上野に移動し、東京藝術大学美術館「春の名品選 藝大コレクション展」へ。
「絵因果経」:国宝。画が仏画的素朴さにあふれている。
狩野芳崖「不動明王」:妙に痩せた不動明王は目がくりっとした近代的な表情をしている。細かい所の上手さは芳崖ならでは。
下村観山「風」:木がなびき、雲が切れて月が姿を現している。風を描かずして風を描くという所。
五姓田義松「西洋婦人像」:線がシャープで緻密な人物画である。
山本芳翠「猛虎一声」:キラキラした虎。夜の空と雲がまたいい。
藤島武二「造花」:和服の上に白いエプロンをした、近代的女性が描かれている。
吉田博「溶鉱炉」:太古の神殿で火をともしているかのようだ。
橋本平八「花園に遊ぶ天女」:体に蝶や桜の花が彫られている木彫。処女の肌に影ずるらしいが、大丈夫か平八?
平田宗幸「州浜置物」:水面から飛び立つ瞬間の鳥が刻まれた彫金。
金丸峰雄「平象嵌四分一胎器(かたつむり)」:くるりと銅板をまるめたかたつむりが上手い。
五姓田義松「横浜亀橋通」:明治12年の少し都会化した横浜。
大野隆徳「日本橋」:印象派タッチの日本橋である。水の都といった感じだな。
近藤浩一路「京橋」:橋の上を都電が通っている。
一雄斎国輝[三代]「東京浅草公園 凌雲閣」:高さが52mあったのだとか。
前川千帆「有楽町駅」:ひらがなで「いうらくちやう」って書いてあるけど、本当にこんな表示だったのか。
小野忠重「市街・丸の内ビル街にて」:黒い太い線でビルが描かれており、ルオーっぽい印象。
小磯良平「彼の休息」:ラグビー青年の休息シーンだが、妙に精気が無くてどうしたのかと思わせる。
3階でやっている「FENDI — UN ART AUTRE」はパスだ。大学院の美術研究科文化財保存学専攻の学生が修復・摸刻を行った「研究報告発表展」はなかなか面白かった。やっぱり普通の素人が彫ったものとは、ひと味違う。
行く順番を間違えた気がするが、表参道に移動。最後に見るのは根津美術館「琳派の競演 国宝燕子花図屏風」である。
雰囲気のあるエントランスを歩く。
野々村仁清「色絵山寺図茶壺」:今まで見たことのない細やかさだ。
尾形光琳「燕子花図屏風」:テレビや本で見て、「プリントみたい」と思っていたのだが、その印象はそれほど変わらない。しかし、じゃあつまらないのかというと、そんなことはない。リズム感に目を奪われてしまい、類似の文様があることなど気にならないのだ。非常に良くできた、「名作デザインパターン」とでも言うべきものなのかもしれない。じっくり見るより、いすに腰掛けて何気なく見ると、庭の景色を眺めているかのようで、実はMOMAで見たモネの「睡蓮」を思いだした。
尾形乾山「色絵絵替角皿」:全て違う画が書いてあり、どれが当たるのか楽しみになりそう。
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」:金地に山の緑、川の青、白い百合(右隻)と紅葉(左隻)が描かれたにぎやかな作品。
「弥勒菩薩立像」:3世紀の作品でまさしくインド顔。手りゅう弾のような薬壺が面白い。
宝慶寺「十一面観音立像龕」:この顔と衣の美しさは誰にでも分かる。頭部の11面はほぼ顔が壊されているのが不思議。
「地蔵菩薩立像」:すっくと立つ地蔵菩薩。唇の赤さが印象的。
「毘沙門天立像」:大らかでむっちりとした顔立ち。踏んでいた邪鬼は失われてしまったらしい。
「双羊尊」:両側が羊の頭部になっている珍し入れ物。
「饕餮文方盉」:変身ロボのように見える3個セットの非常に貴重なもの。殷王の所有品だった可能性が高いとか。
「饕餮文方彜」:神に供えるための酒、食べ物を盛る器だったらしい。ここには恐ろしい程いいものがある。東京国立博物館東洋館以上かも。
野々村仁清「色絵結文文茶碗」:シンプルにして抜群。
閉館が迫り、ちょっとかけ足で見ることになってしまったが、この美術館には仏教彫刻、中国青銅器、仁清・乾山、茶道具と見るものが多い。庭も立派らしいのだが、時間が無くて手前の方をちょろちょろ見ただけである。
「石像浮屠」朝鮮高麗時代 10世紀。こんなの庭に置いておいていいのか。
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「金銅八角燈籠」。東大寺大仏殿の前にあるもののレプリカ。
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「石造阿弥陀三尊像」。日本鎌倉時代、1310年のもの。
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「石塔」(詳細発見できず)。
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何だかもう凄いわ…。疲れきって美術館巡りは終了。