先日三重県熊野灘から珍しいアジがやってきた。アジ科ギンガメアジ属のミナミギンガメアジである。えらく細長いように見えるが、これは画像を引き延ばししたわけではなくて、もともとこんなに細長いのだ。この個体は全長825mmもある超大型個体。これほど大きいのは日本では珍しいのかもしれない。
鹿児島県産のミナミギンガメアジ若魚 全長380mm
私にとってミナミギンガメアジを見るのは初めてではない。昨年鹿児島の田中水産の、田中積さんから送っていただいたことがあった。去年は何度か上がったようで「当たり年」だったのかもしれないが、最近30cm程度の個体は決して珍しくないという話も。
三重県でもミナミギンガメアジの記録はあるのだが、いずれも幼魚や若魚である。しかし今回は真冬の1月終わりから2月の頭にこの個体を含む大型個体が4匹も網に入ったようだ。これが何をあらわすのかはわからない。海水温の上昇や海流の影響もあるだろうが、鹿児島からの成魚の運搬というのもあるのかもしれない。当たり年だった昨年、餌を求めて北上しながら大きくなった可能性もあるが、成魚の運搬というのもあるのかもしれない。しかしなぜ三重でこれほど巨大なものが漁獲されたのか、謎が多い。基本的に50cmを超えるのは日本では奄美大島以南であり、それでもこれほど大きいのは少ないらしい。
ミナミギンガメアジの鰓蓋後縁上方には大きな黒色斑があり、その後方にはオニヒラアジのような銀色の模様があるが、それが若干下方に伸びる。まあこの黒色斑で間違えないだろう。また独特な顔つきもミナミギンガメアジの特徴である。動物食性が非常に強く、主に小魚を捕食する。この個体の胃の中からはカタクチイワシとキビナゴが大量に出てきた。アジ科の仲間は優れたハンターであり、定置網の中でも魚を追いかけて捕食する。小魚は逃げ場所がなく簡単に捕食できるものの、最後はミナミギンガメアジも囚われの身になってしまうのである。
ミナミギンガメアジの刺身。やや脂の乗りは少ない。それでも美味しくいただいた。肉は薄ら桃色になっている。身はもちもちした感じである。ただ寝かして数日後に食べたものはやや大味であった。
今回は三重県の長野 淳さんより。ありがとうございました!