ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

竹林

2016-03-28 22:42:31 | 風景写真

 竹林の織り成す景観は、日本の風土を象徴するもののひとつであり、日本三大美竹林の「錦川の竹林」「京都の嵯峨野」「岐阜の揖斐川」を はじめ、管理された竹林では、まっすぐ天高く伸びる無数の竹から、日本古来の美意識や風情を感じ取ることができる。
 しかしながら、近年「放置竹林問題」として邪魔者のように報道されている。荒れた竹藪が増えているのである。この最大の要因は、我々の暮らしと意識の中から竹が消え、竹への無知や無関心が広がったことにあると言われている。密集した竹藪は栄養分を求めて外に広がり、周辺の田畑や宅地を使えなくする。森を侵食すると光が遮られ、樹木は枯れてしまう。茎が地下30cm以下の浅い所に集中するため、大雨で地滑りを引き起こしやすくなるという。
 こうした状況を踏まえ、竹林再生プロジェクトに取り組む自治体が増えている。良好な里山環境の整備及び生物多様性の保全再生を図るとともに、竹林資源の有効活用を図ることを目的とした 「竹林整備事業補助金」を交付する自治体もある。
 竹は、「古事記」や「万葉集」或いは「竹取物語」に見るように、古くから親しまれていた日本文化に欠かすことができない存在である。また、日本画、水墨画のモチーフとしてもしばしば用いられ、風が竹林を通り抜ける際のざわめきは日本人の耳には心地よく響き、風情を感じさせるものとして俳句や和歌などに歌われ、多くの文学者、画家などの想像力を刺激してきた。春に筍(タケノコ)を掘るのも日本の風物の一つであるし、竹製品や工芸品も多い。日本の伝統色にも「煤竹色」「銀煤竹色」「藤煤竹色」「柳煤竹色」「肥後煤竹色」「若竹色」「老竹色」「青竹色」と様々な竹の色がある。
 私たちは、今一度、日本の伝統文化を見直し、竹から美意識や風情を感じ取るだけではなく、竹に関心を持って消費することも必要であろう。

 今日の我が家の夕食は、旬の日本料理「筍ご飯」。とても美味しく、酒の量も多くなってしまう。竹の花言葉のように「節度」を守った食事や飲酒にしないといけないのだろうが、こればかりは、節操が無い。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

竹林

竹林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F16 0.4秒 ISO 100(撮影地:東京都青梅市 2012.4.14)

竹林

竹林
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/125秒 ISO 800(撮影地:千葉県勝浦市 2012.3.20)

竹林

竹林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 0.8秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2016.3.20)

竹林

竹林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F16 6秒 ISO 100 -2/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2016.3.20)

竹林

竹林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F16 4秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:千葉県勝浦市 2016.3.20)

竹林

竹林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/15秒 ISO 100(撮影地:千葉県勝浦市 2012.3.20)

竹林

竹林
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:千葉県勝浦市 2012.4.07)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


スプリング・エフェメラル

2016-03-23 22:20:57 | チョウ

 スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)は、春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称で、直訳すると「春の儚いもの」「春の短い命」というような意味で、「春の妖精」とも呼ばれるが、春先のみ成虫が出現するチョウもスプリング・エフェメラルと呼ばれている。トンボや甲虫類等では呼ばない。やはり「妖精」はチョウなのだろう。本記事では、以下のスプリング・エフェメラル全種から、北海道に生息する3亜種を除いた8種類を紹介したい。

スプリング・エフェメラルと呼ばれるチョウ

  • ギフチョウ(Luehdorfia japonica
  • ヒメギフチョウ北海道亜種(Luehdorfia puziloi yessoensis
  • ヒメギフチョウ本州亜種(Luehdorfia puziloi inexpecta
  • ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)(Parnassius citrinarius
  • ヒメウスバアゲハ北海道亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii hoenei
  • ヒメウスバアゲハ利尻島亜種(ヒメウスバシロチョウ)(Parnassius stubbendorfii tateyamai
  • キイロウスバアゲハ(ウスバキチョウ)(Parnassius eversmanni daisetsuzanus
  • ツマキチョウ(Anthocharis scolymus
  • クモマツマキチョウ(Anthocharis cardamines
  • スギタニルリシジミ(Celastrina sugitanii
  • コツバメ(Callophrys ferrea ferrea)
  • ミヤマセセリ(Erynnis montanus

 スプリング・エフェメラルの中でも人気があるのは、何と言ってもギフチョウではないだろうか。雪どけ直後の早春の雑木林で舞う姿は、まさに「春の妖精」である。
 ギフチョウとヒメギフチョウは、たいへん近い種類で姿も形も非常に似ているが、生息地域がはっきと分かれている。これは、ギフチョウの幼虫の食草がカンアオイでヒメギフチョウの幼虫はウスバサイシンを食べることで違いが生じている。食草の分布と重なるようにギフチョウとヒメギフチョウの分布も本州中央部で東と西に分けられている。この分布境界線はギフチョウの学名を取って「リュードルフィア・ラインと呼ばれていて、ライン上にはギフチョウとヒメギフチョウの混在地域が8ヶ所ほど確認されている。

 掲載した種の各々の詳しい生態については、この記事では省くが、これらスプリング・エフェメラルの特殊な生活スタイルだけは記しておきたい。ウスバアゲハは、1年のほとんどの期間を卵で過ごし、ミヤマセセリは幼虫で過ごす。同じ年1化のゼフィルス類の多くは、9ヵ月ほどが卵の期間であるし、国蝶オオムラサキは幼虫の期間が10ヵ月くらいあるので、それほど珍しいことではないが、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ツマキチョウ、クモマツマキチョウ、スギタニルリシジミ、コツバメは、1年のほとんどを蛹で過ごすのである。10ヵ月も蛹のままなのである。ギフチョウをはじめスプリング・エフェメラルの多くが、氷河期の頃から地球環境の変化に耐えて生き残ってきたと考えられているから、これらの生態は種の保存戦略で、それが現在に至っても変わっていないのだろう。
 種類や地域にもよるが、3月下旬頃から5月上旬頃の間の僅か数週間しか舞うことのないスプリング・エフェメラル。この春、是非、実物をご堪能いただきたい。

注釈:画像は左右に配置していますが、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

ギフチョウ ギフチョウ
ギフチョウ(左:相模原市/右:十日町市)

ヒメギフチョウ本州亜種 ヒメギフチョウ本州亜種
ヒメギフチョウ本州亜種(左:赤城山/右:白馬村)

ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ) ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)
ウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)

ツマキチョウ ツマキチョウ
ツマキチョウ

クモマツマキチョウ クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ(富山県)

スギタニルリシジミ スギタニルリシジミ
スギタニルリシジミ

コツバメ コツバメ
コツバメ

ミヤマセセリ ミヤマセセリ
ミヤマセセリ

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


菜の花畑

2016-03-21 20:21:24 | 風景写真/春

 菜の花畑が一面に広がる様は、まさに代表的な春の風物詩である。そんな春の風景を求めて、2月21日の「九十九谷」を撮影して以来、一か月ぶりの小遠征に出かけた。
 菜の花と言えば、千葉県南房総である。午前3時に自宅を出発し、アクアラインを経由して、まずはある場所の幻想的な光景を撮るべく千葉県君津市へ。5時に到着したが、何と本降りの雨。前日の天気予報では、早朝から晴れであったにも関わらず雨である。肝心の朝日は全く期待できない。残念だが、ここの光景は延期である。
 次は、菜の花畑。午前8時過ぎに雨は止んだが、天候は曇りで春の雰囲気が感じられない。それでも、所々に咲く菜の花の黄色は、心を和ませてくれる。南房総で「菜の花畑」の名所はいくつもあるが、私が好きな場所は、市原市石神の「菜の花畑」である。広大な菜の花畑の中を一両(もしくは二両)編成の小湊鉄道が走り抜けていく所だ。到着すると、菜の花がちょうど見頃で素晴らしい光景、そして清らかな香りが漂っている。ただし、ものすごいカメラマンの数。大半は、鉄男(鉄道ファン)諸氏と思われる。ポイントになる場所には三脚がずらりと並んでおり、レンズが向かう方向の菜の花畑に近づこうものなら大変だ。私は、小湊鉄道を入れるつもりはなかったので、菜の花畑だけを撮って邪魔にならないよう早々にこの場を引き上げた。ちなみに、過去に同場所において一枚だけ小湊鉄道をいれたカットを撮ったことがあるので参照いただきたい。(ホタルの独り言>菜の花畑

 菜の花を撮ったのは、実に5年ぶりであった。曇りだったので、コントラストが弱めで柔らかい感じになり、風情ある春色に仕上がったように思う。先日は、福岡と名古屋で桜の開花が伝えられ、東京も本日開花。本年は、数か所においてじっくりと桜と向き合いたいと思っている。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

菜の花畑

菜の花畑
Canon 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 200(撮影地:千葉県勝浦市 2012.3.20)

菜の花畑

菜の花畑
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/60秒 ISO 100 +2/3EV(撮影地:千葉県市原市 2016.3.20)

菜の花畑

菜の花畑
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/40秒 ISO 100(撮影地:千葉県夷隅郡大多喜町 2016.3.20)

菜の花畑

菜の花畑
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/200秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:千葉県夷隅郡大多喜町 2016.3.20)

菜の花畑

菜の花畑
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/60秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:千葉県夷隅郡大多喜町 2016.3.20)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


チョウの季節型

2016-03-16 19:22:25 | チョウ

 モンシロチョウやキタテハが飛び交う様子が見られるようになってきたが、モンシロチョウは蛹で越冬して、この春に羽化した「春型」で、一方、キタテハは前年の晩秋に羽化して、成虫で越冬した「秋型」の個体である。
 トンボの仲間では、先述のホソミイトトンボ以外は年1化であるが、チョウ類では、1年に一回しか羽化せずに一か月も経たないうちに産卵して死んでしまう種(ギフチョウやミドリシジミ等)や夏に羽化してそのまま冬を越して、翌年の初夏まで生きる長寿の種(ヤマキチョウやキベリタテハ等)がいる。また、一年のうちに何回も羽化する種もいる。こうした種は「季節型」と言って、羽化した時期によって「春型」「夏型」「秋型」に分けられ、それぞれ翅の色彩や形状が異なっているという特徴がある。
 この記事では、代表的な種の写真を掲載しながら、チョウの季節型について紹介したいと思う。

 まず、チョウの季節型には形態的差異が見られる。例えば、アゲハやクロアゲハは夏型の方が春型より大型となり、一方、シルビアシジミは春型の方が大きい。これは、幼虫期の食草の状況と幼虫の成長期間に関係があり、栄養価の高い新芽の時期に比較的ゆっくりと十分な大きさに達するまで成長した後に蛹化へと進めば大型になる。
 他の形態的差異では、外来種であるホソオチョウでは、夏型は春型に比べて尾状突起がかなり長いという違いがあり、キタテハは、越冬する秋型の翅の縁の切れ込みが夏型に比べて深いという特徴がある。キタテハでは、生理的にも夏型は低温に弱く、越冬できるのは秋型である。また、メスの成熟も夏型では羽化後1週間もすれば産卵できるのに対し、秋型では越冬後はじめて卵の成熟が見られるなど大きな差をもっている。ただし、同じく成虫で越冬するキベリタテハやヒオドシチョウは年1化で、夏に羽化してそのまま成虫で越冬するから面白い。
 チョウの季節型による差異で最も顕著なものは、翅の色彩的差異ではないだろうか。サカハチチョウやトラフシジミ、外来種のアカボシゴマダラの春型と夏型は、別種かと思われるほど色彩を異にしている。また、ベニシジミでは春型の方が紅色が鮮やかである。また、キタキチョウやヤマトシジミでは、夏型の方が翅の外縁の黒い部分が大きいという特徴がある。

 チョウの季節型を決定する要因は、幼虫期や蛹期の日長条件が主であり、温度条件が副次的であることが研究で分かってきている。例えば、キタテハでは老令幼虫の日長条件が長日では夏型が羽化し、短日では秋型になると言われ、臨界日長はおよそ13時間であるという。しかし、短日条件下でも高温がはたらくと秋型化が抑制されることが分かっている。ベニシジミにおいても、幼虫期の短日条件で春型、もしくは秋型になり、長日・高温条件により夏型になることが分かっている。
 これまで年1化と考えられていた種でも季節型が存在する可能性も示唆されている。例えば、ルーミスシジミがそうである。ルーミスシジミの詳しい生態は、未だ完全には解明されておらず、特に成虫の発生回数や時期については諸説ある。以前は、初夏に1回の発生と言われていたが、6月中~下旬に第1世代、さらに8月に第2世代、9月に第3世代が発生する(川副・今立, 1956)という説や年2回という説があるが、11月下旬の翅の痛み具合や同属のムラサキシジミとムラサキツバメが複数回発生していることから、少なくとも年に2回以上発生し、夏型と秋型が存在することは間違いないように思う。(参照記事:ルーミスシジミ
 また、季節型(春型、夏型、秋型)の差は連続的なものなので、年5~6回の発生のうちには、その中間型も出現する。例えば、春型初期の成虫から生まれた幼虫が一ヶ月で成長して羽化した個体は、形態的に春型と夏型の中間型になることがある。(参照:ヤマトシジミ(季節型)

 ここに掲載し紹介した季節型をもつチョウは一部にしか過ぎない。私自身、この記事を書きながら希少種を追いかけるばかりに、普通種であるナミアゲハやモンシロチョウの季節型を撮影してないことに気づいた次第である。また、春型だけで夏型を撮っていない種も多いので、時間があれば揃えていきたい。
 もうすぐ春本番で、多くのチョウたちが見られるようになる。季節型というものを念頭に置いてチョウの撮影をするのも有意義ではないだろうか。

注釈:掲載写真のチョウは、同種の雌雄を同じにし季節型の違いが分かるように画像を左右に並べています。
尚、写真は、500*333 Pixels で掲載しています。スマートフォン等画面が小さい場合は、左右ではなく、上下で表示されます。

サカハチチョウ サカハチチョウ
サカハチチョウ(左:春型/右:夏型)

トラフシジミ トラフシジミ
トラフシジミ(左:春型/右:夏型)

ベニシジミ ベニシジミ
ベニシジミ(左:春型/右:夏型)

ヤマトシジミ ヤマトシジミ
ヤマトシジミ(左:春型/右:夏型)

ホソオチョウ ホソオチョウ
ホソオチョウ(左:春型/右:夏型)

アカボシゴマダラ アカボシゴマダラ
アカボシゴマダラ(左:春型/右:夏型)

シルビアシジミ シルビアシジミ
シルビアシジミ(左:春型/右:夏型)

キタキチョウ キタキチョウ
キタキチョウ(左:夏型/右:秋型)

クロコノマチョウ クロコノマチョウ
クロコノマチョウ(左:夏型/右:秋型)

キタテハ キタテハ
キタテハ(左:夏型/右:秋型)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


梅一輪のあたたかさ

2016-03-12 19:04:13 | 風景写真/春

 春の到来を告げる梅の花が、見頃を迎えている。梅は、古くから日本人に愛されてきた。奈良時代より前は、「花」といえば桜ではなく梅のことであったという。花言葉は、「高潔」「忠実」「忍耐」」「気品」「厳しい美しさ」「あでやかさ」。早春の冷たい空気の中、凛と咲く梅の姿を表わしていると言えよう。
 梅の花を見ると思い出すのが、東日本大震災である。当日は、東京の自宅で恐怖を感じ、テレビの報道で津波の恐ろしさに震えた。記憶が風化していく中、5年が経過しても、今なお続く被災者の方々も悲しみや苦しみは、私には想像もできない。

梅一輪 一輪程のあたたかさ

この俳句は、江戸時代の俳人服部嵐雪の作品で、「きびしい寒さの中で梅が一輪咲き、それを見るとほんのわずかではあるが、一輪ほどの暖かさが感じられる」との意味である。梅の花が厳しい寒さの中で開花する様は、人生に例えられる。梅の花のように、厳しさに耐え、再び気品をもって咲き始めている東北の魂に、ただただ頭が下がる思いである。首都直下と南海トラフの巨大地震は、いつ来てもおかしくないと言われているが、平和ボケした私は生き延びることはできないかもしれない。

 写真下3枚は、東京の2つの梅郷を写したものである。1つは、青梅市にある吉野梅郷(梅の公園)。残念ながら、平成21年に吉野梅郷地区でウメ輪紋ウィルスが発見されて以来、多くの梅樹が伐採され、感染拡大の防除と梅の里の早期復興のため、平成26年5月には全ての梅樹が伐採されている。 もう一か所は、八王子市の高尾梅郷にある木下沢梅林。裏高尾の山里に1,400本の紅梅と白梅の香りが漂う。
 梅一輪、一輪が咲き誇り、春の陽を浴びるように、東日本大震災で被害を受けた東北の地と人々に希望の光が差し、早期復興するよう心から願いたい。そして微力ながら、できることには協力してきたいと思う。

 先月末に体調を崩して以来、気力も体力も低迷傾向にあるが、次の三連休からは、春を満喫する旅に出ようと思う。2週間もすれば桜の便りも聞かれるだろう。楽しみである。

白梅の写真

白梅
Canon 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1000秒 ISO 200 +1 1/3EV(撮影地:東京都国分寺市 2011.3.20)

吉野梅郷

吉野梅郷
Canon 7D / SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG
絞り優先AE F5.0 1/200秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:東京都青梅市 2010.3.15)

木下沢梅林

木下沢梅林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F22 0.6秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:東京都八王子市 2012.4.1)

木下沢梅林

木下沢梅林
Canon 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F22 0.8秒 ISO 100 +1/3EV(撮影地:東京都八王子市 2012.4.1)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------