魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ネズミギンポ

2017年04月07日 01時06分40秒 | 魚紹介

スズキ目・タウエガジ科・ネズミギンポ属のネズミギンポ。

ネズミギンポは深海性のタウエガジ科魚類で、水深1000mを超えるような場所からも採集されている。分布域は極めて広い。北太平洋、日本海、オホーツク海、ベーリング海から北大西洋グリーンランド近海にまで極めて広い範囲に分布している。日本においては北海道~東北地方までの太平洋沿岸、北海道~新潟県までの日本海岸、大和堆にまで分布している。

タウエガジ科の魚はいくつかの亜科に分けられている。魚類検索では亜科については触れられていないが、Fishbaseを参考にしたら概ねこんな感じになる。

●Azygopterinae

北海道にも分布するオビギンポと千島列島に住むAzygopterus corallinusの2種のみを含む小さなグループ。

●Chirolophinae

多くの種が頭部に皮弁を有する。フサギンポ、フサカケギンポ、ケムシギンポ、キタフサギンポなど4属12種をふくむグループ。沿岸の藻場などに多いイメージ。

●Lumpeninae

今回のネズミギンポはここに含められる。ヤセギンポやモンツキガジ、ヌイメガジ、ウナギガジなど。2009年に新種記載されたフリソデガジもこの属の中に含まれている。体は軟弱そうに見えるがかなり大きくなる種も含まれる。

●Opisthocentrinae

ムロランギンポやドロギンポ、ガジなど。トンガリギンポ属もこの仲間に含められているが、左右の鰓膜が癒合しているものが多いようである。一見ニシキギンポ科の魚に見えるようなものもおり、ドロギンポは水深15~60mほどの場所にいるとされるが、そのほかの種は浅い藻場に多いようなイメージがある。6属12種が知られ、日本産は7種。

●Stichaeinae

タウエガジやゴマギンポ、ムスジガジ、トゲギンポなどのグループ。臀鰭軟条の最後方の軟条が棘状になるというかわった特徴をもつものも知られている。タウエガジ属をのぞき複数列の側線を有しているよう。沿岸の岩礁域に多いイメージ。6属14種。

●Xiphisterinae

ダイナンギンポやキタノトサカ類などのグループ。短く茶褐色の体がユニーク。主に浅い海に見られ、潮だまりでもよく見られるイメージ。9属19種が知られる。

●Neozoarcinae

背鰭に軟条があり、これをゲンゲ科に入れることもある。背鰭棘条数が120以上とほかの種よりも多くの背鰭棘をもつものがいる。イトギンポ属、ヒメイトギンポ属、カズナギ属の3属13種からなり、分布域は日本や韓国、極東ロシアなど東アジアに限定される。日本には9または10種が分布。ヒメイトギンポ属とカズナギ属は沿岸域の岩礁や藻場に生息しているが、イトギンポ属は深海性でトロールで漁獲される。

ネズミギンポは上記の通りLamperinaeに含まれる種。鰓膜も切れ込み、ドロギンポみたいに癒合していない。亜科の標準和名の表記はあえてしていないのであるが、ウナギガジ亜科という標準和名はあるようだ。上顎は伸縮できず、前鋤骨や口蓋骨に歯がないなどの特徴があり、ほかの同亜科の魚と区別できる。なお、ネズミギンポ属は本種のみの1属1種である。

私がこの奇妙なタウエガジ科魚類と出会うのは今回が初めてではない。かつて東北地方太平洋岸の深海底曳網で漁獲された個体をいただいているのだ。そのときの個体は今回よりもかなり小さい。今回入手したのは体長298~307mm(全長324~333mm)の個体であったが、この個体は94mmであった。体に特徴的な模様がなく、ヌイメガジやウナギガジなどと区別できるとされるネズミギンポであるが、この個体は灰色の体に濃い黒っぽい斑紋が見られた。臀鰭軟条数はやや少ないのも見分けるポイントとなるようだ。大きいものでは全長40cmに達する。

底曳網漁業で漁獲されるが、練製品原料となる程度であまり食用とはされない。今回はアカゴチなどほかの魚とともに唐揚げでいただいた。美味しいのであるが、細身の体で骨が気になりやや食べにくい。今回のネズミギンポも坂口太一さんよりいただいたもの。いつもありがとうございます。

コメント
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