅を主目的に、撮り直しも含めて数種の撮影を予定している。他では、未撮影であるクモマベニヒカゲやホソミモリトンボ、開翅が撮れていないサツマシジミなどを予定。自然風景写真は、秋山郷の紅葉からになるだろう。

 今月20日で緊急事態宣言は解除されるが、宣言中であろうとなかろうと、新型コロナウイルスに感染しないことが重要だ。ワクチン接種券がまだ届いていないので、私の接種はまだまだ先になりそうだが、打ったから安心ではない。そもそもワクチンは感染ではなく発症を防ぐものである。接種を終えた人が他人にウイルスを感染させないようにできるとは限らないと言われている。諸説あるが、誤解せずに科学的根拠に基づいた内容を正しく理解することが必要だと思う。私は、今後も感染予防の対策を徹底して行いながら活動を続けていく所存である。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夕暮れの水田の写真

夕暮れの水田
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F11 1/40秒 ISO 100 -1EV(撮影地:新潟県 2021.6.17 18:24)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 68秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:37)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 46秒 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:45)

新潟県のゲンジボタルの写真

ゲンジボタル(新潟)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 11分相当の比較明合成 ISO 400(撮影地:新潟県 2021.6.17 20:00)

新潟県のゲンジボタル Genji firefly in Niigata (フルハイビジョン映像)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル(富山)

2021-06-13 21:40:21 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルの観察と撮影で富山を訪問してきた。先週は、岐阜県関ケ原のゲンジボタル生息地を訪ねたが、護岸工事で激減したという悲しい現実を目の当たりにした。今回の富山も、当初予定していた生息地が護岸工事で激減という知らせを頂き、富山県在住のプロの写真家「安念 余志子」さんにご教示いただき、違う場所を訪ねてみた。安念さんは、ホタルの写真もお撮りになっており、日本ホタルの会の会員でもある。
 6月11日17時半に現地到着。駐車場に車を止めたが、帰る時に車のベッドライトが川を照らさない向きに止めた。勿論、引き上げる時刻は、ホタルの発光飛翔活動が終了してからである。
 まずは、周辺の環境を観察。この地域は、78%が森林、13%が田園地帯で占められており、1.800m級の山岳から平野に広がる田園地帯に至るまで、豊かな自然環境が随所に残されている。見れば、その山地や麓、平野の至る所にホタルが生息していそうな印象を持つ。この日、訪れたのは複合扇状台地の田園地帯の中を流れる細い河川である。雑木林は隣接していない。水田の所々に民家が点在し、舗装道路も走っているが、交通量は極めて少ない。
 河川は、流れの幅2.0mほどで両岸はコンクリート護岸である。川底は砂礫で、一部に中州があり草が繁茂しており、川底や壁面には多くのカワニナが生息しているのが分かる。1.5mほどの護岸の上は草地で、農道を挟んで水田が広がっている。幼虫は、護岸を登り草地で蛹になることが安念さんの観察から判明しているが、最近、雨が降っていないからだろう、草地はカラカラに乾燥していた。それでも、多数の成虫が羽化して出てきている。また、河川のごく一部およそ200mの岸辺に桜や杉の並木があり、ゲンジボタルはその範囲内を飛翔する。
 かつて、埼玉県内のある大学の敷地内にこれと似た河川があり、ゲンジボタルの生息環境再生に関わったことがあるが、こうした環境でゲンジボタルが乱舞するということは、今後、様々な地域においてのホタルの保全活動に大いに参考になるだろう。

 18時半頃に安念さんが現地に来られ、色々とお話を伺い、すぐにお帰りになるまで情報交換を行った。その後、ゲンジボタルが多く飛翔するという場所にカメラをセットし、日没を待った。
 気温21℃。薄曇り。無風。月は無し。絶好のホタル日和である。日の入り時刻は19時11分。一番ボタルは早くて19時45分頃、おそらく河川の上に覆いかぶさる桜の葉裏だろうと思っていると、19時半に自分の足元近くの低い草むらで光り始めた。予想外の出来事である。その後も、次々に護岸上の高さ10cmほどの草むらで発光を始め、中州の茂みでも光り始めた。この時、光っているのはオスだが、これら個体は、昼間はそこで休んでいるということである。つまり、土手の草刈りは行ってはならないということである。
 飛翔開始は19時46分。20時を過ぎた頃から数が多くなり、見える50mほどの範囲で100頭を越えるゲンジボタルが発光飛翔をしていた。全体では、単純計算で400頭ということになる。すべてがゲンジボタルと思っていると、1頭だけヘイケボタルがゲンジの中をかき分けるように飛んでいたのが印象的であった。おそらく隣接する水田で羽化したものであると思われる。写真では分かりにくいが、ヘイケボタルであった。
 安念さんからは、地元の観賞者はあまり来ないと伺った。なぜなら、「ホタルは、普通にたくさんいて、見飽きている」との事。この日は、私以外に、カメラマンが3人。観賞者は、家族ずれが10組くらいであった。「初めて見た~」などという声が聞こえたので、地元の方ではないのだろう。ただし、懐中電灯を照らす行為は2例あった。そもそも、暗くなってから来ても懐中電灯なしで歩ける田んぼの脇道。今後もホタルのために照らさないで頂きたい。

 懐中電灯を照らす行為であるが、「写真を撮っている人から文句を言われる」と勘違いしている方々が多い。いや大多数の一般の方々はそう思っている。フィルムで撮っていた頃は、一回の懐中電灯の灯りでその日の撮影は台無しになるが、今はデジタルだから、そのような灯りが入れば、そのカットだけ削除すれば問題ない。人が写っても消せる時代だ。ホタルは、お互いの光でのみコミュニケーションを図り、繁殖する昆虫であり、月明りでさえ繁殖を阻害してしまうのである。ホタルのために灯りは禁物である。
 「ほんの数人が数回照らして問題があるのか」といった言い訳をする方もいるが、ホタルの発生期間を仮に3週間としよう。メスはオスより1週間ほど遅れて発生するから、繁殖日数は2週間に減る。ホタルは、満月の夜や風が強かったり、気温が15℃を下回るとあまり活動しない。それらを差し引くと繁殖日数は更に減る。そして一日の中での繁殖できる時間は、20時頃から21時頃の1時間だけである。そのわずかな繁殖の機会を人為的な光で邪魔をすればどうなるのか、お分かりになるだろう。

 さて、この日に撮影したホタルの写真であるが、まず背景を別撮り(明るい時間帯に予め撮っておくこと)しない5秒露光のカット8枚(40秒相当)及び4秒露光のカット35枚(140秒相当)を比較明合成したが、ここは街灯がなくても開けた場所なので、ISO200 F2.8で一発露光20~30秒露光の方が写真芸術的に美しいものになるような気がする。
 参考までに、明るい時間帯に予め撮影した背景に光跡を比較明合成する手法の写真も掲載した。5秒露光のカット35枚(170秒相当)であるが、ゲンジボタルが一番盛んに飛翔する時間帯のものである。飛翔するゲンジボタルに取り囲まれる撮影位置であるため、比較明合成で重ねすぎると、ホタルの光跡だらけで何だか分からなくなってしまう。
 また、ヘイケボタルが混じって飛翔していた写真も掲載した。こちらは別撮りした背景に5秒露光のカット4枚を比較明合成したものを掲載した。ホタルと花の写真は、写真家 安念さんの作品を真似させていただき、岸辺に咲く野菊の背後に乱舞するホタルを玉ボケにしたものである。これは、プロの写真家の作品とは比較にならない駄作である。
 また、昨今力を入れている映像も編集して掲載した。一発露光ならともかく、比較明合成は創作写真に他ならない。実際のホタルの飛翔は、やはり映像が良いと思っているからである。この映像から集団同期明滅はおよそ2秒なので、ここのゲンジボタルは西日本型であることが分かる。

 撮影は、活動が終了した21時過ぎに止め、この地を後にし帰路に就いた。帰りは、富山市内から国道41号線で岐阜県飛騨市を通り、471号線で平湯、158号線で長野県松本、その後松本ICから高速に乗って東京国立まで帰った。
 ブログ記事を見ればお分かりのように、毎週末遠方に出掛けている。人によっては「けしからん」と思うだろう。20日までは、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言中であり、人流を抑制し都県をまたぐ移動は自粛するよう要請されているからである。エビデンスが示されない限りは、基本的対処方針を厳守し、移動は車。食事はコンビニ等で買ったものを車内で食べる。他人とはソーシャルディスタンスをとる。会食は一切しない。路上飲みは以ての外。今後も、緊急事態宣言が解除された後においても、これらを厳守して感染予防に心がけていきたい。
 次の週末は、これまた初めての「新潟のゲンジボタル生息地」を訪ねる予定である。

 最後になったが、色々とご教示いただいた安念 余志子さんに、心より御礼申し上げるとともに、簡単ではあるが以下に紹介させて頂きたいと思う。

安念 余志子
写真家・フォトプラニングan 代表
http://www.pp-an.com/
https://www.facebook.com/annen.yoshiko

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 200 -1EV(撮影地:富山県 2021.6.11 17:36)

ゲンジボタルの生息地の写真

ゲンジボタルの生息地風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 1.3秒 ISO 100(撮影地:富山県 2021.6.11 18:54)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×8カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 19:53)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 4秒×35カット比較明合成 ISO 200(撮影地:富山県 2021.6.11 20:00)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×34カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:20)

ゲンジボタルとヘイケボタルの写真

ゲンジボタルとヘイケボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.8 5秒×4カット比較明合成 ISO 320(撮影地:富山県 2021.6.11 20:17)

野菊とホタルの写真

野菊とホタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 1秒×15カット比較明合成 ISO 6400(撮影地:富山県 2021.6.11 20:40)

ゲンジボタル(富山)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ヒサマツミドリシジミ

2021-06-12 14:40:55 | チョウ/ゼフィルス

 ヒサマツミドリシジミ Chrysozephyrus hisamatsusanus (Nagami et Ishiga, 1935) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ミドリシジミ族(Tribe Theclini)メスアカミドリシジミ属(Genus Chrysozephyrus)のチョウで、オスの翅表はクリソゼフィルス特有の金緑色に輝く。翅裏の斑紋には特徴があり、後翅裏面白帯の後端が他のゼフィルスはW字状であるのに対し、本種は、唯一後翅肛角の赤斑で1度折り返しV字状となっている。またオスの前翅裏面には黒い円状の斑紋がある。
 日本の特産種で、本州(東限は、太平洋側では神奈川県足柄上郡、日本海側では新潟県西頸城郡)、および四国、九州に分布するが、生息地域や場所は、極めて局所的であり、ゼフィルスの中で最稀少種と言われている。1970年に生態が解明されるまでは、「謎の蝶」「幻の蝶」「日本産最稀種」と呼ばれ、日本鱗翅学会が生態解明に懸賞金をかけたこともあったほどである。食樹は、尾根沿いや渓流沿い等の温暖湿潤な環境に生育するブナ科コナラ属のウラジロガシやアカガシ等である。
 環境省RDBに記載はないが、都道府県RDBでは鹿児島県で絶滅危惧Ⅰ類、熊本県・宮崎県・高知県・大阪府で絶滅危惧Ⅱ類、10の県で準絶滅危惧種に指定している。また、山梨県南巨摩郡早川町では、平成17年に文化財保護条例において本種を天然記念物に指定し保護している。卵・幼虫・蛹・成虫の全ての段階において、採集は禁止である。

 日本国内に生息するゼフィルスは、6月6日の記事(ヒロオビミドリシジミ)のようにオスの翅表が美しい種が多く、そのほとんどを撮影しているが、このヒサマツミドリシジミは、2015年と2016年に北陸の生息地を7回訪れたが、メスの吸水と開翅は撮ったものの、オスは撮影どころかその姿さえ確認できておらず、私には「幻の蝶」であった。今回、意を決して再び北陸の生息地に行って見ることにした。
 本種は、5月の下旬には羽化するが、その後一ヵ月ほどは、オスはテリトリーを見張る行動を一切せず、天候のよい日は雌雄ともに吸水するが、それ以外はほとんど飛ぶことなくじっとしている。精細胞が成熟する6月下旬頃になってから、オスは主に14~16時頃にテリトリーを見張る行動を行う。オスは、交尾後に死んでしまうが、メスは夏眠をし、9月に再び活動を開始して産卵をするのである。また本種は、兵庫県北部山地のように、羽化後は生育した食樹を離れて山頂付近に移動し生活することが知られているが、北陸と山梨の生息地では、食樹がある生育場所に留まって一生を終える地域特性がある。
 天候次第で比較的容易に撮影できそうな兵庫県北部山地への遠征も一昨年から考えてはいたが、梅雨の時期、撮影適期である6月下旬の週末土曜日が晴れるという時がなく、また、600kmを超える遠征、捕虫網との争いの場でもあることから、7年越し8回目の戦いの地は北陸を選んだ。

 今年は、まだ関東甲信、北陸、東北地方は梅雨入りしておらず、乾燥注意報が出るほど雨が降っていない。連日、週間天気予報をチェックしていると、この週末は晴れの予報になっていた。しかも、11日(金)は計画年次有給休暇で休みをとっており、更に10日(木)は昼で退社できる勤務交番。先週は、ヒロオビミドリシジミで片道約530kmを走ったが、今週はおよそ400km弱。10日の夕方出発し、北陸道のSAで車中泊。当日は午前6時に現地入りし、6時半から探索を開始した。
 この生息地は4回目。何キロにもわたって断崖絶壁にウラジロガシがへばりつく。ちょっとでも踏み外せば、50m下の谷底へ転落する。ヒサマツミドリシジミの生息域は広いのだろうが、どこでも飛んでいる訳でもなく、集まったり止まったりする場所は、ある程度決まっている。また順光で見下ろすように撮影しようと思うと、場所は更に限られる。この知識は、過去の経験所以であるが、その場所へも、命がけである。
 今回の撮影は、ひたすら待つ。飛んでくるのを待つ。待機して3時間弱が経った頃、翅をキラキラと輝かせて飛ぶ1頭のシジミチョウを発見。目で追うと、3m先の見下ろす枝先に止まって半開翅している。ただし、種類は分からない。急いでカメラを向けるが、300mmの単焦点レンズに2倍のテレコンを付けているので(600mm、35mm換算で960mm)ピント合わせは、カメラ背面のモニターに映してマニュアルで合わせなければならないので時間がかかる。レンズが長いためシャッターはレリーズで押す。角度が悪く後翅の色が付かないが、何とか1カット撮影。翅を閉じたので、翅裏も撮りたい。何故なら、ヒサマツミドリシジミの特徴である後翅裏面白帯のV字を確認したいからである。しかしながら、真横のカットではないため撮影後にモニターで確認ができない。ただし、前翅裏面の黒い円状の斑紋が確認できたので、ヒサマツミドリシジミと断定。その後、この個体は飛んで行ってしまった。
 ようやく、7年越しの目標を達成したが、できればオスの全開翅と翅裏の特徴が分かる写真を撮っておきたい。先ほどの個体が、また現れるのを待つことにした。2時間が経過。他にすることもなく、そこで待つだけでは疲れも溜まる。息抜きに、崖沿いの道を歩いて行くと、苔むした岩壁に何とオスのヒサマツミドリシジミが1頭止まっているではないか!いそいでカメラを取りに戻り、テレコンを外してカメラを向けた。
 地上50cmの眼の前。他のクリソゼフィルスより尾状突起は長く、全体的にかなり小さいという印象であるが、翅がまったく擦れていない奇麗な個体である。ちょっと飛んで移動した時に見えた翅表の輝きが素晴らしい。しばらくすると、翅をこすり合わせ始めた。これで翅を開いてくれたら思い残すことはない。すると、私に向かってオオスズメバチが飛んできた。慌てて逃げ、すぐに戻ってみるとヒサマツミドリシジミの姿はなかった。
 その後、15時半まで待機したが、本種はまったく姿を見せることはなかった。やはり、まだ不活性期間なのであろう。もう1~2週間もすれば、晴れた午後はテリトリーを見張る行動を開始すると思われるが、今年は他にも予定があるため、また来年以降に期待したい。

 この日は、9時間ほど生息地にいたが、誰一人として来なかった。ソーシャルディスタンスは、恐らく3km以上はあったであろう。先週に引き続き、長年の目標を達成できた喜びを味わいながら現地を16時に出発し、90分ほど走行してゲンジボタルの生息地へと向かった。その記事は次頁で紹介したいと思う。
 以下には、参考までに2015年に撮影したヒサマツミドリシジミのメスの写真も掲載しておきたいと思う。ムカシヤンマのメスの写真は、5月23日の記事に追加掲載した。

参照

  1. ヒサマツミドリシジミ(メスの吸水行動)
  2. ヒサマツミドリシジミの発生時期に関する考察

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 11:41)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 11:37)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 11:32)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 9:21)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200(撮影地:北陸 2021.06.11 9:20)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ(メスの吸水)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/800秒 ISO 640 -1/3EV(撮影地:北陸 2015.09.23 7:59)
ヒサマツミドリシジミの写真
ヒサマツミドリシジミ(メスの開翅)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/800秒 ISO 12500(撮影地:北陸 2015.09.23 8:07)
ヒサマツミドリシジミ生息地の写真
ヒサマツミドリシジミの生息地
ヒサマツミドリシジミ生息地の写真
ヒサマツミドリシジミの生息地

ヒサマツミドリシジミの映像

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

2021-06-09 22:30:39 | ゲンジボタル

 ゲンジボタルは、中部山岳地帯(フォッサマグナ)を境に遺伝子が異なっており、発光パターンも明瞭に異なっている。オスの気温20℃におけるオスの集団同期明滅の間隔は西日本は2秒、東日本では4秒である。以下の映像は、岐阜県と千葉県で撮影したゲンジボタルの発光の様子を比較したものである。発光の違いが明確である。ちなみに、長野、静岡、山梨の3県周辺では3秒の「中間型」も存在し、長崎県五島列島に生息するゲンジボタルの明滅リズムは1秒に1回という日本一速いリズムで光ることが報告されている。(注意:気温によって集団同期明滅の発光間隔は異なり、西日本型ゲンジボタルでも気温が低ければ2秒より長くなる)

 どんな生物でも「分布域」というのを持っており、これは自然の摂理によって定められている。そして、生物の分布に大きな関わりを持ってくるのが土地の歴史である「地史」であり、地史における地形の変化が生物の分布に影響を与え、その結果、現在の分布域が成立したと考えられている。ホタルも同様である。
 ゲンジボタルを復活させたい、増やしたいという思いから、分布域を無視して、東日本に西日本のホタルを安易に移動することが多く行われているが、これは生物地理学上の系統や分布を攪乱することになるのである。ゲンジボタルはそれぞれの生息環境に適応した生態的特徴もあり形態的相違も見られる。それぞれの分布域には、生物地理学上生じた「地域固有性」があるのである。
 もし、もともとホタルが生息している場所に遺伝子の違う他地域のメスを種ボタルとして持ってきた場合、DNAは母性遺伝するために、他地域の遺伝子が急速に広がる可能性が極めて高い。つまり、その地域に固有の遺伝学的特徴が失われる「遺伝学的汚染・遺伝子攪乱」が生じ、その地域固有の生態的・形態的な特性も失われてしまうのである。
 他地域のホタルを移動し定着させても、生態系にはほとんど影響はないし、見た目には何も変わることのないホタルだ。繁殖して増えれば嬉しいものである。しかしながら、それぞれ特徴を持った地域固有種は守らなければならない。守るためには、人為的移動は避けなければならない。安易な移動と放流は、ホタル保護でも自然保護でもないということを知っていただきたい。

以下の動画は、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタル 西日本と東日本の光り方の違い

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


岐阜県関ケ原のゲンジボタル

2021-06-07 21:52:36 | ゲンジボタル

 岐阜県関ケ原のゲンジボタルを観察し撮影してきたので紹介したい。尚、本ブログでは、撮影地については基本的に都道府県名までの表記にしているが、今回は、既に広く世間に知られていること、町指定の天然記念物であり条例によって保護されていること、あえて明記することによって知って頂きたい事実があることから、撮影地を公表した。

 今回、前記事のヒロオビミドリシジミの撮影で大阪まで遠征し、時間的にも余裕があったため、大阪からの帰りに、今まで訪れたことがないホタルの生息地に寄ってみたいと思っていたところ、岐阜県関ケ原がちょうどゲンジボタルの発生時期にあたると知り、急遽行って見ることにした。
 岐阜県関ケ原町を流れる藤古川は、古くからホタルの生息地として親しまれてきた。一時、絶滅が心配されたが、自然環境保護対策の推進で乱舞する風景が復活し、昭和43年には、河川全域が町の天然記念物に指定されている。
 関ケ原は初めて訪れる場所であり、何の情報もなかったので、まずは不破関資料館に行き、受付の方に名刺を渡して話を聞いてみた。ご丁寧に対応頂き、藤古川の名神高速道路高架下や東海道新幹線ガード付近がよくホタルが飛んでいる所と教えて頂いた。車の駐車を了承後、徒歩で散策してみることにした。
 すぐに「ホタル生息地」という地図が書いてある看板も発見。やはり、ポイントは同じところの様だ。水田や麦畑の脇の細い道を歩いて行くと数件の民家があり、お宅から出てきた奥様にも名刺を渡して声を掛けてみた。すると、2018年の台風21号で護岸が崩れるなどの被害があり、すぐに河川改修したところ、それ以来、ホタルがいなくなってしまったと言う。それまでは、家の中まで飛んでくるほど沢山いたが、昨年は1頭も見なかったらしい。それでも、色々と教えていただき、一番のポイントを案内してくれた。不破関資料館の受付の方、そして民家の奥様、お忙しいところご教示いただき、この場を借りで御礼申し上げたい。

 ポイントが分かったので、あとは暗くなるまで待つだけである。と言っても、まだ15時。日の入りまで4時間もある。ゲンジボタルの幼虫が上陸するであろう場所や産卵しそうな場所など周囲の環境を丹念に調査し、その後、橋の上にカメラをセットしたのが16時。他には誰もいない。こんな早くから準備するのは私だけ。風の香りを感じながら、川の音、鳥の声に耳を澄ませる。時折響く新幹線の轟音・・・こうした一見無駄に思える時間も、自然の中に身を置くことに深い意味がある。
 ようやく19時。伊吹山の向こうに太陽が沈んだ後が凄かった。今までに見たことがない夕焼け空である。しかしカメラはホタルが舞うであろう川に向けてセット済みで動かせない。もう一台は、フィッシュアイレンズが付いているが、遠くに止めた車の中。カメラを置き去りのまま取りにもいけず、仕方なくスマホで撮った。まさに一期一会の光景。いつ何が起きるかもしれない。常に備えていることの必要性を身に染みて感じた。
 19時半。そろそろホタルが光っても良い時間にも関わらず光らない。観賞者も数人やってきた。と言うことは、いるのだろう。あちこちに目を凝らすが、どこにもホタルの光はない。20時になって光らなかったら、諦めて撤収しようと決めた19時50分。やっと1頭が発光を始めた。

 生息地の周囲の農道は、車が1台やっと通れるくらいの狭い道であるから、観賞者は、みな遠くに車を止めてやってくる。街灯も民家もないのでホタルには安心かと思いきや、ここでも懐中電灯。しかも川面や護岸に向けて、LEDの強烈な灯りを照らすのである。一体、何故? 肝心のゲンジボタルは、1頭だけが悲しげに川上に流れて行った。
 観賞者のお一人が、私に声を掛けてくれた。「ここは、前は何百といたんだが、この数年すっかりいなくなってしまった。今日は、向こうの水路の方が多いから行って見ると良い」と。すぐに教わった方へ移動してみる。麦畑の脇を流れる細い水路の周囲を50頭ほどのゲンジボタルが飛び交っていた。発光時間が短く、同期明滅の間隔も2秒ほど。生息環境的には東日本型ゲンジボタルのようだが、発光は明らかに西日本型である。映像も残したので、東日本型の発光と見比べていただきたいと思う。悲しいことに、ここでは捕虫網で採集している方がいた。

 藤古川本流のホタルは激減しても、こうして近くの細い水路で懸命に生き延び命を繋いでいた。本流の環境が落ち着けば、徐々に復活するだろう。ただし、5年はかかるかもしれない。それまでに、再び台風などで被害がでないこと、そして観賞者が知識とマナーを持つことを願うばかりである。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:10)

里の夕焼け空の写真

里の夕焼け(スマートフォンで撮影 2021.06.05 19:15)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 65秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:00)

ゲンジボタル(関ケ原)の写真

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 24秒 ISO 320(撮影地:岐阜県関ケ原町 2021.06.05 20:20)

ゲンジボタル(岐阜県関ケ原)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ヒロオビミドリシジミ

2021-06-06 15:49:37 | チョウ/ゼフィルス

 ヒロオビミドリシジミ Favonius cognatus (Staudinger, 1892) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)ミドリシジミ族(Tribe Theclini)オオミドリシジミ属(Genus Favonius)で、国内25種類のゼフィルスの中でも京都府北部から山口県にかけての中国山地にのみに局所的に分布し、食樹であるブナ科のナラガシワを主体とする低山地の雑木林に生息している。
 ヒロオビミドリシジミは、開発等による雑木林(生息地)の消失や里山の放棄放置による生息環境の悪化等よって減少しており、環境省RDBには記載がないものの、都道府県RDBでは、大阪府(絶滅危惧Ⅰ類)、京都府、兵庫県、広島県、島根県(絶滅危惧Ⅱ類)、鳥取県(準絶滅危惧種)に選定している。
 オオミドリシジミ属のオスの翅表の色は、ジョウザンミドリシジミやハヤシミドリシジミのように青系統が多いが、ヒロオビミドリシジミの翅表は、前翅は青緑で、後翅は黄色味が強い金緑色である。今回、ようやく本種オスの開翅写真を撮ることができたので、紹介したいと思う。

 ヒロオビミドリシジミの撮影場所は、大阪府能勢町にある「三草山ゼフィルスの森」である。本ブログでは、基本的に撮影場所は都道府県名までとしているが、「三草山ゼフィルスの森」は大阪府自然環境保全条例に基づく緑地環境保全地域に指定された森で、公益財団法人「大阪みどりのトラスト協会」が地上権を設定しており、ナラガシワ林の育成(育苗、萌芽更新、受光伐、植樹)によるゼフィルス類の保護や蝶類の多様性確保のために下草の縞状刈り払いによる林内整備、不法採集防止のための巡視活動、観察会等による啓発等を行っている。採集した場合は、条例により罰せられるため、撮影場所を明記することにした。
 当地には、2015年と2017年、2019年と過去に3回訪れている。2015年には、オスの開翅を撮影できたものの残念ながら羽化不全の個体で翅が痛んでいた。そのリベンジで訪れた2017年は、発生時期よりも前に訪れてしまったため、一枚も撮ることができなかった。そして3回目の2019年は、メスの開翅しか撮ることができなった。昨年は、新型コロナウイルスの影響で取りやめたので、今回は、何としても「オスの全開翅」を撮りたい。しかも、羽化して間もない翅の擦れていない美しい個体で!
 天気予報では、4日は一日雨で翌5日は、曇りのち晴れ。過去二回と同じ天候であり、下草に降りているに違いない。問題は、発生しているかどうかであるが、次の週末の天気の事を考えると、わずかなチャンスを逃したくはない。そこで勤め先が半ドンであった4日(金)正午に東京を出発。途中、静岡県内は台風のような風雨に見舞われ、新東名高速道路を恐怖と共に走り抜けた。17時に名神高速道路の大津SAで昼食兼夕食。その後、新名神高速道路の茨木千提寺PAに止め、車中泊とした。いつもなら現地近くの「道の駅」で車中泊するのだが、高速料金の深夜割引(30%)を利用したく、今回は手前で寝ることにした。ちなみに、6月20日までは緊急事態宣言に伴い休日割引はない。
 5日。午前4時にPAを出発し「道の駅」で小休止。移動後、5時半より三草山へ向けて登山を開始した。

 ゼフィルスの森に6時到着。管理が行き届いた美しいナラガシワの森は、まだ霧に包まれていた。一部では伐採が行われており、萌芽更新されている。
 さて、息切れした呼吸が整った後に探索開始である。14.48haの森に私含めて撮影者は5人だけ。ソーシャルディスタンスは十分。気温15℃。下草の笹はかなり濡れている。ゼフ棒で枝を叩かなくても降りているはずと確信するが、林道沿いをいくら歩き回っても見つからない。一昨年の経験から、どのあたりの下草に降りているかは分かっていたので、その近くで待機することにした。すると、下草の葉の上に青色を発見。ヒロオビミドリシジミのオスが翅を開いて止まっていたのである。
 私が見つけたキラキラ輝く小さな命。ようやく訪れた大チャンス。ここは慎重に近づき1枚。その後、一旦翅を閉じてしまうが、30分すると撮影しやすい良い向きに止まって全開翅してくれた。しかも、翅が擦れていない新鮮な個体である。前翅は青緑で、後翅は黄色味が強い金緑色という本種翅表の特徴をしっかりと収めることができた。
 この個体は、撮影後にナラガシワの梢へと飛び立っていった。この日、下草に止まっていた個体は、この1頭だけで、あとはナラガシワの高い位置の葉上に1頭。時期的には、まだ早いようで、他のゼフィルスは全く見かけなかった。まさに奇跡であった。

 残るは、ヒサマツミドリシジミのオスの開翅。メスを撮った富山県に遠征予定だが、晴れないとダメなので、今度も奇跡が起きることを切に願う。
 今回は、大阪からの帰り道に、岐阜県関ケ原町のゲンジボタル生息地に立ち寄った。その内容は事項に記したい。

参考:三草山ゼフィルスの森

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

三草山ゼフィルスの森の写真
三草山ゼフィルスの森
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/125秒 ISO 6400 -1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 6:08)
ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:12)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 7:44)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 6400 +1EV(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:23)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:24)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:29)

ヒロオビミドリシジミの写真

ヒロオビミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 6400(撮影地:大阪府能勢町 2021.06.05 8:33)

ヒロオビミドリシジミの映像
(動画の再生ボタンをクリックした後、設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2021 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.